ラブコメなんて実際に起こり得ないことの証明   作:寿太郎

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20.補題その4

先輩が卒業した翌日、俺は後期生徒会の最後の仕事を片付けていた。

 

「田中、私、スマホ使用を学校側に許可させたい。来期で。」

 

正直俺も同感だった。昨日の先輩はいつもの明るさがなくて、しゅんとしていた。かなり精神的にきていたんだろう。先輩みたいな人を来年も出したくない。

 

「わかった、俺も手伝う。」

 

 

前期生徒会では実は俺は生徒会長であり、上坂は生徒会副会長だ。

 

 

 

 

これにはちょっとした事情がある。時は少し遡って、生徒会選挙のとき、

 

 

 

 

 

俺は生徒会長なんてやる気はなかった。しかし、あの女がこういうのだ。

 

「私、二回ノックの番人やりたいから、生徒会副会長になるよ。だから、会長は田中ね。」

 

は?何を言っているんだ。

 

「私思ったの。やっぱり先輩みたいに権力がないと学校で好き勝手できないんじゃないかって。ただ、私、会長は仕事が多くて嫌なのよね。だから、田中が会長。田中以外が会長なんてやったら、後期みたいに病気になっちゃうよ。」

 

そうなのである。後期の会長は、会計監査である上坂となぜかいる永野先輩を統制できないことに責任を感じたのかストレス性胃腸炎になってしまい、実質的に生徒会の仕事は俺と上坂と生徒会室に来ない人たちに回されてしまった。(俺以外の生徒会役員は上坂たちと関わりたくないので、生徒会室に来ない。)よって俺の仕事がかなり多くなって、生徒会室に結構な頻度で行っていたわけだ。

 

 

 

「確かに生徒会副会長が俺以外だとまずいな。」

 

というわけで俺が生徒会長になったわけだ。選挙も圧勝だった。まあ、生徒会二期経験者だからね。

 

 

それがこんなふうに役立つとは思わなかった。二年生の副会長も特に公約は掲げていないから、生徒会全員でスマホ利用について取り組めるな。

まあ、あいつの傍若無人っぷりについていければだけど。

既に引き継ぎ式でみんなはこの部屋に入ってくる洗礼は受けている。

でも、今期は真面目にやってくれるだろう。はっきりした目標もあるしね。

 

 

そう思っていた時期が私にもありました。

年度初めに今期の生徒会として、スマホの使用許可のために校則を変えるという方針を生徒会メンバーに周知するために、全員で集まったときのことだ。俺は事情があって、時間ギリギリに生徒会室に着いた。既に一人を除いて全員集まっていた。その一人とは、当然上坂だ。

そして、あることに気づく。本来上坂が座っているべき席には。

 

人形がおいてあった。

 

この瞬間フラッシュバックする記憶。

人形を調べると、案の定出てきた。機械が。

他の役員は呆気に取られている。

 

「えーと、会長、副会長はどこに?」

 

と会計の子が聞いてくる。そんなの知るか。

機械に向かって

 

「貴様、どこにいる?」

 

と聞く。

 

「あ、会長じゃん、遅かったね。時間ギリギリだぞ!駄目じゃないか。」

 

「貴様はどこにいるんだ?」

 

「カフェ」

 

意味がわからん。カフェと言ったらこのへんだと一つしかない。歩いて10分弱のあそこだろう。

 

「最近流行りのリモートワークだよ。」

 

「はよ、戻ってこい。」

 

「仕方ないなー、5分くらい待ってて。」

 

「お前、自転車持ってたか?」

 

「ん?会長の借りた。」

 

「鍵は?」

 

「盗んだ。」

 

何なんだ、こいつ。

俺はクソデカため息をついて椅子に座った。

 

「あの、会長、副会長ってホントにあんな感じなんですね。」

 

「ああ、そうだ。」

 

「取り敢えず、あいつ抜きで始めるぞ。」

 

「まず今期は……」

 

 

 

 

 

会議が終わった後、帰るために自転車を取りに行った。すると、自転車が壁に立てかけられていた。普通に止められているのではない。前輪が浮いている。つまり、縦に自転車を止めているのである。後ろについている荷物置きと後輪でバランスを取って、上手に立てかけられている。まるで、重力に逆らって、壁を自転車が上向きに走っているかのようである。

よくこんな止め方したな。頭がおかしい。

呆然としていると後ろから大爆笑が聞こえてくる。

上坂だろう。何なんだ。

 

 

 

とある日のことである。

 

「会長、教科書わすれた。貸して」

 

「やだ、お前に貸したら碌なことにならない。」

 

自転車は勝手に借りてたけど碌なことにならなかった。

 

「私、友達いない。会長が貸してくれないと、ここで騒ぎを起こすよ。」

 

それはまずい。というわけで貸した。

 

返ってきたとき、紙が挟まっていた。アリの死骸が10匹挟まっていた。こいつ、頭大丈夫か?ありがとうって意味なのはわかるが……。

 

 

 

そんな日常を過ごしながら校則改定に取り組むが相変わらず交渉のテーブルにすらつけない。

一回話し合いはしたが、まだだめらしい。

 

「本音を言うと歴代の議事録がほしい。」

 

「まあ、わざわざ先輩たちは残さなかったよな。」

 

「多分教師は残してる。どうにかして、弱みを握れば……」

 

何言ってんだこいつは。おそらく、あと交渉できるのは一回だけだろう。他の年の情報があればやりやすいが、必須ではないだろう。

 

 

 

 

 

 

え?体育祭が延期?

なんで?上坂を見るとニヤニヤしている。

 

「お前、なんかしたの?」

 

 

「仕方ないなー、そんなに知りたいなら教えてあげるよ。まず、ここは私立高校でしょ?だから、基本的に理事長の影響力が強いわけ。」

 

別にそんなに知りたくない。

まあ、確かに理事長はかなり金持ちの実業家だからな。

 

「で、昨日、その理事長が国税局から脱税の疑いをかけられたの。」

 

へー、そんなこともあるんだなー。

 

「それだから、体育祭なんてやってる場合じゃないでしょ?だから、さっき先生が延期の交渉に来たの。」

 

「えっ、そんなの聞いてないけど、」

 

「言ってないからね。」

 

は?こいつ会長をなんだと思ってるの?

 

「だから、断っておいた。」

 

え?なんで、確かに俺たちが運営のかなりの部分やってるけど正直延期しても大してめんどくさくないよ?

 

「そしたら、もちろん交渉だよね。それで、延長の対価としてこれをもらいました。」

 

と言ってUSBを見せる。何これ。

 

「これまでの校則の変更に関しての議事録。」

 

まじかよ……

 

「あー、運がよかったなー」

 

ホント、ソンナグウゼンアルンデスネー

 

「で、どうやってそんなことしたの?」

 

「親が理事長の秘書なんだよねー。」

 

「でも、秘守義務があるだろ?なんでそんなことお前が知ってるんだよ。」

 

「チッチッチッ、わかってないなー。そんなのブラフだよ。いい?大体あんだけ金持ちでやましいとこがないわけがない。だから親を騙して告発させたのよ。」

 

そこまでしてそれが欲しかったのか。こいつヤバイわ。狂っとる。

 

「でもそんなに苦労して手に入れたそれ、使えるのか?あと一回しか交渉は多分できないぞ。」

 

「そうだね、あと一回。もうその話し合いの予定は取りつけたよ。」

 

「ふーん。」

 

「そして、これ。」

 

「なにこれ?」

 

「文化祭の予算。」

 

ゲッ、足りない。

 

去年の謎解き、今期は無くすか。それで、ぼぼ足りる。でも、盛り上がったし、永野先輩の唯一したいい仕事だしなあ。残してあげたいなあ。

 

「じゃあ、私がそれ、なんとかするから文化祭の仕事、免除して。」

 

は?無理だろ。

 

「まあ、いいけど。」

 

 

 

次の日の放課後

 

「会長、ほい。予算。」

 

こいつ、ホントにどうにかしやがった。

最高にコイツらしい方法だ。

 

「じゃ、私は先生との話し合いに集中できるね。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで、その話し合いが今日だ。」

 

目の前にいる、小鳥遊青に告げる。

すべてを話した訳では無いが、大体の事情は把握しただろう。

 

「そうなんですね、お話、ありがとうございます。全然何もあの人は話してくれませんでした。」

 

全く、何を話したんだ。昨日は。その時、ガチャリと音を立てて、ドアを開く。あいつが帰ってきた。顔を見るだけで結果はわかる。駄目だったのだろう。生徒会室にいる小鳥遊に気づいたらしく、声をかけている。

 

「あれーー、青。どうしたの?」

 

「なんで、毎年二回しか話し合いがされてないか聞きに来たのですが、会長が教えてくれました。」

 

「そかそか、じゃあ、私は青にかっぱを探す方法を教えてあげるね。かっぱを探しに行くぞ」

 

こいつ、じゃあの使い方知ってるか?全然繋がりないぞ。

生徒会選挙の手伝いしてるやつをそんなにどっかに引っ張っていくな。忙しいだろ。

 

「すみません、僕、ちょっとやらないといけないことがあるので。」

 

「じゃあ、選挙は一緒に行ってくれたら手伝ってあげるよ。」

 

「いや、先輩が来ても、場をかき回すだけというか、正直迷惑というか……」

 

おうおう、この子結構ズバズバ言うな。確かにそうだけど。なんで小鳥遊はこんなに気に入られてるんだ?そんなに面白いとは思わないけど。こいつの考えることはわからん。

 

結局上坂に連れられて行った。可哀想に。きっと今頃川できゅうりを餌にして釣りをしているところだろう。俺もやらされた。

 

コンコン

 

生徒会室を誰かが二回ノックをする。おいおい、今日はここを知らない客が多いな。上坂かいたらどうするんだ。

 

「どうぞ」

 

「失礼します。」

 

入ってきたのは可愛い女子だった。

 

「二回ノックはビジネスマナーではNGだ。気をつけたまえ、三回か四回だ。俺でなかったら酷いことになっていたぞ。」

 

マジで、ホントに。

こんな可愛らしい少女にあんな音を聞かせたくない。

 

「すみません、」

 

「それで、何のようかな?」

 

「あの、青がここから帰ってきてないんですけど。知りませんか?」

 

「あー、小鳥遊か。かっぱを捕まえに行った。」

 

「かっぱ?」

 

そりゃそういう反応だよな。

説明するのも面倒くさい。

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