素早さ極振りにした怖がり少年はネクロマンサーになるようです。   作:名無しという名の者

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怖がり少年と味方強化

 

 

 

 

 

 

 

「「疲れたぁぁぁぁ!!!」」

 

 

ギルドの椅子に腰をかけ、机に突っ伏しながら俺とメイプルはそう心の声を漏らす。

あのもう驚く感情すら湧き出てこないくらい衝撃が強かった新スキルを見た後、俺達はひたすらモンスターと戦ったのだ。

ただただモンスターを倒すだけなら全く問題は…いや全然あるんだけど。今回の問題はそこじゃない。

 

サリーから言われた【体術I】と【跳躍】のスキルの獲得条件が俺にはまぁ鬼畜な条件だったのだ。

【体術I】は敵の攻撃をスレスレで避け、その後敵を倒すことで入手可能。

【跳躍】は敵の攻撃をジャンプして避け、その後敵を倒すことで入手可能。

 

そう、モンスターをわざわざ俺の近くに寄せなければ獲得が不可能なのだ。

避けるぐらいAGI極振りなんだからわけないだろと思うかもしれないが、倒してもいい敵がこっちに来るのと倒しちゃダメな敵がこっち来るのでは訳が違う。

 

いつでも倒せるというのが心の支えとなっているのに、避けるまでは倒せないのでは心臓がいくつあっても足りない。

敵の攻撃を避けるぐらい余裕なのは頭ではわかっているのだが、どうしても倒せない敵が近くに来ると拒絶してしまう。

 

そうそう、第三層の敵は機械だから俺が無双できるかもとか考えていた訳だが、出てきたモンスターは機械は機械でも生き物みの強いモンスターだったため、まだまだ俺の災難は続きそうだ。

今回こそ心置き無くゲーム出来ると思ってたのに…

 

 

そんな事情もあってメイプルが俺に合いそうな敵をわざわざ持ってきて、恐怖であちこちを走り回る俺の事をなんども鼓舞して、ようやくスキルを手にしたのが始めて3時間が経った頃。

 

 

そんなことがあり俺は精神的に、メイプルは物理的に疲労困憊していたのだった。

 

 

「「戻ってきました!」」

「って、メイプルとゼロ…何してるの?」

 

「ゼロが生き物の見すぎで疲れてるのはあらかた想像が付くけど…なんでメイプルさんまで?」

 

「マイちゃん、ユイちゃん!それにサリーとシャインも!皆聞いてよぉ〜!」

「も…もう無理…」

 

 

 

 

「あぁ〜…それはそのスキルを勧めた私も悪いかも、獲得条件すっかり忘れてた…」

「いや、ゼロが異常すぎるだけだから」

 

「メイプルさん、ゼロさん」

「元気だしてください!」

 

 

 

「あ、そうだ!みんなで空中散歩でもしない?」

 

「いいけど…メイプル疲れてるんじゃなかったの?」

「それとこれは別!どう?行かない?」

 

 

「確かに最近色々頑張ってますし、たまには気分転換もありですね」

 

「うん、いいよ」「「私たちも行きますっ!」」

 

「空中散歩ってまさか…」

「え?シロップに乗るに決まって…はっ!」

 

「ぎゃぁぁぁぁあぁぁぁ!!!!」

 

 

 

「ゼロさん!?」「大丈夫ですか!?」

「あー、これは気絶コースだね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

涼しい風を全身に受けながら、俺の意識は段々と回復していく。

この感覚はいつもの気絶だな。ここまで来るともはや実家のような安心感さえ感じる。

 

「あ、ゼロ起きたみたい!」

「おーいゼロ!お前もこっちに来いよ!」

 

 

俺は体を起き上がらせる。えーっと空中散歩の話をしてて…それでシロップの話を聞いて気絶してたのか。あん時は精神的に限界だったから気絶してしまうのも仕方ない。

当たりを見回してみるといつの間にか俺は湖まで連れてこられていたようだ。それもご丁寧に砂場のパラソルの下で。

…どうやってここまで連れてこられたのかは考えておかないようにしておこう。

 

湖の方を見ると、この前イズさんから貰った水着装備を着たメイプル、シャイン、マイとユイが水遊びをしていた。よっしゃ、これなら俺でも楽しめるぞ!

 

俺も速攻で水着装備に着替えて湖の中に入り、少しスピードを出して水を全員に掛けると、その水は全員に見事にヒットした。

 

「やったな!お返しだー」「おりゃおりゃ!」

 

「私達も!」「全力で!!」

 

次の瞬間、目の前にはとてつもなく大きな波が発生していた。え?俺そんなに悪いことしたっけ?

そ、そうだメイプル!こういう時こそVIT極振りの力を!と思いメイプルの方を見てみるが…当の本人は開いた口が塞がらないと言った具合でただただ立ち尽くしていた。後ろに見えるシャインも同様。

あ、これ避けるの無理だ。

 

 

 

 

「「「ぷはぁ!」」」

「ごめんなさい…」「次からは気をつけます…」

 

「全然大丈夫だよー」「STR極振り舐めてた…」

 

 

「あれ?そういえばサリーは?」

「サリーなら…あ!ちょうど帰ってきた!」

 

「ただいまー、ゼロ目を覚ましたんだね」

 

「PvPはどうなりました?」

「上手く帰ってもらったよー、それより、私も水遊び混ぜて!」

 

サリーはそう言い、水着装備に着替えて湖の中に入ってくると目の前にいたマイとユイに水を掛ける。

 

「あっ」「サリー!」「早く逃げて!」

「え?なんでそんなこt…」

 

サリーはマイとユイが目をキラキラさせながらこっちを見ていることに気がつく。あぁ…これは…

 

「サリーさん!」「やりましたね!」

 

次の瞬間、サリーとマイ&ユイの間にはとてつもなくデカい波が出来ているのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ある程度水遊びを楽しんだ俺達は、浜辺に座りながら釣りをしていた。

 

 

「そう言えば、メイプルとゼロは強くなったユイとマイが戦ってる所を見たことないんだっけ?おっ…またかかった!」

 

「そうだよ(そうだな)。もう対抗戦への準備は万端な感じ?」

 

そういえば、今現在マイとユイはサリーと言う第2の師匠によって訓練場で毎日特訓されているとメイプルが言っていたな。

メイプルには同行させた人間の才能を謎のパワーによって開花させる力があるが、サリーにはその開花した才能を更に伸ばす力がある。

その2つの力の援助を受けた二人は、まさに桁違いの強さへと変化しているであろう。

そして今日は特別ゲストとしてシャインも特訓に参加していたようだが…

 

今の二人はメイプルとサリーの特殊さを薄めて混ぜ合わせたような能力で、限られた場面において全てを叩き潰す理不尽となることが出来る…とシャインが語っていた。

 

 

 

「二人の戦闘とか見てみる?ちょっと人目につかない所まで行ってさ」

「「私達も見せたいです!」」

 

「じゃあ、人の少ない森にでも行ってみようか。ダンジョンのある方とは逆の方向に行けば人も少ないかな?」

 

「いいと思う」

「うん、そうだね」

 

五人はシロップの背に乗ると、ふわふわと飛んで人のいない森の奥へと向かった。

俺はどうしてるかって?一人虚しくその隣を空中ウォークだよ。

 

 

 

 

 

「よし、とうちゃーく!」

 

俺達は森の中にある少し開けた場所に降りる。

そこは二人が大槌を振りまわせるだけの広さがあった。

 

 

「じゃあ、私達は少し離れて見てよう」

「そうだねー」「一体どれだけ強いのか…」

「マジで圧巻だよ」

 

しばらく待つと、モンスターがあちこちの茂みから現れる。

 

 

「あれ?珍しくゼロが叫ばない」

「【音吸収】する準備してたのに…」

「ふっふっふー!」

 

俺だって常に成長している。心の準備をすればモンスターが現れても叫ばないことなど朝飯前なのだ!

まあ【気配察知】を使わなきゃいけないんだけど。

 

そんなことを考えつつユイとマイの方を見てみると、スキルを使うことなく両手の武器をのびのびと振るっていた。当たれば即死の四本の大槌が容赦なくモンスターに迫っていく。

 

モンスターは素早い動きでユイの一撃目を避けるが、それを見越したマイの一撃を胴体に受けて爆発四散した。

 

マイに隙が出来ればユイが隙を埋める。

大槌はリーチがありフォローに適しているし、サリーがコツを教えたことにより、元々息のあっていた二人の連携はよりよいものとなっている。

二人の場合はダメージを受けてなお接近してくるモンスターなどいない。

まさに、やられる前にやれを体現していた。

 

 

「すっごい攻撃力だねー……」

「なにあの化け物」

 

 

「メイプルの防御力もあんな感じに見られてるんだよ」

「ゼロのスピードもね」

 

「おー……そっか」「そんなもんかねぇ」

 

 

 

「よし!」「倒し終わりました!」

 

「メイプルとゼロに二人の成長も見せれたし…」

「ちょっと待って」

 

 

「シャイン、どうしたの?」

「実は俺も見せたいものがあるんだ…」

 

 

 

 

 

 

 

シャインがさっきまでマイとユイが立っていた位置にたどり着くと、深呼吸をする。

 

「シャインの見せたいものってまさか…」

「新しいスキル?」

「メイプルみたいに変な方向の強化が入らなきゃいいんだけど…」

「ドキドキ!」「ワクワク!」

 

 

しばらく経つと、またしても茂みからモンスターが現れる。それを見たシャインは、右手を腰に伸ばす。

次の瞬間、シャインが手に持っていたのは…。

 

 

「「「銃!?!!!?」」」

 

 

天使メイプルが身につけている装備のように、白を基調として所々金色の装飾が付けられている銃だった。

このゲームに銃なんて…あったわ。隣のメイプルがバリバリどデカいの持ってたわ。

でもあれはどちらかというと巨大ロボ感があったが…こっちは完全に本物の銃とそっくりだ。

てか、そもそも銃なんてあいつ扱えたか?そもそも当てれなきゃ意味が無いし、しかも反動が凄いらしいぞ?どうするつもりなんだ?

 

メイプルとサリー、マイとユイの方を見ても、皆何が何だかという感じだった。

 

疑問だらけの俺達を後目に、シャインは向かってくるモンスターに銃口を向けると、銃の持ち手の上の方にある引き金とは違うトリガー?のようなものを押し込む。

するとカチン、という金属音が辺りに響く。

次の瞬間、何故かシャインに向かっていたはずのモンスターは立ち尽くしていた。

 

バン!ドカーーン!!!

 

 

次に俺達の耳に飛び込んできたのは、銃の発射された音と爆発音だった。

よく【気配察知】を使って感じ取ってみると、シャインに狙われていた一体のモンスターは爆発四散していた。

 

カチッ、バン、ドカーーン!

カチッ、バン、ドカーーン!

カチッ、バン、ドカーーン!

 

 

この3つの音が、順番に何度も聞こえてくる。

気がつくと、シャインを囲んでいたモンスターは全滅していたのであった。

 

「ふぅ〜、練習したかいがあった」

 

「ちょっとちょっと!?」

「色々聞きたいことがあるんだけど!?」

 

「シャインさん」「凄いです!」

 

 

 

 

 

シャイン曰く。

この銃自体はイズさんに作ってもらったらしい。

こんな見た目をしているが、一応ゲーム内的には銃の形をした杖という扱いになっているらしい。

まあカナデの杖もルービックキューブだしな。今に始まったことじゃない。

 

「みんなを驚かせたくてずっと黙ってたんです…要求される素材の収集が予想以上に大変で、気がついたら第四回イベント直前になっちゃったけどね」

 

 

「でも、それじゃどうやって弾を発射してるの?」

 

「前の第二回イベントのスキル選択の時、俺は【魔法設置】を取ったよね?」

 

 

【魔法設置】

任意の場所に任意の魔法を設置、任意のタイミングで発動することができる。最大10箇所まで。

設置した魔法は本来使用するMPの2倍を使うことで何度でも使うことが出来る。

 

 

「説明が分かりづらいな…」

「多分俺から説明した方が早いと思う。俺も詳しくは知らないんだけど、銃にはハンマーっていうまあ安全装置みたいなやつ?それを外す動作と、引き金を引いて弾を打ち出すっていう二つの動作があるらしいんだ」

 

 

シャインはまずその安全装置を外す時に【ノイズ】を発生させるように、ハンマー部分に【魔法設置】をしたらしい。

これで発射する前に音が聞こえる範囲にいる全ての敵の動きが一瞬止まるのだとか。

そして銃の中には弾がセットされている後ろ側に【爆発】を【魔法設置】しておき、それが引き金が引かれた瞬間に発動するようにしておく。

するとあら簡単、安全装置を解除すると敵の動きが止まり、隙だらけの敵に発砲することが出来る。

 

 

「しかも使っている弾はイズさんの爆弾を小型化改良して作ってもらった、敵に触れた瞬間に爆発する銃弾!火力もバッチリ!」

 

「でも、最大10箇所までってことは最高でも5回しか撃てないんじゃ?」

 

「これがこのスキル説明の分かりづらいところなんだよね〜。【魔法設置】した魔法が使われたら、勝手に魔法設置が無くなるのはその通りなんだけど、それはそこに【魔法設置】した魔法のストックが0になった時の話」

 

 

「…?」「一体どういうことですか?」

 

 

「【魔法設置】した魔法は、同じ魔法ならMPを支払うだけで何回もストックできるんだ。つまり、この銃にはハンマーを引いた時の【ノイズ】を発生させる【魔法設置】と、引き金を引いた時の【爆発】を発生させる【魔法設置】。この二つしか設置されてないんだけど、その二つの魔法はそれぞれ大体400回ぐらいストックされてる」

 

 

 

「それってつまり…」

「何回も撃ち放題ってことですか!?」

 

「設置した時にMPは使うから実戦時には影響がない…」

「しかも弾がイズさん特製だから、爆発以外の弾も作れる…」

 

「凄い!凄いよシャイン!これで一段と頼もしくなっちゃった!」

 

 

「まぁ六発ごとにリロードしなきゃだし、敵が止まってるからと言って必ず当てれるとは限らないんだけど…」

 

 

…あれ?やっぱりウチのギルド強くね??

 

ある程度シャインの新しい攻撃方法について話し合った俺達は、シロップに乗って楓の木に帰ることにした。…もちろん俺は歩きだ。

 

 

 

 

 

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