夏休みは体育祭の練習が休める。そう思っていた時期が私にもありました。休めるなんてことはなく寧ろ練習時間が増えます。どうしてなんだぁ!!
これには色々事情があるんですね。そもそもこれは学校が推進してるんですよ(絶望)。学校としては一応文武両道を掲げているので、行事に全力で取り組む+体力がつくっていうのは学校としては喜ばしいので促進してるわけです。実際、これのお陰で体力テストの平均は県内でも一位らしい。そこそこの進学実績に運動もさせられるって事で学校の人気はそれなりに高く、結果として練習はできるだけ詰め込まれることになる。
暑い、キツい、臭いの三重苦で普通に生徒からは不評だ。遂に応援練習も始まって体育祭が近づいてきているのを感じる。応援はよくわからんダンスを踊らされて、色々移動とかするだけで特筆する点はない。そして、遂にリレーの練習も始まった。僕の走順は春奈の後だ。一年生女子二人が走ったあとに一年生男子二人が走って、二年生女子→二年生男子→三年生女子→三年生男子の順番だ。
春奈からバトンをもらうので、バトンの練習をする。
春奈が走ってくるので軽くリードを取ってスピードを少しずつ上げていく。適当なところでバトンを受け取る。初めての共同作業。やったぜ。
練習を終えて、家に帰る。流石に朝から夜まで練習ということはなく、午前中だけの練習なので、帰るときもまだまだ暑い。ジリジリと照りつける太陽の熱波に耐えながら歩を進める。今は愛梨と五月、春奈がの四人だ。最近はこのメンバーで帰ることもまあまあある。
「愛梨、誕生日おめでとう!!」
そう、今日は愛梨の誕生日なのだ。僕はそう言って、買った本を渡す。
「わー、ありがとー。この本、私ー読んだことないなー。楽しみー。」
春奈も愛梨の正面に立って
「私からも、おめでとう!!」
そう言って包装された白いシュシュを渡す。
「ありがとー!!何が入ってるか楽しみだなー。」
五月は渡さないんだろうか?五月からもらったら喜びそうだけどなー。愛梨も物欲しそうにチラチラ見てるし。
しばらくすると、愛梨が突然
「そうだ、このメンバーでーどこかー遊びに行かないー?」
と言い出した。
「何処かってどこ?」
と五月が問いかける。五月は少し驚いているようだ。
「えーっと、わかんないけどー。」
そこで五月が提案する
「じゃあショッピングセンターは?この辺で適当に遊ぶって言ったらあそこしかなくない?」
まあ、確かに。
「じゃあ、そうしようー!!」
というわけで今度四人で遊びに行くことになった。
その日の夜、お風呂も入って、何故か練習があるのに大量に出ている夏休みの課題を片付けようとせっせとやっているとラインの通知音がなる。見てみると、愛梨からだった。
「今度、遊びに行くとき、春奈ちゃんを連れて何処かに姿を眩ませておいてね」
とのことだ。流石にラインだとあの間延びした喋り方ではないらしい。
「了解、そういえば五月からプレゼントをもらったの?」
と返すと
「貰ったよー。みんなの目があると恥ずかしかったみたい。可愛いね。」
とのことだ。まあ、そういうこともあるだろう。というか、春奈と二人でどうやって抜け出そうか。
というわけで今日は遊びに行く日である。春奈との抜け出し方、全く考えてない。
集合場所の駅前に着いた。着ていく服を悩む時間が長くて、かなりギリギリだ。しかし、五月しか来ていない。田舎とは言っても駅前は流石に人がそれなりにいて、交通量も多く、騒がしい。
「青、おはよう。」
と五月が声をかけてくる。
「おはよう」
「実はさ、話があってさ。」
話?なんだろう。
「私、愛梨のこと好きなんだ。」
唐突な告白。五月の顔は強張っている。
「だからさ、すごく言いにくいんだけどさ、今日は途中で春奈と一緒にはぐれてくれない?多分春奈のこと……すきでしょ?貴方にとっても悪くない話だと思うんだけど…」
五月にも筒抜けだったのか……。まあ、提案に関しては願ったり叶ったりだ。余計なことを考える必要がなくなった。
というか愛梨は両思いなのか。良かったね。
「いいよ、というかそんな言い方しなくても全然手伝うよ」
と微笑む。そう答えると、彼女の表情が柔らかくなる。かなり心配していたようだ。かなり繊細な問題だしね。
5分くらい遅れてあとの二人も集まって早速ショッピングセンターへ出発する。
「遅いよー」
と僕が言うと
「私と遊びに行くということは遅刻するということだよ。」
「右に同じく」
と春奈と愛梨が開き直っている
「言うべきことは違うでしょ?」
と五月が凄む。
「「ごめんなさい。」」
「よろしい。」
そんなこんなでショッピングセンターに着く。適当にブラブラしていると愛梨が
「ちょっとお花を摘んでくるね」
と言って消えたのでその間に僕と春奈は別行動を始める。というかお花を摘んでくるなんて今どき言う人がいたんだね。
二人のルートはほぼ決まっているらしく、そこにかち合わないためにウロウロするだけの簡単なお仕事。
春奈が歩きながら神妙な顔をして話し始める。
「そういえば、青も五月の好きな人、聞いたんだね。」
「うん。」
「青なら大丈夫だと思うけど、今まで通り接してあげるといいと思うよ。」
「当たり前だよ。」
そう、当たり前だ。そう答えると、彼女は顔をほころばせて、
「そっかー、良かった。やっぱり青を信頼してよかったよー。」
と嬉しそうだ。そう言われると照れる。ふと、思いついたように春奈が
「そういえばさ、女の子同士の恋愛のことをよく百合っていうじゃん?あれってなんでかな?」
「えー、わかんない。僕は百合っていうと夢十夜が一番に出てくるけど、関係なさそうだし……」
「夢十夜って何?」
「夏目漱石の作品だよ。簡単に言うと愛し合っている男と女がいて、女が死んだときに百年後に会いに来ますって言って死んじゃうんだ。そして、100年後に百合になって帰ってくるってお話だよ。」
「ふーん、百合になるってなんか不思議。あー、だから夢十夜なのか。夢の中ってことね。」
「そうそう。しかも百合って百に合うって書くでしょ?漢字は違うけど百年後に会うことをそこでも表現してるってわけ。」
「そうなんだー。詳しいね。」
「まーねー。」
とここまで話したところで彼女はゲーセンを見つけたらしい。
「あっ、ゲーセンだ!!青、ホッケーやろう。ホッケー。今度は負けないから。」
「春奈が僕に勝とうなんてまだまだ早いよ。」
結果、僕が勝った。
「悔しいーー、今度は勝つから!!勝ち逃げは許さないぞ!!もう一回、もう一回」
転がるんですか?まあ、別にいいけど
「あっ、マズイ、そろそろ五月たちが来る。早く出るよ!」
えー、やる気満々だったのに。
未練を残しつつ、ゲーセンをあとにする。
その後は適当な服屋に入った。
「おー、似合ってるー。」
今、僕は絶賛春奈のきせかえ人形になっている。あまり服に頓着しない僕に春奈が服を見繕ってくれるらしい。今も目の前で服の色について悩んでいる。
「やっぱり、黒?いや、カーキとかもありよね……ねえ、どっちがいい?」
そう言われてもこだわりないからなあ…
「春奈はどっちが好き?」
「えっ、私?私は……こっちかな。」
と言って黒色の服を選ぶ。正直、春奈が好きならなんでもいいのだから春奈に選んでもらえるのが一番いい。というわけで
「じゃあこっち」
そう言って黒色の方を指差す。
「春奈のこと、信じてるから」
そう言って悪戯っぽく笑う。
「任せといて!!」
と春奈は胸を張っていた。
服を買って、袋を携えながら、ブラブラと歩く。春奈と一緒に歩いているだけで楽しい。この時間をくれた五月と愛梨には感謝だね。
夕方になって、愛梨と五月と合流してから帰った。今日は楽しかったなー。