召喚されたら使い魔だったので魔法を調べて帰ります   作:魔術馬鹿

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ルイズの系統

 大気が雷で焼き切れた独特の匂い。

 ライトニング・クラウドという魔法がある。高位のメイジにしか使えない雷を発生させる魔法。

 だかあんな威力は出ない。

 人智から外れた強力な魔法………杖を持たず、ルーン詠唱もなく………そんな存在、一つしか知らない。

 

「まさか、エルフ……?」

 

 十倍の数のメイジで挑もうと返り討ちにあうという妖魔。人類最大の天敵にして聖地に住み着くブリミル教の不倶戴天の怨敵。

 耳が長いと聞いた。彼の耳は普通だ。だが、相手はエルフ。姿を変える程度、きっと簡単にやってのける。

 

「エルフ? どこどこ!? 魔法に長けた種族だろ!? どこに居るの!?」

 

 が、件の少年はキョロキョロあたりを見回し、視線が自分に向いていることに気付く。

 

「…………もしかして俺をエルフって勘違いしてる?」

「か、勘違い? ここまでしておいて、白を切るつもりか!!」

「いや、これ普通に俺の国の誰でも使える魔術だし………」

 

 威力はおかしいけど。

 

「俺はここに来るまでトリステインって名前の国なんて知らなかったし、貴族しか魔法を使えないなんて文化も知らなかった。それだけ遠くの国なんだ、魔法に違いもあるさ」

「遠くの国…………まさか、ロバ・アル・カリイエ?」

 

 サハラを………エルフの国を隔てた東の果。

 

「ふーん? きっと、こちらでは我が祖国をそう呼ぶのだろう。では改めて、俺はロバ・アル・カリイエのメイジだ。今後とも宜しく」

 

 

 

 

 

 学園の長であるオスマンは鏡に映る光景に髭をさする。

 

「…………ふむ」

「勝ってしまわれましたな」

「勝ってしまったのう」

 

 コルベールはエインの左手に刻まれたルーンを調べ、始祖の使い魔『ガンダールヴ』に辿り着きオスマンに報告したので、そのタイミングで件のガンダールヴが貴族と決闘すると報告が来て、こうして覗いた。

 

「ガンダールヴとはあらゆる武器を使いこなす使い魔だったのでは?」

「魔法、でしたね……魔法、ですよね?」

「儂らの知らん、な。雷とは……最低でもスクエアクラス。しかし杖もなく……まさか、エルフ?」

 

 エルフ。ブリミル教の宿敵にして、戦うには倍の数のメイジを用意してもまだ足りぬ人類の天敵。最強の妖魔。ただし、特徴として解りやすく耳が長い。

 とはいえ、顔を変える魔法は人間にもある。耳を隠す程度、エルフでも出来そうではあるが………。

 

『……………………』

「!?」

 

 と、鏡に映るエインと目が合う。

 あり得ない。向こうからこちらを認識することは出来ないはず!

 だが、確実にこちらを認識していると思わせるだけの凄みがある。オスマンは慌てて遠見の鏡を解除する。

 

 

 

 

「……………消えたか」

 

 不躾に覗かれたから見返してみたが、確か片方はコルベールとか言ったか。もう一人は、初めて見る髭の長い老人。この世界で一番魔力が多く、洗練されていた。

 

 この学園の長だろう。落ち着いてこちらの世界の魔法を研究したい身としては、不要な敵対は避けたい。まあ今はどうでも良いかとギーシュに目を向ける。

 

「さて、ミスタ・グラモン。勝者は私か?」

「ひっ! あ、ああ。君の勝ちでいい………!」

「なら勝者として君に頼みがある」

「た、たのみ? な、なんだ。何でも言ってくれ! あ、でもその………うちは、そこまで裕福な貴族では」

「金など不要。ミスタ・グラモン……いや、ギーシュ。俺と友になってくれないか?」

 

 と、エインはギーシュに向かい手を差し出す。因みにギーシュが作った水たまりは既に蒸発させている。

 

「と、友に………?」

「決闘により互いに己の内を更した。ならそれは、もはや友と呼べる。そうは思わないか?」

「っ!!」

 

 カッと目を見開くギーシュ。そしてエインの手を取る。

 

「ああ、これからよろしく、友よ」

 

 ワッと歓声が上がる中、エインはサンプルゲットと内心で微笑んだ。

 

 

 

 

「さて、では早速我が主ルイズの魔法失敗の謎を解くために、我が友ギーシュの力を借りよう」

 

 翌日の放課後、校舎の外にて集まるルイズとギーシュとエインと…………

 

「所で君達は?」

「気にしなくて良い」

「続けて、ダーリン」

 

 青髪小柄の少女タバサと、赤髪褐色肌の豊満な体つきのキュルケが居た。エインはまあいいか、と気にしないことにした。

 

「でも、調べるってどうやって?」

「こちらの国の一般的なメイジとルイズの差異を見つける。そのためにギーシュを呼んだのだが、複数モルモットがいるのは思いがけない幸運」

「モルモット?」

「小動物のことだ。まあ、かわいい生徒的な」

「まあダーリンったら、かわいいなんて!」

 

 キャッと頬に手を当てるキュルケ。エインは顔がいいので城のメイドに良くそういう視線を向けられなれているので気にしないことにした。と、そんなキュルケをタバサが杖でポカリと叩く。

 

「お茶です」

 

 シエスタが人数分のお茶をそれぞれの席においていく中、エインは丸太を4本、間隔に並べていく。

 

「今から一人ずつあの丸太になにか魔法を放ってくれ。それを解析する」

「解析? それも、貴方の国の魔法?」

「そうだ」

「………貴方の魔法は、エルフが使うものと同じ?」

「此方のエルフの魔法を見たことがないからなんとも」

 

 何やらズズイと乗り出してくるタバサ。此方の魔法に興味があるのだろうか?

 

「壊れた心を治す魔法は、ある?」

「神聖魔法にならあるだろうが、癒やすのはイーシャの得意分野だからなあ」

 

 エインとしては試してみたいが、解呪、解毒、ただの治療ならともかく精神の癒やしともなれば失敗すれば相手を殺しかねない。そういうのはちょっと良くないと思うんだ。

 

「………そう」

 

 何やら落ち込むタバサ。知人の話だったのだろう。

 

「ただの怪我や病気なら治せるんだがな」

「それ、本当!?」

 

 と、ルイズが立ち上がる。その衝撃で落ちたお茶をシエスタが机に戻した。

 

「どんな病気でも、とは言わないが………」

「それでも、大抵の病気は治せるのね?」

「あー、うん」

「なら、ならちい姉様を………!!」

「落ち着け、ルイズ。その人は今すぐどうこうなるのか? なら診るけど………」

 

 その言葉にルイズはハッとして大人しく座り直す。少なくとも、すぐに容態が急変するわけではないようだ。呼び方からして、姉のようだが。

 

「じゃあ、早速魔法を放ってくれ」

 

 ギーシュは礫を放つ。丸太には傷一つつかない。

 キュルケは炎を放つ。丸太の表面が焦げた。

 タバサは氷を放つ。丸太を貫いた。

 ルイズは杖を振るう。丸太が爆ぜた。

 

「ふむふむなるほど」

 

 解析系統魔術を使いながら確認するエインは、爆発した丸太を見て悔しそうな顔をするルイズに近づくと頭に触れる。

 

「術式剥離」

「へ?」

「よしっと。ルイズ、もう一度魔法を放ってみて………そうだな、お母さんの得意系統で」

「え、ええ………ウィンド!」

 

 ルイズが杖を振るうと突風が吹き荒れ、丸太を4本とも吹き飛ばした。

 

「お〜」

「…………へ?」

「………………」

「なんと……」

「…………う、うっそ」

 

 感心するエイン。ポカンと口を開けるキュルケ。無表情ながら目を見開くタバサに、あんぐりと口を開けるギーシュ。

 自分でも信じられないといった顔をするルイズ。エインはシエスタに羊皮紙を持たせ、ルイズの頭においていた手を当てる。何やら奇妙な文様が刻まれた。

 

「此方の魔法……系統を定めるのはメイジの中で行われるようだ。ちょうど脳辺り……遺伝のみならず、性格も系統に左右されるんじゃないか?」

 

 その言葉にギーシュは確かにグラモン家は土系統に目覚めやすく、性格も似たり寄ったりだったと思い出す。

 

 完全に同じとは言わずとも、たしかに系統によって性格に似た部分があるという言葉には全員思うところがある。

 

「ルイズの頭の、系統を司る魔力の流れに術式がひっついていた。こちらの魔術に詳しくないから確かなことは言えないけど、読み取れるだけで血縁選択に、同調? ルイズの血筋に発現し、他の系統を正しく使えなくするようだね」

「な!? それって、ヴァリエール家を誰かが呪ったってこと!?」

「どうだろ? これはこれで、別の系統を使う為の術式にもなりそうだけど………まあ解析が先かな」

 

 そんな呪いなど燃やしてしまえと言いたいルイズだったが、目をキラキラさせるエインを見て言葉を飲み込む。

 

「別の系統って?」

「さあ? それは解析してみないと解らないな。うーん、取り敢えず解るのは空間……ああ、使い魔召喚はこの系統か」

「へえ、だからヴァリエールも使い魔召喚は最終的に成功したのね」

「最終的には余計よ!」

 

 キュルケの言葉に吠えるルイズ。

 

「これを解析し終えれば、帰る手かがりになるかも」

 

 帰ると聞きルイズが目を見開く。だが、そうだ。彼は元々別の国の人間。こちらの都合で呼び出してしまった少年なのだ。

 

 ならせめて、その時笑顔で送れるように、彼に恩を返さなくてはと心に決めた。




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