葛の恋   作:勉強サボ浪

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AC6、楽しいです。


酩酊

 七草はづきは疲れていた。

 バイトから正社員に昇格したが業務内容は以前とあまり変わらない。アイドルの出演の同行や察しの悪い学生バイトの対応、一つ一つはそこまで負荷ではない。しかしアイドルプロデュースというのは細々とした業務が積み重なり非常に煩わしい。

 加えてプロデューサーが異性のアイドルに同行できないような仕事を割り当てられることもある。

 だから定期的なガス抜きをしていた。

 

 

 平日夜のカラオケボックスは料金が案外安い。

 アイドルほどではないがそれなりの歌唱力がたった一人しかいない部屋に響き渡る。

 

「ふぅ……」

 

 マイクを置きぶどうジュースを飲んで喉を潤す。甘ったるいものばかり飲んでいた弊害か、紅茶のような口直しが欲しくなる。

 一人でカラオケに行くのは特に気にならない。にちかや千雪と行くこともあるが、誰かと行くときは基本的に盛り上げ役として参加するのが主でありマイクを握ることが少なくなる。

 そういえば千雪に歌声を褒められたことがあったっけ。本業の人に褒められるなんて……

 思考を打ち切る。

 どうしてオフで人間関係のことを考えないようにカラオケに来てるのに仕事のことを思い出してしまうのか。

 モニターには宣伝映像が流れタブレットからはピーピーと電子音が鳴り響く。延長は考えていない。歌い飽きたはづきはそのままカラオケボックスを出た。

 会計をし、雑居ビルから出て梅雨の湿気を孕んだ空気を身に感じていても家に帰る気がしない。

 梅雨間近の夜空の下を歩いてもすっきりしない。それでもどうしようもないから添加物の後味が消える前に家に帰ろうかと考えた。

 

しかし

 

「あれ、はづきさん?」

 

 偶然、プロデューサーと出会ってしまった。

 

 

 頭の片隅では罪悪感が蠢いている。

 それを意識しないようにはづきは未だ果てないプロデューサーの耳を劣情を煽るように舌を這わせる。

 

「はづきさ――」

 

 その声を強引に唇でふさいだ。

 ――どうして私は同僚を性欲のはけ口として使っているのだろう?親友の恋路を応援しているつもりなのに、どうして……

 ラブホテルのベッドの上。湧きあがった疑問は彼の唾液とともに飲み込む。

 大した趣味がないというのは問題だな、とようやく果てたプロデューサーを見下ろしながら思う。

 

「はづきさん……」

 

 うめき声を出しながらベッドの上で悶えるプロデューサーの顔をなでる。

 

――まるで恋人気取りね。

 

 脳裏の自分の思考を感じ取ったはづきは「……すみません」と自身の腰を上げて離れた。

 

「あ、あの」

 

 ホテルに備え付けのシャワーを浴びるために、何より自分の感情を整理するために彼から離れようとするはづきをプロデューサーは腕をつかんで引き留めた。

 

「――どうかしましたか~?」

「その……今夜はどうして誘ったのかな、って」

 

 頬を紅潮させて、まるで今夜が初体験だったような初心な態度で尋ねる彼。

 そんな彼を自分のフラストレーションのはけ口のために利用していることに少しだけ抵抗を感じる。

 

「…………そうですね。今日は………ただ――本当に、日ごろの苛立ちを発散したくて」

「――性行為で、ですか」

 

 嫌悪感ほどではないが困惑の表情。そりゃそうだ、セックスでフラストレーションの解消なんてモラルに反しているし阿婆擦れだと思われるだろう。

 でも彼は、

 

「………何か仕事で、嫌なこととか不満点があったでしょうか……?」

「えっ。………」

 

 身内相手だとなんでも好意的に捉えるのが彼の良くないところよね。

 はづきは必死で回答を考えてしどろもどろに答える。

 

「まぁ――いえ、えーっと……特には」

「……そうなんですか?」

「まぁ……」

 

 不満点が無いわけではないが、微々たるものだ。少なくともはづきにとっては無視できるものである。

 だから彼女が彼を求めていたのは単純に性モラルの差ゆえということにあるのだろう。

 

「大丈夫ですよ。私は何ともないですからね~」

「はぁ……」

 

 困惑のまま全裸で放り出されたプロデューサーを無視してはづきはシャワールームに向かった。

 

 

 しかし一度始まった縁は強く残り続ける。

 結局二人は2週間に1回は逢瀬を行うことになった。 爛れてはいたものの、しかし誰もが思い浮かべる典型的で特筆することのない男女の営みだ。

 プロデューサーはそのことをあまり良くは思っていないようだったが、はづきが強引にホテルに連れ込んだ。

 誰がどう見ても爛れたこの関係を、はづきはセフレと名付けたくはなかった。

 

「もうやめませんか」

 

 服を着ながら数時間の逢瀬を終わらせたプロデューサーは言った。

 

「こんな関係、良くないですよ。恋人でもないのにこんな……体だけの関係なんて」

 

 真っ当な、しかし正しいだけの意見にはづきは「そうですね~」と雑に頷いた。

 ソファの上に置いた上着に袖を通しながらはづきは内心彼の言動に苛立っていた。どうしてこのような感情になるのかは自身でもよくわからない。

 

「――はづきさん!」

 

 不意にはづきの腕がプロデューサーによって掴まれた。

 振り返ると彼が真剣な顔でこちらを睨んでいる。

 

「ど……どうしましたか~?」

 

 どうして私はここで声が上擦ったのだろう?

 

「私はこんな関係、良くないと思います」

「それはさっき聞きました~」

「だってこんな……自分を安売りするようなこと、良くないですよ!だって――あまりこういうことは言いたくないですけど、千雪のこととか――」

 

 友人の名前が出た瞬間、はづきは強引に彼の唇を奪った。

 

(――あぁ、私も彼に恋をしていたのか)

 

 彼の口に強引に舌を突き入れ、舐めまわす。ほかの女の匂いがしないように、

 

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