時は流れてそれなりに改正案が形になってきたとき、
俺たちはというと、クソ暇だった。
何故かというと、教師陣が全く話し合いをしてくれないからだ。こちらから要請しても忙しいの一点張り。これじゃ改正どころではない。
「あーー、球技大会も終わって暇だよ、田中、何か面白いことやれ。」
なんなんだ、この人。こわい。
「無理ですよ。俺なんかの面白いことよりミジンコの複眼を顕微鏡で見つけるゲームのほうが楽しいですよ。」
「何それ、絶対つまらないじゃん。」
今上坂がなんとか話し合いができるように交渉している。まあ無理だろう。ちなみに書記と会計、会計監査は1ヶ月くらいしてからは仕事を家に持ち帰って家でだけ仕事をやっている。ここに来るとこの人たちのパワハラに耐えられないからだろう。
ドンドンドンと廊下から謎の音が聞こえる。なんだこれ
「おっ、戻ってきたね。」
え?上坂か?なんか太鼓の音が聞こえるけど……
ドンドンドンドンドンドンという音が早くなってくる。最後にドドンとなって、その瞬間にドアが勢いよく開け放たれる。
上坂だ。何なんだ、あいつは。意味がわからん。
彼女は中に入って、ドアを閉め、先輩の元へ行くと、地面に手をついて、
「何の、成果も得られませんでした!!」
と言う。なんだ、こいつ。情緒不安定か。とおもっていると、すぐに立ち上がって、ゴミを払って、紙を一枚渡す。
「今日の成果です。」
「よし、よくやった。」
ホントに褒めてるみたいで、頭を撫でまくっている。何したんだろうか。
後ろから紙の中身を覗き込む。それは契約書だった。要約すると、二週間後までに話し合いを設けなかったら、全校による投票で過半数が賛成すれば校則を変えていいよーっていう内容だった。こんなこと約束させてきたのか。やっぱこいつ頭おかしいけど有能だわ。
というわけで二週間後に話し合いがなされたわけだが、俺は同行していない。というか、あの二人しか行ってない。今後もあの二人だけで行くことになる。なんで?まあいいけど。結果からいうと駄目だったらしい。すぐさま問題点を修正して、再び話し合いの交渉に入る。そんなことをしているとテスト期間に入ってしまった。
「まずいな」
「まずいですね」
何が?ちゃんと目的語を明示してくれ。
「何がですか?」
先輩がクソデカため息を吐いて、
「上坂、説明してあげて」
「いい?この時期を逃したら体育祭が来るでしょ?そしたら、こっちも向こうも話し合いどころじゃなくなる。だから、このあとに話し合いをしようと思ったら、体育祭の後で文化祭の前。文化祭の準備を考慮すると、話し合いはあと一回が限度ね。」
わかりやすい説明サンガツ。オワタね。
七夕の日だった。俺がいつも通り生徒会の仕事をしようと生徒会室に行くと、笹が立てかけてある。
誰だろう。なかなかいいじゃないか。と思って近づくと、なんか変だ。笹にしては幹が太すぎる。具体的には幹の周りが70cmくらいある。え、何これ?怖い。と思っていると、誰かが生徒会室のドアを開けた。永野先輩かな?と思ってそちらを見ると、笹だった。いや、より正確に言おう。笹のコスプレをした永野先輩だった。太い笹の幹の途中に穴が空いていて、そこから永野先輩の顔が見えている。なんだこれ。てか笹のコスプレって何?
「何してるんですか?先輩」
ドン引きである。
「コスプレよ、見たらわかるじゃない。他の人にも見せたかったのに、田中以外誰もいないの?はぁ、」
貴女たちが暴れまわるから怖がって生徒会室に来なくなったんですよ。と、いうことはこの笹はもしかして
「唯先輩!!」
先程の笹が動き始めた。1/1d3のSANチェックです。
やはり、上坂だった。というかこんなクオリティ高いコスプレをどこで手に入れたんだ。ぱっと見、笹にしか見えないぞ。目の前では笹どうしがなんか会話してる。気が狂いそう。
「あー、笹のコスプレを写真に収めたかったのにーー。」
「スマホ使えないからねーー。」
ちなみにカメラの類も同様に校内では使用できない。
時は流れて10月31日。文化祭も終わり、前期最後の日だ。ちなみに今年は生徒会主催で文化祭で謎解きを開催した。一番最初に正解した人には景品ということもあり、かなり盛り上がった。来年もやれたらやりたいな。とか思って、引き継ぎのために生徒会室に向かう。と言っても俺と上坂は後期も書記と会計監査として生徒会にはいるんだけどね。生徒会副会長も会長もスマホの使用について触れなかったから来期は楽だろう。
今期は結局スマホの利用は認められなかった。まあ、仕方ない。
生徒会室の前に立つ。ノックをしても碌なことにならないので、ノックをせずにドアを開ける。
デカいカボチャがあった。直径が2mはある馬鹿でかいカボチャだ。まあ、多分あの二人のうちのどちらかのコスプレだろう。そう考えたとき、ふと疑問に思った。
どうやってあのドアを抜けたんだ?明らかにあのドアからは出入りできないぞ?
そして、ある一つの可能性に思い至った。もしかして、これ空気で膨らませてるんじゃない?
軽く触ってみると、確かに空気が入っていそうである。いつもの仕返しをするか。
シャーペンでツンとカボチャを刺すと、シューーと音がなって空気が抜けている。
「ありぇ、なんで?」
と、言っている。声的に永野先輩だろう。
ざまあみろ。シューシューと音を立てて、潰れている。先輩はかぼちゃに体重を預けていたらしく、バランスを崩して、倒れた。
「田中ー、なかなかやるな。」
「最終日までこれですか……。」
しばらく無言で書類を整理していると、スマホ使用についての資料が出てきた。これ、来年使うかわからないし、捨てるか。
そういえば、なんでこの人はスマホ使用を公約にしたんだろうか。
「先輩、なんでスマホ使用を公約にしたんですか?」
「あれ、言ってなかったっけ?私、片親なんだ。だから、しかも親が忙しくて行事とかにも来れなくてね。写真を撮ってもらうことがないっていうのは悲しいもんだぞ。」
そうなのか、全然知らなかった。
「でも、もう行事はないからね、卒業式くらいだ。流石にうちの親も卒業式くらいは来るよ。だからもうどうでもいいな。」
そうなのか、体育祭の写真とかないのか。なんだかんだで仲はいいのでかなり同情してしまう。こんな女に。あんなに前期は迷惑かけられたのに。
まあ、本人がいいと言うならいいんだろう。
「あーー、唯先輩!!」
上坂が入ってきた。
「田中だろ、これーー。もーー、せっかくのコスプレがーー。せっかくお揃いなのにーー。」
そう言うとどこからかよくわからないものを出した。二つ。
「えーー、静、予備あったのーー。」
「私、デキる女なんです!!」
「さっすがーー。」
あー、あれがかぼちゃか。
もう俺はどうでもいいよ。勝手にしてくれ。そんなこんなでかぼちゃが二体生まれた。エグイ絵面だ。
コンコン、とノックがなる。二回だ。二回ノックということは、多分来期の生徒会役員だろう。期待に胸を膨らませて来たはずだ。その鼓膜を揺らすのは「どうぞ」という声ではなく、予想だにしなかった、酷く汚らしい音。その気持ちを忘れるなよ。
この生徒会に入ったからにはもっと酷いことが山程ある。取り敢えず、この生徒会室の中身を見た瞬間が数多くある酷いことの一つだ。ドアを開けたら、デカいかぼちゃ二人が語り合ってるんだから。
「あの、失礼します!!」
あの音のあと全く反応がないのを不思議に思っていると、そう言って、中に一人の少年が入ってきた。あー、彼は確か今年の一年生の副会長。
彼は生徒会室の中に入って顔を強張らせている。トラウマになるだろうな。
パタン
あっ、閉めた。大丈夫かな?あんなメンタルで生徒会やれるのかな?
5分後、新旧生徒会役員が集まった。デカいかぼちゃ二つ。酷い絵面だ。新生徒会メンバーは全員ドン引きである。
ここは、一発言っておかねばならないだろう。
「えー、旧生徒会副会長の田中です。会長がご覧の通りなので、私が司会をします。」
「まず、新生徒会メンバー、この頭のおかしい会長はいなくなります。」
そう聞いて、少しみんなの顔が緩む。
「しかし、この頭のおかしい女は残る!!いいか、こんなことでへこたれてはいけない!!生徒会に入ったらこれより酷いことはいくらでもある。慣れろ。以上。ではそれぞれの引き継ぎに入ってくれ」
ちなみに上坂のせいで二年生の生徒会役員を探すのはめちゃくちゃ大変だったらしい。
仕事ができるから上坂が入るのは確定で、そこに耐えれる人材でそこそこ仕事ができる俺も確定。あと一人が大変だったらしい。まあ何とかきまったらしいけど全く知らない人だった。