素早さ極振りにした怖がり少年はネクロマンサーになるようです。   作:名無しという名の者

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いつの間にかこんなに日にちが経ってた…





怖がり少年と第三回イベント

 

 

 

 

 

アンデッドのダンジョン攻略をしてから一週間。

あの後クロムさんはメイプルとは違った形の要塞へと変化していた。

メイプルは受けるダメージそもそもをカットすることで要塞化しているのだが、クロムさんは受けたダメージをそれを更に上回る回復で要塞化する、というなんとも面白いことになっていたのだ。

 

あ、あと何故かムーンはダンジョンを出たところに待ってくれていたので、きちんとお灸をすえておいた。

怒りはまだ収まっていないが……まぁ一件落着だろう。

 

 

 

そう、それでクロムさんと俺のことは解決なのだが……もうひとつ。もうひとつ事件は起こっていた。

それはギルドホームに戻ってきた時のことだ。

クロムさんがドアを開けると、中には楓の木全員が勢ぞろいしており、中央にはいつものメイプルと……超デカい大槌を片手づつ、軽々と持ちながら立っている双子、マイとユイがいた。

 

「あ、ゼロくん、クロムさん!ちょうどいい所で帰ってきた!」

 

 

「えーーっと……どういうこと?」

 

「俺もよく状況が呑み込めないんだが……メイプルちゃんパワーってことでいいか?」

 

「まぁ……そんなとこ」

 

 

 

もう俺はメイプルやメイプルの周りになにか起きても驚かない。てか驚けない。脳が理解を拒否するから。

 

 

「……多分俺の【影駭響震(えいがいきょうしん)】みたいな、STRが倍以上になるスキルでも取ってきたんだろ?」

 

「さっすがゼロくん、大正解だよ!」

 

 

 

なに、これ?極振りした人は全員倍化するステータスでも手に入れるのが普通なの??

5分の2がしっかり強い極振りのギルドとかおかしいでしょ。……まぁメイプルだしありえるか。うん。

 

 

 

話を聞くところによると、レベル上げのため毒竜周回をしていたらマイもユイもそれぞれ【侵略者】と【破壊王】というイカついスキルを取得したらしく、それによってSTR2倍、大槌も二個装備できるというトンデモ破壊者になっていた。しかもLv20というおまけ付き。

まぁメイプルのギルドだもんな。メイプルと一緒に行動してるんだもんな。

 

 

これによってただでさえ強かった……かどうかは分からないが、恐らく強かったであろう楓の木に更に3人分大型アップデートが入ることになったのだった。

 

 

 

 

 

そんなこともありつつ二日後。ちょっとしたメンテナンスが入り、新スキル【毛刈り】が追加された。

どうやらこのスキルで羊の毛を羊を倒さずとも手に入れられるようになり、その毛を使って作った装備を第三回イベントの時に着ると少し有利になるのだとか。カナデが話していた。

 

 

あと俺は少し気になり、この情報が出る前に羊の毛を集めるように俺に言っていたイズさんにこの事をすでに知ってたんですか?と聞いてみたこともあったが、その時はなんか笑いながらはぐらかされてしまった。あの人怖い。

 

 

そして、楓の木全員で羊の毛を集めていたのがつい昨日までの出来事だ。

今日は第三回イベントが始まる日ということで、一旦ギルドに全員が集まっている所である。

 

 

 

「もうイベントも三回目かー。楽しめるといいね、牛イベ!」

 

「牛イベ?」

 

 

「今回は牛を倒してベルを集めるって言うイベントでしょ?だから牛イベ!」

 

「ベルの数によってギルドごとに報酬が貰えるみたいだから、全員で協力して集めればいいと思うよ」

 

 

「やっぱり今回もモンスターを倒す系のイベントか……」

 

「そんなに落ち込むなって、お前は今回のイベント相性がいい方だろ?」

 

 

「この中で今回のイベントに向いてるのはゼロ、サリー、そして私だな。……あくまでステータス上の話だが」

 

 

「わたしとお姉ちゃんとメイプルさんは」

「足が遅いから見つけるのにも一苦労です」

 

「俺が頑張んなきゃなのかぁ……」

 

「はいはい、ちゅうもーく!みんなが頑張って集めてくれた羊の毛で作った装備、ようやく完成したから皆着てみてほしいの!」

 

 

そう言いながらイズさんは羊の毛で作られた、もこもことした洋服を順番に配る。俺の分もあるみたいだ。

俺も羊の毛集め頑張ったしな!

……って、イズさんこれさぁ……。

 

 

 

「可愛いー!!」

 

「うん、それに暖かい!」

 

「それはいいんだが……」

 

「なんで俺とシャインまでこの可愛い服なんですか!?」

 

「年頃の男の子にはちょっときついんですけど!?」

 

「その……なんというか……もう少しマシな装備にはならなかったのか……?」

 

「ならなかったの〜!でも、それでベルは普通よりドロップしやすくなるはずだから、ね?それにモコモコ装備のみんなが見たかったし…

 

 

「それはそうだが……」

「俺これで走り回るのか……」

「俺もこれで援護……」

 

 

 

シャインはまだいい方だろ。俺なんか前線で走り回るんだぞ!?…よし、見えないレベルの速度で走ろう。そうしよう。

 

 

「それにカナデもその新しい装備、とっても似合ってるわよ〜!」

 

「ありがとう!僕これ気に入ったよ」

 

 

「私達も」「イズさんのくれたハンマーで」

 

「「頑張って牛さん達をやっつけまくります!」」

 

 

「ゼロくんもシャインくんも、全然似合ってると思うよー」

 

「えー…それからかってる?」

「メイプルさんが言うならまぁ…いいのかな?」

 

「サリーも十分可愛いぞ」

「それを言うならカスミだってー」

 

「はー……やっぱり可愛いは正義よねー!」

 

 

「2人とも、レベル上げは順調?」

 

「はい!これからも姉妹二人で!」

「もっともっと強くなります!」

 

 

 

 

 

 

「みんな可愛くていいなぁ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『………』

 

「ムーンーー順調ーーー??」

 

『はい、順調でございますが……何故私がドロップアイテム集めを…』

 

 

「集めてくれたら許してあげるって約束でしょ!ほら集めた集めた!」

 

 

『くっ……承知いたしました我が君よ』

 

 

 

俺とシャイン、カナデ、そしてクロムさんの俺達男チームは開けた砂漠に来ていた。

見渡す限りの砂とサボテンと岩で、遠くには一応オアシスもある。

目的はもちろん牛のベル集めだ。

カナデは魔法使いにも関わらず頑張って牛を仕留めているし、シャインも超暑い砂漠に文句を言いながらもベルを集めている。クロムさんもしっかり牛達を誘導していた。

 

しかし俺はと言うと一人別行動で岩影に隠れながら、【虚絶の刀】で遠距離からナイフを投げているだけであり、実際に集めているのはムーン一人であった。俺の周りだけ夜なのはもはやいつもである。

 

これが【死霊魔術師(ネクロマンサー)】というスキルを持っているものの特権!

故にこんなことをしていても許されるのだ!

 

 

 

『しかし我が君、良いのですか?』

 

「何がだ?」

 

 

『シャイン様やカナデ様は自力で集められているのに、我が君は何もしないでいて』

 

「くっ……確かに」

 

 

確かに皆が頑張って集めている中、俺だけサボっているのは周りから見たら不公平だろうな。少なくとももし俺が周りの人だったら不公平に感じる。

 

 

 

「……やるかぁ…」

 

『流石我が君!』

 

 

 

絶対見たくないけど。見たくないけど!

とりあえずいつも通り【気配察知】を使いながら、俺は自分の出せる最高速度を出して辺りを見て回る。

三人のことも見てみたが、クロムさんがしっかり追い込んだ牛に魔法を的確に打ち込んで見事な連携プレイをしていた。流石だな。

 

 

 

「……ん?…あぁぁぁぁあぁ!急に姿が見えるのマジで心臓に悪いからやめろ!」

 

 

 

感心しながら走っていると唐突に前から何かが走ってくるのが見えて、危うくそこに突っ込みかける。

もちろん牛の集団だ。もし突っ込んでいたらと思うと……考えたくもないな。

 

 

「【隠密】【不撓不屈の支配者】」

 

 

俺は牛の集団に速度を合わせながらゆっくりと歩く。そして不撓不屈の支配者を手から出しながらグルっと集団を一周してひとまとめにする。

 

牛達は何が起きたのか分からず、「?」という顔をしながら糸に捕まっていた。

 

 

「【暗殺者】【虚絶の刀】…【綾】」

 

 

 

次の瞬間、俺はナイフを三十本生成して容赦なく牛達に猛攻撃をする。

どうやらHPはかなり低めに設定されているらしく、全くSTRが無い俺でも全員を一撃で倒すことが出来た。

次々とドロップする大量のベル。これなら誰にも文句は言われないだろう。

 

 

『流石です、我が君よ』

 

のぉおおぉぉぉ!!!

…マジでビックリするからやめて!!!」

 

 

 

急に出てきたムーンのせいで寿命が短くなったところで、俺に誰かからメッセージが届く。

えぇっと…シャインとカナデからだ。

 

 

《お前なら大丈夫だと思うが……あんまり無理して集めなくてもいいからな?これのせいでお前が病院送りにでもなったら困るのは俺だし》

 

 

《声が聞こえてきたけど大丈夫?僕になにか手伝えることがあったらなんでも言ってよ》

 

 

『我が君、顔がにやけていますよ?』

 

 

……俺、このギルドに入れて良かった。

シャインの心配は別に要らないけど。

さて、もうひと頑張りしますか!

 

 

 

 

『我が君、前から来ていますよ』

 

「……え?」

 

そう言われて前を見てみると、猛突進しながらこっちへと向かってくる大量の牛の姿が。

 

 

 

「無理無理!!やっぱり帰るぅ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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