伊地知虹夏の叔父さん《本編完結》   作:炎のユニコーン

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 1話ですませるつもりが長くなってしまい、2つに分けました。
 なかなかライブに入らない...


※原作ストーリーにちょっとだけ入ります。ネタバレしたくない方はご注意下さい。




14. ロンリーギターヒーロー

 

 

 

 

 

 あの文化祭ライブの打ち上げからしばらく経ち、暦も10月から11月へと変わっていた。

 

 あれから俺達は合間を見てはライブのための練習や準備を行っていた。

 

 

 

 それぞれの仕事の合間を見て集まり、演奏する曲やセットリストの相談をする。最初はブッキングライブでちょっとだけ出させて貰うつもりだったのだが、星歌と銀ちゃんから『自分達の人気分かって言ってるのか?』という言葉により急遽ワンマンになったので、時間が長い分どのような曲順にするかで決まるのにそれなりに時間がかかってしまった。

 

 

 

「別に15年も前のバンドなんか忘れてるだろうに」

 

「いや自分達の人気自覚してますホントに?」

 

 

 

 そんなことを言う俺に対し、PAさんと共にうちに飲みに来た星歌がそう答える。銀ちゃんも言っていたが、そんなに言うことか? 

 

 

 

「所詮俺たちは過去の遺物だよ。昔は人気だったけど何年か振りにライブしたら客が来なかったバンドなんか、しょっちゅう見てきたし」

 

「確かに普通はそうですけど、雄介さんのバンドは今でもうちのハコ埋めれますよ。未だに好きだって言う人いますし」

 

「えーホントか~?」

 

「ホントですよ。うちの常連も『ドリジャ』が復活するって言ったら、興奮しながらいつやるのか聞いてきましたし」

 

「マジか...なんか意外だな」

 

「まあ、大人気の時にいきなり解散したから、それでちょっとした伝説扱いされてるみたいですよ。音弥さんがいたっていうのも相まってですけど」

 

「結局音弥かよ。まあバンドやってた時から人気だったけどよ」

 

 

 

 星歌の言葉に対し、そう呟く。まあ音弥もそうだが、うちのバンドは結構顔が良いということで女性ファンも多かったし、音弥に至ってはその頃のファンの一部は俳優になった今でも追っかけているらしいので、その子達はホントの筋金入りのファンだと言えよう。

 

 ちなみに『ドリジャ』と言うのは俺のバンドの愛称で、ファンからはその名前でよく呼ばれていた。あと、この店に見習いで入ってすぐに競馬で同じ名前の馬がいるのをおやっさんから教えて貰ったが、全くの偶然である。まあそれがきっかけで競馬を見始めてハマったのは別の話だ。

 

 

 

「でもわたしは実際に見たことはないですけど、店長からCDをもらって聞いたことがあるので、実力があったのは分かりますね」

 

「え。PAさん俺たちのCD聞いたの? 自費で作ったやつ」

 

「はい。なかなか良かったですよ」

 

「そっか...そう言ってくれるとちょっと嬉しいな」

 

 

 

 

 PAさんの言葉に対し、俺はそう呟く。20代のときにバイトでためた金を出し合って作ったCDだから、そう言ってくれるのはちょっとだけ嬉しいな。

 

 

 

「そういえばPAさん。あれから津上とはどうなったんだ?」

 

「え? いや、特にはないですけど...」

 

「フーン。じゃあなんでこの間わざわざ2件目に誘ったんだ?」

 

「そ、それは...2人でもっとお話ししたかったというか...って、雄介さんも店長もそんなにニヤニヤしないでくださいよ!!」

 

「イヤー俺そういう話大好きだし」

 

「わたしはお前のそういう珍しい顔見れて面白いし。いつもからかってくるお返しだよ」

 

 

 

 

 そう言いながら星歌はPAさんを見ながらニヤニヤしていた。まあ星歌はしょっちゅうPAさんにからかわれてるのを見るし、星歌としてはちょっとした仕返しって感じなんだろうな。

 

 

 

「も、もう...まあでも、優しい人だと思ってますよ。趣味が合うのもそうですけど、一緒にいると安心しますし、すごく気が楽と言いますか...と、とにかく、今はただの年上の友人というか、恋人とかはまだ考えてないです!!」

 

「今はまだ、ねえ...」

 

「そんなに顔真っ赤にして、ずいぶんと珍しいもの見れたな」

 

「もう勘弁してください...」

 

 

 

 そう言ってPAさんは顔を耳まで真っ赤にしながらカウンターに顔を伏せた。結構見た目的に色々と経験豊富っぽい感じだと思っていたんだが、PAさんも意外とそういうところもあるものだな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 その翌日、結局星歌と二人でからかい倒したPAさんへのお詫びと結束バンドのライブを見るために、俺は差し入れを持ってSTARRYにやってきた。

 

 

「チワー三河屋でーす。なんつって」

 

 

 そんなボケをかましながらSTARRYに入ると、ちょうどミーティング中だったのか、新しく作った揃いのバンドロゴが入ったパーカーを着た結束バンドのメンバーが集まっていた。

 

 

「あ、叔父さん。ライブのために来てくれたの?」

 

「ああ。それとPAさんにちょっとお詫びしなきゃならなくてな。それで来たんだ。ほら、差し入れだ」

 

「わーありがとう!! みんなー、叔父さんが唐揚げ持ってきてくれたよー!!」

 

 

 

 そう言って虹夏ちゃんは差し入れの袋を持ってみんなのところへと向かう。相変わらず明るくて何よりだ。

 

 

 

「あら、雄介さん。来たんですね」

 

「おおPAさん。昨日はごめんな。あんなにからかっちまって。これ、お詫びと言ってはなんだが、晩飯にでも食ってくれ」

 

「別に良いですよそんなこと。お酒の席なんで多少のことは許します」

 

「いやいや、そうは言っても俺が悪いから。受け取ってくれ」

 

「...雄介さんって頑固ですね」

 

「昔からそういう性分でな」

 

 

 そう言いながら俺はPAさんに唐揚げの入った袋を手渡す。こういうとき、音弥なら洒落たものの一つでも渡すのだろうが、俺はそういうのは苦手だからな。

 

 

 

 

 

 そうしてPAさんと話していると、入り口の扉が開く音が聞こえた。

 

 

「ん? 雄介お前も来てたのか?」

 

「おお、巧。お前もライブ見に来たのか?」

 

「おう。リョウちゃんからチケット買ってな」

 

 

 

 そう言いながら巧はチケットの半券を見せながらそう言う。あの宴会以来巧とリョウちゃんは同じベーシストとして意気投合したらしく、たびたびSTARRYに来るようになっていた。

 

 

 

「お前ももうすっかりファンだな」

 

「まあな。それに、若い奴らは応援してやりたいしな」

 

「そうだな。最近はノルマも捌ける日も増えてきたらしいし、もっと頑張って欲しいもんだな」

 

「相変わらず姪バカだな」

 

「うっせえよ」

 

 

 

 

 

 そうやって巧と2人で話していると、またも扉が開く音がした。

 

 

「こんにちわー!! ばんらぼってバンド批評サイトで記事書いてるものですが、結束バンドさんに取材お願いしたく~ あっわたしぽいずん♡やみ14歳で~す☆」

 

「...はい?」

 

「なんかふざけた野郎が入ってきたな...」

 

 

 

 

 入ってきたのは、いわゆる地雷系ファッションに身を包み、やたらとぶりっ子めいた口調で話す自称ライターだった。 っていうか14って...かなりの童顔だがどう見ても20歳くらいだろ? 

 

 

 

「アポとか取ってます?」

 

「ごめんなさ~い取ってないですぅ☆」

 

「よしPAさん。追い出そう」

 

「お願いします」

 

「いやちょっと判断早すぎません!? アポ取ってないのは悪かったですけどせめて話しは聞いてくださいよ店長さん!?」

 

「俺は店長じゃねえよ。まあここの店長の親戚だから関係者とも言えるがな」

 

「あ、そ、そうなんですね...とりあえず要件が終わったらすぐ立ち去りますので、大丈夫ですか?」

 

「PAさん、どうだ?」

 

「まあ、変なことしたらすぐに出ていってもらいますので、そこは頭に入れておいてくださいね?」

 

「は、はい。分かりました...」

 

 

 

 そう言ってPAさんが釘を刺すと、ぽいずん♡やみは虹夏ちゃん達に声をかけ始めた。まあ変なことしだしたらすぐに星歌に伝えて、俺と巧で強制退場させるつもりだが。

 

 

 

「ぽいずん♡やみ...ああ、あいつかよ」

 

「知ってんのか巧?」

 

「ネットで有ること無いこと適当に書いてる三流記者だよ。俺の知り合いも適当な記事書かれて迷惑してたよ」

 

「フウン。なるほどな...」

 

 

 巧の話を聞きながら、俺はぽいずん♡やみの様子を見る。大方あの文化祭の時のダイブの動画の件で、ここに来たのだろうが、変なことしないうちは放っておくことにしよう。

 

 

 

 

 

 その後、ぽいずん♡やみは星歌から注意を受けた以外は特に変なことは起こさず、結束バンドのライブも無事に終わった。

 

 

 

 

「今日のライブ良かったですー!!」

 

「あ、ありがとうございます...」

 

「これ差し入れでーす」

 

 

 ライブが終わった虹夏ちゃん達に、ぼっちちゃんのファンの二人が差し入れを渡していた。あの子達も文化祭の時も来てたし、皆勤賞レベルでライブに来てくれてるな。

 

 

「演奏のこととか良く分からないけど最近すごく良い感じします!!」

 

「あ、大体同じお客さんだから最近慣れてきて...」

 

「そこ慣れないで!! 少しでもお客さん増やさなきゃダメじゃん!!」

 

「まずは今いるファンの人たちの前で最高のプレイができるようになることが先じゃないかって...」

 

「正論ぶちかましてきた!!」

 

「あの!?」

 

 

 虹夏ちゃんとぼっちちゃんがそんなやり取りをしていると、先程とは打って変わった真剣な面持ちでぽいずん♡やみがぼっちちゃんに声をかけた。

 

 

 

「その、まさか...まさかとは思ったんですけど。その歌うようなギタービブラートのかけ方、所々に滲み出る演奏のクセ...絶対そう!! 間違いない!!」

 

「あなたギターヒーローさんですよね!?」

 

 

 

 ぽいずん♡やみの言葉が、ライブ終わりでほとんど人のいないSTARRYに響いた。

 

 

「嬢ちゃんが...?」

 

「ギター、ヒーロー?」

 

 

 ぽいずん♡やみの言葉に、俺たちも大いに驚く。そして、結束バンドにとって1つの分岐点となるその夜は、まだまだ続くのだった。

 

 

 

 




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