アクナイ二次~TSドクターの受難~   作:よるめく

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(あらすじ)
ガヴィルからの進言を受け、ドクターの体力測定を行うつもりのシデロカ。しかし運動するに当たって、少し問題があり……。なんでも許せる人向け。

TS美少女になってこのあたりの取材を詳しくやりたいだけの人生だった。


三重苦

「ではドクター、服を脱いでください」

 

 至極真面目な表情で為された要求にドクターは怯み、一歩後ろへと下がった。

 

 要求した張本人であるシデロカは、胸元を押さえて下がろうとするドクターを半眼で見つめる。

 

「どうかしましたか? 早く脱いでください」

 

「……あ、いや、その……」

 

 ドクターは目を泳がせ、なんと返したものか懊悩させられる。

 

 別に、シデロカはいかがわしい意味で脱衣を求めているわけではない。現在地はロドス本艦のトレーニングジム。朝は早く、ドクターとシデロカ以外には、護衛を名目にくっついてきたグラベルしかいない。

 

 グラベルはじりじりと後退するドクターの体を、後ろから優しく抱き止めた。

 

「大丈夫よ、ドクター? 今は女の子同士でしょ~? 下着ぐらいで恥ずかしがる必要はないわ~」

 

「いえ、私はドクターの下着が見たいわけではなく、単に現在の筋肉量を測りたいだけなのですが。……それとも、人には見せられないようなものを着けているのですか?」

 

「誤解を招くような言い方はやめてくれ……!」

 

 シデロカの視線が冷たくなり、思わず顔を覆ってしまう。

 

 さて、女体化薬を飲まされて三日目。飲まず食わずで吊るされていた下手人たちが解放され、特にワルファリンたちが医療部にこき使われる予定の日の朝、ドクターの部屋にやってきたのはグラベルだった。

 

 昨日、フランカに良からぬことを吹き込まれたらしい彼女は、ドクターの着替えを手伝うと言い、本人の拒否を押し切ってしまった。しかも、未だ慣れないランジェリー姿を見て、何故か嬉しそうな顔をしていた。

 

 この三日、女性ものの下着の話で悩まされてばかりだ。胸を内側から蝕まれるような罪悪感というか、どんどん取返しのつかない方へ背中を押されているような気がする。エクシアたちのふざけたチョイスのせいだと信じたいところだ。

 

 躊躇に絡めとられ、動かなくなってしまったドクターを、シデロカは嘆息しながら見つめる。と、何か思い至ったのか、どういうわけかグラベルに問いかけた。

 

「……ところで、ドクターの下着というのは? まさか普通のものですか?」

 

「あら~? やっぱりシデロカも興味あるの~?」

 

「いえ、そういう意味ではなく」

 

 手元のバインダーに挟まれた紙をめくりながら、あくまでも真面目な表情を崩さない。

 

 読んでいるのは、医療部から渡されたカルテ。ガヴィルの“なんか色々足りてなくねえか? 筋肉とか”というコメントや、ドクターのスリーサイズなどが走り書きでメモされている。

 

「このサイズであれば、それ用の下着を着けた方が良いと思います。ジョギングや訓練中、しっかり固定してくれるようなものでなければ……痛みますよ?」

 

「い、痛むって……何が?」

 

 今度はシデロカが黙り込んだ。

 

 質実剛健で真っ直ぐな彼女には珍しい、少し困ったような表情。ドクターは失言を察した。文脈から読み取ることのできる話に過ぎない。―――だが、飲み込み難い。

 

 グラベルはくすくすと楽しそうに笑いながら、囁きかける。

 

「ドクタ~、ないなら、私のを貸してあげるわよ~? ドクターには少しきつかもしれないけどぉ、シデロカのじゃ大きすぎるでしょ~?」

 

「「…………!!」」

 

 ドクターとシデロカの顔に血が昇る。

 

 少し目を見開いたのも束の間、シデロカは柳眉を逆立てると、カルテを小脇に抱えて足早に出口へと向かう。

 

 なんだか視線を合わせるのが不安になって、別方向を見ながらドクターはやや上擦った声で彼女を呼んだ。

 

「シデロカ……?」

 

「ニ十分ほどで戻ります、少し待っていてください。……グラベルはドクターから離れるように」

 

「あら~、ヤキモチ妬いてるのかしら~?」

 

「冗談は表情だけにしてください」

 

 シデロカはぷいっとそっぽを向くと、さっさとジムから出て行ってしまう。

 

 ―――ここ数日、こんなのばっかりだ。

 

 ―――頼む、誰かなんとかしてくれ……。

 

 いたたまれなくなったドクターは内心で嘆く。

 

 一体何が悲しくて、こんな目に遭わなければならないのだろう。

 

 眼球が熱を持ち、何かじわじわと滲みだしてくるような気がしてくる。軽く泣きそうになっている自分の存在が、ますます気分を落ち込ませた。ぴったりと抱き着いてくるグラベルに勘づかれ、優しく撫でられてはなおさらだ。

 

 ドクターはどうにか涙声を押し殺して、呻くように言った。

 

「グラベル……近い」

 

「今更~? もちろん、ずっと傍にいるわよ、ドクター。それが私の役目だもの~」

 

 声色は優しく、包み込むようなものだったが、浮ついたような喜びを隠すことが出来ていなかった。

 

 

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