アクナイ二次~TSドクターの受難~   作:よるめく

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そういえば俺TSクラスタなのに最近さっぱりTSもの出してないな~と思ったら生えてきた。

なんでも許せる人向け。


受難その1 ドクター、女になる

「……無理ね」

 

 肩を落としたサイレンスの言葉に、ドクターは大きなショックを受けた。

 

 それはアーミヤも同様だったが、集まった医療部オペレーターたちの呆れたような、残念そうな、落胆したかのような、なんとも言えない表情が、サイレンスの言葉を無言のうちに総意であると裏打ちしていた。

 

 ドクターは震えながら、ホワイトアウトした思考を懸命に動かそうとする。が、出てきたのは全く身のない言葉であった。

 

「ええと、つまり……?」

 

「非常に心苦しいことだが、ドクター」

 

 ケルシーが代表して言葉を続ける。目頭を抑え、肩眉を痙攣させ、フェリーンらしい八重歯を剥きだした表情は、恐らくこの世で誰一人として見たことのないものだ。

 

 彼女は彼女で動揺しながら、声音だけはいつもと変わらぬ調子でつらつらと話し始める。

 

「検査の結果、現状を元に戻す方法は存在しない。下手人であるワルファリンとアが解毒剤を用意していないことが最も大きな理由だが、それに加えて彼女たちにさえ予想できていない事態が起こっていることもある。本来の効果と全く違う効果が出てしまっており、彼女たちの研究室から押収したノートや材料の成分を加味しても、なぜそのようなことが起こったのか全く理解が追いつかない。当然、限られた時間の中ではあるが総力は上げた。現在もソーンズが研究を続けてくれている。しかし成果が上がるのはいつになるか、また、成果が上がってもそれが治療に繋がるか否かは不透明と言わざるを得ない」

 

「……つまり?」

 

「君はしばらく、女性化したまま過ごすことになるだろう」

 

 医療部が葬式のように静かになった。

 

 元より口数の少ないススーロやアンセルは元より、おしゃべりな方であるブリーズとセイロンでさえも、沈痛な面持ちで目を逸らす。

 

 ドクターはわななきながら、自分の胸元を見下ろした。大きく服を押し上げる膨らみが、視界を邪魔してくる。本来男性の自分には存在し得ないはずの、たわわに実った双丘が。

 

 今朝目覚めた時、ドクターは女になっていたのだ。

 

「あ、あ……あんまりだ……」

 

 がっくりと肩を落とすドクターとは反対に、ケルシーは顔を上げて部屋の端へ怒りに満ちた視線を送る。

 

 壁際に立っているのは、虚無の表情をしたガヴィル。その両腕はそれぞれワルファリンとクリフハートの首に回され、ギリギリと締め上げていた。その隣に立つ申し訳なさそうなワイフーも、アの首を締める力は緩めない。

 

「さて、君たちが悪戯に走る場面には、我々のみならずロドスのオペレーターの多くが遭遇してきた。それはドクターも例外ではない。しかし、今回ばかりは冗談で済むような案件ではないことは理解しているな?」

 

「ま、待ってケルシー先生……っ! わ、私、私は騙されただけなんですっ……! アがこれを飲ませたらドクターがあくびするたびにバラの香りがするようになるって言ってたから……!」

 

「上司に、怪しげな薬を、盛るべきではない」

 

「ウチのバカがホンットーにすみません。その、どんな罰でも受けさせますので……」

 

「ぐぎががががっ……! ワイフー姉、死ぬって……!」

 

「アンタは反省しなさい!」

 

「ぐげぇぇぇぇっ!」

 

 必死で腕をタップするアを、ワイフーはさらに締め上げる。徐々に泡を拭き始める下手人三人を見下ろし、ガヴィルはケルシーに伺いを立てた。

 

「なあ、ケルシー。こいつらどうする?」

 

「甲板に逆さで吊るしてくれ。それと、今月の給料は無いものと思え。減俸だ」

 

「ストップじゃケルシー! わらわは本当に女体化になる薬など作っておらぬ! い、いやしかし、女体となったドクターの血をひと口……」

 

「来月分の給与もカットする」

 

「な、なんで私までーっ!?」

 

 ケルシーの無慈悲な宣告を受け、悲痛な声を上げながら引きずられていく三人組を、医療部のオペレーターたちは閉口しながら見送った。

 

 一方で、両手で顔を覆い、ふさぎ込んでしまったドクターに、アーミヤがおずおずと近寄り声をかける。

 

「あの、ドクター……?」

 

「アーミヤ。私は今日、どんな顔をしてオペレーターたちに会えばいいと思う?」

 

「み、皆さんなら受け入れてくださいますよ! それに医療部の皆さんも、ドクターを元に戻せるように頑張ってくださいますから! ね!?」

 

 アーミヤは医療オペレーターたちを縋るように見つめる。

 

 しかし、反応は芳しくない。

 

 気まずそうに押し黙ってしまったメンバーの中から、サイレンスが仕方なく声を発する。

 

「努力はするよ。けど……」

 

「検索終了。フィリオプシスの権限で確認できる範囲においては、性別そのものを変更する実験及び理論は、ライン生命内部でも提出されておりません。現在、ワルファリンさんの研究ノートを解析し、トラブルシューティングの手段を検討中です。しばらくお待ちください」

 

「ちょっと待った。私はその間、どうすればいいんだ?」

 

「生理的・生物学的観点から、フィリオプシスはドクターは女性として生活するべきであると提言します」

 

 その言葉を聞いたドクターは卒倒し、即座に介抱される羽目になった。

 

 

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