今回は番外編です。虹夏ちゃん達結束バンドから見た叔父さんの話です。
STARRYに叔父さんの元バンドメンバーである音弥さんが突然来店したその日、あたしは練習に来た喜多ちゃんとぼっちちゃんの2人にその事を話していた。
「エーーー!! あの猿渡音弥がここに来てたんですか!? なんでサイン貰わなかったんですか伊地知先輩!!」
喜多ちゃんはリョウの予想通り、人気俳優である音弥さんが来たことに大騒ぎしていた。まあ喜多ちゃんはそういうのが好きなタイプだから、そういう反応になるよね。
「まあまあ。音弥さんも休憩の合間に顔出しただけだから。忙しいのにサインねだったら申し訳ないよ」
「あ、あの。私あんまりドラマとか見ないんで分からないんですけど、その人って有名な人なんですか?」
「後藤さん知らないの!? 猿渡音弥と言えば特撮ヒーロー出身の舞台やテレビでも活躍してる人気俳優で、私も子供の頃見て一目惚れして以来ずっと大好きな俳優さんなのよ!! 特にこの間の恋愛ドラマでは主人公とヒロインの女の子を取り合うライバル役を演じて、それまでとは違う男気があるアニキ系のキャラだけどアイドルオタクというキャラクターが今までの役柄とは違うギャップがたまらなくってね!! あと10月にも新しい映画で出演してて...」
「ストップストップ。喜多ちゃん、ぼっちちゃんが処理落ちして固まっちゃったから一旦止まって」
「あ、す、すみません先輩。後藤さん大丈夫?」
「い、いえ...情報量が多くて...」
「郁代があんなマシンガントークするなんて珍しい」
喜多ちゃんの珍しいところを見て、リョウがそう言う。確かに喜多ちゃんがあんな風に喋るのはあんまり無いかもなー。
「そういえば、雄介さんがバンドやってたって聞いたとき、どんなバンドやってたのか気になって調べてたら、こんなのがあった」
そう言ってリョウがスマホを取り出して、1枚の画像を見せる。それは叔父さんと音弥さん、それに2人を合わせて4人の男の人が写ったアー写らしき写真だった。
「あ!! 音弥さんと雄介さんが写ってますね!!」
「じゃあ、これがバンドやってた頃の雄介さん達ですか?」
「多分そう。15年近く前の写真だから、多分二十歳くらいの頃のやつだね」
「えーとバンド名が...『
「『夢への旅路』って意味。私的には良い名前だなって思う」
「た、確かに良い名前ですね」
リョウの見せてくれた写真に対し、それぞれが見た感想を呟く。でもなんか昔の叔父さん、ギラギラしてる気がする。夢に貪欲というかなんというか。
「調べたら、インディーズとしてはかなり人気あったみたい。ライブは連日満員で、いつメジャーデビューしても驚かないくらいだったみたいだけど、ある日突然なにも知らせること無く解散したみたい。ある意味幻のバンドだね」
「伊地知先輩はその頃は知ってるんですか?」
「そんなの全然。あたしが物心つく頃にはあのお店で働いてて、よく一緒に遊んだり家族みんなで出掛けるときも一緒だったり、困ったときも助けてくれる優しい叔父さんでしかなかったよ」
「へー、そうなんですか」
そう言ってあたしは喜多ちゃんの質問にそう答える。
お母さんが亡くなったときも、学校行きたくないって愚図るあたしに根気強く相手してくれたし、お姉ちゃんがライブハウスをやるって言ったときも、お金とか経営のこととかで手助けしてくれたのは知ってる。そう思うと、叔父さんもお姉ちゃんと同じように、私のために動いてくれたんだね。
「私も雄介さんには感謝してる。雄介さんのお陰で草食べなくても良くなったし、財布に少し余裕が出来た」
「そういえばリョウ、最近草食べてるの見なくなったし、この間うちに泊まったときも、自分で朝ご飯作ってたよね」
「うん。雄介さんが時間あるときに簡単な料理とか教えてくれたりして、それで自分でも料理できるようになってきた」
「あ、私もです!! 唐揚げとかカレーとか、他にも色々な料理の作り方教えて貰いました」
「え、そうなんだ。あたしも昔、叔父さんに料理教えて貰ってね。それがきっかけで料理とか好きになったんだよねー」
そう言ってリョウの料理の話をきっかけに、あたしとリョウと喜多ちゃんの3人で盛り上がる。思えばあたしが料理を教わりだしたのは、お姉ちゃんが忙しいときに出前ばっかり頼むのが嫌になって、叔父さんに頼んだんだっけ。
「あ、今思い出したんだけど、叔父さん昔海外に行ってたことがあったな」
「え、旅行とかですか?」
「ううん。なんか世界一周するって言って1年か2年くらいかけていろんな国に行ってたらしいの」
「そ、それはすごいですね」
「叔父さん曰く自分探しの旅だって言ってたけど、今思えば、解散したショックを紛らすためだったのかもしれないね」
「それで、世界一周は出来たんですか?」
「いや、なんでも途中でお金が足りなくなって、イギリスに着いたくらいで無一文になったらしいの」
「え? それでどうやって日本に帰ってきたんですか?」
「なんかごみ捨て場で拾ったアコースティックギターで路上ライブやりながらお金を集めて、それで帰ってきたらしいよ」
「す、すごい話ですね...」
「うん。他にもその路上ライブで知り合ったイギリスの人のとこにしばらく居候させて貰ったり、インドで食中毒になって1週間もがき苦しんだ話とか色々な話があるよ」
「な、なんか雄介さんってすごい人生歩んでますね...」
「あたしも話しながら同じこと思ったよ」
自分で話してて思ったけど、高校でバンドを組んでその5年後くらいに大喧嘩して解散して、そのあと海外放浪からのバーのマスターなんて、どこかの小説みたいな人生だよね。
「でも、そういう人生歩んできたから、私たちに色々アドバイスしたり手助けしてくれたりしてるのかもしれない。さすが相談役」
「そ、そうですね。私も、雄介さんの助言で少しだけ自信持てるようになりましたし、あのライブのアドリブも、雄介さんの言葉もあって出来たんで」
「あれはファインプレーだった。あの空気のままやってたら、目も当てられない出来のライブになるところだった。だからあのライブのMVPはぼっちだよ」
「そうだね~。改めて、本当にありがとね。ぼっちちゃん」
「虹夏ちゃん...」
本当にあの日のライブは、いろんな意味でぼっちちゃんに救われたと思ってる。ライブが無事に成功したこともあるし、あたしの夢がみんなとなら叶えられると確信出来た特別な日だと今でも思ってる。本当に、ぼっちちゃんはあたしのヒーローだよ。
「ヨーーシみんな。また次のライブも決まったし、みんなでもっともっと頑張るよ!! リョウ、さっきの続きから始めよう」
「OK、虹夏」
「分かりました!!」
「は、はい」
そうしてまたあたしたちは練習を再開する。見ててねお姉ちゃん、叔父さん、そしてお母さん。あたしたちの音楽を、そしてロックを!!
きくりさんスピンオフできくりさんの年齢が25歳と思ったより若かったので、今作での叔父さんの関係を若干修正しようか考え中です。
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