葛の恋   作:勉強サボ浪

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今回短めです。
ジムシャニ2巻が10/5に届くので、ドラマCDの内容次第で次回の内容が変わるかもしれません。



1人→2人

 はづきと千雪を仲直りさせる。

 難しいことは明白だ。なにせ現状プロデューサーと千雪の間ですら事務的な連絡しか交わさないのだから、怨敵ともいえるはづきとの関係は冷戦を通り越した冷たさであることは明白だ。

 

「……いや、そう言われてもな」

 

 プロデューサー抜きで企画が進められている朗読劇の会議に久方ぶりに参加してそんなことを相談すると明らかに嫌そうに樹里が答えた。

 朗読劇には千雪も参加しているが、彼女は現在雑誌のインタビューでミーティングに参加していない。

 

「なんというか――具体的に何をされたのかは知らないけど、千雪さんが泣き腫らした日があったんだ。何があったのかは教えてくれなかったけどさ……プロデューサーたちがなんかしたんだろ?」

「……あぁ、そうだな。一分の反論の隙もない」

「そんな状況で『どうにかしてください』って泣きつかれてもな……」

 

 樹里の苦言がそのままだった。確かに千雪はあの日プロデューサーを誘惑しようと動いたが、これは自分たちの行動――面倒だからと一人ひとりに対話を施さなかった自分たちの責任でもある。

 だからといって千雪の名誉のためにあの夜のことを明け透けに伝えるわけにもいかない。

 少し剣呑になった会議室の雰囲気を改善するために結華が口を開く。

 

「はづきさんは何て?」

「こっちで独自に動いてみるんだってさ」

「……それ、よくないよね」

 

 結華の意見に同調するように後ろに控えていたアイドルたちが頷く。

 

「個々人が各々勝手に動いて、結果うまく往かなくなるからやめたほうがいいよ。アンティーカのときだってそうだったじゃん」

「……そうだな」

 

 結華から叱責を受けるプロデューサーを見て透が気になったように口を開いた。

 

「プロデューサーってさ、はづきさんとあまりコミュニケーション取れてない感じ?」

「………そうかもしれない」

「恋人なのに?」

「恋人……たしかに、そうなんだけどなぁ」

「将来の奥さんになるかもしれないのに、そうゆう込み入った話はしないんだ」

「……そうだな」

 

 確かにそうだ。はづきも彼もお互いの問題はお互いのみで解決したがる傾向がある。そのくせ他人の問題にも関わりたがるのだ。

そんな2人だからお互いがお互いを干渉しすぎるのは良くないと勝手に判断して関わらないようにしていた。

 

「まるで1人で生きているみたい。信用していないの? はづきさんのこと」

「信用してるさ。信用してるから、任せられるのであって……」

「放任と放置は違うとおもうよ」

「……透は難しい表現をするな」

「ごまかさないで」

 

 透の表情は嫌悪の感情だ。形の良い彼女の顔が明らかに歪むほど、明らかに失望している。

 

「プロデューサーは自分たちのことになると何も相談しない。他人の人生には簡単に踏み込むくせに自分の人生には関わらせようとしない」

「……あぁ」

「よくないよ、そういうの。まだ付き合って1年も経過していないのに二人三脚できてない」

「……」

 

 彼は黙った。黙るほかなかった。何の反論の余地もない。

 283プロをここまで成長させた敏腕プロデューサーはこの場にはいない。そこにいるのはただただ他者に自分の問題を話さない、いや話せないコミュニケーション能力の低い男だ。

 

「一度本気で話し合ったほうがいいよ。……たとえ怖くても」

「――………わかった」

 

 この会議室でかつてのように彼を慕う者はいなかった。

 

 

 その日の夜。彼の家では彼とはづきがキッチンで洗い物をしていた。

 

「それで……はづきさんはどうですか。――千雪のこと」

「………困窮しています」

 

 かちん、と布巾で拭いた皿を電子レンジの上に乗せる。無言ではづきが洗い終わった水浸しの皿を彼に渡した。

 

「大崎さんたちに掛け合ってはみましたが……やはり、私がやったことが大きすぎたんですよね」

「――俺たちだよ」

 

 相変わらず自分の責任にしたがるのはお互いの良くないところだ。真冬に皿洗いをして冷たくなったはづきの手を握って温める。

 

「俺たちが、やったんだ。アイドル達の好意に目を背けて……それで起こる自業自得に酔っている。自分の不幸体質に……自分が不幸であることに愉悦を感じている」

「不幸に……愉悦」

「他人に責任を渡せない……いや、渡さない。どこまで行っても自分は自分という個人であり、自分の人生に他人が介在することを嫌う。そうして起こる余計な仕事に呆れながらも充足感を感じずにはいられない」

 

 はづきが何かを言いかけて、しかし何も言い返せなくて視線を逸らす。エアコンのカビ臭い呼気が鼻につく。

 しばらくして彼女が彼の手を強く握って言った。

 

「それでも……私はあなたと――!」

「透に言われたんです。はづきさんと俺はこれから結婚するというのに何も相談しない、何も話さない――まるで独りで生きているみたいだって」

「……はい」

 

 認めるしかない、そんな様子で彼女は目をそらして失意に浸っていた。

 

「だから、さ」

 

 はづきの後悔に沈んだかんばせを無理やり覗き込んでその瞳を覗き込んだ。

 

「協力しよう。……恋人として――これからは家族として」

「……でも、私ひとりよがりですよ」

「俺もそうです。だから、いっしょに頑張りましょう」

 

 その言葉にはづきは頷いた。

 

 

 




合同誌に寄稿する作品のチェックを姉にやらせることが多いのですが「シャニPクズだね」とよく言われます。
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