素早さ極振りにした怖がり少年はネクロマンサーになるようです。 作:名無しという名の者
投稿してる時間不健康すぎるなこれ
「それでは、これから第四回イベントについて詳細を発表するドラ!」
楓の木のギルドホームの中。俺達はそれぞれ席につきながら、机の上に現れたホログラムのドラぞうの言葉を聞いている所だ。
ドラぞうの言葉に、俺達はおぉ〜と拍手をする。
「今回もこの前の第二回イベント同様、時間加速があるドラ!期間は5日間、途中参加や中断は出来ないようになってるから気をつけるドラ!」
「5日間か…ちょっと短くなったんだ」
そう思わず漏らすメイプルのことなどお構い無しに、ドラぞうはどんどん第四回イベントについて説明を続けていく。
今回のイベントはギルドごとに配備された自軍オーブの防衛、また他軍オーブの奪取がメインとなっており、ギルド内の人数に応じてそれぞれ規模が大中小に分けられて報酬に差があるらしい。
自軍オーブが自軍にある場合、六時間ごとに1ポイント、小規模ギルドの場合は2ポイント貰える。
他軍オーブを自軍に持ち帰り、三時間防衛することで自軍に2ポイント、また奪われたギルドがマイナス1ポイントされる。
他軍オーブはポイント処理が終わり次第、元の位置に戻され、防衛時間三時間以内に奪還された場合はポイントの増加や減少はなしとなるのだとか。
話をまとめてみると、大体こういうことらしい。
「続いてデスペナルティについてドラ!」
ドラぞうがそう話すと、目の前に画面が現れる。
【デスペナルティ】
一回。ステータス5%減。
二回。さらにステータス10%減。
三回。さらにステータス15%減。
四回。さらにステータス20%減。
五回。リタイア。
プレイヤーが全滅したギルドからはオーブが発生しなくなる。
同じギルドから奪えるオーブは一日に1つ。
「5デスでリタイアになるのかぁ」
「私達のような小規模ギルドはなるべくデスは避けたいものだ」
「以上で第四回イベントについての説明を終了するドラ!それじゃ皆、頑張ってね!ガオ〜!!」
「この感じだと取り敢えず防衛には人数を割きたいけど…これはかなりキツいなぁ……」
「どこが大変そう?」
「まず第一に攻撃に出られる人数が足りない。防衛も同じ……後はまあ、少人数だからどうしても疲労が溜まるよね。ひっきりなしに誰かが攻めてくるだろうし、夜襲もある」
「今回はずっと戦闘になるからな」
「おいおい、ちょっと待てよ?」
「どうしたゼロ…って忘れてた。そういえばゼロには【
「外に出るとしても、ゼロの【常闇】の範囲内であればいくらでも呼び出せるな」
「ちなみにゼロさんの影は」「何体いるんですか?」
「えぇっと確か、今は80体だっけな?」
「それなら配置される地形にもよるけど、防衛はかなり安心できそうだね」
「ムーンやコボルとかはさておき、アイツらが頼りになるかは分からないけどな」
うっ、アイツらの事を考えるだけでめまいがしてきた…存在が俺にとってデバフすぎる。
てかこれあれか?拠点が洞窟とかじゃなかったら俺ずっと防衛する羽目になるのか?
でもそしたら狭くて暗い密室で、数十体のモンスター達と一緒……何も起きないはずがなく…ってことに!?
「よし、今からでもこのスキルを廃棄しよう」
「おい、モンスターのこと考えて気が狂うのはわかるが、今回のイベントで結構大切なスキルなんだから変なことするなよ」
「あとは、メイプルやゼロのスキルに回数制限が設けられてることを悟られたらやばい。ゼロはこの前また弱体化されてたし」
「確かに……」
「何故俺はこんなに弱体化されるのか…」
「とりあえず防衛はメイプルとユイとマイ。カナデもお願い。拠点の地形によってはゼロも」
「「はい!」」「なんでもいいよー」
「頼む…洞窟型で広くあってくれ……」
「基本、アタッカーは私とカスミ、シャインとクロムさんで。イズには拠点のバックアップ…ってことでどうかな?」
「うん!それでいこう!」
「じゃああとはイベント開始まで各自、レベルアップに努めよう!」
『オーーー!!!』
「と、意気込んだはいいものの……」
『やることが全くない、と言った感じですね?』
「うん…ってわぁぁぁあぁぁ!」
『この前慣れたものだと思っていましたが…まだまだのようですね』
「あああの時は一応身構えてたんだよ!」
突然恐怖の存在に出てこられるこっちの身にもなって欲しい。いや会話してるだけで、出てきてはないんだけど。
『皆さんギルドホームから出ていってしまいましたね。我が君も、新しいスキル取得はしないにしてもレベル上げぐらいされては?』
「絶対にやだね。そんなことしてたらレベルが上がる前に俺の意識が飛ぶ」
『それでは、私と特訓なんてどうでしょう?』
「……え?」
『我が君!動きが鈍くなってますよ!』
「ぃいいやいや無理!これ以上は無理だってぇ!!」
第二層の奥にある、俺が【暗殺者】を披露した開けた場所にて。
俺は半ば強制的…いや完全に強制的に特訓を受けさせられ、今絶賛気合いでムーンから出される素早い攻撃を必死に避けているのだった。
全速力でここから逃げ出そうにも、周りは森でムーンが配置したどデカく硬そうなモンスターが大量に設置されていた。
【
結果、この木のない狭い場所をぐるぐると回りながらムーンからの攻撃を避けるはめになっていた。
てかなんでAGI極振りの俺といい勝負できるスピードしてるんだよ!おかしいだろ!(※焦りすぎて【状態保存】をロードし忘れてる)
『よし、それでは休憩にしましょう』
「や、やっと休める……」
始まってから1時間後。ようやく休憩が貰えるようだ。このままログアウトしようかな…。
いや、ここでログアウトしたら次ログインした時に何されるか分かったもんじゃないな…これが八方塞がりってやつか。
『休憩がてら周りにいるモンスターを倒してください。今回【
「はぁぁぁぁあぁぁぁ!!?!?!?」
『驚いている間にも向かってきていますよ。我が君が心臓麻痺で倒れる前に倒してください!』
「ああぁぁあぁもう!ヤケクソだ!!全員倒しきりゃいいんだろ!?!?【常闇】【暗殺者】!【虚絶の刀】【隠密】!」
全員出血の状態異常と【油断大敵】を使って一瞬で倒してやるぅぅぅ!!!
「終わった…もう無理、モンスターの過剰摂取で死ぬ…死んじゃう……」
さらに1時間後。俺は全てのモンスターを倒しきったことを確認するとその場に倒れるように脱力しながらその場に座り込む。
ムーンこの野郎!特訓とか言いながら結局レベル上げも新スキル入手も出来ちまったじゃねぇか!
スキル【シャドウトラップ】
自分の影の範囲内にいる敵の動きを一瞬止める。
また、自分につけている影の兵士のSTRで計算したダメージを与えることが出来る。
30分後再使用可能。
取得条件
スキル【
スキル【疾風迅雷】
一瞬で間合いを詰めて攻撃する。相手のAGIより自分のAGIが高い時、差が大きいほど斬撃によるダメージが増える。攻撃後、硬直が発生する。ダメージの増加が大きいほど硬直時間は長くなる。
取得条件
スキル【暗殺者】を取得した状態で、一度も物理ダメージを与えずに合計100体のモンスターを倒す。
『聞こえていますよ我が君。それに影の兵士の数も増えてます』
ひっ!そうだった、心の声が聞こえるの忘れてた……心の中でも愚痴れないってどうなってんだこのゲームは。
ていうか、もしかしなくてもこれムーンが狙ってスキルを取らせてくれたのか…?だとしてももうモンスターを見るのは絶対嫌だ!絶対!!
「もうこれ以上は勘弁してくださいムーン様……ん?」
疲れた体を必死に起こして、正座しながら手を合わせ懇願する俺の目の前にメッセージウィンドウが現れる。
「『影の兵士【ムーン】の忠誠度が一定値を超えたため、ステータスを閲覧することができるようになりました。また、アイテムが付与されます』……??」
『………』
え?マジ??遂にあの隠されてたムーンのステータスが見れるようになるの!?!?
誰一人としてステータス見れないからもう既に諦めたのに!?貰えたアイテムなんて後回し!ムーンのステータスを見るのが先だ!!
俺は早速メニュー画面を開く。
すると新しく"影の兵士"という項目が追加されており、そこをタップしてみるとヴォン、という機械音とともに目の前にムーンのステータスが表示される。
ムーン
Lv--
HP 1200/1200
MP 300/300
【STR 800】
【VIT 600】
【AGI 780】
【DEX 720】
【INT 600】
スキル
【一撃】【連撃】【超次元】【鎧砕き】
【強化】【属性付与】【空虚な世界】
そうだろうなとは思ってはいたけど、うーんやっぱり化け物ステータス。最低でも600もステータスがあるってどうやったら勝てるんだよこれ。
いや俺が勝ったから俺の影になってるのか。勝てたのマジで奇跡すぎる。
STRに至っては極振りしてるマイユイコンビと結構いい勝負してるし…運営もうちょいバランス調整しろよ。
まあそのバランス調整をミスってくれてるおかげで俺がここまで強くなれたんだけど。
『スキルは私も影の兵士になった時点で知っていましたが、ステータスは初耳ですね。STRやVITが影になる前より減っていますが…その分AGIが上がっています。これも我が君の影の兵士になった影響でしょう』
「っていうか、レベルには何にも数字が書かれてないけど…これは?」
『私達影の兵士にはサンのようなテイムモンスターとは違い、レベルという概念がありません。そのためいつかは私を凌駕するステータスを持ったプレイヤーが現れることでしょう。私達のステータスは固定なのです』
ここまでステータスが上がるのが普通になるようになったら、もうNWOもサービス終了が近そうだけどな。
「グリードとかコボルのステータスはまだ見れない…か。まあムーンみたいに時間が経てば見れるようになるだろ」
『それで我が君、新たに獲得されたアイテムは…』
あぁそうだ、忘れてた。
俺は早速アイテムボックスを開き、見たことがないテクスチャをした物を発見する。
「ふむふむ、"絆の勾玉"……?」
一行目、二行目、三行目。説明を読めば読むほど、俺の顔は青ざめていく。
説明を読み切った俺の顔は、アンミカさんもビックリするぐらい綺麗な白となっていた。
いやいやいや!
そんなこと俺がするわけないだろ!?!?
よしこのアイテムは捨てよう、そうしよう。
『我が君!?私との絆の証ですよ!!?』
「うるせー!誰がこんな装備品付けるか!!」
俺は思わずムーンの方を向き、そう大声で叫ぶ。
次の瞬間、俺の目とムーンの目は確かに逢っていた。
『我が君…初めて私の目を見て話したのでは?先程からスラスラと私と会話していましたし…まさか克服をしt』
意識は保ったまま、俺の思考はそこで止まっていた。
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「シャーベット!【氷結】!」
シャインの声に呼応するように、肩に乗せた氷の小鳥…シャーベットが氷を吹き出す。
まじかに迫ってきていた魔法は、一瞬で氷となっていたのだった。
「【音破壊】!」
シャインはその氷を破壊し、できた氷の破片は魔法を放ってきたモンスターに一斉に飛んでいく。
モンスターはもろにそれを食らってしまい、そして次の瞬間モンスターの耳にはカチッ、という音が聞こえる。
モンスターは撃ち抜かれ、爆発四散しながら光の粒子となったのであった。
「よしっ、レベルアップ…ってこれは新スキル?」
スキル【サウンドレーザー】
音による空気の振動を一直線に集め発射する。
取得条件
【音魔法】のレベルが上がることで入手。
スキル【自由自在】
魔法の形を変えることが出来る。変化が大きいほどMPを消費する。またMPを使用することで、一度の詠唱で同じ魔法を最大3回使用出来る。
取得条件
【魔法の心得Ⅶ】以上を取得した状態で、5つ以上の魔法を応用してモンスターを倒す。
「これは……かなり使えそうかな。そう思うだろ、シャーベット?」
シャインは新たに取得したスキルを第四回イベントで使えるようにすべく、何度も何度も使用する。
彼の夜は、まだまだ続くのであった。
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そしてついに第四回イベント当日。
クロムさんとカスミは前日まで、イズさんのためにドロップアイテム集めをしていたらしい。
イズさんといえば、最近行った生産職向けのダンジョンで新たなスキルと、俺達と同じユニークシリーズの装備を手に入れていた。
なんでも、新スキルで作れるものが大幅に増えただけではなくゴールドから素材作り、さらにはどこでも生産が可能になったのだとか。
うん、やっぱこのギルド色々化け物しか居ないな。俺もそのうちの一人なんだけど。
正常なのは…シャインとカスミぐらいか?いや、シャインも結構異常寄りか…。
話を戻そう。カナデもイズさんのために素材集め、マイとユイは二層で連携の強化、そしてサリーとシャイン、俺はそれぞれの得意分野の特訓…と、それぞれが第四回イベントに向けて色々していた。
俺の場合は無理やりなんだけどな……。
肝心のメイプルは周りのアドバイスもあって自由に探索してたらしい。まあメイプルにはそれがお似合いだろう。
とにかく、そうして準備期間の内に各自やるべきことをやりきったところでついに今日、イベントがやってきたのだ。
全員で十人、しかしそこには。
圧倒的センスを持つ双剣。
当たれば必死の攻撃を繰り出す2つの大槌。
防御や回避など意味の無い一撃必殺の魔法。
ダメージを受けてもなお死なない盾。
一太刀で盤面を制圧できる刀。
ほぼ全てのスキルを持つ魔導書。
何もかもをその場で作り出せる工房。
攻防両方をこなせる影の大軍。
そして、もはや言うまでもない最凶の盾。
ここにいる全員が化け物なのだ。
全員が円形になって集まると、メイプルが手を中心に出し、俺達も続いて手を合わせる。
「目指すは上位で!」
『オーー!』
俺達は手を高らかに上げると全員が光に包まれ、バトルフィールドへと転移する。
さあ、第四回イベントのスタートだ!