リトはララを河川敷に連れ出していた。
家にいると妹の美柑が変に勘繰ってきてややこしくなると思ったからだ。
「おまえ‥…本当に家に住む気かよ?」
「お互い好き合っているんだから一緒に住むのは当たり前でしょ?それより帰ってゲームの続きをしようよー」
「俺はお前に告白したんじゃなくて……!!はぁ、もうフラれたけどな」
リトはそう言って肩を落とす。
昼間男子達に追い込まれた際にワープして逃げたがワープした際に服はその場に残ってしまい、リトとララは裸の状態でワープしてしまったのだ。
更にワープしたのは女子更衣室で春菜が着替えており、頬に張り手をくらってしまったのだ。
「リトは私のこと好きじゃない……私はそれでもいいよ!」
「俺は良くねぇーよ!!」
ララは何が何でもリトと結婚しようとする意思を見て、ペケはララの思惑が若干分かり始めてきた。
リトがどうにかララを説得しようとしているとララの名前が呼ばれた。
「ララ様ッ!!!」
「あ、ザスティン」
「また変なのが来た!?」
「まったく……ここまで苦労しました。様々なトラブルに遭うとは、これだから発展途上惑星は……しかし!それもここまで!今度こそ共にデビルーク星へ帰りましょう!!」
また母船から抜け出したララを連れ戻しに来たザスティンだが道中、色々な目にあい若干ボロボロだった。
「べーっだ。私帰らないからね!私、ここにいるリトが好きなったからここで一緒に暮らす!」
ララが連れ戻されるのが嫌でリトを理由に残ると言い、リトもララの真意がようやく分かった。
リトはこんな理由でザスティンが騙されるとは思わず、連れ帰ってくれることを期待したが……
「なるほど、そんな理由が……それなら納得です」
(こいつアホだー!)
まさかの納得してしまった。
「分かったら帰ってパパに伝えて!家に帰らないしお見合いもしないって!」
「いいえ、そうはいきません。このザスティン、デビルーク王の命によりララを連れ戻しに来た身……得体の知れぬ地球人とララ様の結婚を簡単に認めて帰っては王に合わせる顔がありません。………お下がりください、ララ様」
ザスティンは腰から鍔と柄だけがある剣を取り出し、リトに向かって振るった。
リトは咄嗟に避けるとザスティンが振るった地面の先が切り裂かれていた。
その手には青白く光るレーザーブレード『イマジンソード』が握られていた。
「私が見極めましょう。その者がララ様に相応しいか否か」
リトは切り裂かれた地面と本気のザスティンの目を見て恐怖で震え上がり、腰を抜かしてしまう。
「さぁ、リトとやら実戦で貴様の実力を見せてもらうぞ!いざ勝負ッ!!!」
「ちょ、待て待て待て!!何でそーなるんだよーー!!!」
腰が抜けて動けないリトにザスティンの刃が振り下ろされるが、その刃は届かなかった。
「間に合った……!」
「貴様は……」
「ウルトラマンっ!!」
刃が届く前に新星はリトの前に割り込み、両腕のスペシウムブレードでザスティンの刃を受け止めた。
「リ……君は危ないから後ろに下がって!」
「あ、ありがとう!ウルトラマン!」
「なんの真似だ?これは私とあの男の問題だ」
「殺されそうな人を放って置ける訳ないだろ!」
剣を押し返そうと腕に力を込めるとザスティンの足が僅かに後ろに下がっていく。
そのことにザスティンは僅かに目を見開いたがすぐに力を入れ直して、ウルトラマンを押し返す。
上から巨大な岩に押し潰されそうな力を加えられ、全身から悲鳴が上がる。
「ぐっ!?」
「フンッ!」
新星が怯んだ瞬間にザスティンは蹴り飛ばした。
新星は地面に転がるとすぐに体勢を整えるがそこにザスティンの上段斬りが襲いかかる。
咄嗟にスペシウムブレードで防ごうと構えたがザスティンの一撃は地面を抉り、新星はまた吹き飛ばされた。
「いたた……」
『右腕ブレード破損』
「はぁ、またドクに怒られる」
ヘルメットから聞こえる音声で右腕を見ると右腕のレーザーブレードが焼きただれていた。
倒れた状態から起き上がり、ザスティンに近づく。
ザスティンも迎撃しようと剣を振るうが新星はそれを避け、顔にパンチをお見舞いする。
「ぐはっ!?」
ザスティンも吹き飛ばされるが空中で体を翻して立ち上がり、口元から流れる血を拭う。
「S.S.S.Tは不干渉と取り決めしたはずだがこれはどういうことだ?」
「組織は関係ない、俺の意思でここにいるんだ」
新星のその一言にザスティンは少し驚いた表情になり、その顔に僅かに笑みを浮かべる。
「なるほど……君は本当にその名の通りにやっていくんだな。ならば!」
ザスティンは剣を一振りするとそれだけで空気が揺れ、風が巻き起こる。
「その力を見せてみろ。ウルトラマン!!」
剣を構え、突進してくるザスティンだがその速さは先程より段違いに早い。
(早っ……!?)
顔を目掛けて振るわれた剣を間一髪のところで避けた新星だが、ザスティンは振るわれた剣を今度は無理矢理逆に変えて体を狙う。
その場から跳躍して避けた新星だが足元にいるはずのザスティンの姿がない。
「どこに……?」
そう呟いた瞬間頭上に影が差し、上を向くとザスティンが更に上に跳躍し、剣を振り下ろした。
「ハァッ!!」
空中で避けられず地面に叩きつけられた新星は叩きつけられた衝撃で土煙が舞い上がり、姿が見えなくなった。
しかし、今度はザスティンに向かって跳躍し拳の乱打を振るう。
ザスティンもそれに応戦して無数の斬撃を繰り出す。
殴打と斬撃を攻防は風を起こし、地面に亀裂を入れた。
しかし、ザスティンは新星の攻撃を全ていなしているが新星のスーツにはいくつかの斬撃をくらって損傷が増えていった。
『スーツ損傷率37%。このままいけば戦闘続行は不可能になります。スペシウムブレードの設定を『スタンモード』から『デストロイモード』に変更することを推奨します』
「『デストロイモード』は相手を殺す可能性があるからなしっ!『スタンモード』で続ける!」
スーツの防御力を超える攻撃で体に痛みが走るがそれを無視して戦いを続けるが、ザスティンが新星の拳を掴んで首元に剣を添えた。
「どういうつもりだ?何故手加減する?命をかけた戦いを侮辱するつもりか!」
ザスティンは新星の攻撃がわざと急所を外している事に気づき、侮られていると思い大声を出して質問する。
しかし、新星はそれに怯むこともなく、刀身を掴んで剣を押し返す。
「貴方を舐めているなんてとんでもない……!俺は敵だろうと殺しは絶対にしない!それが俺の信念だからだ!!」
刀身を掴んでいるグローブから焼ける音が聞こえ、痛みが走ろうとも剣を押し返し、ザスティンの手を振り解くとザスティンの顔を殴って吹き飛ばした。
予想外の行動にザスティンは反応が遅れ、吹き飛ばされてしまう。
「な、何なんだよ……あの戦い」
『まさか、ザスティン殿が倒されるなんて……!』
「いけー!ザスティンなんて倒しちゃえー!」
リトは2人の戦いに圧倒され、ペケはザスティンが倒されたことに驚き、ララは能天気に新星を応援していた。
「はぁ…はぁ…はぁ…」
新星は肩で息をしながら最初に切られた右腕を見る。
ブレードの機械部分は完全に壊され、腕には痺れたような鈍痛が走っている。
「なるほど……貴様の信念か。ならば私も信念を賭けよう」
土煙の中から殴られた場所を少し腫らしたザスティンが現れる。
「我が信念はデビルーク王への忠誠!!お前と私の信念どちらが強いか!!
ザスティンは首元のスイッチに手を添え、兜を展開して被ると構えをとって新星を見据える。
ザスティンからは先程とは比べ物にならない気迫が溢れ、空気がビリビリと震えている。
新星もその気迫に当てられ、冷や汗が流れる。
しかし、背後にいるリトを見て、覚悟を決めて構える。
自身の威圧に臆さず、戦うことを選んだ新星にザスティンは笑みを浮かべながら踏み出した。
その瞬間、新星は左手首を奇跡的に残っていた右手首のコネクターを接続してザスティンに向かって必殺技を放つ。
「スペシウム光線!!」
青白い光線は真っ直ぐ放たれるが、ザスティンはそれを剣で真正面に受け止めた。
イマジンソードとスペシウム光線が激しい火花を散らし、周りには衝撃で強い風が吹いている。
リトはその衝撃で吹き飛びそうになるが咄嗟にララの太ももの付け根部分を掴んでおり、ララは顔を赤くしていた。
「おわぁ!?」
「ひゃん!リトどこ触ってるの〜!?」
2人の鍔迫り合いは拮抗しているかのように思われたがザスティンは一歩ずつ前に進み始め、新星が押され始める。
そしてザスティンは剣を振り抜くとスペシウム光線がかき消え、一気に新星に近づき剣を振り上げて新星を両断しようとする。
「終わりだ!ウルトラマン!」
「……っ!!」
切られると思った瞬間、ララがザスティンの頭を叩いて止めた。
「こら!ヒキョーだよ。ザスティン!」
「……な、何をなさるのですか!?ララ様!!」
「ザスティンが本気になったらウルトラマンが勝てるわけないでしょ!」
「ですが、これはララ様の婚約者、ひいてはデビルーク星の後継者を決める代理の戦い!デビルーク王が治る数多の星の頂点を決める戦いなのです!」
「どーせパパは私より後継者の方が大事でしょ!!」
緊迫した空気はなくなり、緩い空気が流れるが新星はヘルメットの中で冷や汗を流していた。
(あのまま戦っていたいら……死んでいた)
ザスティンの実力は遥かに新星を超えており、あのまま戦っていたら負けていたのは確実だった。
内心、途中で割り込んできたララに感謝しているとリトが叫んだ。
「いい加減にしろ!!!」
「「「!!」」」
「デビルーク星の後継者とか、お見合いとか……どーでもいいんだよ。んな事……ウルトラマンが俺の代わりに戦うとか意味分かんねーし……」
リトはララのトラブルに巻き込まれて、想い人である春菜に告白を誤解され、更には自分の裸を見せつけてしまったのだ。
その不満をここでぶちまける。
「普通の生活させろよ!!もうこれ以上好きでよねー奴と結婚とか……だから……もう、帰ってくれ!!!」
リトは自身の不満をぶつけ、突き放したララが悲しんでいないか顔を伺うが自身の想像とは違っていた。
「リト……」
頬を染めて、まるで恋する乙女のようだった。
「うれしい……私の事好きじゃないって言いながら、本当はそこまで私の気持ちを理解してくれてたんだ」
「えっ、ちょっとちが……」
「リトの言う通り私は……自分の好きなように自由に行きたい。まだまだやりたい事あるし……結婚相手だって自分で決めたい……そう思ってた」
(多分リトはララのことじゃなくて自分のことを言ったんじゃ……)
ララが勘違いしていることを新星はなんとなく察した。
「私、本当はリトと結婚するっていうのは連れ戻されないための口実だったの。でも……やっとわかった。私……リトとなら本当に結婚してもいいと思う……ううん、結婚したい!!!」
その一言にリトと新星は鳩が豆鉄砲を食ったような顔になってしまった。
さらにザスティンもリトの言葉を勘違いしてリトの漢気を信じて、デビルーク王に報告してくると言って去ってしまった。
リトの災難はさらに深みにハマってしまったのだ。
○
ララにさっきの話は誤解だと弁解してもララはリトと結婚したいとの一点張りでどうしようもなく帰ることとなった。
新星はまた何かあるといけないからと言い、リト達を家まで送ることにした。
そして家の前まで来るとララはお腹が空いたと言って、先に家に入ったがリトは家の前で立ち止まった。
その顔は不安げだった。
「な、なぁウルトラマン……俺はこれからどうなっちゃうんだ?あのザスティンとかいう奴とウルトラマンとの戦いを見てさ。その……ハッキリ言ってめちゃくちゃ怖いんだ……」
突然訳も分からず、襲われたリトからしたら当たり前のことだ。
新星はその言葉を聞いて拳に力が籠る。
そして、リトを安心させるために力強く話す。
「大丈夫だ、結城 リト君。何があっても君や君の家族を守る。なんせ俺はウルトラマンなんだからさ!」
そう言ったウルトラマンのスーツは先の戦いで酷く損傷しているがその姿は頼もしさに溢れていた。
リトはそれを見て少し安心した顔になる。
「ありがとう……ウルトラマン」
「リトー、何してんのさ。早く入りなよ」
リトの妹、美柑が呼びに来た時にはウルトラマンの姿は消えており、辺りを見回したが姿はなく、ふと夜空に輝くを星を見上げて少し眺めると家に入った。
リトが家に入ったのを電柱の上で見届けた新星はポツリと呟く。
「何が何でも守る」
小さく、しかし力がこもった言葉を呟いた。
用語
⚪︎ウルトラマンスーツ
新星が戦闘時に着用するパワードスーツ。
新星の体内に流れるエネルギー『スペシウム』を利用して武器にする。
様々な機能がある。
現在の武器は両腕の『スペシウムブレード』と両腕を交差して使用する『スペシウム光線』