素早さ極振りにした怖がり少年はネクロマンサーになるようです。 作:名無しという名の者
すみません、リアルが忙しくて…
爆睡している俺の耳に、ピンポーンと家のチャイムが鳴る音が響く。
「ん…?別に通販とか頼んで無いはずだけど…」
俺は眠い目をこすりながらおもむろに起き上がり、階段を降りて玄関まで急いでいく。
最近はNWOをやっていないおかげでようやく現実の足の早さ…というか遅さに慣れてきた。ここに関してはゲーム内の方が快適だな。ここに関しては。
俺は玄関の扉を開ける。
「はーい、どちら様で……って、メイ…じゃない、楓か…」
「零士くん…ほんっとうにごめん!大丈夫?病院とか行ってきた?どこかおかしくなってたりしない?」
「あー……とりあえず家に入って」
どうして楓がここにいるかは俺でもわかる。先日のバケモノの件だろう。
俺はあの日から一度もゲーム内にログインすることは愚か、学校にすら行ってなかった。勇輝にはL○NEできちんと連絡済みなので特に問題は無いかと思っていたが…そうか、楓とかは心配になるよな。こうさせた本人だし。
「粗茶ですが、どうぞ」
「ふー…ちょっと落ち着いた」
とりあえず楓にはソファに座ってもらい、お茶を出す俺。
「それで、心臓麻痺になってたりしないよね…?」
「だったら今頃俺のお葬式が開かれてると思うよ。特に体に別状は無いから心配すんな!ただ単に俺が個人的に精神に受けたダメージを癒すため休んでただけだから」
「それ十分大丈夫じゃないよ!?」
「てか、なんで俺の家が分かったんだ?」
「勇輝くんに教えてもらったの!皆零士くんが戻ってくるのを待ってるし、私が精神的苦痛を与えちゃったから…ここはギルドマスターとして直々に言いに行かないとな、って」
後者の理由の場合ギルドマスター関係ないけどな。
「もしかしてまだ恨んでたりしてる…?」
「直後の時は分かんないけど、今はもう流石に恨んでないよ。…今後は俺のいない所で使用して欲しいが」
「大丈夫!今度からきちんと考えて使うから!うちの戦力が下がっちゃうからね」
「それならまぁ……」
「それじゃ、またNWOやってくれるよね!?ね!?!」
「いやそれは……」
ちょっと考えさせて欲しい、と言おうとする俺の目に写るのはキラキラした目でこっちを見てくるかえでの姿。
そんな顔されたらYesというしかないじゃねぇか。
「……はぁ。分かったやる、やるよ」
「ほんと!?やったぁぁ!!これで第四回イベントも安心だね!」
俺の答えに対して両手を上げてバンザーイする楓。
そうだ、第四回イベントがあるんだった……。すっかり忘れてた。
あれ?それじゃ早くサリ…理沙に言われた【体術】とか【跳躍】を早く取らないとじゃ?
「…よし。楓、今すぐ家に帰って。またNWOの中で会おう」
「おーけー零士くん!」
「あ、そうだ」
「ん、どうしたの?」
玄関で靴を履き、扉を開けようとしている楓に声をかける俺。
「前から言おうと思ってたんだけど、現実でもゲームでも"くん"は付けないで呼び捨てでいいよ」
「え?…そっか……それじゃまたね、零士!」
「じゃあな、楓」
楓と別れた後速攻でNWOにログインした俺は、メイプルがログインするまで新しい第三層の街並みを見ていた。
第二層とはうってかわって様々な機械で溢れかえっており、空飛ぶ機械や何かを作っている機械、重そうな荷物を軽々と持ち上げている機械などが沢山いた。
イズさんはここに来た時相当興奮していたんだろうな。簡単に想像できる。
というか、ここの層なら敵が機械しかいない説あるんじゃないか!?
そしたら俺はついに気兼ねなくNWOをプレイできるようになるということになるぞ!?
さすが運営さん、俺の事を考えて……ありがてぇ!!
「ごめーん待ったよねー!?」
そんなことを考えていると、メイプルな声が聞こえてくる。いつの間にかログインしていたようだ。
「よしメイプル!早速スキルを手に入れに行くぞ!」
「………」
「ゼロどう?快適でしょ?」
呆然としながら首を縦に振る。
そう俺は今、空を飛んでいるのだ。メイプルに乗りながら。
何を言っているか分からないだろうが俺も分からない。
メイプルと合流した俺は早速、前にサリーに勧められたスキル【跳躍】と【体術】を入手しに開けた場所に行こうとしたのだが…。
俺から話を聞いたメイプルは、「それならゼロはシロップに乗れないだろうし…」と言い、唐突に「【機械神】【全武装展開】!」と叫んだのだ。
問題はここから。メイプルの声に呼応するようにメイプルの身につけていた黒い装備が変形し、ガシャガシャと大きな機械音を鳴らしながら銃が現れ砲身が現れ…気がつけばメイプル自身が1つのロボットとなっていたのだ。
ガ〇ダムロボかな?見たことないけど。
困惑しているのもつかの間、メイプルはその銃の生えた腕で俺の事をひょいと持ち上げ、肩であろう金属部分に俺の事を乗せて「しゅっぱーーーーつ!!」と言うと、足裏から大量の火を吹き出して空中飛行を始めたのだった。
「うーん、ナイス戦力増強!」
もうメイプルに何が起きても驚かないと心に誓っていた俺は、諦めの境地に入りながらフォローする。
うん、シロップ以外の飛行手段が手に入ってよかったね!
「あ、モンスt」
「のぉぉぉぉおぉぉぉ!!!!!!!」
メイプルの新スキルを見て呆然としていた俺は、メイプルのその言葉によって現実に引き戻される。
は、早くそのモンスターを〇さないと!!
そう思いながら【気配察知】を使い、すぐに【暗殺者】を使おうとする俺の目に、衝撃の光景が飛び込んでくる。目は開けてないけど。
メイプルが「【攻撃開始】!」と言うと、俺の足元にあったメイプルの肩付近にあった全ての砲台が、一斉に鳥型モンスターに標準を向け始め、攻撃を始めたのだ。
当然ただのモンスターが耐えられる攻撃なわけがなく、一瞬にして蜂の巣にされ光の粒子となる鳥。
「ふぅ……ゼロ大丈夫?」
そんな光景をあたかも普通の事のように処理し、心配そうに俺に振り返るメイプル。
今の俺には、生き物に対する恐怖心よりメイプルに対する恐怖心の方が勝っていた。
え、何この子怖い。モンスターが絡んで変なことをし始める俺より怖い。一体どっちがモンスターなんだ?
「あ、あぁ大丈夫…慣れたもんよ」
俺は苦笑いしながら返事をする。
うん、暴虐以外の攻撃手段が手に入ってよかったね!
処理の限界に達した俺は、メイプルの新スキルをただ褒めることしか出来なかった。