ララの結婚宣言の翌日、新星はリトの家の前に立っていた。
いつも通り一緒に登校するためだが今日からは目的が違う。
それは結城リト、並びにその家族を守るためだ。
ララの結婚宣言で事態は急変した。
新星は昨夜のことを思い返す。
○
リトを送った後、新星はS.S.S.Tの支部に戻って来ていた。
そこには渋い顔をしたアラシが座って待っていた。
「……やってくれたな」
「すいません……」
「はぁ、お前にじゃない。戦いに行くのを止めなかった俺にも責任がある。それにデビルークにはいいアピールになっただろうしな。……やってくれたのはお姫様の方だ。あの発言で地球の立ち位置は大きく変わった。ただの辺境惑星から銀河を統一する王の立候補として名乗りを挙げたようなものだ」
アラシはため息を吐きながら疲れたように話す。
「明銀 新星隊員。お前に新しい指令を下す」
「はい」
新星は姿勢を正し、アラシの指令を拝聴する。
「結城 リト及びその家族を守護しろ。彼はこの地球で最も重要な人間になった。各地に飛ばしていたチームメンバーを全員集めて再配置する。それまではお前1人で結城 リト、結城 美柑を守ってくれ」
「了解」
「そんなところだ。スーツはドクに渡しに行ってこい。手酷くやられたみたいだしな」
「分かりました。……はぁ、またドクにどやされる」
新星はそうぼやきながら部屋を出るとアラシはスマホを取り出してメッセージ画面を開き、話し出した。
「バンブルビー、アーシー、カキョウ、彩南町に戻って来てくれ。デカい仕事だ」
○
新星は指示に従い、2人を護衛するため今日から付き添う。
勿論指示がなくても彼らを守るつもりだ。
そんな事を考えていると結城家の玄関が開いた。
「ほら、早くしないと遅れるよ。あっ、新星さん。おはようございます」
「おはよう、美柑ちゃん」
出て来たのは結城 リトの妹である結城 美柑だ。
「ごめんなさい。まだリトが準備出来ていなくて」
「いいよ。別に急いでいる訳じゃないし」
「そうですか。あっ、そういえば……」
美柑は新星に近づいて顔を寄せる。
と言っても新星は背が高いため美柑は背伸びをしても顔まで届かない。
「何で一昨日も昨日も家に来てくれなかったんですか?」
美柑は少し頬を膨らませて不満です、と言った顔だった。
「あー……バイトが突然入ってさ。行けなくてゴメン」
「別にいいですけど。新星さんのために残して置いた料理が無駄になっちゃうなぁ」
美柑は横目で新星を見ながら呟き、新星は少し苦笑いを浮かべてどうしようかと悩んだ。
「わ、分かったよ。今日の夜は絶対に行くから!残して置いてくれた料理も食べるよ!」
「……ふふっ。そういうと思って残り物でお弁当を作っておきました。どうせ今日もパンとかで済ませるつもりだったんでしょ?どうぞ、食べてください!」
美柑はそう言って後ろに隠していた風呂敷に包まれた弁当を差し出した。
「あ、ありがとう。助かるよ。美柑ちゃんのご飯は美味しいから」
「その代わり今日は放課後買い物と夜ご飯作るの手伝ってください」
「分かった。必ず守るよ」
「約束ですよ♪」
新星はそう言いながら弁当を受け取り、美柑は嬉しそうにしていた。
するとリトが慌てた様子で出て来た。
「あっ、悪い。新星、待たせた」
「別に気にしてないよ。じゃあね、美柑ちゃん。また放課後」
「いってらっしゃい、新星さん。ついでにリトも」
「俺はついでかよ!」
そうして新星とリトは登校したがリトの表情は優れなかった。
「どうしたんだよ、リト?(まぁ、ララ姫のことだと思うけど」
「いや、さぁ……ここ最近色んなことがあり過ぎて……なぁもしもなんだけどさ」
「うん?」
「新星が女としていきなり目の前に裸の男女が現れたらどう思う?」
「え?」
リトの質問に新星は目が点になる。
質問の意味がよく分からなかったからだ。
「意図はよく分からないけど……俺なら事後なのかな、と思って気まずくなる」
「じ、事後……そうだよな、そう思うのが普通だよなぁ……」
事後という言葉に一瞬顔を赤くしたリトだったがすぐに落ち込み出した。
(訳が分からない……)
新星は突然落ち込むリトを見て、首を傾げた。
○
学校に着き、昼休みになると新星は1人校舎裏でアラシに説明していた。
「という訳で放課後は美柑ちゃんに付きます」
『了解した。結城 リトにはキリタを付ける。お前は結城 美柑の護衛に付け』
「了解です、隊長」
通信を終えると新星は教室に戻ろうとすると古手川が現れた。
「ここにいた!探したのよ!」
「古手川さん?どうしたの?」
「どうしたのって、貴方昼休みは奉仕活動をする約束でしょ。……もしかして忘れた訳じゃないでしょうね?」
「ごめん。忘れてました……」
新星はバツが悪そうな顔になり、古手川は仕方ないと言った風にため息を吐いた。
「もうやっぱりじゃない。ほら行くわよ!」
「あっ、でもまだ昼飯食べてないな……どうしよう?」
「な、ならさっさと食べなさい!私も食べていないし、ちょ、ちょうどいいわ。ほら!行くわよ!」
古手川は一緒に弁当が食べれると分かると顔に出していないが喜んでいた。
少し顔を赤くしながら新星を捲し立てるように右腕を掴んで引っ張ろうとするが、新星は腕を掴まれた瞬間激痛が走り、その場に蹲ってしまう。
「〜〜〜っ!?」
「どうしたの!?袖を捲るわよ?」
古手川は蹲って冷や汗を流す新星を心配して右腕の袖を捲ると腕は赤黒く
腫れていた。
「何よこれ!?どうしたのよ!?」
「あー……昨日ぶつけまして……」
昨日戦ったザスティンの一撃は思った以上の一撃で怪我をしていた。
とある理由で治療もしていなかったのもあるが。
「こんなになるまで何で放っておいたのよ!」
「いやー、自分への罰というか何というか……」
「何訳の分からないこと言ってるのよ?ほら、保健室行くわよ!」
新星は古手川に連れられて保健室に行くとそこには彩南高校で美人と有名な御門 涼子がいた。
「失礼します!御門先生はいらっしゃいますか?」
「あら古手川さん、こんにちわ。どうしたのかしら?」
「ちょっと明銀君の腕を見て欲しくて、ほら!」
古手川は新星を前に出して右腕を見せさせる。
腕を見た御門は訝しげに新星を見て、新星は視線を逸らして誤魔化した。
「このくらいの傷だとやっぱり救急車を呼んだ方が良いかしら?」
「………このくらいの傷ならここで処置可能よ。救急車は必要ないわ。所でだけど貴方達お昼ご飯は食べたの?」
「私はまだです」
「俺もです」
「ならここで食べていきなさい。ついでに治療しちゃうから。古手川さんは明銀君のお弁当を持って来て貰ってもいいかしら?」
「……分かりました。ちょっと離れるからちゃんと治療して貰いなさいよ?」
古手川はそう言って弁当を取りに行ったのを確認して御門は新星に向き直る。
「さて新星、何で昨日は私のところに来なかったのかしら?」
「いやー……勝手に戦いに行って怪我したから自分で治そうと思って」
「それでこんなことになったのね。……アラシさんから今日放課後から任務があることを聞いているわ。嫌だと思うけど医療パックで治療するわよ」
御門はそう言って棚からプラスチック製の板が連なった近未来的なアイテムだった。
「いや、出来れば痛み止めとかで……」
「結城君の妹さんの護衛でしょ?支障をきたしたらどうするの」
御門はそう言いながら医療パックを手に巻き付けてスイッチを押す。
「このくらいの怪我なら大丈いだぁっ!!?」
スイッチの点滅と共に医療パックが光って強い衝撃と共に骨が鳴る音が響いた。
それと同時に新星から悲鳴が上がり、涙目になる。
「ほら治ったわ。やっぱり腕が折れていたのね」
医療パックを外された腕は鬱血と腫れが引いており元の状態に戻っていた。
「はぁ……やっぱりこれ苦手だ」
「なら今度からは無茶しないことね。デビルークの親衛隊長と戦ったと聞いて肝が冷えたわ。アラシさんもね」
それを聞いて新星は気まずそうな顔になる。
「貴方はS.S.S.Tのエージェントだけど子供なんだから私達を頼りなさい。はい、カモフラージュ用の包帯も巻いたわ。これで大丈夫よ」
御門はそう優しく言いながら右腕に包帯を巻いた。
その後、古手川が新星の弁当箱を持って来て御門も交えながら昼食となった。
古手川は御門も参加したことに少し残念に思った。
○
その頃、彩南町でも高いビルの屋上で黒スーツに黒いサングラスをかけた複数人の男が集まっていた。
「揃ったな」
その男達は奇妙だった。
何故なら全員が同じ背丈、同じ顔だからだ。
「これより
男達が頷くと一瞬顔がノイズが走ったようにブレて、異形の顔が垣間見えた。
用語
⚪︎医療パック
細胞をの治療効果を促進させて外傷を瞬時に治す装置。
治す際に相応の痛みが伴う。
※元ネタはガーディアン⚪︎ブギャラクシーvol3の医療パック