伊地知虹夏の叔父さん《本編完結》   作:炎のユニコーン

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 初投稿です。よろしくお願いします。


本編
0,プロローグ


 ──子供の頃、親戚の集まりなんかでたまにいる「なんの仕事をしてるのかわからない親戚の叔父さん」がいた人はいるだろうか? 

 

 あたし、伊地知虹夏にも一人だけそんな人がいる。

 

「やっほー雄介おじさん。久し振り」

 

 ここはあたしの家であるスターリーから少し離れた路地にある雑居ビルの一角、その中にあるこの店──「bar Woodstock(ウッドストック)」で一人夜の開店に向けて仕込みを行うおじさんに声をかけた。

 

 

「あら、虹夏ちゃん。どうしたんだわざわざこんなところへ?」

 

 

 慣れた手付きでグラスを拭きながらおじさんはそう答える。お姉ちゃんより5つ年上なだけなのに、子供の頃から落ち着いた雰囲気のある人で、大人はみんなこんな感じなんだなと子供心にそうおもっていた。

 

 

「いやあ、お姉ちゃんがおじさんの所に忘れ物しちゃったから、学校帰りに取りにいってくれって。まったく、お姉ちゃんの方がすぐ取りにいけるくせに」

 

「ああ、昨日はえらく飲んでたからなあ。帰りは良く一人で帰れたもんだと思ったよ」

 

「ほんとだよー。あのあとお姉ちゃん二日酔いで朝は起きれなくて、様子を見に来たPAさんがお店まで引っ張って行ったんだから」

 

 

 そう言って私は朝の姉の行動を思い返しながら、やれやれと言った調子で答える。

 

 

「ハハハ。そら大変だったな。ああそうだ。学校帰りで腹減ってるだろ。なんか軽く食べるかい?」

 

「え!! 良いよそんなの。急にやってきたのこっちなんだから」

 

「まあそう言うな。若いんだからしっかり食え食え」

 

「うーん...じゃあお言葉に甘えてちょっとだけ」

 

 

 そう言ってあたしはそれほど広くない店内のカウンターに座って料理が来るのを待つ。

 

 このお店はなぜか良くわからないが、バーなのに名物が唐揚げとカレーという不思議な店である。

 

 少し前に理由を聞くと、「先代のマスターが裏メニューで出してたのがいつの間にか名物に変わってた」ということだった。

 

 ただ、その2つの料理も名物というだけあってとても美味しく、おじさんに教わって唐揚げをマスターしたくらいである。

 

 

 

「ほら、出来たぞ。熱いうちに食べな」

 

 

 そう言っておじさんは揚げたての唐揚げと付け合わせのレタスの乗った皿をわたしの前に置いた。

 

 あたしは出された唐揚げを箸で1つ掴むと、そのまま口に頬張った。

 

 

「んーーやっぱり美味しい。あたしも家で何度か作ってるけど、ここまでのクオリティは出せないんだよねえ」

 

「そりゃあ伊達に10年以上この店で唐揚げ揚げてないからな。そう簡単にはできないさ」

 

「うーん。やっぱりそうだよねえ」

 

 

 そう言ってあたしはおじさんのご飯を食べながら他愛もない話を続ける。

 

 

「そういえばバンドは今どうなんだい? 最近ギターの子が入ったって聞いたが」

 

「あーうん。喜多ちゃんって子が新しく入ってね。リョウの路上ライブやってるのを見て入ったんだけど、なかなか3人で合わせようにもその子の予定が合わなくって」

 

「そうかあ。しかしギターが入ったってことはいよいよバンドらしくなってきたなあ」

 

「そういえば、おじさんも昔バンドやってたんだよね。おじさんのバンドってどんなだったの?」

 

「あーーうん...まあそんな話すようなバンドじゃなかったからな...」

 

「ふーーん...」

 

 

 おじさんも昔はバンドをしてたらしいが、その事を聞くといつも適当にはぐらかされる。何かあったのかな? 

 

 

「あっそうだ。来週あたしたちはじめてお客さんの前でライブをするんだけど、よかったらおじさんも来ない?」

 

「良いのか? 俺なんかが行っても」

 

「だいじょーぶだいじょーぶ。ライブって行っても前座みたいなものだし、気楽に見に来てよ」

 

「そうか...分かった。来週はしっかりと姪っ子の活躍、この目に焼き付けてやるよ」

 

「いやそこまで気合い入れられるとこっちも緊張するからやめて!!」

 

 

 

 

 

 

 そう話すうちに唐揚げもすっかり食べ終え、頼まれていた忘れ物を受け取ると、あたしはスターリーへと帰っていった。

 

 

「あ、虹夏。ずいぶん遅かったけど、どこ行ってたの?」

 

 

 スタジオ練習のためにスタジオに入ると、すでに練習準備を終えたリョウがそう聞いてきた。

 

 

「あーゴメン。お姉ちゃんの忘れ物取りに行ったら、ついでにご飯まで食べさせてもらってすっかりおそくなっちゃった」

 

「もしかしてウッドストック?」

 

「そーだよーおじさんのとこ。リョウも知ってたっけ?」

 

「虹夏や店長が話してるのは聞いてたから知ってる。ご飯食べれたのならわたしが行けば良かった」

 

「いやいや、リョウは遠慮無しで食べちゃうでしょ。まったく、そういうと思ってリョウの分も貰ったから後で食べなよ」

 

「虹夏優しい...好き」

 

「あーもう分かったから。喜多ちゃんはまた来ないの?」

 

「うん。急な用事だって」

 

「はあ...仕方ないから二人でやろう」

 

 

 そう言って私とリョウはいつものように2人で練習を開始する。

 

 

 この時私はまだ知らなかった。一週間後、この結束バンドにとって、そしてわたしにとってのヒーローと出会うことを...

 

 

 

 




 次回からはおじさんメインで動かしてく予定です。

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