素早さ極振りにした怖がり少年はネクロマンサーになるようです。 作:名無しという名の者
時間経つの早くないっすか……??
「なぁ、最近思うんだが……」
「どうした?ただでさえまともなバランス調整ができない無能運営とか言われてるのに、さらになんかするつもりか?」
「相当効いてるみたいだな、こりゃ」
「注目度の非常に高いプレイヤーとしてまずメイプルが真っ先に上がると思うんだが…俺は彼女よりも、ゼロの方がバランスがおかしい気がするんだ」
「所詮足が早いだけだろ?メイプルみたいに全ての攻撃を受けられる訳でもないしそこまでの脅威じゃない」
「足が異様に早いだけなら良かったんだが…誰かさんが作った【
「作って悪かったな!」
「でも調整ならこの前したぞ?【
「調整前も後もあまり変わっていないのが現状だ。硬直は【
「だが、メイプルやゼロのようなスタイルに憧れてゲームを始めてくれるプレイヤーもいる訳だし…」
「だからちょっとだけ。もう少しだけ弱体化しないか?」
「えー…また仕事増えるの嫌なんですけど」
「じゃあ今度何か奢れよ?」
「はーい!俺叙〇苑行きたい!」
「もうそれでいいよ……」
第三回イベントの個人ランキング上位を目指すために朝早くからログインした俺は、自分のステータスを見てみて仰天する。
また俺のスキルが弱体化されてる……だと?
俺は急いでどんな内容に変わったのか確認する。
頼む!原型はとどめていてくれ!
色々無茶苦茶なことやってるのは俺も自覚してるから許してくれ!
「二つだけか…だけでもないけど。【
なんだろう。嫌な予感がする。
どうやら確認したところによると、それぞれ回数制限が付いたみたいだ。元々あった【不撓不屈の支配者】はさらにキツくなってる。
【
【不撓不屈の支配者】は一日に五回まで。つまり50本まで出せるということになる。
「とりあえず大幅なやつじゃなくて良かったぁ!!」
よし、そんなに致命的な弱体化じゃなかったから一安心だ。
それじゃ……またドロップアイテム集めといきますか。
「おおお起きろ!」
『はい』『……』『キュイ!』
……この数のモンスター全員が俺の配下だなんて信じたくないな。暗殺者クエストの時の奴が増えたせいでさらに俺の軍団が大きくなってる。
「おおおお前ら!牛を見つけ次第仕留めてベルを集めてくれ!」
『承知しました、我が君よ』
『……』『キュキュ!』
『ウオー』
「はー疲れたぁぁぁ!!」
俺は楓の木の机に突っ伏しながらそう言う。
第三回イベントが終わったのだ。今振り返ってみるとほとんど作業ゲーである。
「はぁ…私も……」
「あぁ、私もだ…」
「でも、皆のおかげで今回のイベントの第九位になれたみたいだよ!」
「私達はあんまり活躍できませんでしたが」
「精一杯頑張りました!」
「特にゼロのおかげだろうね」
「流石AGI極振りと言ったところだな。相性は悪かったみたいが」
「本来なら相性はいいはずなんだけど…」
確かに俺の貢献は大きいだろう。自負している。
だが、実を言うと正直俺はあんまりベルを集められてはいない。俺の集めたベルの約六割は影達の集めたものだ。
確かに足が早いおかげで効率は超良かったが、いかんせんモンスターを倒していると気分が悪くなってくるせいで結局効率の面においてはプラマイゼロだ。
それでも上位に入れたんだから別に文句はないんだけどね。…まぁこのゲームをまた二日間ぐらいログインしなくなることにはなりそうだけど。
「メイプルは今回はあんまりだったな」
「あんまり気が乗らなくて……」
「まあ、仕方ない。俺らみたいなのには厳しいイベントだったしな」
クロムさんの言うようにAGIの低いプレイヤーには厳しいイベントだっただろう。特にメイプルやマイやユイのような極振りのプレイヤーにとっては。
「でも、十人しかいないギルドでここまで記録を残せたのは十分凄いことだと思うよ」
カナデの言う通りだ。他のギルドは人数が馬鹿みたいに多いが、小規模ギルドにしてはよくやったほうだろう。
「ギルドホームに報酬が届いてるわよ」
そう言ってイズさんは報酬を取り出す。
それは壁に取り付けることの出来る、牛の頭部の剥製だった。
効果は【楓の木】に所属するメンバーの【STR】を3%上昇させるというものだった。
「積み重ねが効いてくるって訳だ」
「ああ、そうだな」
「特にマイやユイにはありがたいんじゃない?」
「上昇するステータスの数も相当大きいと思うよ」
「俺とメイプルにはなんの意味もないけどな」
「0には何かけても0だからね!」
「ふっふっふ……意味あるんだなぁ、これが!」
……ん?その反応は……??
「メイプル……まさかまた何かした??」
サリーが恐る恐るそう聞く。
全員の顔を見てみると、マイとユイ以外何かを悟ったような顔をしていた。俺も多分そんな顔になっているだろう。
逆にマイとユイは目をきらきらとさせながら、メイプルがどんなスキルを手に入れたのかワクワクしていた。二人は純粋で羨ましい…。
「それじゃ、追加された第三層に行こうー!」
「「【ダブルスタンプ】!」」
第三層に行くためのダンジョンに早速やってきた俺達。目の前で繰り広げられているのはマイとユイの蹂躙である。
二人とも足が遅いとはいえ、その欠点さえ目を瞑ればどんな敵であろうと基本はワンパンで倒せるというバケモノであることを再確認させられた。
そして今回はバフをかけられるシャインやカナデ、何かあっても守ってくれるメイプルやクロムさんもいるおかげでその欠点でさえも無くなっていた。
あれ?このギルドもしかしなくとも最強では?
というか俺も一応魔法使いなんだし、【
サリーから言われた【体術】とかもまだだし。
そんなこんなで俺の出る幕も特になく、このダンジョンのボスがいる部屋までたどり着いたのだった。
「よし、ちゃっちゃと終わらせちまおう」
「あぁ、そうだな」
カスミがそう言いながら部屋への扉を開けると、俺達もぞろぞろと中へ入る。
頼む…超簡単なボスであってくれ……!
もう今日のモンスター許容量はとっくに限界に達してるから!
扉が閉まると同時に、真ん中にボスが現れる。
ボスは木の見た目をした人型のモンスターだった。
「……うん、無理」
「今日はやけに冷静だね」
「まあずっとこのゲームやってるからな。流石に来ることが分かってたら俺も驚かなくなってきた」
とはいいつつも、内心結構焦っているのは内緒だ。叫ぶのを我慢しているだけマシだと思って欲しい。
「それじゃメイプル…どうぞ」
「任せて!」
サリーに言われてボスの前へとあゆみ始めるメイプル。俺達は後ろで観戦だ。
「それじゃまずは……【捕食者】【滲み出る混沌】!」
「「「「「「あ…」」」」」」
「メイプルさん」「すごいです!」
「ぎゃぁぁああぁ!!?」
メイプルがスキル名を言った途端、"それ"は現れた。俺が心構えが出来ていなかったのに。
それは優しく言うと、超気持ち悪い芋虫のような見た目をした生き物ではないナニカだった。
もちろんそんなのを見て俺が叫ばないはずはなく、きちんと【平常心】を発動したのだった。
「わぁぁぁあぁ!!!無r」「【音吸収】」
「で…あれはどうやったら手に入るんだ?」
「さぁ…僕らには想像もつかないことをしたんだろうけど…」
「いつ見ても飽きないな、メイプルは」
「そういう感じかぁ…そっかぁ……」
「味方ならいいわ…味方なら」
「メイプルさんが他のギルドにいたらと思うと…考えたくもないですね」
「トドメは…【暴虐】!」
するとメイプルは変形した盾に包み込まれ、ドンドンと大きくなっていく。
そして成長が止まると、その卵の殻は破られる。
中から出てきたのは…手が増えて体がでかくなり、さらに生々しい見た目となったさっきのナニカだった。
「のおぉぉぉおぉお!!!」
俺の中でぷつんと何かが切れる音がする。
しかし【平常心】というスキルがある以上、その何かが切れてもすぐにくっついてしまうためこの地獄からは抜け出すことは出来ない。
ダンジョンの中だからログアウトも出来ない。
……よし、詰んだ。終活始めるか。
絶望しながら俺は違和感に気づく。
いつもならこの時点でシャイン以外は俺のことを心配してくれるのだが、今日は全くそれがないのだ。
周りは空いた口が塞がらないようで、呆然としていた。いつもならメイプルのことをキラキラした目で見ているマイとユイでさえ、ぽかーんとしていた。
そう、この場にまともに思考できている人はメイプル以外いなかった。
そしてその肝心のメイプルは今、かなりのサイズのボスと取っ組み合いをしていた。火を吹いたり…かじりついたりして。
もちろんそんなのにボスが耐えられるはずもなく、ボスは光の粒子を出しながら消えていくのであった。
そしてその化け物はこっちへと近づいてくる。
……ん?"近づいて"きている……?
「来ないでぇぇぇぇ!あっ……」
限界に達した俺の意識は、自我を保ったままシャットダウンしたのだった。
「ゼロ!?」
「あぁ、いつも通りだから大丈夫ですよ」
「もう私はゼロが気絶しても、メイプルが変なスキルを手に入れても驚かない」