召喚されたら使い魔だったので魔法を調べて帰ります   作:魔術馬鹿

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決闘

 時を少し遡る。

 異国から来た平民が使い魔にされたと聞いた厨房のマルトーは貴族嫌いなのでエインに優しかった。

 料理をサービスしてくれるぐらいに。

 親友のロイドと同じく魔術馬鹿だが貧乏生活もあり良識もそこそこ持ち合わせるエインは仕事を手伝った。デザート配りだ。その際足元に落ちていた瓶をうっかり蹴ってしまった。

 

「なんてことをするんだ!?」

「ん? ああ、失礼」

 

 慌てて小瓶を拾う金髪の少年はどこも割れていないかを確認しホッとしポケットにしまう。が………

 

「おい、それはモンモランシーの香水じゃないか?」

「本当だ。彼女が自分のために作っているはずの香水だぞ?」

「ははあ、さてはギーシュ! 君はミス・モンモランシーと付き合っているんだな!?」

 

 と、少年の周りにいた生徒達が騒ぎ出す。

 

「あ、いや………これは、その……」

 

 しどろもどろのギーシュという少年。そんな彼に近づく人影。マントの色が異なり、背が低い。後輩なのだろう。

 

「ギーシュ様……やはり、ミス・モンモランシーと………」

 

 潤んだ瞳。絶望………彼女は、ギーシュが好きだったのだろう。

 

「彼等は誤解しているようだ。いいかいケティ、僕の心の中に住んでるのは君だけ」

 

 違った。普通に交際していた。

 

「その香水を、あなたが大事にポケットにしまったのが何よりの証拠ですわ! さよなら!」

 

 普通、ではなく二股していたらしい。頬を引っ張っ叩かれた。

 そしてモンモランシーというらしい金髪ドリルの少女もワインをギーシュの頭にかけてうそつき! と去っていく。

 

「あのレディ達は薔薇の存在価値を理解していないようだ」

 

 一方的にチヤホヤするなら花だろうが、交際するならもはや花でもなんでないのでは?

 

「君のせいで二人のレディの名誉が傷ついた。どうしてくれるんだね?」

「ふむ…………ああ、じゃああの二人に浮気をしない男を紹介しよう」

「!? へ、平民の君がどんな男を紹介すると言うんだね…………そうではなく、謝罪を!」

「彼氏の浮気を白日のもとに晒して申しわせありませんと言ってくればいいんだな?」

「僕に! 謝罪しろ! そう言ってるんだ!!」

「…………………………レディの名誉はいいの?」

 

 何が言いたいんだこいつ、と言いたげな顔のエインにギーシュは顔を赤くしてプルプルと震え、周りの生徒達がゲラゲラ笑う。

 

「ふ、ふん………君はルイズの使い魔だね? 平民の……『ゼロ』の使い魔に礼儀を求めるのは酷だったね」

「浮気をするのは貴族の礼儀なのか?」

 

 と、純粋な疑問を近くにいた生徒に尋ねるエイン。因みにハルケギニアは基本的に一夫一妻だ。どう考えてもギーシュに礼儀なんてものはない。

 

「良いだろう………決闘だ!!」

「………決闘?」

 

 杖を向けてきた→決闘→この世界の攻撃魔法が見れる?

 

「ふっ、怖気づいたかい? しかたないさ、『ゼロ』の使い魔に」

「よしやろうすぐやろう」

「へぁ?」

 

 怯えて謝罪するかと思えば目茶苦茶乗り気だ。困惑するギーシュ。

 

「な、ならヴェストリア広場に来たまえ。ケーキを配る程度には待ってやる」

 

 そう言うと去っていくギーシュ。エインはお盆を振り上げ浮き上がったケーキを全て食い尽くし空になった盆をシエスタというメイドに渡す。

 

「………あなたは大丈夫だとは思いますが、殺さないでくださいね」

「もちろん」

 

 キラキラと子供のように瞳を輝かせるエインに、シエスタは呆れたようにため息を吐く。

 

 

 

 

 

 ヴェストリア広場は『火』と『風』の塔の間にある、西側故に日の当たりにくい位置。

 噂を聞きつけた生徒達で集まっていた。ルイズもいる。異国のメイジ………その力を改めて確認できるとはいえ、不安だ。

 

(怪我しないわよね…………)

 

 事前に止めようとしたが、本人曰く自分はそこそこ強いらしい。

 

「諸君、決闘だ!」

「ギーシュが決闘だぞ! 相手はルイズの平民だ!」

 

 娯楽に飢えているのか、集まった貴族達は楽しそうだ。彼等がギーシュとエイン………平民の戦いが成立するとは思っているはずもなく、ただ彼が甚振られるショーを見に来ただけ。

 

「逃げずに来たことは褒めてやろう、平民」

「そんなのどうでもいいから早く魔法を見せてくれ」

 

 本当にどうでも良さそうだ。ギーシュを見てない。魔法を使う存在を見ている。

 

「…………僕の二つ名は『青銅』のギーシュ! 我が騎士、青銅のゴーレム、ワルキューレがお相手しよう!」

「おお」

 

 『土形代』に似ている。あれはあくまで土をそういう形、質感、色にしているだけだが…………こちらは『錬金』も使用しているのだろう。

 エインに向かい殴りかかってくる。

 

「遅いし軽いな。いや、シルファ(アイツ)を基準にするのが間違いか」

「…………は?」

 

 が、弾かれる。攻撃されたことでうっすら浮かび上がる結界がギーシュの攻撃を塞いだのだ。

 

「ほうほう、やはり術式はこちらのものとまるで異なるな。ここがこうなって、この機能がこうで……」

 

 結界を解き、ワルキューレの手足を引きちぎり観察する。

 

「な、え?」

「よし次だ。次の魔法を頼む」

「!!」

 

 6体のワルキューレを生み出すギーシュ。全7体。人と同等サイズの、人より遥かに運動性能の優れたゴーレムを複数操る。それがギーシュの強みだ!

 

「ワルキューレ!!」

「なるほどなるほど。こちらの形代系の術に似てるな。細かく動かすのではなく予め動きの術式が入っている…………馬鹿踊りしかできないこちらの形代とは動きの精度が違うが」

 

 ガキンガキンと結界を叩くワルキューレ。この数をここまで正確に操るとは本当に興味深い術式だ。ただ、数が増えただけでさっきの上位互換でしかない。

 

「よし次は、防御魔法を見せてくれ」

 

 膨大な魔力がエインの指先に集まり、黄金の光が灯る。

 

『雷系統魔術・電球』

 

 放たれる雷光。万物を消し飛ばす破壊の光。

 

「──────」

「え?」

 

 目を見開くばかりで防御行動に映らないギーシュを見て、慌てて魔術の起動を変え……魔法学院の壁が消し飛んだ。

 

「……………は、はへぇ?」

 

 髪の毛を少し焦がしたギーシュはその場でへたり込み水たまりを作る。そんなギーシュに、不思議そうな顔を向けるエイン。

 

「なんで防御しねえの?」




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