人工フラクトライトとして紫の十字架は生まれ変わる 作:出涸らし皇子のファン
あまりよく書けませんでしたが、いかがでしょうか?
ボクがこの世界に来てから2ヶ月くらい経った。あれから現実に戻ることはなかったので、フルダイブして来ているわけでもないみたい。
でも、ボクの容姿はかつて絶剣と呼ばれたインプのアバターに近く、
仮想世界と無関係でもないみたい。ちなみに鏡がなかったので川で確認するのはだいぶ時間が経ったあとだった。
ボクは朝早く起きて、料理の配膳を手伝い、食べたらキリトと別れて神聖術の稽古をしている。神聖術はいわゆる魔法に近くて、正しいコマンドを唱えるとできるみたいだけど、それだけじゃなくイメージも必要みたいで、まだまだ要練習みたい。お昼近くになったらアリスの家にお邪魔して、一緒に料理をして2人の元へ行く。そこで4人で食べて、帰ったら教会の掃除を手伝う。後は夕飯食べてお風呂入って寝る。これが
ボクの1日。
でも、これを過ごすたびに思うんだけどあの2人だけ天職が大変すぎない?って思う。一応先祖代々の悲願みたいで名誉があるらしいがとても見合っていないとも思う。まあ、2人はこれ以上言わないのでボクも
何かいえるわけじゃないけど。
「ユウキも馴染んできたよなー」
「そうねえ、前はあんなにも無知だったわねぇ」
「みんなが教えてくれたからだよ。それに禁忌目録とかまだまだ暗記できてないよ」
「まあ、それは僕も一言一句誦じてるわけじゃないさ」
今はお昼でいつも通り4人で食べている。今日はサディナおばさんに
手伝ってもらってないけどそこそこ上手く作れたんじゃないかな?
「しっかし、料理もずいぶんうまいよなー。ユウキの方が才能あるんじゃないか?」
「なによー。キリトだけパイいらないわね?」
「ウソウソ!アリスも料理上手です!食べたいです!」
うーん、キリトが失礼なこと言ってすぐに怒られるのも前と一緒な気がするなぁ。アスナから聞いただけだけどさ。
それにしても、やっぱりキリトは歳も全然違うけど性格とか似ている
どころじゃない気がするんだよね。キリトも若返ってるとしか思えない。なんならボクも記憶ありで若返ってるし。
「そういや、次の安息日はどうするー?」
「キリトの悪戯はもう勘弁かな…何故かアリスもそれにノッてるし」
「なんだよー。ちょっと教会の中を探検したり色々実験してるだけだろ?」
「うーんキリトのはちょっとどころじゃない気がするのはボクもかなー」
「そうだよね。ユウキもそう思うよね!」
「そんなに嫌かよ…」
「まあ、私は面白がって裏で潜んでいるから怒られるのは2人だけだもんね」
「村のみんなは村長の娘がこんな悪戯するわけがないって思ってるからな」
キリトの言った通り、何か実験という名の悪戯をするときは実はアリスも一枚噛んでいる。ただ、提案だけして裏でこっそりとしているので
周りに気づかれない為、主にキリトと巻き込まれたユージオが怒られているのをよく見る。
「そんなにいうならユージオが決めてみろよー」
「うーん、そうだね。まだまだ暑いし、川遊びしようよ!今度は4人でさ」
「そうねえ、久しぶりに川で遊ぶのはいいわね。ユウキも混ぜて遊んだことないしいいんじゃない?」
「おっそうだな。ユージオにしては名案じゃないか!」
「僕にしてはは余計だよキリト。それで、ユウキはどうかな…」
「うん!ボクも遊びたい!」
ボクは前世というか現実ではそう言った遊びはあまり出来なかった。
病気が進行しちゃうかもだったし、友達とは一緒にやれることが少なかったんだよね。
…そういえばここではボクの病気も大丈夫だよね?また嫌なこと起こんないよね?
一応今まで身体が辛いとか風邪ひいたりはしてこなかった。きっと大丈夫だと信じよう。
「よーし、決まりだな!明日の安息日はルール川で川遊びに決定!」
「その前に僕らは今日の分の天職を終わらせなきゃね」
「う、盛り上がってる時に言うなよー」
「何言ってるんだい、こういうのは早く終わらせて明日に備えるんだよ」
「おっ?意外と楽しみなんだねユージオくん?」
「それじゃ、私たちもいきましょっか、ユウキ」
「うん!」
安息日はいわゆる休日なんだけど、今までは3人に禁忌目録とか色々教えてもらってたからあまり遊べなかったんだよね。一区切りついたし、みんなで遊べる!そう思うと思わずウキウキしちゃう。こんな気持ち、ALO以来だ。
それから1日が経った。
「うーん、アリス、遅いねー」
「全くだ!女の準備ってやつはなんでこんな遅いんだよ!これだから女は…」
「それは早く着いたボクは女の子じゃないって言ってるのかなー?」
「あっいや!そういうわけじゃないよ!むしろユウキを見習ってほしいって意味だよ!」
「女の子全般に言ってるようなもんだけどね、それ。それに、アリスはお弁当を作ってくれてるんだから文句を言える立場じゃないだろ」
「えー、それにしたって遅くないか?お前、もっと早かっただろ?」
「まあまあ、村長の娘なんだし、大変なんじゃない?」
とりあえずキリトを揶揄いつつ、アリスのフォローをする。
そういえばお弁当作り手伝わなかったけど大丈夫かな?もしかしてボクを待ってた?
「うーん、あんまり遅かったらボクが様子を見てくるよ」
「その必要はないわ」
「あっアリス、いつの間に!?」
「今きたのよ。はい、持ってね」
そう言ってごく自然にキリトとユージオに荷物を渡して、自身はどこからか取ってきた猫じゃらしを振って2人に指図する。2人もあまりの自然さに疑問も持たずに受け取る。しかしすぐにはっと気づくも、もう文句も言えない。代わりにキリトはすぐさま枝を拾ってアリスに対抗して振っている。楽しそう。
「ユウキはあまりああいうのはしないの?」
「?ああいうのって…ああ、そうだねー、ていっ!」
楽しそうに見つめてるとユージオがやらないのかを聞いてきたので
ボクも自分の枝を取ってユージオに軽く当てる。
「ユウキ!?いきなりは卑怯だよ!」
「勝負にズルも卑怯もないのだ!」
「なんの勝負だい…なんか時々キリトっぽくなるよね、ユウキって」
なんかサラッと貶されたような気がしたのでさらに枝を振るう。しかし次は予測していたのかサッとかわしてユージオもまた枝を取っていた。
「やるねー、でもそんなんじゃ当てられないよ!」
「う、うわわっ!」
かつて絶剣と呼ばれたのだ。こんななんてことない遊びでも負けないよ!
とあまりに大人気ないことを思いながらついでと言わんばかりにキリトにも振るう。でも意外だったのは、キリトやユージオよりもアリスが
ひらりとうまく避けてペシっと叩いていた。
意外とこういう才能があるのかな?と思いながら遊んでると、
「ね、ねぇそろそろ川へ行こうよ。だいぶ時間が経ってるよ」
…すっかり忘れてた。どうやら自分が思っていた以上に夢中になってしまったようだ。ユージオに言われ、慌てて枝を置いて行く。
「ご、ごめんごめん。意外と楽しくってさー」
「おいおい、俺たちを叩くのがそんなに楽しいのかよ」
「それは2人が弱いのがいけないんだよー。アリスにだって負けてるじゃん」
「次は絶対当ててやる!」
あれからしばらく歩いて川に着いた。
「わあ、まだまだ暑いのに水は冷たいね、どうする?」
「うーん、裾まくって足だけつけるなら大丈夫だと思うよ」
「おいおい、ここまできてその程度で終わるわけないだろ?」
キリトがそう言って水をかけてくる。主にユージオを狙っているが、
水という不定形なものなのでボクにもかかった。
「やったなキリト!」
「2人で攻めるよ!」
「えっちょ2人がかりは反則だぞ!」
「「不意打ちしたのはそっちだよ!」」
「…結局、水の掛け合いっこから始まるのねぇ」
…アリスも混ざってしばらくお互い水を掛け合いまくって、結構濡れてくると、
「結構濡れちゃったわねぇ」
「もうびしょびしょだよ。どうする?」
「ま、このくらいならすぐに乾くわよ。それより、楽しかった?」
「え?うん。すごく楽しかったよ!急にどうしたの?」
「よかった。ほら、ユウキってなんか遊ぶ時に周りを気にして遠慮してたからさ。精一杯遊べたらと思ったんだ」
「にしても、今は水もちょうどいい冷たさだし、本当に妙案だったな、ユージオ!」
…どうやらここにきたのは3人共がボクを気遣ってくれたらしい。
なんか、子供同士でこんなふうに気遣ってもらって、楽しませてくれるのってあんまなかったからなんというか…すごく嬉しいな!
「うん…本当にありがとね!みんな!」
「お礼はいいよ。そろそろ川から出よっか…うわっ!」
「「「ユージオ!?」」」
ユージオが川から出ようとした時、転んだのか、水飛沫を上げながら
沈んだ。三者三様の声が出る。
「だ、大丈夫!?」「お、おい?」「ぶ、無事?」
「プハッ、大丈夫だよ。ちょっと転んだだけさ」
そう言ってユージオは微笑む。
「なーんだ、気をつけろよなぁ。…それにしても、ユージオ、お前ずぶ濡れじゃないか!」
「ふ、ふふ。そ、そうね。村に帰るまで乾かないんじゃない?」
「あはは、頭まで、どーすんのー?」
そう、髪も服も全部水に浸かってしまった為ずぶ濡れだった。それが
おかしくて3人でひとしきり笑った。笑いすぎてお腹痛くなって、ユージオから少し拗ねられたのは余談だ。
「まあでも、なんか滑るよねー。ツルツルしてるし」
「そうねえ、でも気をつけていればなんてことないわよ」
「ははは、そういってやるなよ。ほらユージオが拗ねてるぞ」
3人で笑った後、川から出ようとして、近くの岩に手をかけて…
「うひゃ!?」
川の中を魚が泳いでいたのか、何かが水の中で当たって驚いてしまった。それだけならいいのだが、驚いた拍子に滑って、転んだ。さらに、
川の真ん中じゃなく近くに岩のある川の端で転んだ為水がクッションにならず、擦りむいてしまった。
「ちょ、ユウキ、大丈夫!?」
「お、おい、お前もか!?」
「え、ほんとに大丈夫!?血が出てるよ!」
「え、あ、だ、大丈夫だよ。ちょっと擦りむいただけ…」
みんな心配してくれる。まあ、この程度なら自然に治る程度だ。騒ぐほどでも…
「大丈夫?今、神聖術をかけてあげるからね」
そう言ってアリスが傷口に触れようとする…
「触れないで!」
「えっ?」
「あっ…」
しまった…どうしよう、エイズは血でも感染するから誰かに触れさせちゃいけないって教わったけど、それで疑われてしまった…でもそれって誰かにバレると近づいてくれなくなる、なんなら病原体扱いされる。
怖い…また学校でいじめられたように誰も助けてくれなくなる、しかも今度は家族もいない。
きっと3人も勘づいただろう。もうボクに近づいちゃいけないって。
病気にかかるかもって。そうして離れるだろう。
そんな最悪の未来を想像して身体が震える。
だって家族もアスナたちもいない、いま拒絶されたら一人ぼっちだ。
ずっと嫌われ者になって友達もいなくなる。もうそんなの嫌だよ。
「あ、ああ…う、…」
どうしよう…せっかく仲良くなれたのに…なんでこうなっちゃうの…
うまい言い訳も咄嗟には思いつかず、しどろもどろになってしまうばかり。そしてアリスが口を開くのを見て、恐怖が募る…
「ねえ、ユウキ。別に酷いことするわけじゃないわ。ただ、あなたの傷を治したいだけなの」
「そうだよ、ちょっとした傷でもちゃんと手当はしないと…」
「ああ、どうしたんだ?アリスなら万が一もないぞ!大丈夫だぞ!」
「えっ…」
あまりにも予想だにしなかった、ただただユウキの怪我を気遣う言葉ばかりで困惑する。
「えっ…なんでみんな怪しまないの?ボク、明らかにおかしいことしてるよね?」
「?一体どうしたのかな、とかは思うけど…それ以外にないよ?」
「そうね。それより早く治したいから傷を見せてほしいくらいだわ」
「まあ、確かにおかしいけど…そう敵対するようなことじゃないだろ?」
そう言ってみんなは疑わない。どうして?ボクと同じ病気にかかったら死ぬかもしれないのに。ああ、きっと知らないんだ。ただ、どのくらいの病気かわからないだけでこうして接してくれてもきっと知ってしまえばこう優しくしないだろう。
なら何も言わなければ友達でいてくれるかも…
でも、そうやっていつまでも騙すの?それこそ友達と言えるの?
なら言ってしまってもいいのかな…
「ぼ、ボクは病気かもしれないんだよ…。血に触ると病気が移るって言われてるんだよ…。」
「病気!?ちょっと大丈夫なの!?そういうことは早く言いなさいよ!」
「そうだよ!もしかしてそれで僕達と心なしか距離を取ってたのかい!?」
「ちゃんと言わないと治せるもんも治せないぞ!」
「えっ…」
なんでみんなボクを心配してくれるんだろう…。今病気が移るかもっていったのに…
「な、なんで…」
「?ユウキ?」
「なんで!そこまで優しくしてくれるのさ!ボク、そのせいでいじめられたから知ってるよ!この病気はみんなに良くないことが起こるって!
ボクはもう嫌だよ!友達が消えるかもしれないと怯え続けるのも!
ずっと隠して生き続けるのも!だって、ボクはそのせいで…」
きっとボクはこの時冷静じゃなかったんだろう。落ち着いて話せばまだ
理解してくれるかもしれないのに、感情任せで思いをぶちまけてしまった。
けれど、みんなは、
「だって、ユウキ、辛そうだよ」
「えっ…?」
「うん、あなた今、泣いてるわ」
どうやら言葉と共に出てしまったようで、ずっと溢れて止まらない。
手で拭っても拭っても止まらない。不意に、ふわりと温かく感じる。
「ごめんね…ユウキを思いと苦しみに気づかなくって…ごめんなさい…
あなた一人でそこまで背負う必要もないわ」
「うん…僕も気づかなかった…この2ヶ月一緒にいたのにごめん…。アリスの言う通り一人で背負わなくてもいいよ。僕達はユウキから離れないよ。何があってもね」
「ああ、その通りだ。気づけなくて本当にごめん…でも俺たちはそんな理由でお前を一人にしない。これからはみんな一緒だ」
アリスに抱きしめられ、続いてユージオがボクたちを、そしてキリトがそれに重なって抱きしめてくる…
なんで…なんでそんなに優しくしてくれるの…
みんなボクを忌避して、離れるのに…
でも、ここでようやく、ボクは3人を信じていいって思え始めたんだ。
「みんな…でも、移って病気が進んだら死んじゃうかもしれないんだよ…」
「そんなの関係ないわ。私たちはユウキと一緒にいたいの。それじゃだめ?」
「そんなこと…」
「そうだよ。それにそもそも僕ら3人は生きるのも、死ぬ時も一緒だって決めてるんだ。そこにユウキだって一緒だって決めたんだ」
「おう、これで俺たち4人で永遠に親友だ。たとえそれで死んでもみんな一緒なら俺たちは恨まない。お前がそこまで気にする必要はないんだ、ユウキ」
「みんな…」
さらに涙が溢れてくる。だって、ボク一人のためにここまでしてくれるなんて思いもしなかった。現実じゃ、前の世界じゃ家族以外に親しい人はいなくて、病院に行って病気を持った人たちで集まってようやく友達が、アスナに会えたのに…今はこんなに優しく、温かい人たちに出会えた。これが夢じゃないように…そう願いながら確かめるようにボクもみんなを抱きしめた。力を入れるとそれに応えるようにみんなも力を入れてくる。それが、どうしようもなく温かった。
ボクはここにきて一番幸せなこの日を忘れることはないだろう。
日常を描くにはネタがあまりないんで次も結構飛びます。
申し訳ありません。