素早さ極振りにした怖がり少年はネクロマンサーになるようです。 作:名無しという名の者
「ごめーん!待った?」
「そんなに待ってないよ」「全然大丈夫だぞ」
三日ぶりのメイプルと合流する俺とサリー。シャインも後でログインするらしい。
昨日の時点でサリーがメイプルと一緒にいないなんて珍しいとは思ったが、どうやら学校での失敗がかなり恥ずかしかったらしく、少しNWOから離れていたのだとか。
サリーもかなり気を使ったと言っていたから、かなり重症なようだ。
「うーん…そうだなぁ。メイプルはこの三日間のことをどれくらい知ってる?」
「え?…全く知らないよ?ゲームから離れるようにしたから」
メイプルが知らないのも仕方ないだろう。ゲームをしていた俺ですらサリーから聞くまで知らなかったし。
「じゃあ、一つずつ説明していくよ」
「うん、お願いします」「俺も」
「まず一つ目は大盾のスキルが新しく追加された。貫通攻撃に対抗するスキルだったよ」
「おお!」
これはメイプルにとってとても嬉しいことだろう。
メイプル対策に作られたといっても過言では無い貫通攻撃に対して対抗手段ができたのはかなりでかい。
「それでこれが重要なんだけど…メイプルのいないうちにイベントっていうか…新要素?とにかくそれが追加された」
「新要素?」「そうそう」
「【光虫】っていう金色の虫がフィールドのどこかに出るようになったんだよ」
「その証は何に使うの?」
「新要素【ギルドホーム】を買うのに必要なんだよ」
「ギルド…ホーム?」
「この町ってさ、入れない建物がいっぱいあるよね」
「うん」
「証一つにつきあれを一つ買える。虫の種類によって買える【ギルドホーム】のランクも違うんだよ」
「ふむふむなるほど」
サリーが【ギルドホーム】の良さとしてステータスアップの恩恵があることを話し、その後に【光虫】の数について話し始める。
勉強になります、サリー先生!
「【光虫】の数には限りがあって…建物の数しかいない」
「ええ!?」
「運営は少しずつ建物の数を増やしていくつもりらしいけどね」
「じ、じゃあ急いで探しにいこう!」
全速力でモンスターの出る方向へと向かうメイプルを制止する俺とサリー。
「「メイプル」」
「な、何?」
サリーがさっと青い画面を操作してインベントリからアイテムを取り出す。
「じゃじゃーん」
「もう取ってある。メイプルが欲しがると思ってね」
「お…おおお!ありがとう!」
「ただ…これは【ギルドホーム】を買う権利を手に入れられるだけで、買うためにはお金も必要なんだ」
「それ…どれくらい?」
「五百万ゴールド」
「ごっ…!?え?」
メイプルは所持金を確認する。
が、その後の表情を見るに、五百万ゴールドには太刀打ちできるほど手持ちがあるわけではなさそうだ。
「じゃあ…今日はお金を稼ぎにいこうよ!早く【ギルドホーム】欲しいし」
そうして町の外へと歩き出そうとするメイプルをまた制止する俺とサリー。
「「メイプル」」
「な、何?」
サリーがステータス画面を出しつつメイプルに近づく。
その一部をちょんちょんと指差し、メイプルに見せる。
サリーの所持金の欄には五が一つにゼロが六つ。
「既に用意してあるんだなぁこれが」
「俺も頑張って集めたんだぜ?」
「す、凄いよ!サリー、ゼロくん凄い!」
「ふふふ…もっと褒めたまえー」「まえー」
ちなみにこの五百万ゴールドの7割ぐらいはサリーが集めている。影達を使って俺は3割程度なので、サリーがどれだけ頑張って集めたのかが分かる。
しばらくメイプルに褒め讃えられた後でサリーは話し出す。
サリーはメイプルに購入出来る家の方に向かおうと言い、メイプルも俺もそれに賛成する。
家を買う時ってこんな感じでワクワクするのかな…!
「この辺りかな」
「結構歩いたね」
「…もうちょい速く歩けない?」
「いやゼロが速すぎるだけだから」
俺達は端にある自然豊かな森の所へと来ていた。
ここらへんのギルドホームなら基本誰にも取られていないし、買えるだろうとサリーが言ってきた。
「私が手に入れた証はランクが低いからね…もっといいランクの証なら町の中心の【ギルドホーム】が買えるんだけど」
「手に入れてくれただけで十分十分!」
「とりあえずギルドが作れればそれでオーケー!」
「ここ…いいかも」
人通りのない道を進んでいると、目の前に現れた大木の建物を見てメイプルが思わず言葉をこぼす。
ひっそりと存在する【ギルドホーム】は隠れ家的雰囲気をかもし出していた。
「確かに、メイプルが好きそう」
「自然に囲まれてていい感じだし」
「ここでいい?」
「んー…一旦中を見てもいい?」
「おー…結構広いね」
ぱっと内装を確認したところ落ち着いた色合いの木製の家具が中心だった。
部屋の奥には青いパネルが壁に嵌め込まれておりそこに情報を入力することでギルドメンバーを登録出来るらしい。
「これでも最下級だけどね。ギルドメンバーは…五十人まで登録出来るね」
「二階もあるけど…そんなに入る?」
「意外といけたりして?」
「まあ、限界値だから快適ではないかもしれないね…ここで決定で大丈夫?メイプル、ゼロ」
「うん!全然問題ないよ!」
「俺も大丈夫!」
「それじゃ、ここで決定しちゃうよ」
ギルドホームの玄関に移動する俺達。
サリーがインベントリから【光虫の証】を取り出すと、扉にそれを押し付け、すると扉の真ん中に【光虫】の模様が刻印される。
「これで、このギルドホームは晴れて私達のものになりました!」
「「いやったー!」」
早速中に入ると、サリーは俺とメイプルのことをギルドメンバーとして登録する。
「それで、ほかのギルドメンバーはどうする?シャインは決定だとして…」
「……カスミとカナデに聞いてみようか!」
「そう言うと思った。それじゃ、早速メッセージを送ろう」
「カナデって誰だ…?」
「二人ともありがとー!」
「僕も誘ってくれて嬉しいよ」「あぁ、同感だ」
サリーがメッセージを送ったあとすぐに返事が返ってきたらしく、どちらもギルドに入りたいと言ってくれた。
カナデは赤髪の子で、中性的な見た目だが性別は男らしい。
「メイプルのギルドなら、こちらからお願いしたいぐらいだ」
「よかったー!」「これからもよろしく!」
「俺もよろしくー!」
これでこのギルドも六人は確定したことになる。
しかもカスミは第一回イベントで入賞しているわけだから、これで上位プレイヤーが三人も所属しているギルドになったわけだ。うーん、強い!
「あっ、クロムさん!イズさん!」
そんなことを考えているとメイプルが通りかかったカップルらしき人達の名前を呼ぶ。どうやら知り合いみたいだが…っと、片方は第二回イベントの山頂で会った人だな。
「あらメイプルちゃん、久しぶりね!」
「よお!」
「もしかしてデート中ですか…?」
「まさかー、素材を集めてきた帰りよ」
「あれ、もしかしてそっちにいるのは第一回イベント入賞者のカスミさんか!?それで隣の子は…」
「カナデ、私の友達!」
「はじめまして」
「こちらこそ、よろしくな!」
「はーん、さてはギルド結成の相談?」
「今ちょうどうちのギルドに入ってもらったところなんです」
「あっそうだ!クロムさんとイズさんもどうですか!」
その言葉を聞いて、二人で顔を見合わせる二人。そして…
「メイプルちゃんのギルドなら、私も入ってみたいけど…」
「あぁ、俺もだ。他のみんなが良ければだが…」
「どう?カナデ、カスミ」
「大丈夫だよ」「あぁ、私もだ」
「よかったー!ゼロくんとサリーも賛成だよね?」
「もちろん!」
「私も問題ないよ!それじゃ、全員ギルドメンバーに登録しちゃおう!」
…なんだかうちのギルド、強くね?
「中々いい家じゃないか!」
「そうね、居心地も良さそう」
とりあえず四人ものギルドメンバーを確保した俺達は、自己紹介や様々な確認をするためにギルドホームへと戻ってきていた。
ちなみにギルドホームに向かう途中でシャインからメッセージが送られてきたので皆には先に行ってもらい、俺はシャインと合流してから速攻でギルドホームへと向かった。
なのでここで全ギルドメンバーが揃った感じだ。
そしてさっきまでギルドマスターが誰になるかという話をしていたのだが、満場一致でメイプルがギルドマスターということになり速攻で決定した。
「それじゃ、はじめましての人も多いだろうし軽く自己紹介をしちゃおうか…まずは私から。双剣使いのサリーって言います。STRとAGI重視でバンバン倒していくんで、よろしくお願いします!」
パチパチと全員から拍手が上がる。
それからはクロムさん、イズさん、カスミ、カナデとどんどん続き、そしてたった今シャインの自己紹介も終わったところだ。
メイプルは最後のトリになっているから…次は俺だな。
「えっと…ゼロって言います。ステータスはAGI極振りで、
そう、今隣にいる真っ白いローブを被った誰かさんのせいでな!
拍手が鳴り止むと、最後の大トリ…ギルドマスターのメイプルの自己紹介が始まる。
「改めましてギルドマスターのメイプルです!防御と毒攻撃には自信あります、よろしくお願いします!」
そして全員から拍手が上がる。これで全員自己紹介し終わったはずだ。
「それじゃ、あとはギルドの名前を決めないとね」
「メイプルが決めていいよ、ギルドマスターなんだから」
ここにいる全員が頷く。俺はそもそもネーミングセンスが壊滅的だからな!
「そ、そう?それじゃ…」
「【楓の木】!名前は【楓の木】にします!」
【楓の木】。後に少人数ギルドにしては強すぎると【人外魔境】や【魔界】と噂になるのだが…それはまだ先の話である。