素早さ極振りにした怖がり少年はネクロマンサーになるようです。   作:名無しという名の者

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怖がり少年とスキル選択

 

 

 

イベントが終わり、もといた場所に帰ってくる。

加速していた時間の流れも元通りのよう。

運営からは放送が入り今から三十分後にスキルとメダルの交換を行うため、メダルの受け渡しがある場合は行うようにと言われた。

 

そうだ、メダルの管理はサリーがしているんだっけ。

俺は早速メイプル、サリー、シャインと合流し、サリーからメダルを10枚渡してもらう。

 

 

「どんなスキルがあるかな?」

 

「さあ?見てみないとなんとも…」

「なんか噛み合ったスキルがあるといいけどなぁ」

 

そして三十分後。

再度運営のアナウンスが入り、専用の部屋に個別で転送されることが告げられる。

相談などは出来ないらしく、自分の必要だと思うスキルを自分で選ばなければならない。

 

へー、と思っていると、俺の体が光に包まれて消えていく。どうやら転送されるようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺の視界はステータスプレートと同じ青に埋め尽くされ、

現在いる出口の無い部屋の中心には一つのパネルが浮かんでいる。

近寄ってよく見てみるとそこにはスキル名がズラっと一覧で並んでおり、一つ一つのスキルから詳しい説明のページに飛ぶことが出来た。

 

 

 

「スキルの数は…だいたい百個ってところかな?」

 

戦闘系スキル、生産系スキル、ステータスアップ系スキル、そのどれにも属さないスキル……。

様々なスキルが目の前に存在していた。

 

「夢が広がるぅ!どれにしよっかなぁ!」

 

俺の選ぶことが出来るスキルは二つ。なんてったって金のメダルを持ってたわけだからね!

といっても、俺が選んで恩恵を感じることの出来るスキルは限られていた。

とりあえず選んでおいて間違いないのは…そうこれだ。

 

 

【ラピッド】

AGIが1.5倍になる。

 

超ふつーで単純なスキルだが、足が早くなるのは俺にとってはかなりありがたい。

逃げるのが早くなるのはもちろん、【演算処理】がある以上、避けやすくなるからHPとVITも上がるようなものだ。

 

 

「さてと、後は何を選ぶべきか…」

 

 

探したところ、これ以上俺のステータスが上がりそうなスキルはなかった。だからなんでもいいから強いスキルが欲しいところだ。

強そうなスキルを見つける、断念する。

強そうなスキルを見つける、断念する。

これを何度も何度も繰り返す。

もちろん名前の通り強そうな内容…いや弱いやつもあったが、ほとんどが何かしら役立ちそうな力を秘めていた。

 

だが。STRもINTもDEXも皆無な俺にとってはゴミスキルでしかなかったのだ。

諦めた俺は、味方を強化するバフ、敵を弱体化するデバフのスキルのゾーンに逃…突入する。

一応俺も一端の魔法使いなんでね。

 

 

「ムーンとかの為に【フィジカルブースト】とかありかもな…」

 

そんなことを考えていた時。俺はひとつのスキルに目をつける。

ん…?これは…??

舐め回すように説明文を凝視する俺。

 

 

「これだ!これだわ!!」

俺の頭に走る電流。俺は迷うことなく二つ目のスキルを選んだのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

各自メダルスキルを獲得した俺達は、第二層のベンチに座りながらどんなスキルを手に入れたのか情報交換を始める。

 

 

「みんなはどんなスキルを選んだの?」

 

「んー…私は結構迷ったんだけど【追刃】にした」

「「【追刃】?」」「あー、あのスキルか…」

 

 

俺とメイプルはどんなスキルかさっぱり見当がつかないのだが、シャインは理解したらしい。

俺とメイプルは偏ってるおかげ(?)でいちいち確認する必要が無いからな…

その点シャインはきっちりと全てのスキルに目を通して新しい戦術を考えていそうだが。

 

 

「えっと…武器での攻撃が成功した時にその攻撃の三分の一の威力の追撃が発動するスキル…かな」

「えっと……?」「つまり…?」

 

 

「手数が二倍になる。私は二刀流だから【ダブルスラッシュ】が八連撃になったりする」

 

 

「「すごっ!」」

 

 

 

「まあ、【器用貧乏】もあるし二刀流は一撃ごとのダメージが減るし、まだまだ本格的な運用は出来ないけどね」

 

サリーは手数の多い攻撃方法や高速の攻撃方法を好む傾向がある。

シャインは一撃の火力に重きを置いた攻撃方法を好む傾向がある。

メイプルは耐久力を高めようとする傾向がある。

そして俺は速度を高めようとする傾向がある。

 

 

「シャインはどんなのにした?」

 

「俺はねー…悩みに悩んで【魔法設置】にした」

 

「えーっと?」

 

「つまり、爆裂魔法を設置して」

「任意のタイミングで爆発させたりできちゃうってこと」

 

「なんかすごそう!」

 

シャインもシャインで噛み合ったスキルを手に入れたようだ。

 

 

「メイプルはどんなスキルにしたの?」

「私はちゃんと使えるか分からないスキルだよ」

 

 

「「「え?」」」

 

 

「じゃあ砂漠にいこう?人目につかないところで試してみたいな」

 

「う、うん。分かった」「ああ…」

「いいですけど…」

 

なんだろう、嫌な予感がするのは俺だけか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よーし。シロップ出ておいでー…シロップ!【巨大k】…」

「ちょっ、ちょっと待てぇぇえぇぇぇ!!?」

 

「わっ、ゼロくんごめん!すっかり忘れてた…」

 

 

まったく、急なモンスターの召喚は心臓に良くないからやめて欲しい。

しかしテイムモンスターを全員が持ってる今、このゲームをプレイしている間は、常にモンスターを見なきゃ行けない地獄が始まろうとしている…いや既に始まっているのだろうか…?

 

ええい!そんな事はどうでもいい。

とりあえず【気配察知】を使ってと…心の準備も出来た今はとりあえず大丈夫だろう。

 

 

「よし、オーケー」

「それじゃ、気を取り直して…シロップ、【巨大化】!」

 

 

メイプルがそう唱えると、シロップの体は段々と大きくなっていく。

高さ三メートル。

体長五メートル半といったところだろうか。

 

【巨大化】

HPが二倍になる。

 

 

「うっ…」

「って、ゼロ大丈夫!?」

 

流石にあのサイズのモンスターはこたえる…いや、コボルやムーンと比べたらマシか。

俺、確実に感覚が麻痺してきてるな…。

 

「大丈夫いつもの発作だ、気にする必要はない」

「いやシャインが手慣れすぎてるだけで、絶対危ないよね!?」

 

 

 

「上手くいけー…上手くいけー…」

 

メイプルは目を閉じて手を合わせながら祈っている。

しばらくそうしていたメイプルはカッと目を開くと突然叫ぶ。

 

 

 

「【念力(サイコキネシス)】!」

 

その声が響き渡ると、なんと驚くことにシロップの体がふわりと浮き上がり始めた。

その巨体は重さを全く感じさせず、ふわふわと十メートル程浮き上がると止まった。

 

 

「「「えぇ…?」」」

「やった!やった!上手くいった!」

 

 

 

ぴょんぴょんと跳ねて喜ぶメイプル。

俺達は完全に考えることを放棄していた。

いつも冷静沈着なサリーやシャインも、こればかりは理解が追いつかないようだ。

 

理由は明白。全ての状況が謎だからだ。

なぜ成功するかも分からないスキルを選んだのか、なぜ成功すると思ったのか、そしてなぜそれが奇跡的に成功しているのか…。

 

 

俺は、メイプルがどうしてここまで強くなれたのかが改めてわかった気がした。

 

 

念力(サイコキネシス)

 

モンスターを浮かせることが出来る。

モンスターごとに設定された抵抗確率によってスキルの成功率が変わる。

一度失敗すると一時間は対象となったモンスターに対して再使用出来ない。

モンスター以外には作用しない。

抵抗確率によりスキル使用時のMPの消費量は変わる。

 

 

「メイプル、そのスキルを取った理由は…?」

 

「シロップと一緒に空を飛べると思ったから!」

「あっ、はい」

 

「もう何が何だか分かんないな…」

 

「私のことは一旦置いておいて…ゼロくんは何を選んだの?」

 

 

来た。俺のターンだ。

…なんだかメイプルのスキルを見たあとだと、俺のスキルを見せるのは野暮な気もするが…

 

 

「俺が選んだのは【ラピッド】っていう、AGIが1.5倍になるスキルと…」

「「「と?」」」

 

 

「えぇ〜っと……実演した方が早そうだな。【幻視】!」

 

 

 

そう俺が叫ぶと、俺の体が若干不透明になり、白いオーラを纏うようになる。

そして、俺はAGI約1300ぐらいのスピードで走り出す。

 

 

「あれ…ゼロくんが何人もいない?」

「いやあれは…残像??」

 

「幻視ってまさかあの幻視!?」

 

 

おっ、どうやら成功してるみたいだ。実は本当に効果があるか不安だったんだけど…杞憂だったみたい。

 

 

「多分サリーの思ってる幻視で合ってると思う」

 

「あのスキルってパーティメンバーをサポートするためのバフスキルで、自分にかけるようなやつじゃないと思うんだけど…」

 

「えぇ…」

「でも、上手く扱えてるしいいんじゃないかな?」

 

「まぁそれはそうだけど…」

 

 

【幻視】

使用することで対象のプレイヤーの残像を作ることができる。

効果時間は15秒で30分後に再使用可能となる。

魔法使い専用スキル。

 

 

「これで全員のスキルは確認したかな?…ってゼロ、いつまで目を閉じてるつもりなんだ?」

 

「とりあえずメイプルがあのバケモノを指輪に収納するまでかな」

「いい加減慣れないと、このゲームで強くなれないぞ?」

 

 

「シロップ!戻っておいで!」

 

「ねぇメイプル…今何しようとしてる?」

 

俺がシャインとちょっとした言い合いをしていると、サリーがメイプルに対して意味深な発言しているのが耳に入る。

 

シャインもそれに気がついたようで、俺とシャインは同時に振り返ってメイプルが何をしようとしているのか確認する。

俺の場合は【気配察知】を使っているから確認とは言えないかもしれないが。

 

 

「背中に乗せてー」

 

メイプルはどうやら巨大化したシロップになにか話しかけているようだ。と次の瞬間、シロップはメイプルの頭をガッチリと咥えると反動を付けて上に放り投げた。

 

 

 

「よっ!」

 

メイプルはガシャンと甲羅の上に勢いよく落ちる。

そして、メイプルはシロップとともに七メートル程まで高度を上げて周りを見渡す。

 

 

「飛行要塞だなぁ…」「あぁ…」

 

俺とシャインがその謎すぎる光景を見て唖然としている中、冷静なサリーはなにかがこちらに迫ってきていることに気づく。

 

 

「メイプルー!ダンゴムシの集団が来てるよー!」

 

どうやらメイプルにも伝わったようだ。

ん…?モンスターこっち来てるの??

 

 

モンスターが来ていると聞いて、俺は思わず叫んでしまった…はずだったのだが、何故か口から出したはずの悲鳴がかき消されていた。

まさか、と思いシャインを見てみると、爽やかな笑顔をしながらグッドポーズをしている。

 

どうやらわざわざ音魔法を使って俺の悲鳴を吸収したようだ。

…その力の使い方間違えてない??

 

 

「皆ー!離れててー!」

 

っと、そんなこと冷静に分析してる暇は無い!!

とりあえず俺はシャインを掴んで全速力でサリーと一緒にその場から離れる。

メイプルが何をやらかすのか見当もつかないからな。

 

 

 

「【アシッドレイン】!」

 

メイプルが新月を天に向けて突き出す。

そこから広がる魔法陣から飛び出した直径十五センチほどの紫の水の塊は、メイプルから五メートル程離れた位置にランダムに着弾していく。

 

 

 

「雨よ降れー!降れー!」

 

メイプルが降らせた雨はダンゴムシに当たる度にダンゴムシの動きを止めていく。

そして食らった毒にだんだんと体を蝕まれ、続々と倒れていくダンゴムシ達。

 

…これ、どっちがモンスターなんだ??

 

 

 

後日いつものネット掲示板で、メイプルが飛行要塞になったと話題になったことは誰も知らなかったのであった。

 

 








メイプルの化け物具合にはやっぱり勝てない……


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