アクナイ二次~TSドクターの受難~   作:よるめく

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(あらすじ)
ジムでひと騒動を起こしたエフイーターは、その日の夜、ビーハンターとブレイズを相手に酒を飲みつつ愚痴っていた。ビーハンターは笑いながらからかうが、ブレイズの方は様子がおかしい。

なんでも許せる人向け。

ブレイズはサッパリしてるように見えてめっちゃ繊細だし結構湿度高いと思うんだよね!!!!
あと割とメンヘラヤンデレの素質があるように見えるのは俺だけかな!!!!!


幕間2 ブレイズの悩み事

「ってことがあったんだよー! もー本当に紛らわしいっての!」

 

「ぎゃっははははははははは!」

 

 夜も深まる時間帯。酔いの回ってきたエフイーターの愚痴を聞いて、ビーハンターは膝を叩いて大笑いしていた。

 

 飲み会の場所はビーハンターの宿舎。蜂蜜の香りが漂うここで三人、屋主お手製の蜂蜜酒を嗜みながら管を巻く。顔ぶれはビーハンター、エフイーター、そしてブレイズだ。

 

 酒の肴は乾物、そしてエフイーターの持って来た話題。即ち、今朝のトレーニングジムであったハプニングである。

 

 ビーハンターはひーひーと笑いながら、ドライストロベリーを咀嚼する。

 

「けど、オマエもオマエだよなぁ? ジムで一体なにしてるって思ったんだ? ヒヒッ!」

 

「うっさいなぁもう! あたしだってそんなわけないって考えようとしてたんだよ! でもドクターの声があんまりにもアレでさー……」

 

「アレってなんだよ?」

 

「アレはアレだよ! 察しろよ!」

 

「察しろって何を? オマエがボス相手にサカッてることか?」

 

「こ、こんのッ……! ぶっ飛ばすぞ!?」

 

「おーやるか? 来いよ、負けた奴が追加のツマミ奢りだ!」

 

「上等! ちょっとブレイズ、軽く殴り合うからそこどけて……ブレイズ?」

 

 席を立ったところで、エフイーターは気付いた。

 

 酒が絡まずとも饒舌なブレイズが、さっきから一言も喋っていない。

 

 視線を下ろせば、彼女はいつもの姿からは想像もできないような、憂いを帯びた表情で缶ビールを傾けていた。

 

 エフイーターたちの騒ぎも耳に入っていないようだ。

 

「おーい、ブレイズー! どーしたんだよー!」

 

「んっ!? あっ、何? 酒無くなった?」

 

 テーブルを両手で叩くと、ブレイズはようやく我に返る。

 

 すっかり興覚めしたエフイーターは訝しみつつ腰を下ろす。ビーハンターも不満そうではあったが、喧嘩する空気ではなくなったのを察してか、渋々と座り込んだ。

 

 エフイーターは眉をひそめながら頬杖を突く。

 

「なんかさー、ブレイズ、さっきから静かすぎない? さっきまでは乗り気だったじゃん。もう飲めないとかでもなさそうだし。蜂蜜酒、気に入らなかった?」

 

「ああン? アタイの酒が悪いわけねーだろ」

 

「うん、ビーハンターの酒は美味いわよ。ツマミも案外合うし」

 

「だろ?」

 

 得意げなビーハンターの前で、ブレイズはツマミひとつと酒を含む。

 

 その顔も、やっぱり浮かない。

 

「じゃあ、なんだってのさ。せっかく飲んでんだから、辛気臭い顔すんなよ」

 

「ごめんごめん。ちょっと考え事しててさ……」

 

「うちのボスの事だろ?」

 

「ぶっ!!」

 

 ブレイズは頬を殴られたかのような動きで酒を噴き出した。

 

 それでエフイーターも得心が行く。にやにやと口角を歪めながら、突っつき始める。

 

「なんだよぉ~、そういうことなら早く言えよな~」

 

「いっつも言ってるもんなー、オマエ。ボスと自分のコンビがロドスで最強だって」

 

「ちょ、ちょっ……! 違……あ、いや、私とドクターのコンビが最強ってのはただの事実で……ああもう!」

 

 ふたりにからかわれ、ブレイズは手にしていたビールをひと口で飲み干した。

 

 威勢よく缶をテーブルに叩きつけると、勢いよく食らいつく。

 

「そうじゃなくて! 私が悩んでたのはそういうんじゃないから!」

 

「ほぉー。じゃあ、ボスと番いになれるかどうかって話か?」

 

「つがっ!?」

 

 ビーハンターは蜂蜜酒の満ちたコップを揺らしながら、意地悪く微笑んで言う。

 

「知ってるか? 今さ、ボスが誰とくっつくかって話で賭けやってんの」

 

「「はあ!?」」

 

 今度はエフイーターも一緒になって驚いた。

 

 目を剥くふたりの顔がビーハンターの笑いを誘う。口元を押さえて笑い出すのを堪えながら、昨日気のいいオペレーターから喧嘩ついでに聞いた世間話を暴露する。

 

「く、くくっ……! ほら、ボス、女になったろ? だから男とくっつくか女とくっつくかで盛り上がっててよ……!」

 

「なっ……いや、ちょっと待って? それがどーして私がドクターと付き合うか悩んでるって話になるわけ?」

 

 ―――そりゃ、オマエが割と人気あるからだよ。

 

 そう言いかけたビーハンターだったが、急に眼差しを底冷えさせるブレイズの顔が可笑しくて言葉にならなかった。

 

 ちなみに、ブレイズに賭けたのはLogosを初めとする古参のエリートオペレーター数名だ。

 

 また、アーミヤはオッズ高めで、ケルシーは最大倍率。アビサルハンターとライン生命からの出向組は割と低め。その他は失敬かつ下世話な憶測により上下を繰り返している。

 

 バーでの密談を思い返し、ひとり口元を押さえて腹をねじるビーハンターを見て、ひとまずエフイーターは腰を落ち着ける。

 

 蜂蜜酒で唇を濡らすと、冷静に問いかけた。

 

「……とりあえずさ、詳しく聞いてもいい? ていうか、その中にブレイズいたの?」

 

「いたぜ。えーと、オッズは……どんぐらいだったかな」

 

「ちょっと待って、そこまでは言わなくていいから、代わりに誰が賭けてるのか教えてくれる? 今から全員ぶっ飛ばしてくる」

 

 ポキポキと拳を鳴らすブレイズはなんとか宥められたものの、やや緊迫した酒の席になってしまう。

 

 ドクターの恋人候補の予想として列挙される名前を聞きながら、ブレイズは内心穏やかではいられなかった。

 

 実際のところ、ドクターが好きだ。頼りになるし、頼りにされると嬉しい。彼がいれば、どんな逆境だって敵ではないと本気で思える。ずっと隣にいてほしい。派手に勝ち星を上げて、他のオペレーターも無事だった時に見せてくれる笑顔をずっと見ていたい。胸を打つこの熱が恋愛感情だと察するのに、さほど時間はかからなかった。

 

 普段は、胸にしまい込んでいる。ドクターは誰にでも優しく、好意を寄せるオペレーターは多い。幼く無垢なものから、ブレイズと同じく恋している者まで幅は広いと思うが、少なくとも誰と付き合うか賭けが行われる程度には人気だ。

 

 男同士でも、妙に距離が近いと思うオペレーターも、何人かいる。それがブレイズを悩ませていた。

 

 ―――ドクターは、誰が好きなんだろ。

 

 ―――やっぱりウサギちゃん? 大穴って言われてるけどケルシー先生?

 

 ―――元々男だけど、今は女の子だし、男を好きになったりするのかな。

 

 ―――それとも、女の子が好きなままだったり?

 

 あわよくば、自分を好きになってほしいという想いはもちろんあるけれど。その願望が、随分遠く離れたような気がしてしまう。

 

 果たしていざ、ドクターと正式にお付き合いする相手が現れた時、自分は何を思うのか。一番不安なのは、そこだった。

 

「……おーい。おーい、ブレイズ! ブレイズー!」

 

「はっ!? な、なに? 終わった?」

 

「もう終わったよ。聞いてなかったみたいだけどー」

 

 エフイーターに半眼で見つめられ、逃げるように酒を呷った。

 

 随分考え込んでいたらしい。ビーハンターの苦笑いを見て、ちょっと恥ずかしくなる。

 

 ビーハンターは残った黄金色の液体を飲み干す。

 

「ったく。ブレイズよぉ、オマエ、なーんかさっぱりしねぇトコあるよなあ?」

 

「ど、どういう意味よ」

 

「変なトコでうじうじしてるって意味だよ! だーもー、こっちがじれったくなってくるじゃねえか!」

 

 ビーハンターは苛立った口調で言うと、ブレイズのコップを奪い、並々と蜂蜜酒を注いで押し付けてくる。

 

「おら飲め! 飲んで頭吹っ飛ばしちまえ! そしたら解決すんだろ!」

 

「解決って……何が?」

 

「ああ!? さっさとボスを襲ってモノにしちまえっつってんだよ!」

 

「がっ……!?」

 

「んなっ……」

 

 ブレイズとエフイーターが言葉を失う。

 

 首まで鉄板を押し付けられたように熱を持っている。ぼふ、と暴発したアーツによる熱風が放射状に放たれた。

 

 ビーハンターは顔を叩く熱気に顔をしかめながらも言う。

 

「うじうじうだうだしやがって。ボスが好きならとっとと言ってくりゃいいじゃねえか! 酒でもなんでも飲んでよぉ! はっきりしねーのが一番ムカつくぜ!」

 

「何言ってんの!? そんなことできるわけないでしょ!?」

 

「るっせぇ! いいから! 飲めって! 言ってんだよっ!」

 

「た、タンマ! 私はっ……ごぼぼぼぼぼっ!?」

 

 蜂蜜酒を無理やり口に流し込まれ、ブレイズは瞠目させられる。

 

 その後、彼女は何をするでもなく酔いつぶれてしまい、ビーハンターとエフイーターは翌日いっぱい不機嫌な顔で任務に臨むこととなるのだが―――。

 

 それはまた、別のお話。

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