素早さ極振りにした怖がり少年はネクロマンサーになるようです。   作:名無しという名の者

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怖がり少年と見捧ぐ慈愛

 

 

 

 

俺達楓の木のギルドメンバーは、メイプルの声かけによって俺が【暗殺者】を自慢した場所の近くに来ていた。なにか見せたいものがあるのだとか。

 

どうやらここらへんはモンスターが群れで発生しやすいらしい。早く帰りたい……! 

ちなみに今回も例によって例のごとく、俺以外の全員はシロップに乗り、俺だけ【冥界への一歩 】で空中を歩いてここまでやって来たのだ。

やっぱ俺だけハブられてるよな……? 

 

 

まぁそんなことはこの際どうでもよくて。

今目の前にはいつもの真っ黒な装備とは正反対の、白と金の色で作られた天使のような印象を受ける装備を身につけたメイプルがいた。ムーンとは完全に真逆だ。

イズさんがこの装備を作ったらしいが……

さすが生産職、装備一つにもかなり気合い入れてるなぁ。

 

 

 

「それでメイプル、見せたいものって……?」

 

「ちょっと待ってね……いくよ! 【見捧ぐ慈愛】!」

 

そう言うと、メイプルの体から赤いダメージエフェクトが弾ける。

それが消えると同時、メイプルを中心として半径十メートルの範囲の地面が薄っすらと輝きを放つ。

 

メイプルは背中からは真っ白い翼が伸びていて頭の上に白く輝く輪を浮かばせている、金髪の青い目を持った『天使』になっていた。

 

 

 

「「「「「「「「えっ……?」」」」」」」」

 

 

「私も最初はそうなったわ」

 

「……はっ、メイプルさん!」

「後ろからモンスターが来てますよ!」

 

「無理無理無理無理!! 早く逃げないとぉ!!」

 

 

 

開いた口が塞がらないといった感じだったが、モンスターがこっちに来ているのを感じ取り一瞬で現実に戻る俺。

しかし逃げるにはもう遅すぎた。なぜなら周りが既にモンスターに囲まれていたからだ。

 

「ぎゃぁぁぁあぁぁ!! お前ら起きろぉ!!」

 

『我が君【常闇】を使わないと出ていけない……って聞いてませんね……』

 

「ゼロくん落ち着いて、攻撃受けても大丈夫だから!」

 

 

「私が受けるわ……皆分かんないだろうし……」

 

「ぎゃぁぁあ」「【音吸収】いい加減落ち着け!」

 

 

はっ……早く逃げないとぉ……って、ギルドの皆がいるから大丈夫か……。

モンスターとこれだけ距離が離れてたら最悪逃げれるし……。

俺は一旦少し落ち着くと、今度はモンスターに突っ込んでいくイズさんを見る。

 

生産に全てのステータスを割いているイズさんがモンスターの攻撃をまともに受けたら耐えられるはずがないのだが……何故かHPバーは全くもって動いていなかった。

 

 

「は? どういうことだ?」

「何が起きてるんだ?」

 

 

「メイプルちゃんのスキルよ……この光るエリアの中にいるパーティーメンバー全員に常に【カバー】が働く……らしいわ」

 

「最初にHPを一定値もっていかれちゃうけどね」

 

 

 

「つまりここにいる全員がメイプルと同じ防御力になるってこと……?」

 

「それに僕やシャインでさらにバフもかけられるし……」

 

「それじゃ、メイプルさんがやられるまで」

「私達不死身ですか!?」

 

 

「でも装備を変えてるからVITの数値が結構減ってると思うんですが……」

 

 

「それなら大丈夫! 何も装備してなくてもVITは1000を超えてるから!」

 

 

「「ははっ……1000?」」

 

 

 

なんか俺の時とデジャヴを感じる。

やっぱ極振りだからな! 

……いずれユイやマイもこうなるのだろうか? 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日。ゲームにログインしたのはいいものの特にすることもなかった俺は、いつも通りギルドに直行する。

ギルドのドアを開けると、クロムさんとイズさんがいた。この二人いつもいるな。

 

「あらお疲れ様。レベルでも上げてきた帰り?」

 

 

「おぉゼロか。……そうだ、ちょっと聞きたいことがあるんだが」

「はい、どうしました?」

 

「俺って正直このギルドにいると思うか?」

 

「……はい?」

 

 

あぁ、この質問の意図が分かった。

確かにメイプルがこのギルドに存在する以上、同じ大盾使いという役割のクロムさんはメイプルの完全な劣化になっているのか。

メイプルと違って戦い慣れているだろうから経験はありそうだけど……ステータスが違いすぎるしな。

 

 

「たしかに今のクロムさんならいらないかもしれませんが……」

 

「結構酷いな!?」

 

 

「強い装備やスキルを探して、メイプルとの差別化点を作ればいいと思いますよ」

 

「私も同じ意見だわ」

 

 

俺がクロムさんにアドバイスをしていると、メイプルがギルドの扉を開けて入ってくる。

 

 

「噂をすればってね」

 

「何か話してたんですか?」

「うん、まあちょっとね」

 

 

「俺もメイプルみたいに強力なスキルを身につけたいと思ってな」

 

クロムさんはメイプルとは違ったスキルを身につけたいとさらに付け加える。

 

 

クロムさんは俺とメイプルに強力なスキルを手に入れるコツを聞いてきたが、2人共適当に探索していたら手に入ったというのがあまりにも多すぎたので、あまり参考にはならないだろう。

 

 

「うーん……今日はちょっと手伝えないですけど……そうだ! シロップを貸しますよ! ちょっとでも力になれれば……」

 

 

「いや……いいのか? 大事な装備だろ。俺がそのまま返さなかったら?」

「そんなことするんですか?」

 

 

「いや、俺はそんなことは絶対しない」

 

 

「じゃあ大丈夫です!」

 

 

クロムはそのあともメイプルにギルドメンバーでも大事なものは簡単に人に渡さない方がいいということを繰り返し言っていた。まるで保護者……。

まあ俺もクロムさんと同じく、大切なものは仲間でも渡さない方がいいというのは賛成だ。

というか、メイプルが簡単に他人を信用しすぎてる感じがする。メイプルと行動する時は俺がかわりに気をつけてあげよう……。

 

 

「あ、俺もコボル以外の影なら全員貸してあげますよ」

 

「ゼロもいいのか? でもムーンとかならまぁ奪おうと思っても奪えないだろうな……」

 

「何か合図を決めておけば、暗い場所ならどこでも出せるはずですよ……ムーンもそれでいいよね?」

 

『はい。我が君がよろしければ私もそれで問題ありません』

 

 

「そうか……メイプル、ゼロありがとうな」

 

「ギルドメンバーを助けるのがギルドマスターの務めですから!」

「俺は厄介払いができてうれしいです!」

 

 

俺とメイプルにお礼の言葉を伝えると、早速新しいスキルを見つけるためか場を収めるためかは分からないがそそくさとクロムさんはギルドを出ていった。

 

 

「いってらっしゃーい」

 

「メイプルはこのあとなんか予定がある感じ?」

 

「ちょーっと行きたい場所があって……詳しいことは言えないんだけど」

 

またなんか変なスキルとか装備とか見つけて帰ってきそうな予感がする。それも変なことをして。

 

 

「暇ならある素材を集めてきて欲しかったんだけど……そうもいかなそうね」

 

「ごめんなさい!」

「俺なら一応暇ですが……その素材ってモンスターの一部だったりします??」

 

「大丈夫よ、羊のモンスターを倒して毛をゲット出来ればいいから」

 

 

そんな簡単に言うが、俺にとっては生死に関わる。

ムーンとかがいればやらせれたのだが……生憎クロムさんにちょうど渡したところなのでそういうわけにもいかない。いるのはコボルだけだ。

しかし、こんな時でも断れないのがシャインにお人好しと言われる原因なのだろう……。

 

 

「……分かりました。どれくらいですか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「わぁぁぁぁぁあぁぁぁ!【暗殺者】ぁ!!」

 

 

 

俺は今絶賛羊の群れと相対しているところだ。数百体はいる羊が列を作って俺を追いかけてきている。

俺の方が圧倒的に足が早いので追いつかれることは無いが…追いかけられているっていうその事実がもう怖い!!

 

俺は全力で視覚と聴覚をシャットダウンさせてながら【虚絶の刀】で遠距離から倒したり、30本のナイフで一斉に攻撃して一網打尽にしたりしながらなんとか意識を保ちつつ順調に素材を集めていた。

てか今さらだけどこの羊毛一体何に使うんだろ?

 

 

「はぁ…疲れた……」

 

 

休憩中、俺はなんとなく自分のステータス画面を見る。そして驚愕の事実に気がつく。

 

 

「なんか影の数増えてね……?」

 

 

そう。【死霊魔術師(ネクロマンサー)】のスキル説明欄には影の上限の数と俺が従えている影の数が表示されるのだが、どうやらいつの間にか上限が増えていていつの間にか俺が影にしていたやつがいたようだ。

 

 

俺が把握している影はムーン率いる兵士と魔術師の奴らと、コボル率いるゴブリンの奴ら、そしてグリードだけだ。

確認してみると【影に潜む者】の時にムーン達が先に倒してくれていた、木のモンスターや犬・狼型のモンスター、猪型のモンスター等が影になっているよう。

 

 

そう、気づかないうちに影の数が約2倍ぐらいに増えて小さな軍団を作れるぐらいには増えていたようなのである。

確かにあの第二回イベントの氷の鳥を倒してから全くと言っていいほどモンスターを倒していなかったから、レベルが上がって空いていた影の枠が【影に潜む者】で倒した奴らで埋まったのだろう。

 

 

「って、今倒した羊も対象なの!?別にいらないんだけど…」

 

『いらない影をMPに変換することもできますよ』

 

「ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!!…そうなのか?」

 

『は、はい…ってもう実践してる!?』

 

 

ムーンのその言葉を聞いた俺はすぐに実行に移してみる。すると俺のMP…が増えたかどうかは分からないが、確かに表記されている影の数は減っていた。

…ってか、あれ?

 

 

「ムーンはクロムさんと一緒にいるはずなのになんで会話出来てるんだ?」

 

『いつも私が外に出なくても会話出来てますよね?それは別に我が君の近くにいる必要がある訳じゃないんですよ』

 

 

つまり俺はどこにいても、常にムーンに話しかけられる恐怖に怯え続けなきゃいけないのか…。

 

 

 

『それで私我が君に申し上げなければならないことがありまして……最近モンスターとはあまり戦ってないですよね?』

 

 

「?そうだけど?」

 

 

『戦わなければレベルを上げることはできません。前の暗殺者もモンスターではないので……つまり我が君は今他のプレイヤーに差をつけられているということになります』

 

 

「まぁそうなるな」

 

『ですのでこんなことはしたくありませんが…強くなってもらうためです…【影の交換】』

 

 

「…は?は??はぁぁぁぁ!!?

 

 

 

俺は何が起こったのか理解した時には、すでにムーンとの位置が交換されていたのだった。

 

 

スキル【影の交換】

 

位置を交換することが出来る。

30分後再使用可能。

 

影からも使用可能。

 

 

 

 

 

 

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