素早さ極振りにした怖がり少年はネクロマンサーになるようです。 作:名無しという名の者
そろそろゼロくんも強化する時期ですかね…?
「昨日は酷い目にあった…」
「今に始まった話じゃないだろー?」
「それはそう…だけど体が持たない!ってあれ?今日はやけに少ないな」
素材集めの次の日。俺は前日の疲労を噛み締めながらギルド内に入ると、そこにはいつもいるメイプルやサリー、カスミ、カナデはおらず、シャイン、クロムさん、イズさんが座っていた。
「メイプルちゃんとサリーちゃんは新しいギルドメンバーを探しに行ってるみたいだし…」
「カナデさんとカスミさんはスキルを集めに行ってる感じ」
「新しいギルドメンバー?」
「あら、そういえば昨日のギルド定例会議のときは気絶してたわね」
「あ、そっか」
そう、昨日の俺は素材集めが終わって帰ってきた時、気絶していたのだ。モンスターに追いかけられ始めたあたりから記憶がない。
【平常心】を発動せずに気を失うのに慣れたものだな…と思いつつ、新しいギルドメンバーの話について聞く。
「これから第三回イベント、第四回イベント、そして第三層の実装があるのは知ってるか?」
「いや…そうなんですね」
「あぁ。第三回イベントは特定のモンスターを倒すだけ至って普通のイベントなんだが」
「第四回イベントはギルド対抗戦、ギルドとギルドで戦うらしい」
「うちって少人数ギルドじゃない?一人でも欠員が出ると大きな戦力の低下になっちゃうから、今のうちに新しい味方を増やそうって話になったの」
「それで今メイプルとサリーは探しに行ってる…ってことですね」
「メイプルちゃんのことだからまたすごい人材を見つけてきそうだが…」
「ありそうですね」「ありえるわね」
みんな強くなるため、ギルドのために色んなことを頑張ってるんだなぁと思う俺。
「…なんかちょっとやる気出てきたかも。スキル探しに行ってきます!」
「いってらっしゃーい」「気をつけるのよー」
そう意気込んだのはいいものの。
勢いだけでギルドから出てきた俺は特に行くあてがあるわけでもなく、適当に第二層の街を闊歩する。
「どうしたもんかなぁ…」
『それならばクエストを受注すると良いかと』
「わぁぁぁあぁぁ!!…クエストって?」
『ついに急に出てくるのに慣れましたか…NPCに対して話しかけたりすることで起きるイベントのことです。めんどくさい条件や内容の場合もありますが、新しいスキルを獲得することが出来ます』
「…むむむむムーンと戦ったあれもクエストなのかかかか?」
『私の場合は隠しダンジョンですね。ある特定の条件下で挑戦できるようになる特別なモンスターがいる場所で、たしかにそれでも新しいスキルを獲得することはできます』
「そそそそれなら家に入りまくって話しかけまくればいつかクエストに出会える??」
『可能かと』
「よよよぉっしぃ!じゃあいいクエスト探して頑張るぞぉぉぉあ!」
それから俺は手当り次第、ギルドホームでは無い建物に入ってはNPCに話しかけて撤退、建物に入って話しかけて撤退…を何度も繰り返した。
途中それっぽいのを一度見つけたが、クエスト名が明らかに俺とマッチしてなさそうなので却下した。
そして家に侵入するのを繰り返すうちに、俺は第二層の町の端っこのほうまで来ていた。
「ここ…も入れるか、おじゃましまーす」
俺は慣れた手つきで家のドアを開け、中に入る。中は部屋一つしかなく、布団が真ん中に無造作に置かれているだけだ。そして布団が明らかに盛りあがっているため、もしかしなくとも中に人が入っているのだろう。
どうした?怖い夢でも見て布団から出られなくなったのか?俺も小さい頃、生き物を見た日はそうやって布団にくるまってたっけなぁ…懐かしい。
とりあえず俺は淡い期待を込めて話しかける。
「すみませーん…?」
だが、返事は無い。完全に無視されているようだ。
「あの、ちょっと?」
………。静寂があたりを包む。どうやら応答する気はサラサラないみたいだな、え?
合ったクエストも見つからず少しイライラしていた俺は、布団の毛布を持って思いっきりひっくり返す。八つ当たりだ。
すると、ヒョロヒョロとした印象を受ける男性が頭を抱えて涙目になっている姿があらわになる。
「わぁぁ!命だけはお助けを!」
「ちょっと待ってくださいって!まず命狙ってませんから!」
「あれ?よくよく見たら"アイツ"じゃない…?」
急に立ち上がったと思ったら急に冷静になるな、こいつ。…いや、モンスターに追いかけられてる時の俺と一緒か。
そんなことはどうでも良くて。これはクエスト来るんじゃないか?
「"アイツ"って誰なんですか?」
「君!君見た感じ強そうだし俺の護衛してくれないかな!?」
護衛?と思っていると、俺の目の前に青いプレートが現れる。
クエスト【影に潜む者】
クエスト来たーーー!
クエスト名も俺にピッタリだし、これはいいスキルゲットできるんじゃないか?
俺は表示の下の方にある【Yes】のボタンをなんの躊躇いもなく、迷いもせずに押す。
「あ…ありがとう!マジで助かるよ!俺お偉いさんからある荷物を運ぶように言われてんだけど、その荷物がなんかすごいやつらしくて色んなやつが奪いに襲ってくるの!
護衛つけてたんだけどそいつやられて俺は命からがら逃げだしてさ…どうすればいいか分からなくなってるところにちょうど君が来た!」
「そ、そうなんですね…」
かなり興奮している彼の頭上を見ると、HPバーが表示されている。彼への被弾を抑えなければいけないみたいだが…これめんどくさい系のクエストっぽいな。
そんなことを考えていると目の前にクエストの詳しい説明が。そこにはクエストのクリア条件やいつもと違うところ、注意するべきことが事細かく書かれていた。親切だな…。
このクエストの大まかな内容は『彼のHPが0になる前に目的地に無事送り届けること』のようだ。
彼を背中に乗せながら俺が全力ダッシュすれば一瞬で着くじゃん!と思ったが、それは出来ないみたい。そこはちゃんと対策済みなのね。
このようにズルをしようと思っても出来ず、本来なら一人で彼のことを気にかけながら迫り来る刺客に対応するという、なかなかに高度なマルチタスク能力が問われるのだが………俺は違う。
俺には影達が付いてるからな!兵士一人に彼の見張りをさせ、周りから襲ってくる奴らを先にムーン達に蹴散らしてもらえば簡単にクリアすることが出来るのさ!
「それじゃ、よろしく頼むぜ兄弟」
「……はい」
どうにもこの人とはテンションが合わないな。
とりあえず俺は、森を抜けて平野の川を超え、山に囲まれたところにあるとある家まで彼を送り届ければクエスト完了になるようだ。
「……暇だな」
そう、俺は暇だった。さっき言ってた通り兵士一人に彼の監視兼最終防衛を任せ、ムーンと他の影達に先回りしてもらって襲ってくる人やモンスターを倒しておいてもらう。
これがあまりにもキレイにハマっており、現在ダメージを受けるどころか戦闘にすらなっていなかった。辺りから戦闘する音は結構聞こえてくるんだけどね。
うーん。これじゃ俺ただこの変な人とお散歩しに来ただけだよな…。どうせ散歩するなら他のギルドメンバーと来て仲良くなりたかったなぁ…
「おぉ…あれほど強いモンスターを倒すとは…さすが俺が見込んだ男なだけあるぜ」
「?急にどうした??」
今出来ない話を考えても無駄だなと俺は美しい自然を楽しみながら歩いていると、男が急に迫真の声で話しはじめた。
これは…本来なら俺がここで倒すはずだったモンスターが、既に倒されてたから起きたバグなのかな?
「なんかごめん……」
てか襲われるほど重要な荷物を預けられるこの人って何気にすごいよな。フランクな感じだから信頼されてるのかもしれないな。
そんなことを考えながらはや20分。
「つ…着いちゃった…」
そう、俺は本当になんの苦労もなく一瞬で目的地へと到着したのであった。
「ありがとな兄弟、お陰で無事に運べたよ!」
「…申し訳なくなってくるからそれ以上の感謝はやめてくれ…」
とりあえずクエスト完了した俺は【常闇】を解除し、影達を招集する。顔は見たくないけどお疲れ様!
目の前には木でできた大きなログハウスが。
彼は扉の前に立つと扉をノックする。ノックに反応して中から出てきたのは、杖をついている白い髭をつけたおじいちゃんだった。
「はて、何用ですかな?」
「おじいちゃん!これあんた宛の荷物だよ、大切にほか…」
その時だった。何者かに一瞬にして"荷物"が奪われたのは。
無事一件落着だなーとかどんなスキルが貰えるんだろうと呑気に考えていた俺は全く警戒しておらず、影達も出していないので【気配察知】も使用しておらず、敵襲に気がつくことが出来なかったのだ。
「はっ!?荷物が…"アイツ"の仕業だ!怖いけど仕事はきちんと全うしなくちゃいけねぇし…待ちやがれぇ!!」
「ちょっと落ち着いてくださいって!おじいちゃんは一旦家で待機してていいよ!…と、新しいクエスト?」
荷物が取られて焦り、奪っていった奴を追いかける彼。それをまた追いかけようとする俺の目の前に、青いパネルが再び出現する。
エクストラクエスト【暗殺者】
エクストラ…クエスト??
どうやら特別なクエストが発生したようだ。ということはつまり…強いスキルもゲット出来るかもしれないということになる。
よっしゃ!そうとなれば頑張って攻略するぞー!!