無事に送り届けられたリトと美柑は自宅のリビングで共に帰って来た新星と向き合って座っているがお互いに話し出さず気まずい空気が流れる。
「あの……リト……大丈夫か?」
「大丈夫な訳ねぇよ」
「だよな……」
深いため息を吐いてどう言うべきか考える。
するとリトが声をかけてきた。
「なぁ、本当にウルトラマンなんだよな?」
「あぁ」
「そっか……」
リトは新星に頭を下げた。
「俺たちを助けてくれてありがとう!」
お礼を言うリトに新星は目が点になる。
「え、いや、何でお礼なんて言うんだよ?」
「だって俺たちを助けてくれたろ?」
「それは……リト達は巻き込まれたんだ。守るのは当たり前だ」
「それでもだ。な、美柑」
「うん、怖かった時に守ってくれてありがとう。新星さん」
美柑を微笑みながら新星に礼を言った。
それを聞いた新星は顔を俯かせて歯を食い縛る。
こんなことを言ってくれるが本来なら恐怖心で一杯のはずだが、2人はアメリアの能力によりララが原因で起きたことを受け入れる様になってしまった。
2人の人格を曲げてしまったことに新星は悔しさと申し訳なさが心の中で渦巻くが2人に気づかれない様に笑顔で顔を上げる。
「いいや。2人のことはこれからも俺が守るよ」
自分自身に覚悟を決める様に呟き、両手を握りしめた。
○
翌日となり、リトと新星はいつも通り学校に登校していた。
「ララさんが出掛けた?どこに?」
「いや、なんか用事あるーって言ってたからどこに行くまでは分かんねぇけどさ」
少し気掛かりだがその日は異星人絡みの事件はなく、リトが春菜の誤解を解きながら良い雰囲気になったり、新星は古手川に捕まり課題に追われたりと平和な1日だった。
そしてさらに翌日、朝のホームルームで担任から発表があった。
「えー、突然ですが転校生を紹介します」
新星は扉に目を向けると目を見開いて驚いた。
「やっほー!リトー!私もガッコ来ちゃったよー♡」
笑顔のララが元気にリトに向かって声をかける中、新星とリトは開いた口が塞がらなかった。
○
保健室にて新星はアラシに向かって問いただしていた。
「どういうことですか!?ララさんが入学だなんて!!」
『デビルーク星から圧力があったんだ。『姫の要望には全て応えろ』だと』
「もしララさんやリトを狙った異星人が来れば学校が戦場になりますよ」
『そうはならない様に今急ピッチで対策を施している。今日一日だけ我慢してくれ。それではな』
「あっ!ちょっと!……くそっ!」
苛立ちをスマホにぶつける様に保健室用のベッドに投げ捨てる。
「物に当たらないの」
保険医である御門が注意を促すが新星は無視して椅子に座り込む。
「アラシさんだって大変なのよ。関係各所への連絡、対応策の指示やらね」
「それは分かりますけど」
「おかげで最近ゆっくり会う時間もないわ」
御門がため息を吐き、不満そうにする。
それを苦笑いしながら見て、席を立つ。
「どこ行くの?」
「リトが心配なんで見守りに行きます」
「心配なのはどちらかというとお姫様の方じゃないかしら?」
「……確かに」
新星もため息を吐きたくなった。
○
ララはリトと一緒にいたいがために入校してきた。
校長は可愛い娘には目がないため何も手続きなく、簡単に入校できてしまった。
そしてララの案内を学級長である春菜に任され、リトは春菜がトラブルに巻き込まれないか心配で後ろから気付かれない様について行った。
(側から見たら完全にストーカーだな)
そんなリトを新星は背後から見守っていた。
そんな新星の様子も側から見たらストーカーの様だった。
やがてララ達は校舎同士を繋ぐ渡り廊下に到着すると何か話してる様子だった。
(ここからじゃ流石に聞こえないな)
様子を伺っていると同じく聞き耳を立てていたリトの頭上から野球ボールが落ちてきて、頭に直撃したボールがララ達の元に転がっていく。
「わ!何コレ?」
「あ、野球部のだね」
「ふーん……ねぇ!私にもやらせてー!」
「ら、ララさん!?」
ララは持ち前の好奇心が働き、部活動をしていた野球部に向かっていった。
ララのことは学校中で噂になっており、勿論野球部全員がララのことを知っていた。
その中でも野球部のエースである弄光がララの容姿を気に入り、直々に相手をしてやるとピッチャーを名乗り出た。
「野球か……大丈夫だよな?」
一抹の不安を感じ取った新星は頭にボールが当たって気絶したリトを安全な所に移動させて様子を伺う。
案の定、弄光の球をいとも簡単に遠くへと打ったララに弄光は凄い上から目線で交際を迫るがララは即座にフった。
それでも迫って来る弄光にララはいつの間にか目を覚ましたリトに代打を頼んだ。
(リト!?いつの間に目を覚ました!?)
訳もわからずリトは打席に立つとララから奇妙なマークが入ったバットを渡される。
(あのバット……?まずい!)
バットの違和感に気づいた新星はスーツを起動させてリトと弄光に向かって走る。
「くらえ!弄光ボール!!」
「は、はえーー!!へ?」
弄光から放たれた自称プロ確実のボールをブースターが展開された改造バットで打ち返した。
打ち返されたボールは隕石の様な光を纏い、弄光に向かって行く。
「危ない……!」
直撃しそうになった瞬間、ウルトラマンスーツを装着した新星がボールを掴み取る。
超剛速球になったボールは新星の手の中で煙が出ていた。
「怪我は?」
「へ?あ、ああ……大丈夫です」
「良かった」
「うおおおぉぉ!?誰か止めてくれー!!」
ブースターが展開されたままのバットを離すことが出来ないリトがこちらに向かって来る。
「バットから手を離せ!」
「離したら周りに飛んでっちまうよ!!」
周りには春菜を始め、野球部員が多くいる。
確かに手離すことはできない。
そのことを把握した新星は振り回されるリトに向かって走る。
ブースターの勢いは止まらず、新星に向かって振り下ろされる。
「あ、危ねえ!?」
「ふっ……!」
振り下ろされたバットを新星はしっかりと掴む。
それでも暴れ回るバットを握り締めると鈍い音を立てながら凹みブースターが止まった。
「リト、もう離していいぞ」
「あ、ありがとう……はぁ」
バットが動かなくなり、手を離したリトはため息を吐いた。
するとそこにララが駆け足でやってくる。
「リトー!大丈夫だった?」
「大丈夫な訳ねぇだろが!」
「あはは!ごめんね!」
怒鳴るリトにララは笑いながら謝る。
すると新星がララの前に立つ。
「君は……確かウルトラマンだったよね?私に何か用?」
「ララさん、貴女の発明は地球人にとってオーバーテクノロジーだ。もう作らない方がいい」
新星は改造されたバットを見せながら注意する。
誰も注意しないなら自分から言うしかないと思った新星はララに厳しめの声色で言うがララは頬を膨らませて不満そうな表情だ。
「えー!なんでよー!なら今度はリトに合わせたメカを作るよ」
「そうじゃなくて!もう作らないでくれって……!」
「し……ウルトラマン!もう大丈夫だって。それに周りの目がさ」
リトがウルトラマンを落ち着かせる様に言いながら周りに目を向ける。
周りには何の騒ぎだと様子を見に来た野次馬が集まり始めた。
新星は騒ぎになるのは不味いと思い、その場を離れることにする。
「分かった……とにかくララさん。発明はやめてくれよ!」
新星そう言ってその場から跳躍して学校から離れていった。
「もう!ウルトラマンもザスティン達みたいなことを言うんだから!」
「ははっ……はぁ」
ぷりぷり怒るララにリトはため息を吐くしかなかった。
○
後日、S.S.S.Tに新たな情報が入った。
デビルーク王がリトを正式にララの婚約者候補として認めたこと、そして婚姻を成功させなければ地球を滅ぼすと。
余りにも無慈悲なことだった。