落伍者たちのロードムービー   作:野生の虚妄クトゥム

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第12話「アタシはぜってェ、テメェを"先生"だなんて呼ばねェからなッ!」

 

【グループ:アネゴ団】

【チビ】

みんなごめん!やっと携帯さわれた!

アビドスの子に恩返ししなきゃだからすぐには合流できないかも><

 

【チビ】

しっかり不良として義理を通してくるね!

 

【チビ】

終わったー!

 

【アネゴ】

チビいいい!!

お前やったな!最高だぜ!!!

 

 大爆発による爆風と爆炎を背に、チビとシロコはかつてのカタカタヘルメット団前哨基地を後にする。AB団の基地として生まれ変わっていたアジトは、完膚なきまでに爆破解体されていた。

 

「これで皆の助けになるはず。付き合ってくれてありがとう」

「ううん、ウチのわがままみたいなものだからいいよぉ。それに、炸裂ちゃんの配合テストも試せたし♪」

 

 グレネードランチャーを抱えてウキウキとした表情のチビに、シロコは若干引いた。しかしすぐに気を取り直し、銃を構えなおす。

 

「私はこのままアビドス高校に向かう。あなたは……」

「仲間探しかなぁ。みんな散らばっちゃったしね……あっ、アネゴから返信来てる!」

 

 喜色全開で端末を弄るチビを見てシロコは、柔らかい笑みを浮かべたのち立ち去ろうとした。

 

「じゃ。私は行くから」

「……待って! ウチも行く! アネゴ……ウチの仲間がアビドスにいるみたいで! ……いい?」

「ん、かまわない」

 

 先導するシロコについていくチビ。2人は道すがらAB団の車両やバイト傭兵を倒しながら、アビドス高校へと急いだ。

 

 

 

──────────────────────

 

 

 

『外部通信全て回復しました! シロコ先輩が基地を制圧したそうです!』

「おおー、やるねシロコちゃん。セリカちゃんのお願いがてきめんに効いたみたいだー」

「ヘッ、そういうことか。チビィ、やっぱお前は頼りになる奴だぜ……!」

 

 押し寄せるバイト傭兵たちの波を捌いていたホシノの声が思わず弾む。ボロボロになりながらもいくつかのバイト傭兵の目を引き付けていたアネゴも笑みを深め、ノノミも満面の笑みを浮かべながらミニガンで掃射していた。

 

「これで形勢逆転ですね☆ ……あ、あら?」

 

 ミニガンが弾切れとなり空撃ちしはじめる。

 

「どうしたノノミィ」

「弾切れしたみたいです。今リロードを……あら?」

 

 ノノミは弾薬を取り出そうとして、手が空を切った。

 

「あらら、いつの間に予備まで……ホシノ先輩、一旦弾薬を取りに行ってきます」

「私のもよろしくねー、ちょっと手が離せなくてさ~」

 

 ホシノは既にショットガンの弾を撃ち切っており、盾のみでバイト傭兵たちの相手をしていた。アネゴも弾を使い切った拳銃はホルスターにしまいこんでおり、今はナイフ片手に徒手空拳で戦っていた。

 

「アヤネちゃん、弾薬の用意をお願いします」

『え、えっと……ノノミ先輩。ないです、弾薬……』

「えっ……!?」

 

 セリカが救援を呼びに行ってから既に数十分経過しており、バイト傭兵とAB団の波状攻撃はアビドスの備蓄を食らい尽くしていた。

 

「ぞ、増援部隊がやられてるのか!? 基地までも! くそっ、我々だけで押し切る! バイトたち、残業代まで出してるんだからしっかり働け!」

「はーい」

 

 後が無いことを知ったAB団たちは最後の攻勢にかける。

 

「うへ……どんだけやる気あるんだか、若いもんは元気だねぇ~」

「こうなったら私も、この子を振り回してでも……!」

「ヘッ、アツくなってきたじゃねェか!」

 

 覚悟を決めたノノミと、軽い口調ながらAB団たちを睨みつけるホシノ。アネゴも口元の血を拭ってナイフを構え直す。

 

『セリカちゃんを呼び戻しました! シロコ先輩もこちらに向かっているそうです! それまでなんとか持ちこたえられれば……この反応は!?』

 

 アヤネの、ノノミの、ホシノの携帯端末から通知音が鳴る。ロック画面に表示されるグループ名は【対策委員会+先生】。表示されているメッセージは──

 

"遅くなってごめん"

 

『識別信号トリニティ総合学園、クルセイダー巡航戦車です!』

 

 砂埃を上げて履帯を駆動させるクルセイダーが、荒れた道路の斜面を駆け上がり車体を浮かせながら現れる。その勢いを維持したままバイト傭兵の隊列に突撃し、容赦なく彼女たちを蹴散らした。

 

「逃げろ逃げろー」

「せ、戦車がアビドスにあるなんて聞いてねえぞ!?」

「戦車だろうと自走砲で撃ち抜けば……うわーっ轢かれるー!?」

 

 そのまま自走砲も踏み潰しひと通り戦場を荒らし回ったあと、アビドス高校の校門前にドリフト停車した。あまりの暴走っぷりに敵味方誰もが動けない中、クルセイダーの搭乗口が開く。

 

「アビドスの皆さん、助けに来ました!」

「ヒフミちゃん!」

「ヒフミ!?」

 

 中から現れたのは、シャーレの部員証を首から下げたヒフミだった。

 

「ひ、ヒフミさん……飛ばしすぎて先生が……」

 

 続いて現れたのはセリカ。そして彼女に支えられながら、1人の大人がクルセイダーから顔を出した。

 

"…………酔ったかも"

 

 口元に手を当て、顔面蒼白の情けない表情をした"先生"だった。

 

「わわっ、ごめんなさい先生! 急がなきゃって思ったらつい……」

 

"ひ、ヒフミは悪くないよ……うぷっ"

 

「わーーー!! 絶対今吐かないでよ!? ビニール袋とか持ってないんだから!」

 

 あたふたとするセリカたちに支えられ、ゆっくりとクルセイダーから降りていく先生。何度か深呼吸を行って吐き気を抑え、先生はホシノたちを見渡した。

 

"みんな、よく頑張ったね"

"私に手伝えることはあるかな"

 

「うへ~。この戦いが終わったら先生の奢りでラーメンが食べたいな~」

『ホシノ先輩、ふざけてる場合じゃ……出来れば弾薬の補給などをお願いしたいです』

 

"大丈夫、もちろん持ってきているよ"

"それじゃあ全部終わったあとは、皆で柴関ラーメンに行こうか"

 

「わぁ、いいですね☆ それじゃあ頑張って残りの敵をお掃除しましょう!」

 

 先生は鞄からタブレットを取り出し、いくつか操作を行った。するとクルセイダーの背部に外付けされていたコンテナがガコンと外れ、砂の上に軟着陸。自動で開いたコンテナには対策委員会の愛銃に合わせた弾薬と、救急パックなどの支援物資がぎっしりと詰まっていた。それらを受け取ったアビドス生たちは各々の銃をリロードし、気力充分な様子でAB団に立ち向かう。

 

「戻ってきたからには皆を待たせた分まで頑張るんだから!」

『先生、指揮をお願いします!』

 

 ようやく事態を飲み込めたAB団たちが再起動するが、備蓄が万全となったアビドス高校にとって敵ではなかった。

 

「ぐわああああ!! 先生さえ来なければ……!」

「あと一歩……無念……! がくっ」

 

 ヒフミの搭乗したクルセイダーまでもが戦線に加わり、さらに先生の指揮によって完璧な連携を見せるアビドス生たちにより、あっという間にAB団は全滅した。そんな彼らを見ながら、少し離れた位置からアネゴは横目で先生を睨む。

 

(あれがシャーレの大人、先生か)

 

 彼女はすぐに視線を切り、クルセイダーに目を向けた。

 

「しっかしあいつが戦車持ってるとは知らなかったぜ、流石はヒフミ、覆面水着団リーダーなだけあるな……」

「うへ、ヒフミちゃんと知り合いなの?」

「おうァッ!? いきなり背後に立つんじゃねェ!」

 

 至近距離からホシノに話しかけられ、アネゴは思わず数m飛び退いた。

 

「ごめんごめん。いや~聞いたことある集団の名前が聞こえてきて、気になっちゃって」

「ヘッ、アイツはアタシのダチで、アネゴ団のライバルってだけだ。てかアビドスにまで覆面水着団の悪名轟いてンのかよ! 流石だぜ……!」

「えっ、あー、うん。そだねー」

 

 何故か急に顔を逸して気まずい表情になるホシノ。

 

「なんだァ? ああ、心配しなくても他のアビドス連中に言いふらしゃしねェよ。ビビらしてェわけじゃねェしな」

「そっかー。うん、そうしてくれるとおじさん嬉しいなー」

「あァ……?」

(もしかして昨日ヒフミちゃんが一緒に戦った子って、アネゴちゃん?)

 

 なんとなく事情を察したホシノは、これ以上深堀りすると面倒なことになりそうだと判断した。

 

「チッ、しっかしシャーレか……」

「あ、先生にアネゴちゃんのこと紹介しないとね~。ほらこっちこっち~」

「おわッ急に手ェ引っ張んなお前ッ!」

 

 ホシノに手を引かれアネゴは先生の前まで連れて行かれた。そこには既にノノミたちも集まっており、アネゴに気付いたヒフミが驚いた表情で声をかける。

 

「アネゴさん! どうしてアビドスに?」

「よォ、昨日ぶりだなヒフミ。まァ色々あってな。それよりお前が戦車持ってるなんて知らなかったぜ!」

「あはは……クルセイダーちゃんは私のものではなくて、学園から借りてるものなんです」

 

 気さくに会話するアネゴとヒフミの様子に、セリカは両者を交互に見て目を白黒させる。

 

「え、ヒフミさんと知り合いだったのあんた!? どういう繋がり!?」

「知り合いじゃねェ。ダチでライバルだ!」

「もっとどういうことなの!?」

 

 ひとしきりセリカの反応を楽しんだ後、アネゴは先生に向き合う。人の良さそうな笑みを浮かべながら、先生も彼女に目を合わせた。

 

「あんたがシャーレの"先生"か。噂はブラックマーケットで散々聞いてるぜ」

 

"うん、初めまして"

"アビドスのみんなを助けてくれてありがとう"

 

「礼はいらねェ。アタシはアタシのやりてェようにやっただけだ」

 

 両腕を組み、脚を開いて威圧感を出しながら先生を睨みつけるアネゴ。しかし、先生はそれを全く感じないかのように表情を変えずに佇む。その様子にアネゴは苛つきを覚え、奥歯を強く噛み締めた。

 

「よォく聞きやがれシャーレ! 気に入らねェ奴はぶっ飛ばす! 気に入らねェ道理もぶっ飛ばすッ! キヴォトスに悪名響くアネゴ団のアネゴたァ、アタシの事だァッ!!」

 

"自己紹介ありがとう。私のことは先生と呼んでくれると嬉しいな"

 

「くッ、こんのォ……!」

 

 啖呵を真正面から受けて涼しい顔をしている先生に、アネゴのこめかみに青筋が増えていく。

 

「あの、アネゴさんはどうしてそんなに先生を目の敵にしてるんですか?」

「あァん? 決まってんだろノノミ! "先生"なんて呼ばれてる大人はなァ……」

 

 先生から目を逸らさず、アネゴは苦々しい表情で叫ぶ。

 

「不良にとっちゃ天敵なんだよォッ!!」

(天敵なんだ(なんですね)……)

 

"どういうこと……?"

 

「テメェのおかげでブラックマーケットから足を洗う不良を何人も見てきた。だからこそ言わせてもらうぜ」

 

 先生を鋭く人差し指で指し、アネゴは険しい表情で叫んだ。

 

「アタシはぜってェ、テメェを"先生"だなんて呼ばねェからなッ! テメェなんざシャーレで充分だ!」

 

"えっと……"

"人を指差すのは、あまり良くないかな"

 

「うっせェ! シャーレの指図なんか受けっか!」

 

 腕を組み直しそっぽを向くアネゴ。彼女の様子に少し困惑の色を見せる先生。一連のやりとりを見ていたホシノたちは、生暖かい視線をアネゴに向けていた。

 

「アネゴさんって変なところ強情なんですね」

「ンだよ何が言いてェヒフミィ!」

「アネゴちゃん、可愛いです☆」

「ノーノーミー! お前アタシをナメてねェか!?」

『あはは……あ、シロコ先輩がもうすぐ着くそうです。協力者が1人いるとか』

 

 自走砲の残骸散らばる道路の向こうから、2人分のシルエットが夕日に照らされて浮かび上がる。

 

「やっと着いた……」

「コンビニでたくさん材料買っておいてよかったぁ~……」

 

 それは間違いなくシロコとチビであった。彼女たちは前哨基地から出発していた増援を全て倒し、ようやくアビドス高校へとたどり着くことが出来たのだった。

 





2024/1/2
自分の中でもにょり散らしていたので、先生が物資を届ける下りを加筆修正しました。
本筋に変更はありません。
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