素早さ極振りにした怖がり少年はネクロマンサーになるようです。 作:名無しという名の者
怖がり少年と第四回イベント
目の前に広がる光が徐々に薄れ、俺の目に映ったのは緑色に輝く木の実のようなオーブと、それが乗った台座だった。
辺りを見回しても何も無い。俺達がいる所はただただ見通しの良い洞窟なのであった。
いやったぁぁ!洞窟型だから俺がずっと防衛のために影達と一緒に居なくて済む!!
広さは…狭いと言ったら嘘になるけど別に広い訳でもない絶妙なサイズ感だった。
俺が防衛担当になったらこの広さの中影達と一緒にいなきゃなのか…。まあとりあえずずっと一緒に居ないで良くなっただけマシとしよう。
この洞窟の中央であるここからは3つの通路が伸びており、サリーとカスミが2つの通路を確認したところ、それぞれが水場のある休憩所と横になれる寝床だったらしい。
「そうなると、残りの1本の通路が地上に続いてるって訳か。確かに防衛しやすそうだな」
「それじゃ、皆はいこれ」
イズさんがそう言うと一人一人に真っ黒なローブが手渡される。俺も今真っ黒いローブ着てるから意味ないんだけどな…。てかローブで言ったらシャインもだし。まあとりあえず俺は着ないでいいか。
それで、もしここに繋がる通路が一つだけなら入ってきた瞬間にメイプルやマイユイコンビにボコボコにされるだろう。
なんか敵が可哀想に思えてきたな。これから出るであろう犠牲者達を弔うために今のうちに手でも合わせておくか。
「よし、それじゃ私達は早速攻撃に行こうか。拠点が洞窟だし、何体か防衛用のモンスターを召喚したらゼロも攻撃チームで」
「あぁ、行こう」
サリーにそう言われ、俺が適当に狼型のモンスターを5体召喚すると攻撃組であるサリー、シャイン、カスミ、クロムさん、そしてそこに新たに加わった俺は少しでも時間を効率的に使うべく速攻で自軍から飛び出すのであった。
「まずは周りの危険を排除しないとね」
「オーケー了解」「ここの茂みに隠れておくぞ」
拠点を出た先には広い森が広がっていた。情報収集や攻撃のために辺りを探索していた俺達は、早速他のプレイヤーの話し声を聞き取り、サリーが誘導してきた相手を倒すべく待ち伏せをしている。
サリーが器用に木の枝を渡っていくと、すぐに男性の大きな叫び声が聞こえてくる。それに続くようにサリーの静かな足音と、それを追ってくるおおきなドタドタという音も。
4人のプレイヤーを俺達が捉えた時。
カスミとクロムさんは茂みから姿を現すと、それぞれ刀と鉈を振り抜いて先頭のプレイヤーに大きなダメージを与える。
「やっ…ばっ!」
続くようにシャインが3つの炎の槍を作り出して、2人目のプレイヤーを串刺しにする。
「撤退よ…っあ!」
逃げようとする女性プレイヤーの背中に、容赦なくサリーの放った火の玉が直撃し、バランスを崩すことに成功する。
回避などできるはずがなく、カスミとクロムさんによって斬り伏せられてしまうのだった。
そして俺は、一目散に逃げていく最後のプレイヤーの後ろを気づかれないように追っており、そのプレイヤーが辿り着いた先には俺達のと似た洞窟があった。
こうして俺達は、わざと逃がした一人を利用して他のギルドを見つけ出すことに成功したのだった。
あの時に倒されていれば、わざわざこんな化け物集団を自分のギルドに呼び出さずに済んだと言うのに、運の悪い奴ら…。
「あの洞窟がそう?」
マップを見て俺のいる場所に辿り着いた4人。シャインに聞かれて俺は首を縦に振る。
確かに、木々に隠れてるせいで少し洞窟があるのが見えづらくなってるな。おそらく小規模ギルドだろう。
サリーも同じことを考えたようで
「私達と同じ小規模ギルドかな。もしかしたら40人ぐらい居るかもだけど」
と言っていた。
「予定通り俺が先頭で行く。まあ、何とかなるだろ」
話し合っていた通りに、クロムさんを先頭にして穴の中へと入っていく。
少し先に進むと、オーブが台座に乗っているのが見えた。そして、何やらヤバイやつらに会ったと騒ぐプレイヤー達の話を聞いている三十人程のプレイヤーがいた。
間違いなく俺達の事だな、うん。
当然入り口の方を向いているプレイヤーもいるため、侵入者がいることに気づかれてしまう。
「皆、構えろ!」
恐らくギルドマスターだろう男が号令を出すと全員が武器を構え始める。
「さて、いくぜ?」
先頭をクロムさん、その後ろをサリーとカスミ、俺が付いていき、1番後ろにシャインがスタンバイする。
敵の前衛が飛び出してくると、クロムさんに集団で一斉に斬りかかる。
しかしクロムさんはHPが減りきるより早くぐんぐんと回復していく。
明らかに異常な光景に後ずさりする前衛集団を見た俺達は一気に攻撃へと転じる。
魔法が飛んでくるも、俺とサリーは当然のように回避し、シャインとカスミはクロムさんにカバーしてもらう。
サリーとカスミは個人個人をそれぞれ撃破し、シャインは音魔法や爆裂魔法による範囲攻撃で一網打尽にしていく。
「う、嘘だろ!?」
もはやクロムさんに攻撃する余裕すらない相手だったが、俺はその混乱している敵の合間を縫って最速でオーブにたどり着き、そして回収する。俺はあえてそれを高らかに掲げ、相手の視線を集める。
「いつの間にオーブが!?取り返すぞ!…んっ!?」
次の瞬間、俺は一瞬にして間合いを詰めると【暗殺者】と【疾風迅雷】をバレないように使い、3人を撃破する。
硬直が発生する俺だったが、すかさずシャインの【ノイズ】によるカバーが入り、逆に隙を作り出すことに成功し、そこをサリーとカスミが一気に攻撃する。
連携プレイを続けていると、気がつけば相手ギルドは壊滅しているのであった。
……こんな呆気なく終わるものなの?
皆使わないと決めてるスキルもあるっていうのに…やっぱりおかしいわ、このギルド。
「それじゃカスミ、悪いけどこれを持って帰ってくれる?私はちょっと周りの偵察をしてくる。この感じだと思ったより近くにギルドがあるかも」
「サリー、俺はちょっと見つけたギルドから手当り次第オーブを奪ってきてもいいか?」
「うーん……いいけど、スキルを使うならバレないようにね」
「だいじょぶだいじょぶ、やばかったら最悪【影の交換】使って帰ってくるから」
「そしたら俺達は一旦戻るとするか」
「ああ、そうだな」「そうですね」
こうして、どれだけギルドが周りにあるかを確認するためにサリーが、俺は早めに他ギルドと差をつけるべく戦場に残り、シャインとクロムさん、カスミは戦利品を持ち帰ることにした。
「早速見つけた……この感じはサリー情報から推察するに、中規模ギルドかな?」
5人と別れた俺は、1分もかからず中規模ギルドを一つ発見することに成功する。
中規模ギルドは小規模ギルドとは違って廃墟がベースとなっているようで、地上にあって全方向から狙われるが比較的障害物は多くなっているようだ。オーブの所には天井もあって、一筋縄では行かなそうだが……。
「ま、とりあえずなんとかなんだろ。使いたくなかったけど…【常闇】」
「ん?辺りが暗く…ってことはまさか!?」
俺が【常闇】を使うと、当然中規模ギルドの人達はそれに気がついたようで、そしてそれが誰の仕業かも分かったようだ。
「ゼロだ!目をよく凝らして姿を追うんだ!!」
俺が隠れていた茂みを飛び出すと、その音に反応して防衛を任されている全員がこっちの方を見る。
「【幻視】【冥界への一歩】」
俺は正面突破をしようと、目の前に行く手を阻む人がいるにも関わらず全速力で真っ直ぐに突っ走る。案の定、相手の攻撃は当たってしまう…俺の残像に。
俺はその瞬間を見逃さず、すぐさま【隠密】を使い、彼らの上空を歩いて突破する。
「攻撃ヒットしました!」
「でかしたぞ!」
あっちからしたら攻撃が当たって姿が消えたのだから、俺がキルされたように見えたのだろう。だからこそ隙が生まれる。
姿を隠した状態で俺はオーブが置いてある台座部分にたどり着く。そしてオーブに触れると、それが消えてインベントリの中に小さくなった木の実のようなオーブが保管される。
よし、あとは逃げるだけだ。
そう思い、インベントリを閉じて周りをパッと見てみると……。
俺はいつの間にか包囲されていたのだった。
「キルしたのに昼に戻らないのはおかしいと思ったら、やっぱりまだ生きていたか」
「あー……そういう事ね」
くそっ、はめられた!せっかく頭使って完璧にオーブを盗めると思ったのに!
「結局こうなるのかよぉ…ムーン、兵士達起きろ」
『………少し詰めが甘かったですね』
うるさい!とととりあえず全員の処理頼んだからな!
とりあえず、いつものように【気配察知】を使って相手の様子を見てみると、明らかに動揺していることに気がつく。
まあ確かにそうなるわな。追い詰めたと思ったら足元から10数体のモンスターが湧き出てくるんだから。
しかし、ムーンに容赦は無いようで。
俺には劣るもののかなりのスピードで近づくと、大きな大剣を一振りして一気に10人ぐらいをキルしてしまう。ムーンにばかり目がいってしまうが、兵士達も普通にタイマンならプレイヤーにも勝利を収めているぐらい優秀だ。
…やっぱり俺いらないな。
俺はそう思うと、完全に手薄になった包囲を軽々突破する。一応逃げる際に背後を見てみたが、ムーン達に対処するのでそれどころでは無いようだ。
…いや、対処するのに手一杯なんじゃなくてキルされてそもそも追うことすら出来てないんだな。
とにかくこうして俺は、オーブ一つを楽々手に入れることに成功したのだった。
「……このまま放置しといたら、ムーンが壊滅させちゃいそうだな」
さすがに可哀想なので、ここら辺で【常闇】解除しとくか……。
「洞窟とそれを守ってる人発見、小規模ギルド確定だな」
またしても速攻で次の攻撃対象を発見した俺は、木の上に待機してどうやって攻めようか考えているのだった。そして自分の頭脳をフル回転した俺はある作戦を思いつく。
「いいこと考えちゃった…!【常闇】【暗殺者】【虚絶の刀】【隠密】」
相変わらず夜になったことに驚く彼らだったが、次の瞬間には何が起こったか分からない間にキルされることとなる。
俺は姿を消した状態で【油断大敵】を発動させ、さらに【虚絶の刀】最大生成本数である30本に同時に【疾風迅雷】を使う。
これによりとてつもなく長い硬直が発生してしまうことを代償に、キルされる側も気づかない"防衛者同時キル"に成功したのだった。
「これならスキルを使ったことにならないだろ」
こうして洞窟の中に入った俺は、中央のオーブが置いてある部屋が見えてくると【隠密】を使って、とりあえず全速力でオーブを狙って突っ走ることにする。
部屋の中に完全に入ってみると、小規模ギルドとは言ったものの10数人が中に待機していた。
走っている途中で警戒する意味でも周りを見てみるが、幸い誰も俺の事には気がついていないようだった。
結局拍子抜けするぐらい簡単にオーブを盗むことに成功した俺だが、さすがに一筋縄には行かないようで。
「いつの間にか入口の防衛を任せてた奴がやられてるぞ?」
「でも中に入ってきた形跡はないぞ?かといって入り口の奴を倒すだけって言うのもおかしいしな…」
やべっ、【隠密】の効果が切れる前に早く逃げ出さないと袋のネズミにされちゃう!
会話してる今のうちにと思い、またしても全速力で通路に向かう俺だったが…通路には既に入口の方を見に行こうとしている人が3人。完全に道が塞がれてしまうのだった。
「おい、オーブが盗まれてる!この中に襲撃者が隠れてるぞ!!」
3人の後ろにバレないよう、ピッタリとくっついていた俺だったが、その3人が今の声を聞いて中央の場所に戻ろうと振り向きダッシュを始めたとき。
確かに3人の内の1人と、俺の体がぶつかった。
「え?」
「バレちゃったかぁ…かかかか【覚醒】【
【隠密】の効果が切れてしまった俺は、間髪入れずに敵のMPを全て吸収する。
同じく外へ続く通路の異変に気づいた彼らはすぐさま攻撃を仕掛けてくるが、それは俺が呼び出したサンによって防がれてしまう。
3人もすぐに今置かれている状況に気づき、硬直の発生している俺に攻撃をしようとするが、それはコボルの巨体によって軽々受けられてしまう。
「はい、【
当然この僅かな時間の間にコボルを倒す方法を思いつくはずもなく、【
そして、がら空きとなった地上へと続く道をウイニングランする俺。こうして2個目のオーブも軽々と手に入れることに成功したのだった。
『我が君、私を出していただければ簡単に殲滅できたのでは?』
「……なんかムーン出すのは、なんというか…ズルい気がして申し訳なくなっちゃうんだよな…」