素早さ極振りにした怖がり少年はネクロマンサーになるようです。 作:名無しという名の者
隠しダンジョンって、夢があるよね
「うわあぁぁぁあ!!へぶしっ((」
突然足元にできた扉によって地下に落ちていった俺は、綺麗に着地することなく見事に落下した。
しかし、ダメージは受けていなかった。これも演出かなにかなのだろうか。それなら心臓に悪いのでやめてほしい。
さっきから隠しているがモンスターと目を合わせまくっているせいで今にも心臓が止まりそうなんだ!
それで、隠しダンジョンって言っていたが…まさか、ここがそうなのか…?
『よく来たな、人間よ』
「!?!?!?」
『ここまで来れたことをまずは褒めてやろう。しかし、この試練は今までの試練よりもずっと辛いはずだ。せいぜい頑張るんだな』
声が聞こえた方を恐る恐る見ると、ここはまるで王との謁見をする場のようなところであることが分かった。
かなり広い部屋の両端に柱と大きな窓が交互に設置されており、窓から零れる月の光が真ん中の深紅のカーペットを照らしている。深紅のカーペットの先には大きな椅子があり、そこに『それ』は座っていたのだった。
『それ』は青色の肌?であり、まるで青い炎のような印象を受ける。しかし、目は赤く爛々と光っており、頬杖を付いているその姿は堂々としている。しかし、ここまで『王』という印象を受けそうな要素を詰め込んでいるにも関わらず、まったく『王』のような印象は受けない。
その纏う気配は正に【剣士】。歴戦の…いや、違う。それは【無敗の剣豪】という明らかな強さを戦わずとも示していた。
俺の脳はバグを起こしていた。明らかに人間のような雰囲気と肌の色では無いのだが、剣士っぽい見た目と人間の形であるそれが人間の言葉を話していることで、俺の本能が『人間か人間じゃないか』で言い争っているのだ。
『まずはお前の力を見せてみろ。我が配下よ、行け』
と、そんな言い争っていることはお構い無しに何かが始まりそうだ。
次の瞬間、『それ』はシュンという音だけを残して消え、代わりに十体ほどの同じく青い炎のような重装備をした兵士たちが現れた。俺を襲おうと走ってこちらへと向かってくる。
「【三連炎弾】!」
俺は反射的に魔法を詠唱する。そして、その魔法は見事兵士の一人に全弾命中した。
しかし、その兵士は破損した部位を瞬時に再生…いや、再点火したのだった。
その事実は、俺に『人間じゃない』と証明するには十分過ぎた。
「【三連炎弾】!【三連炎弾】!来るなぁ!」
それはまさに地獄。逃げることの出来ない悪夢。
俺はスキル【
「……っ………うぁ……」
怖すぎてもはや叫び声すらあげることの出来ない俺は、我を忘れてとにかく逃げ回っていた。
時間にして、およそ『10時間』。
現実に戻すように脳内にある音声が響き渡る。
『スキル【不屈の〜】を獲得しました』
しかし、俺は気が付かない。ただただ逃げ回る。
………。
……。
…。
あれから更に2時間後。俺はようやく正気を取り戻していた。今は目をつぶりながらとにかく走りまくっている。
さっきそのおかげかなにかは分からないが【気配察知I】というスキルを手に入れた。それによってなんとか気配だけで避け続けている。
それに【冥界への一歩】で空中も歩くことが出来るので、なんとかなっているのが現状だ。
『【糸使いX】から【支配者】に進化しました』
打開の仕方を探っている間に、無機質な音声が響く。
どうやら適当に使いまくった【糸使い】が【支配者】へと進化を遂げたようだ。
説明を見るために、薄目を開けながらパネルだけを見るようにする。
スキル【支配者】
糸を自在に操れる。
射程最高100メートル。両手足から射出可能。
再使用で【支配者】状態解除。
今入らないんだよなぁ…と落胆する俺の目に、見たことの無いスキルが映る。
【不屈の〜】…?こんなの獲得してたか?
スキル【不屈の〜】
装着可能なスキルに付けると、そのスキルは物理攻撃を受けても壊れなくなる。
装着可能:【支配者】
そんなことが出来るの!?と思いつつ、【支配者】に【不屈の〜】をつけてみる。
『【支配者】に【不屈の〜】が装着され、
スキル【不屈の支配者】に進化しました』
スキル【不屈の支配者】
糸を自在に操れる。物理攻撃では壊れない。
射程最高100メートル。両手足から射出可能。
再使用で【不屈の支配者】状態解除。
やった!と喜ぶ拍子に目を開いてしまう俺。
そこには十体の青い炎の兵士ではなく、約百体ほどの青い炎の兵士がいた。
…え?最初こんなに人数多かったっけ?
「無理だってえぇぇぇ!!」
あまりの恐怖に足がすくみ、走れなくなってしまう俺。【冥界への一歩】で出来た足場も消えてしまい、地面へと落とされる。
幸い、落ちた場所に兵士はいなかったが、周りが兵士たちに囲まれてしまう。
「わぁぁぁぁ!【三連炎弾】!」
確かに炎弾は命中したが、一瞬で再生されてしまう。
「【不屈の支配者】!拘束しろ!!」
迫ってくる兵士十体に巻き付けることに成功する。だが、他の兵士達が魔法を纏った剣で糸を切り、拘束はすぐに解けてしまう。
「【ヒール】!【冥界への一歩】!」
なにか起きないかと愚考した俺はとにかく持てるスキル全てを使用する。
「【
しかし…持てるスキル全てをとりあえず使ったのは正しかったのだ。
次の瞬間、杖先から出てきた、真っ黒な実態のない煙のような存在は『目の前の兵士を飲み込んだ』のだから。
「えっ…?でっ、【
MPが尽きる心配は無い。
常に恐怖で気絶し続けているからだ!
さあ、どんどん喰ってやる!!
「【
明らかにおかしい。もう既に百回は兵士を食ったはずだ。
それどころか…数が増えていないか!?
なんだ、どこからか無限に湧き出ているのか?しかし、それなら『試練』としてクリアすることは不可能だ。それなら、どこかに『アイツ』がいてそれを倒すのか…?
いや、『まずはお前の力を見せてみろ。我が配下よ、行け』と言っていた。我が配下やまずと言っている以上、『アイツ』が隠れているということはありえないだろう。
「ん?『我が配下』?」
おかしい。兵士達は複数であり、単体ではない。もし兵士達を使うのなら、『我が配下達』が正しいだろう。
つまり、兵士達を召喚している奴が一人いるのか!?
「【気配察知】………いた!!」
明らかに持っているMPの量が多い奴が一人左側の奥から3つ目の柱の裏にいる!!
「【
青い炎のような魔術師は驚いた顔でこちらを見ながら闇へと飲み込まれていった。それと同時に、部屋中に大量発生していた兵士達も光の粒子となって消えていったのだった。
やはり、兵士は魔術師に召喚された魔法、魔術師は剣士に召喚された魔法だったため【
『スキル【闇喰う者】を獲得しました』
『【
スキル【
ん?何か獲得したようだが…
突然パチパチパチという拍手の音が俺の耳に入る。
気がつけば、階段の上には玉座に座る【あいつ】がいた。
『よくぞ我が配下を倒した。望み通り私に挑戦する権利をさずけよう』
…俺これ勝ち目あるか?
スパッスパッ!
空を切る大剣の音が部屋中に響き渡る。振り切られて地面へと叩きつけられた大剣は、部屋をヒビだらけにしていた。
早い速度で間合いを詰め、それから繰り出されるとても高火力な一撃。それがまるで何も持っていないかのような間隔で振り回される。
俺はかろうじて避けていた。【
しかし、避けているだけでは何も変わらない。相手はAIであり、疲労という概念がないためジリ貧になってしまう。
『フハハ!糸などなんの意味もないぞ人間!』
「いいや、ある!」
というか、現時点で使えるスキルが【不屈の支配者】しかないんだ、意味がないと困る。
俺は少しずつだが、あいつにバレないように糸をまきつけている。今出している糸で気を引いて、足から出した糸で動きを封じる作戦だ。
--1時間後--
『なにか動きづらいと思っていたら、相手の術中にハマっていたか』
俺は何とか【不屈の支配者】で動きを止めることに成功した。
『しかしこんなもの、魔法剣で斬れば一発で…』
「その瞬間を待ってた!!」
俺は最高速度で一気にあいつに迫る。拘束する糸を斬る一瞬の隙に。
『私は魔法では無い。だからあのような方法で倒すことは出来ないぞ?』
「倒そうとなんて毛頭思ってねぇよ。【
俺の周りに深い黒い霧が発生し、その範囲内にはあいつもいる。そして深い黒い霧は消える。
『何をしたかったのだ?まあよい。終わりだ!』
大剣が俺に振り下ろされる。避けられない。
俺は【不屈の支配者】を使って防ごうとするが、魔法を纏っている大剣は糸を断つ…ことはなかった。
キィィン!!!
『何故だ!?魔法が…付与できない!?』
「スキル【
これでお前は俺の【不屈の支配者】を壊すことは出来ない。」
『なんだとぉぉぉ!!?』
俺は再度あいつを糸でグルグル巻きにする。なんとか糸を斬ろうとするあいつだったが、壊すことは出来ない。
後はじっくり【三連炎弾】でHPを減らすだけだ。
『レベルが20に上がりました』
『スキル【
『スキル【常闇】を獲得しました』
目の前にはもう燃えていない、ただの鎧と大剣があった。
「今度こそ本当に何も無いよね…?はぁぁ……」
本当に終わったんだと安心し、崩れ落ちる俺。
冷静になってみる。
「俺、さっきまで【バケモノ】と会話してなかった…?見て話してなかった…??あっっ………」
俺は脳と心臓の鼓動が限界に達し、思わず気絶する。【平常心】によって気絶することは出来ないが、あくまでその効果は自我を取り戻すというだけである。
俺は自我を保ったまま、気絶すれば、【平常心】の対象外なのだった。
やっとタイトル回収できたぁ…!!
ちなみに、INT無振りのゼロくんがなぜ兵士と魔術師を喰えたかは気にしてはいけない。
あと、感想もらえると喜びます。とっても。
あと高評価m(((殴