アクナイ二次~TSドクターの受難~   作:よるめく

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(あらすじ)
無理やり連れ出されたショッピングから戻ってきたとき、ドクターたちはすっかり疲れ切っていた。ウタゲたちの辱めはもとより、ケルシーの説教もそこに重なった三人を、ドロシーとアステシアが慰める。

なんでも許せる人向け。アイデアは色々あるので、引き続きちょこちょこ更新していきます。


一日の終わり

 慌ただしく出て行ったドクターたちが心配で、執務室に残っていたドロシーたちが振り返ると、疲れ切ってげっそりとした表情のドクター、アステジーニ、ウィスパーレインの三人がいた。

 

 ドクターは何も言わず、ふらふらした足取りで仮眠用のソファベッドに倒れ込む。ドロシーが駆け寄り、うつ伏せになった背中へ控えめに問う。

 

「だ、大丈夫……?」

 

「……七徹するよりも遥かに疲れた」

 

 返答は、大声で泣いたあとの子供のように掠れていた。

 

 アステシアはそれっきり動かなくなったドクターを眺めつつ、隣の席に腰を下ろしたアステジーニに耳打ちをする。

 

「エレナ、一体何があったの?」

 

「散々な目にあったよ。店員さんには更衣室で乱交してるって誤解されるし、ウタゲたちは何言っても聞いてくれないし。しかも戻ってきたら、ケルシー先生にいつもの二倍早口で二十倍長いお説教されたんだよ? なんで私たちまで……」

 

「それは、その……大変だったわね……。お茶、淹れたら飲む? ポデンコお手製のハーブティーがあるけれど」

 

「飲む。ドクターとウィスパーレインは?」

 

「頂きます」

 

「私はいい。何か飲む気分じゃなくて……」

 

 どんよりとした声音に、これは重症だ、と苦笑しながら、アステシアは電気ケトルの下へ向かった。

 

 いつの間にか時刻はもうすぐ夕食時。しかし、どうも食欲が湧いてこない。

 

 下着を押し付けられたあとも、方々へウィンドウショッピングに連れまわされた。ネイル、アクセサリー、服など、とにかくガーリーなものを押し付けられ、時には写真まで撮られ―――最後の方は、完全にされるがままになっていた。

 

 そのころになるとアステジーニも、下手に抗議するより満足させた方が早く済むと思ったのか、死んだ目つきで振られた話題を流す始末。結局、大人しいウィスパーレインだけではどうにも出来ずに、あの三人が満足するまで付き合わされてしまったのだ。

 

 執務室に戻る前、押し付けられた下着の詰め合わせを自室に投げ込んで来たのは、ギリギリ残っていた理性のおかげだろう。

 

「初日でこれか……既に心が折れそうだ」

 

「災難だったわね、ドクター。ところで、あの三人は?」

 

「ケルシーに絞られたあと、ブリッジに吊るされたよ」

 

 付け加えると、ウタゲたちの端末は没収された。カシャは当然、暴れて抵抗したものの、ケルシーに敵うはずもない。

 

 ショッピングという名の辱めを受けた写真が出回ったりしないのは、非常にありがたいことだった。

 

 特に、ランジェリーショップで撮られたものが消去されたのは、今日一番の朗報だ。ウタゲとエクシアと下着姿になって撮影された写真が他の誰かに渡るのは流石にまずい。特にアーミヤに見られでもすれば―――何を言われるか、わかったものではない。

 

 実際、ケルシーの眼差しは雪境(ヒーラ)の風より冷たかった。

 

「……ドロシー、私はいつ男に戻れると思う?」

 

「ど、どうかしら。解析は確か、ソーンズさんの担当だったわよね。今日は一度も来ていないわ」

 

「早くどうにかしてくれることを祈るしかないか」

 

 全く以って、気が重い。枕替わりのクッションに顔を沈めていると、ドロシーに頭を優しく撫でられる。

 

 疲弊しきった心を和らげる感覚に、ドクターはしばらく無言で甘えた。

 

 

 

 そうして、夕食時に差し掛かる。

 

 アステシアの入れたお茶を飲み切ったアステジーニは、姉に連れられて食堂へと向かう。ドロシーはもう少しドクターの傍に居ると言ったが、他ならぬドクターの勧めに応じて食事を摂ることにしたようだ。

 

 ウィスパーレインは変わらずぐったりとしたドクターを覗き込み、体調に関する質問をいくつかしてから部屋を出た。

 

 執務室の扉を閉じると、思わず溜め息を吐いてしまう。ケルシーから今日中に、反省文を兼ねてドクターの様子をまとめたレポートを書いて提出しなければならない。随分と慌ただしい一日だ。

 

 けれど、ドクターには悪いが―――正直、楽しくもあった。

 

 嵐に巻き込まれたようなハプニングではあったけれど、あれこれと試着するドクターの姿を見るのも、自分も試しにアクセサリーをつけさせられるのも、ひとりで旅を続け、ロドスで静かに過ごすウィスパーレインには新鮮な体験だ。

 

 いや、もしかすると、ずっと昔にもあったのかもしれない。幾度行ったかも定かでない“若返り”の中で取りこぼし、失った記憶の中に。

 

 廊下のひやりとした空気が、火照った頬を冷やしていく。いつの日か、今日のことも忘れてしまうのだろうか。実感はおろか、名残も既視感もなく、初めからなかったかのように、綺麗さっぱりと。

 

 ―――先に、日記を書いてしまおう。

 

 そう決めたウィスパーレインは、懐から一枚の写真を取り出した。

 

 帰ってきた際、いつの間にかカシャが現像していた写真の一枚だ。原本となる端末は、全てケルシーに没収され、その場で記録を消されてしまった。だから、この写真が、今日を示す唯一のもの。

 

 カシャがカメラを持ち、ウタゲが真っ赤になったドクターを中心につかまえ、エクシアがアステジーニとウィスパーレインをフレーム内に引っ張り込む。六人で撮った、記念写真だった。

 

 虹のように彩り豊かな六つの表情。慌ただしかった今日の思い出。

 

 ウィスパーレインはそれを胸に抱きしめると、日記帳を置いた自室へと向かった。

 

 頬の熱が冷めきる前に、この気持ちを記して起きたかった。

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