新星は制服に着替えて校内を歩き回っていた。
周りには慌てている様子を悟られない様にしているが内心では冷や汗をかいていた。
学校に侵入している可能性があるのもそうだが持ち込んでいる武器が新星を焦らせていた。
「どこにいるんだよ……!」
「あっ、明銀くんここにいたのね。お昼は中庭の清掃する約束でしょう?」
「古手川さん、ごめん今はそれどころじゃなくて……明日は今日の2倍頑張るから!」
「あっ!ちょっと待ちなさい!」
新星はそう言って足早に去って行き、教室へと到着する。
「リトいるか!?」
「お、明銀。リトならさっき出て行ったぞ。それとララちゃんもリトを追いかけて行ってなぁ……!」
猿山がリトを追いかけて行ったララを思い出し、羨ましそうに呟く。
教室にはいないとなるとどこにいるか分からなくなる。
(こんなことになるなら発信機かなにか持たせておけばよかった……!)
新星はあることに気づき、教室を出ると振り向きざまに追いかけて来た古手川とぶつかってしまう。
「きゃっ!」
「あぶない!」
後ろに倒れそうになる古手川の腰に手を回し、自分のほうに抱きしめるように起こす。
「ご、ごめん。怪我はない?」
「え、えぇ…大丈夫よ。そ、それよりその……」
抱き締めていることにより古手川の豊満な胸が新星の体に当たっていた。
古手川は顔を赤くしており、新星もそれに漸く気づいて慌てて離れた。
「ごめん!わ、わざとじゃないんだ!」
「い、いいのよ。貴方はそんな人じゃないことは知ってるし……」
素直に謝る仁太郎に古手川は怒っている様子はなく恥ずかしそうにしていた。
するとそこに揶揄う声が聞こえてくる。
「ちょっと明銀〜、見せつけてくれるねぇ」
「お熱いことで♪」
声をかけてきた2人組は同じクラスの女子、籾岡理沙と沢田未央だった。
2人は新星と古手川を揶揄いながら近づいてくる。
「そ、そんなんじゃないわよ!」
「あれー?そんなに慌ててどうしたのー?」
「ますます怪しいですなぁー?」
古手川は顔を赤くして否定し、それを見た籾岡と沢田はますます揶揄ってくる。
このままでは終わらないと思った古手川は新星に助けを求めた。
「明銀くんも何か言いなさいよ!……あれ?」
返事が返ってこないことに気づいた古手川が周りを見ると新星の姿がなかった。
「どこに行ったのよ!もう!」
「逃げたな」
「逃げたね」
怒った古手川の声が廊下に響き渡った。
その頃、新星は屋上に到着していた。
リトがどこにいるか情報がないため自分の感覚に頼るしかなかった。
屋上の手すりに両手を置くと目を閉じて音だけに集中する。
『今日のお昼どこで食べる?』
『さすが佐清先生、今日もかっこよかったよね!』
『うひょー!秘蔵のグラビアを手に入れましたぞ!』
『明銀が戻ってきたら問い詰めないとだね!』
『だね!』
『全く!あそこで置いて行くなんて信じられないわ!次会ったら承知しないんだから!』
超人としての力を感覚だけに集中して校内全ての音を聞く。
何やら不穏な言葉が聞こえてきたがとりあえずは無視して、音だけに集中する。
しかしリトの声は聞こえない。
(校内にはいないのか?なら外か!)
今度はグラウンド、校庭に集中する。
するとグラウンドに備えられている体育倉庫からリトともう1人の声が聞こえてきた。
『………あぁ、最悪だっ!!!』
「いた!」
新星はすぐさまアーマーを装着し、体育倉庫目掛けて飛び立つ。
天井を破壊して中に侵入するとリト、拘束され気絶している西蓮寺、そして今回の主犯であるギ・ブリーだ。
「な、なんだぁっ!?」
「し、新星!」
「リト、無事で良かった」
「俺は大丈夫だけど、春菜ちゃんが!」
拘束された春菜を見ると体操服が破かれ、胸元が顕になっており新星は春菜から視線を外しギ・ブリーを睨む。
「今すぐ彼女を解放しろ。そうしたら無傷で捕まえてやる」
「は、はん!今更退くわけねぇだろ!俺はララと結婚して宇宙の頂点に立つんだよ!」
怯えながらも春菜を解放しようしないギ・ブリーに新星はヘルメットの中で仕方ないと言った表情になる。
「じゃあ仕方ないな。力づくで拘束させてもらう!」
「ひ、ひいぃぃぃ!」
両腕のスペシウムカッターを展開して構えをとる。
その迫力にギ・ブリーは腰を抜かしそうだった。
その時、3人ではない声がその場に響いた。
「リトー♡やっと見つけたー!」
「ら、ララ!?」
「ララさん!?」
突然のララの登場にその場の全員が驚いた。
「あっ、あれギ・ブリー?なんであいつが……」
ギ・ブリーに気づいたララはその後ろで拘束されている春菜にも気づいた。
「春菜!?なんで春菜が!?ギ・ブリー!その子は私の大事な友達なの!早く離して!」
驚いたララはギ・ブリーに大声を上げるがギ・ブリーはそんなことは興味がないと言わんばかりにララを見つめる。
「ララ、俺の物になれ。拒むなら全員地獄を見ることになるぞ!!このギ・ブリー様の真の姿でなぁッ!!!」
ギ・ブリーの体が凶悪な形に変化し始める。
その瞬間に新星は踏み込み、ギ・ブリーの体を殴りつけた。
「ぐへぇっ!?」
殴られたギ・ブリーは壁に叩きつけられ、なんの見せ場もなく終わった。
「そんな悠長に敵の強化を待つわけないだろ」
「え、弱っ!?」
呆気なく終わった戦いにリトが驚いているとギ・ブリーの体が更に変化し、子供程の大きさになる。
『これはパルケ星人!』
「擬態が得意な宇宙人か」
「じゃ、じゃあさっきのはハッタリだったのか……あっ、春菜ちゃん!」
「リト!私も手伝うよー!」
春菜の拘束を解こうとリトとララが動き、新星はそれを見ながらギ・ブリーに近づく。
「さて、じゃあさっさと拘束して戻らないと……後が怖いな」
古手川との約束を破ったり、籾岡と沢田の犠牲として置いていったりと責められても仕方ないことをしてしまった。
後のことを考えると億劫な気持ちになり、少しの間ギ・ブリーから目を離してしまった。
その一瞬でギ・ブリーは懐から小さなカプセル型の機械を取り出した。
「手に入らないならお前なんて死んでしまえ……!」
「っ!お前!!」
新星が動くより早くその機械のスイッチを押され、辺りが光に包まれる。
次の瞬間、体育倉庫は崩壊し、そこからララ、春菜、リトを抱えた新星が飛び出してきた。
「リト、ララさん。無事か?」
「ありがとー!」
「お、おう。春菜ちゃんも怪我はないみたいだし」
春菜をリト達に任せて、新星は爆発で立ち上った煙を見据える。
その中でリトが新星に質問する。
「何があったんだ?」
「……報告であの異星人が違法武器である怪獣カプセルを持っていたのは知っていたんだ」
『怪獣カプセルですって!?』
新星の言葉にペケが驚きの声を上げた。
「びっくりした……ペケ知ってるのかよ?」
『怪獣カプセルとは大戦時に使用された武器です。宇宙には数多の危険生物がいますがそれらは総じて原生生物、宇宙生物と呼称されいます。大戦時はその生物をより強力に、より凶悪に改造して使役されていました。その威力は絶大で星の環境が変わる程でした』
「そ、そんなのがいるのかよ!?」
『今は所持すること自体違法となっておりますが闇の界隈では今でも取引されているそうです』
リトとペケがそんな話をしていると煙の中から巨大な影が動いた。
新星が構えた瞬間、煙の中から3mほどの巨体で肩から2本の角を生えた二足歩行の黒い怪獣が咆哮を上げながら現れた。
「グオオォォォォッ!!」
『あれは暴走怪獣クロゴワ!』
「全員下がって!俺がなんとかする!」
新星が立ち向かおうとした時、通信が入る。
『新星、たった今学校中にアンチバリアを展開したグラウンドで暴れる分には問題ないぞ』
「そりゃ良かった!」
その言葉と同時に新星は駆け出し、怪獣に向かっていく。
怪獣は丸太のような腕を振り上げ、新星に向かって振り下ろすが、新星はそれを滑り込むように避けると怪獣の顔に目掛けて飛び上がり顔を殴る。その勢いを利用して怪獣の後頭部に捕まると右拳を振り上げて力を込めて何度も殴りつける。
「グゥアァッ!?」
痛みで叫び声を上げる怪獣は首を振って、新星を振り落とそうとする。
「ちょっ!暴れる、なよ!?うあ!?」
振り落とされまいとしがみ付く新星を怪獣が捕まえて地面に叩き付ける。
「いてて……っ!」
倒れた新星を潰そうと怪獣が足を振り下ろす。
凄まじい重さで潰されてしまう新星だが何とか耐え忍ぶが、スーツは傷つき火花が出る。
「チッ、クショ……!」
『過剰な重量がかかっています。即座に対処してください』
「やれるなら……!やってるよ……!」
スーツAIの警告に新星は苦し紛れに答えるしかなかった。
怪獣はトドメを誘うと更に体重を乗せて、踏み躙る。
その様子を見ていたリトが焦る。
「お、おい!しん…ウルトラマンやばそうだぞ!?」
「うーん、これならなんとか出来るかも?」
ララがデダイヤルを取り出し、ある発明品を呼び出す。
「『ビュンビュンせんぷうき』!昨日、地球のてれびつうはん?を見ておもしろうと思って作ったんだー!」
手に持っていたのは手で持てる持てるほどの大きさの扇風機だった。
「そんな扇風機で何が出来るんだよ!?」
「えー、でもこれもの凄く強い風も出せるよ?」
ララのその言葉でリトは今までのトラブルを思い出す。
あの無茶苦茶な発明品の威力なら可能性はあると考えた。
「ララ貸してくれ!」
「いいけど、気をつけて欲しいことがあって……」
ララが説明を始める前にリトは扇風機を持って怪獣に向けて、スイッチを押す。
徐々に出力が増していき、竜巻のような風が扇風機から発生する。
風は怪獣を襲い、その威力で怪獣は体勢を崩して新星にかかる体重が軽くなる。
その隙に新星は跳び上がって、怪獣の足から逃げる。
「やった!へ……?おわあぁぁぁあ!?」
逃げることができた新星を見て、喜ぶの束の間に突風で空高く吹き飛ばされてしまった。
新星は怪獣の足下から抜け出し、体勢を崩して倒れる怪獣の真上に跳び上がり、腕を十字に組む。
「デヤァアッ!!!」
掛け声と共に接続されたコネクタ部分を展開して、スペシウム光線を怪獣に向かって放つ。
スペシウム光線を受けた怪獣は爆発し、煙が晴れると火傷を負い動かなくなっていた。
「はぁ…はぁ……終わったぁ」
『スーツの耐久値が許容値の限界ギリギリです。もう少しで潰れるでしたね』
「……そりゃどうも」
膝に手をついて疲れたように呟き、達成感を感じながら一息ついてからリト達の下に行くと、そこには吹き飛ばされて目を回したリトが胸元が顕になっている春菜の小ぶりな胸に顔を埋めており、それを起こそうとしているララの姿だった。
「リトー起きてよー!終わったよー?」
「なんでそうなるんだよ……」
さっきの達成感とは打って変わって呆れた声を出した。
○
その後、怪獣はS.S.S.Tの処理部隊がギ・ブリーと共に回収した。
ギ・ブリーは瓦礫に埋もれて幸いにも生きており、デビルークを介して銀河連合に身柄を引き渡した。
デビルークの姫を違法兵器で襲ったため、処罰されるのは確実だろう。
学校の被害についてはアンチバリアを張っていたこととアメリアの認識改変能力のおかげもあり、学校にいた者とその周辺の住民には地震が起きた程度しか認識していない。
「まぁ、事の顛末はこんな感じかな。今のところ被害者は西蓮寺さんだけ。今は保健室でララさんと休んでるよ」
屋上で缶ジュースを飲みながらリトに事件後の詳細をはなしていた。
「そっか……なら良かった」
リトは安心したように息を吐くがその表情は不安そうだ。
「これからもこんなことが続くのかなぁ?」
「多分な」
確実に今後もリトを狙う異星人はしてくる。
リトを不安にさせないためにもあえて嘘をついてしまった。
「でも流石リトだよ」
「何がだよ?」
「助けも呼ばずに西蓮寺さんのところに行ったんだろ?普通なら怖くて仕方ないと思うよ」
「あの時は無我夢中だったし、今思えば凄く危ないことしたな。でも、それを言ったら新星もだろ?あんな化け物に1人で立ち向かったんだからさ」
それを言われて新星は少し複雑そうな顔をする。
「俺は力を持っているからさ。俺がやらなきゃいけないんだ」
そう言う新星の目は覚悟を決めているものでリトは何故か少し不安に思ってしまった。
「それより何で西蓮寺さんの胸で倒れていたんだ?」
「えっ!?そんなことになってたのか!?」
新星の指摘に顔が真っ赤になり、先までの不安は忘れてしまっていた。