アクナイ二次~TSドクターの受難~   作:よるめく

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グラウコス、インディゴ、アズリウスでグラディウスって呼ばれているらしいと最近知った。

上上下下左右左右BA!!!


幕間6 アズリウスの煩悶

 正午、ロドス本艦の休憩室にて。

 

「いっただっきまーす!」

 

 目を輝かせたカーディが大きな声を出し、目の前のケーキにフォークを突き刺す。

 

 素早く口に放り込んでは嚥下して、どんどんケーキを減らしていくカーディを、スチュワードが窘めたり口元を拭いてやったりする隣で、アドナキエルはテーブルを埋め尽くすスイーツの数々を眺めて言った。

 

「すみません、インディゴさん、グラウコスさん。俺たちもご一緒しちゃって」

 

「どうかお気になさらず。私たちだけで食べきれる量ではありませんので」

 

「むしろ、カーディさんの食べっぷりは、見ていて気持ちがいいくらいです。みんな、アズリウスさんの作ったケーキを食べたがらないので」

 

「そうなんですか?」

 

 アドナキエルは目を丸くして、山のようなスイーツを眺めまわした。

 

 一番多いのはケーキ類。スポンジケーキ、チーズケーキ、フルーツタルトを中心に、モンブランやザッハトルテなどに加え、クッキーやシュークリームなど、様々な種類のお菓子がところ狭しと居並んでいる。

 

 どれもこれも、見た目は普通だ。それどころか、店で買ってきたと言われてもおかしくない出来である。

 

 スイーツ好きで知られるラテラーノ公民であるアドナキエルから見ても、避ける理由など無いように思えた。

 

 口に出ずとも、彼の疑問を察したインディゴが、ドーナツをひとつ手に取って問う。

 

「アドナキエルさん、このドーナツは、茶色(ブラウン)ですね?」

 

「? ええ、はい。普通のドーナツに見えますけど」

 

「本来ならば、ドーナツに限らず、この机の上にあるお菓子は全て、青色になっているはずなんです」

 

「青色?」

 

 ふたりの会話が耳に入ったのか、カーディとスチュワードも手を止め、まばたきをしながらインディゴを見つめる。

 

 アドナキエルは、テーブルのスイーツが、全て真っ青に染め上げられた光景をイメージしてみた。

 

 食欲の無くなりそうな光景だ。口には出せなかったが、わずかに引きつった口元は、彼の意に反して雄弁だった。

 

 グラウコスが細くを入れる。

 

「食紅ですよ。アズリウスさんは色に拘るので、スイーツには決まって、青い食紅を入れるんです。まあ、彼女のお菓子が敬遠される原因のひとつでもあるのですが」

 

「あ、青の食紅ですか。ケーキや、クッキーにも?」

 

「はい。単に色が変わるだけで、味にも体にも影響は一切出ないのですが」

 

「でもでも、全部普通の色してるよね? 全然青くないよ!」

 

「食紅を入れ忘れたんでしょうね」

 

 頬袋のスイーツを飲み込んだカーディに返答し、グラウコスは休憩室の隅に視線をやった。

 

 そこでは、スイーツの制作者であるアズリウスが、こちらに背中を向けてうずくまっている。何やらブツブツと呟いているが、その内容は聞き取れず。インディゴとグラウコスがいくら呼びかけても、返答はない。

 

 スチュワードは心配そうな顔をする。

 

「インディゴさん、一体、何があったんですか?」

 

「それが、私たちにもわからないんです。私たちがここに来たら、既にあの有様で。テーブルの上にはこの通り、お菓子の山が……」

 

「休憩室に常備してあった材料、全部使い切ってしまったようですね。どうしたことやら」

 

 グラウコスは愚痴りながら、グラスを軽く回した。

 

 中身はバラ色のドリンクだ。インディゴたちにも、同じものが渡されている。

 

 本来ならば、グラウコスの分は、青く染まっているはずだった。他ならぬ、アズリウスの毒によって。

 

 ロドスに籍を置く大多数のオペレーター及び患者にとって、アズリウスの毒は、下手をすれば命に関わるほど危険なものだが、グラウコスにとっては、ちょっとしたスパイス程度のものだ。

 

 最初は、それが原因なのかとも考えた。誰かをうっかり毒してしまい、それが元で落ち込んでいるのではないか、と。

 

 だが、医療部はアズリウスの毒を中和する解毒剤を用意しているし、その対応も完璧にマニュアル化されている。というより、そもそもアズリウス自身が解毒剤を持っており、処置も心得ていた。彼女のことを知るオペレーターは、差別こそしないが、うっかり毒されないように、一定の距離を取って彼女と接する。

 

 なのでどうにも、“毒物”関連とは考えづらかった。

 

「本人に直接訊いてみるしかないんですが、何を訊いても、うんともすんとも言わないんです。さっきからずっとあの調子で。それにこんな大量のお菓子、冷蔵庫にも入り切りませんからね」

 

「俺の勘ですけど、ストレス発散のためにお菓子作りに没頭したんじゃないかな。俺も、外勤任務で嫌なことがあったら、スイーツをたくさん作りますし」

 

「アドナキエルくんのおやつ、すっごく美味しいんだよ! みんな大好きだもんね、ね!」

 

「カーディは食べすぎだよ。この間も、アンセルに注意されたばっかりだし」

 

「うっ……」

 

 喉を詰まらせたような声を出すカーディに、インディゴは小さく微笑んだ。

 

 グラウコスはもう一度アズリウスを振り返り、何か声をかけようかとも思ったが、そのうちあの状態も解けるだろうと思い直し、今だたくさんあるスイーツへと手を伸ばした。

 

「これ、休憩時間中に食べきれなかったら、どうします?」

 

「他の方々におすそ分けしましょうか。医療部の皆さんに差し入れしても良いでしょうし」

 

「はいはい! じゃあ医療部には私が持っていくね! アンセルくんにも食べさせてあげるんだ!」

 

「じゃあ、僕はカーディの付き添いに。アドナキエル、メランサに持って行ってあげて。そろそろ報告書も出し終わってるころだと思うし」

 

「わかった。それじゃあ、俺はこのあたりで。アズリウスさんに、お礼を言っておいてください」

 

「ええ、伝えておきますね」

 

 インディゴはこっくりと頷き、タッパーにあれもそれもとスイーツを詰め始めたカーディを微笑ましく見守る。

 

 一方のアズリウスはと言えば、スイーツ作りでも発散しきれなかった想いを抱えて悶々としていた。

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