俺が上坂と初めて会ったのは二年生の前期生徒会だった。
俺は二年生の生徒会副会長として生徒会に入った。信任投票だとわかっていたので、特に公約は掲げていない。
初めての生徒会ということで少し緊張しながら引き継ぎのために生徒会室に行き、ノックを二回する。すると、「ブリブリブリブリ」という音が聞こえてくる。
何これ………怖い。
しばらくして、意を決してドアを開ける。
「おー、君がニューウンコボーイか。」
中にいたのは長い黒髪を一つにまとめた可愛らしい少女だった。この人は永野唯。三年生の次期生徒会長だ。小さい。
「さっきのは………先輩ですか?」
「あー、これ?」
と言って、何かの機械をオンにする。「ブリブリブリブリ」と先程の音が流れる。まじか……。
「ノック二回はトイレの在室確認だからね。ビジネスマナー的にアウトだよ!!」
と言われる。なんなんだ、この人。絶対変人だ。
ヤバイ帰ろうと思ったら、すぐに他の人が来る。
ちなみに、俺は他の二年生をあまり知らないので、書記などを決めるのに全く口を出していない。
コンコン
誰か知らない生徒は二回ノックをしてしまった。先輩があの音を流す。汚い。
少しの間をおいて、一回ノックされる。
「おっ、君とは違って賢いみたいだね、実験を始めたよ」
君とは違って、は余計だ。
一回ノックでは先程の音がならないことに気づいたのか、すぐに二回ノックされる。先輩があの音を流す。
音が流れると、間髪入れずに再び二回ノックされる。先輩はループ再生にして音を流す。しかし、もうノックの音に対して例の音が間に合っていない。もう十回は二回ノックされているが、まだ二回しか音は流れていない。
「なるほど、そうすればよかったのか。」
さぞ悔しがっているだろうと思ったら、先輩はニヤニヤして音を止め、
「私の負けだよ、入っておいで。」
と言う。ガチャリとドアを開けて、女子生徒が中に入ってくる。上坂静だ。ショートヘアに高い身長。整った顔立ち、巨乳。まさに男の理想とも言うべき女。それが上坂静だった。
「失礼しまーす」
ただ、彼女はモテない。何故かというと、とんでもない変人だからだ。
「今のって先輩ですよね?」
今のとはあの音のことだろう。
「そうだよ。こんな陰キャっぽいシャイそうな男の子がこんなことすると思う?」
と先輩が言う。失礼じゃないかな?と思って口を開きかけると
「あはっ、確かに。」
お前もかブルータス。
「先輩面白いですね。私、先輩のこと好きです。」
大胆な告白は女の子の特権。
「えー、ホント?私もすきだよー。」
百合の花が咲きましたね。
変人は惹かれ合うらしい。ガシッと互いに手を取り合っている。そのまま先輩は上坂に色々教え始めた。この人は二年生のときの生徒会経験者だから、色々知ってるらしい。
「で、ここにあるのがパソコンでー、これは自由に使えるよー。」
「へー、この壁紙にしたのって先輩ですよね?」
「うん、そうだよ、よくわかったね。」
気になって見てみると腹ペコあおむしの表紙のコラ画像だった。あおむしの所にサナダ虫と書かれていて腹ペコサナダ虫となっている。絵の顔の部分には校長先生の顔が貼り付けられている。ちなみに俺たちの高校の校長は真田という名前だ。
思わず吹き出してしまった。確かにこの人ならこんなことしそう。パソコンは他に3つあるけど、これ全部こんな感じなのか(困惑)
「他の3台もこんな感じなんですか?」
「いや、他のは弄れなかった。求めよ会長がうるさくてね。」
そうなのか。生徒会長ナイス!!
そんな事をしていると、また人がやってくる。
コンコン
また二回ノックだ。あの音が流れる。
3分くらい沈黙が続く。ドアの向こうの人は何か考えているらしい。永野先輩と上坂は大爆笑している。
「先輩はともかく、君は止めなくていいのかい?」
と上坂に声をかけるが、無視である。
恐る恐るといった感じでまた、二回ノックされる。また例の音がなる。しばらくして、すすり声が聞こえてくる。気の弱い女子だったのだろうか。泣いている。永野先輩と上坂は遂に声を上げて大爆笑し始めた。
そして、5分くらい大爆笑とすすり声を聞くという拷問を受けていると、突然ドアが開いた。
「永野ーーー!!」
現生徒会長だ。
「引き継ぎのときは止めろって言っただろ!?」
「やだなー、会長。ビジネスマナーを教えてあげてるんじゃない。」
未だに上坂は爆笑している。こいつゴミだな。モテない理由がわかった。
「それでも泣かせるなよ、これから一緒に仕事する仲間だろ?」
「うーん、でもこれぐらい笑顔で流せないと私とし仕事するのは無理だよ?」
「うん、まあそうだな。」
会長ーー、それでいいのか?もっと言うことあるだろ。もっとボコボコに言ってくれよ。なんとかしてくれ。とか思っていると泣いてた少女が入ってきた。ちっちゃい子って感じだ。この子なら泣いてしまっても仕方ない。
「あらー、書記ちゃんよく来たねーー。」
と言って永野先輩は近くによって頭をナデナデしている。この人はサイコパスかな?
「ノックはちゃんとビジネスマナーとして覚えておいてね。」
「はい。」
完全に怖がってる。そりゃそうだ。ちなみに書記はいまだに爆笑している上坂も怖がっているようだ。
「あー、田中くん、」
田中とは俺のことだ。
「はい。」
「会長がこんなで、さらに問題児が一人増えたような気がする。多分俺たちの代より圧倒的に大変になると思う。君がなんとかする必要が出てくるだろう。頑張ってくれ。俺はもう一生やりたくない。」
心からの叫びだ。嫌なんだけど。
まあ初めて会ったときはこんなゴミみたいな出会いだったわけだ。
案の定、生徒会運営はクソ大変だった。
生徒会では公約を達成するためのチームが作られる。会長の公約はスマホ使用の自由化。そのチームに俺、上坂、書記、会計が入ることになった。残りで三年生の副会長の公約を達成するチームが作られる。
俺たちのチームはまあひどかった。
まず最初の会議のときだ。会議が始まる時間になっても会長と上坂が来ない。そして、何故かパイプ椅子の上に馬鹿でかい人形が二つ座っている。
この時点で嫌な予感がしていた。書記も会計も困惑している。すると、ぬいぐるみの一つから声が聞こえる。
「さて、会議を始めようか。」
もう一つのぬいぐるみも喋り始める
「はい、始めましょう。」
「今回の議題はスマホ使用の許可を勝ち取るための全体的な方針だな。」
何?何が起こってるの?明らかに先輩と上坂の声なんだけど、
「私はスマホの使用を全面的に許可させようと思ってる。」
「えー、でもーそれってほとんど毎年のようにやってるんですよね?成功するんですか?」
「わからん、それはこれから考える!」
なんなんだ、これは。
俺以外の二人もかなり困惑した様子だ。そりゃそうだ。
「というか、君たち、さっきから全く会議に参加しないじゃないか!!」
ここで俺は冷静になる。
「こっちの声聞こえてるんですか?」
「当たり前だろう。」
「ふむ」
ぬいぐるみをあさり始める。どうやらカメラはついていないらしく気づいていないようだ。
「聞いているのか?田中ー」
「そうだぞー、田中ー」
「これか」
ぬいぐるみの中に隠された機械を見つける
「先輩、帰ってきてください。さもないとこれを粉々に破壊しますよ?」
というと、二人とも渋々帰ってきた。他の二人が尊敬の眼差しを向けてくるけどこれを機に俺に処理が全て回ってきそうで怖い。