素早さ極振りにした怖がり少年はネクロマンサーになるようです。   作:名無しという名の者

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怖がり少年と新事実

 

 

 

 

激動……かどうかは分からないが、少なくともかなり満足感のある7日間を過ごした俺は翌朝、寝ぼけた目を擦りながらゆっくりとベッドから起き上がる。

 

7日間と言ってもゲーム内の話で、実際には二時間しか経っていなかったが。

時間を操れるってゲームって、今更だが凄いものだな……。

 

 

 

そんなことを考えながら顔を洗って朝ごはんを食べ、その他諸々身支度をして学校へと向かう。

 

「行ってきまーす」

 

 

 

今日の授業はなんだっけかな……。あぁ、できることなら勉強をしなくていいあのゲームの中にずっといたい。

いや……生き物を見なくちゃいけないからやっぱいいや。

 

 

「零士ーー!」

 

そんなどうでもいいことを考えていると、後ろから俺の名前を呼ぶ声が聞こえてくる。

俺が振り返ると、案の定そこにあったのは走ってくる勇輝の姿だった。

 

「おはよ」「おはよ〜」

 

 

いつもどおり挨拶をする俺。ここの歩道橋で勇輝と合流し、一緒に登校するのも慣れたものだ。

 

「いや〜、なんか変な感じじゃない?」

「ん? あぁ時間加速のこと?」

 

「そうそう、あそこでは確かに7日間過ごしたのに、実際には二時間しか経ってないっていう……」

 

 

「飛行機とかで海外行く時の時差ボケもこんな感じなのかな」

「さぁね……本州から出たことない俺には分からん」

 

 

そんな他愛のない話をしながら、俺達は学校へと向かうのだった。

……ゲーム内だとあのスピードに慣れてるからか、めっちゃ足が遅く感じる……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一限目。

 

俺は早速ぼーっとしていた。ぼんやりと授業を聞きながら華麗にペン回しをする俺。

……何にもかっこよくないな。

 

そんなことをしていると、きちんと授業を聞いてもらうため必ず質問をしてくるのが教師というものだ。

が、俺はその質問の模範解答を完璧に答える。これで文句はないだろう。

 

 

それから授業は進んで終了まであと10分ぐらいにさし迫り、今日は購買で何を買おうかなーと考えているときだった。

例によって例のごとく、寝ている女子生徒に対して起きてもらうために質問をする先生。

もちろん意識は遥か遠くへと飛び去ってしまっているため返事は無い。

 

隣の女子が起こすためにつんつんとつつく。すると、ようやく起きたその女子は伸びをしながら中々大きな声で、

 

 

「ん……ん?……ふぁ……もう見張り交代?……あれ?」

 

と言ったのだった。

皆が少しざわざわとする。その女子も自分の失言に気づいたようで、恥ずかしがりながら先生から注意を受けていた。

 

 

この時は、特にこの女子生徒に対して何も考えていなかった。ちょっとした面白い出来事ぐらいの感覚だった。

そう、まだこの時は。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時は流れ。三限目も終わり、次の授業が終わったら昼食だな〜と友達と話していると、廊下の方で面白そうな事件が起こる。

 

さっきの一限目の女子生徒と、移動教室帰りの男子生徒がすれ違いざまにぶつかってしまい、筆箱や教科書等が落ちてしまったのだ。

それだけなら、ただの事故で済んだだろう。しかし。

 

 

「……っ!」

 

その女子はそれはもう綺麗にターンを決めて、左手を突き出して右手を腰に持っていっていた。

一瞬俺は何が起きたか全く分からなかったが、俺はすぐに理解し、そして既視感を感じた。

そう、何を隠そうその動きは正しく「大盾使い」の動きだった。

彼女もNWOのプレイヤーなのだろうか?

 

 

ただ……どこかで見たことがある……ような? 

 

 

「ちょっ、楓!?」

「え? えっ?」

 

急に目の前でポーズをとった彼女を見て、思わず固まってしまう他の女子生徒達。

次の瞬間、ゆっくりと腕を引くとぎこちない笑みを浮かべて誤魔化し足早にその場を後にした彼女。そしてそれを追いかける友達なのだった。

 

 

 

「ちょっと今日の本条さん変じゃない?」

 

「ん? あぁそうだな……」

 

 

一部始終を見ていた友達もそう思ったようだ。

彼女の名前は、「本条楓」らしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

待ちに待った昼食も食べ終わり、五限目。

楽しい体育の時間だ。いつの時代になっても、体育は学生にとって救いの授業と相場が決まっている。

授業の内容にもよるが、今回はドッヂボール。神授業確定だ。

 

 

ボールを避け、たまにキャッチして投げたりもしつつ楽しんでいた俺だったが、次の瞬間、隣のコート……女子達のコートから聞き覚えのある言葉が聞こえてきた。

 

 

「闇夜ノ写……あっ!」

 

 

その声に思わず反応し、隣のコートに顔を向けてしまう俺。

そこにはさっきみたいに左手をつき出しながら、顔面にキレイにボールを当てられている本条さんがいた。

 

 

「零士! 前前!!」

「え?」

 

 

俺は勇輝の声に反応して素早く前を向くが、時すでに遅し。それは美しくボールがヒットしたのだった。

 

 

この場合はよそ見してる俺が悪いな……。と反省しながら外野へと向かう俺。

しかしその頭は本条楓の事でいっぱいなのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

学校も終わり、部活にも所属していない俺は家へまっすぐ帰る。……のが普通なのだが、俺はあるひとつの仮説が合ってるか確かめるために、少し違う道を歩いている。

 

 

 

前に歩くは今日奇行が多かった本条さん。彼女に聞きたいことがあってわざわざ寄り道をしているのだ。

帰りの時間に聞いても良かったのだが、あまり話したことの無い女子と話していると友達にいじられないとも限らないからね。他人の目は気にした方がいいものだ。

 

 

 

「本条さーん!」

 

俺の声に反応した本条さんはこちらへと振り返ると、俺の事を不思議そうな目で見ていた。俺は早速彼女の所へと駆け寄る。

 

「えぇ〜っと、同じクラスの零士って言います。ちょっと聞きたいことがあって……」

 

「? どうしたの?」

 

 

「NWOって知ってますか?」

「あ……あぁ、あの最近流行ってるゲームのことかな? 私の親友がよくプレイしてるから知ってるよ」

 

 

俺は深呼吸をする。次の質問はあまりにもぶっこみすぎているからだ。

 

 

「単刀直入に聞きます。本条さんはメイプルですか?」

 

 

 

 

 

あまりにも突飛すぎるその質問を聞いて、思わずビクッとしてしまう本条さん。

まず一限目の寝ぼけて放ったセリフは、時期的にもNWO第二回イベントによる影響のものなのだろう。

しかし、それだけではただのNWOをプレイしている1プレイヤーということしか分からない。

 

 

だが、三限目の休み時間のあのポーズの構え方、そして何より決定的な五限目体育の時に言っていた「闇夜ノ写」という言葉から、俺はある仮説にたどり着いた。

それこそが今聞いた、「本条楓=メイプル説」だ。

 

 

本条さんはどう答えていいのか分からず、もじもじしていた。

 

 

「なっ、なんの事かなぁ?」

 

 

そして悩みに悩んだ末出した言葉がこれ。

これはもう確定だろう。俺はそう確信した。

 

 

 

「メイプル……俺だよ俺、ゼロだよ」

 

「よくわか……って、え?えええっ!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちょちょ、ちょっと待って?」

「俺も一旦待って欲しい……」

 

 

「だーかーら、ゼロくんとシャインくんは私達と同じ学校に通ってたの!」

 

「んで、それにいち早く気づいた俺が楓に確認したら、ビンゴだったって感じ」

 

 

「いや何その奇跡!?」

「それによく気づいたな零士!?」

 

 

 

俺は部活の終わった勇輝を、楓は理沙を電話でそれぞれ近くの公園で呼び出し、いつものゲームのパーティメンバーが今度は現実世界で集まっていた。

俺と楓は事の顛末を全て話したのだが……あまりにも唐突で情報が処理しきれていないようだ。

 

ちなみに俺も実はあんまり飲み込めていない。結構賭けで楓に聞いてみたんだけど、まさか本当に合っているとは思ってもみなかった。

世間は狭いとはよく言ったものだが……これはそういうレベルの話じゃない気がする。

 

 

本条楓。ゲーム名はメイプル。

白峰理沙。ゲーム名はサリー。

それぞれ俺、勇輝と同級生であり、クラスメイトである。これは、揺るぎない事実なのであった。

 

 

 

「えぇっと、それじゃ……メイプル改めまして本条楓です!」

 

「私の名前は理沙! ゲーム名はサリーよ」

 

「シャインでプレイしている、勇輝です!」

 

「零士って言います! ゼロです!」

 

 

 

 

それから俺達は、完全に日が落ちるまで様々なことを話し合った。NWOでのことはもちろん、今までは聞けなかったプライベートのことや学校の授業等の話もした。

そういえば今日一日楓が変なことをしていたのは、7日間プレイしたことによる慣れで、つい反射的に動いてしまったかららしい。

 

 

まぁ、その影響で俺が気づけたのだから結果オーライというやつだろう。

流石に夜になってきたということで、連絡用にL〇NEを交換してから解散してそれぞれの帰路へとつき、家に帰る。

 

 

 

「さて……やりますか」

 

自分の部屋の電気をつけ、片付けをしたりした俺は早速VRゴーグルを付ける。

あまりにも不思議すぎる巡り合わせに驚きつつ、これは辞めれないゲームを始めてしまったな……としみじみ思う零士。

 

 

この日以降、パーティ全体の結束力がさらに高まった気がする零士なのだった。

 

 

 

 

 

 

 





奇跡ってあるものですねぇ……()

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