アクナイ二次~TSドクターの受難~   作:よるめく

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(あらすじ)
引き続きジムにて行動するドクターたち。色々ありながらもトレーニングを始めるドクターだったが……?

前回の続きでなんでも許せる人向け。

ドクターを喘がせたかったんや。
あとカチコミ役誰にするかちょっと悩んだ。


漏れ聞こえる声

 結論から言うと、シデロカの選択はベストだった。

 

 外勤任務で敵を屠るより早く動いた彼女が持って来たスポーツブラは、白くてシンプルなデザインのもの。相変わらず着用自体は躊躇われたが、悪戯で押し付けられたものに比べれば遥かにマシだ。

 

 トレーニングウェアはノースリーブのシャツ。ボトムはスパッツで、腰と腿周りを締め付ける感触が気になったが、確かに動きやすい。

 

 普段の服装に比べると随分薄着なので、相応に頼りなさはある。が、それはロドスの本艦内にあるトレーニングジムなので、何事もないと自分に言い聞かせて無理やり解決した。

 

 何故か手伝いたがるグラベルをなんとか外に留め、着替えを終えて戻るなり、シデロカの眉間が深い渓谷のようになった。

 

「……減っている。体重の変動から予想は出来ていたが……実際に目にすると顕著だ。ドクター、腕を上げてください」

 

「あ、うん」

 

 右腕を地面と水平になるように持ち上げると、シデロカは二の腕を軽く揉み始める。

 

 上腕二頭筋、上腕三頭筋、肩と移動する手が、妙にくすぐったく感じた。

 

 ―――なんだろう、すごく……変な感じがする。

 

 体を精査されてくすぐったい。それだけのはずなのに、なぜか後ろめたいような、恥ずかしいような気分になってくる。

 

 しかし、やましいことなど何もない。そう思って目を逸らし、気を散らそうとしたのが仇になった。グラベルの指が腹をスルリと撫でる。

 

「ひぅっ!?」

 

「う~ん、腹筋もなさそうね~。だめよ、ドクター。少しぐらい運動しないと~、せっかく恵まれた素材が台無しになってしまうわ~」

 

「グ、グラベル!」

 

 シャツの裾から手を滑り込ませていたグラベルが、左側にぴったり張り付いてくる。

 

 そのまま腿を撫でまわされて息を飲む。さっき思わず吐いてしまったような声を出さないように。

 

 シデロカは小刻みに震えるドクターを横目に、グラベルを睨んだ。

 

「……グラベル、邪魔しないでくれ」

 

「あら、一緒にトレーニングするんだもの。私がドクターの体を知るのも、必要なことだと思うのだけれど?」

 

「あなたとドクターのメニューが同じなわけないだろう……オペレーターたちと同じように鍛えたら、すぐ潰れるのは目に見えている。私の用意したメニューでさえ、キツくなってきたらすぐ逃げ出そうとするんだから」

 

 羞恥を中心に色々と混ざった感情の坩堝に、居たたまれなさが投入された。

 

 下唇を噛みしめ、目をつぶって耐え忍ぶ。早く終わらせてくれ、と注文をつけたかったが、太ももを揉むグラベルの手がそれを許してくれなかった。

 

 密着したグラベルの体は、手で触れずともわかるほどにしっかりとしていた。柔らかな肌の下に、しなやかに磨き上げられた筋肉があるとわかる。腕に押し付けられた胸の柔らかさ、それにとてもいい匂いがして……。

 

「ドクタ~? どうしちゃったのかしら~? 私にくっつかれて、ドキドキしてるの~? うふふっ」

 

「おい……」

 

 シデロカがいよいよ殺気立ち始めるのを見て、グラベルは不満そうに唇を尖らせながらドクターから離れる。

 

 それからメニューが組まれるまで、もうしばらく時間がかかった。

 

 そして大方の予想通り、ドクターの筋肉は減っており―――それなり以上の苦労を強いられることとなった。

 

「んっ……! くっ、くぅぅぅっ……!」

 

「もう少し耐えてください。3、2、1……はい、戻して。いきなり戻さないように。ゆっくりとですよ。息を止めない」

 

「ま、待っ……! うっ、ふぅっ……ふはっ……!」

 

 レッグカールマシンの重みに足を苛まれながら、ドクターは苦労して呼吸しようと口を開くも、結局足を伸ばしきるまで上手くはいかなかった。

 

 シデロカは、ドクターのぷるぷると震える足を押さえつけてトレーニングのペースを握る。当然、それを押しのけるような脚力などない。15kgの重りで3セット、足を曲げただけで息を上げる体たらくでは、自傷行為に等しいとまで言われるシデロカをどうにかできるわけない。

 

 ―――前はもう二、三回いけたはず……なのに、全然足が曲がらない。

 

 ―――女になって、本当に筋力が落ちてる?

 

 ―――男の時でもきつかったのに。

 

「ではもう1セット行きましょう。次はチェストプレスを……」

 

「もう一回は無理だ、シデロカ……! もう足腰が立たない……!」

 

「つべこべ言わずに足を曲げる!」

 

 ぐっと、足に力を加えられ、ドクターは歯を食いしばって両足を曲げようとする。

 

 足だけでは足りず、腹と支えを握る手にも全力を込めた。きつくつぶった目蓋を濡らすのが、涙だか汗だか区別がつかない。

 

 なんとか曲げ切ったところで、キープを命じられる。これも大概辛かった。

 

「んぐっ、うっ……っっっうぅぅ!」

 

「2、1。ではゆっくり戻します。力はいきなり抜かないように」

 

「……んんんんんんっ……!」

 

「はい、OKです。やはり体力にも減退が見られる……と。それと、声を抑えてください。勘違いされます」

 

「え?」

 

「いえ、なんでもありません。チェストプレスに移ります」

 

「わ、わかった……けど、ちょっと……休ませて……」

 

 ぜいぜいと肩を上下させるドクターの頭に、シデロカはタオルを被せる。

 

 バケツの水を被せられたように汗だくになったドクターは、額や頬を拭い出す。グラベルはラットプルダウンをしながら、その様を盗み見た。

 

 桃色に染まる肌を瑞々しく彩る汗の粒。疲労のせいか、少しとろんとした瞳。マシンのシートに背を沈め、足を小刻みに震わせる姿が妙に艶めかしい。

 

 グラベルは心臓の鼓動が早まるのを自覚した。

 

 ―――あ、だめ。だめよあたし。勢い余ってドクターに嫌われるようなことしたら。

 

 丸っこい耳をピクピクさせながら、グラベルはマシンを動かす。さっきよりも速く、雑念を振り払うように。

 

 チェストプレスに励む声が、集中を掻き乱した。

 

 同じように、ジムの外、扉一枚を隔てた場所で、顔を赤くする者がひとり。

 

 扉の取っ手に手をかけたエフイーターは、愕然とした表情でわなわなと震えていた。

 

 ―――あいつら、ジムで何してんの!?

 

 ―――つかこの声、ちょっと高いけどドクターか? そういや女になったとか言われてたっけ……。

 

 ―――えっ、何? 一緒にいるのシデロカだよな? そういう関係? そういうこと……しちゃう仲なのか!?

 

 ―――違うよなぁ!? トレーニングしてるだけだよなあ!?

 

 ―――トレーニングしてるだけで……出る声か!?

 

 エフイーターの頬が、かああっと熱を帯びる。そのまま耳を澄ませていると、微かにふたりの声がした。

 

「やり方は覚えていますよね。胸を意識して」

 

「し、シデロカ? 私の見間違いだと思うんだが、流石にこの量は冗談だよな……?」

 

「いいえ、これぐらいが妥当な量です。始めますよ」

 

「ストップ! 流石にこれは無理だ!」

 

「泣き言は終わってから聞きます。3、2、1、はい!」

 

「うう……ふっ、んっ……! んん、んんんっ……!」

 

「胸をもっと意識してください。そう、その調子です。そうしたら次は力をゆっくりと抜いて」

 

「ぐっ、はぁっ……! んーっ……! づっ……!」

 

「まだ耐える!」

 

「耐えるって、ホントに、これ以上は……っ!」

 

「我慢してください。ドクターはいつも途中で音を上げてしまいますが、続けているうちにハイになって気分が良くなって来ます。私の見立てではもう少しです。そこまで行けばただ疲れるだけではない心地よさが……」

 

 そこでエフイーターの忍耐は限界を迎えた。

 

 それなりに親交のあるシデロカのイメージとTPOを総動員し、トレーニングをしているだけだと納得しようとしていた頭が完全に沸騰したのだ。

 

 気付けば、噴きこぼれた熱湯のように、ジムの扉に向かって鋭く跳躍する自分がいた。

 

「な、な、な……何やってんだァァァァァァァ―――――――――ッ!!」

 

 その後、ドクターは飛び蹴りでジムにカチコミをかけてきたエフイーターに、怒涛のように怒鳴られる羽目になった。

 

 シデロカとグラベルの仲裁で事なきを得たは良いものの……その後、彼女からの目は険しくなってしまう。

 

 一体何がどうなっているのか聞いても、誰も説明してくれなかった。

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