文化祭といっても、朝はいつもと同じだし、時間が過ぎるのが速いというわけでもない。普段と何も変わらない。それなのに、少し早く起きて、ワクワクを抑えられない。謎解きという仕事はあるが、文化祭というイベントを心待ちにしている自分がわかる。
学校に行くと、文化祭で浮かれているのか周りもいつもよりざわついていた。
文化祭の開会式では文化部がPRしている。例えば
「こちら、鶏研究会です!!鶏の生態について調べています!!鳥小屋で午後から鶏パフォーマンスをします!!ぜひ来てください。」
なんだよ、鶏研究会って。
「こんにちは、TRPG同好会のアルファコンプレックスです!!僕たちはクトゥルフとパラノイアを融合させたゲームシステムの作成を行っています!!シナリオ本もあるのでぜひ来てください!!」
絶対混ぜちゃ駄目な二つを混ぜるな。もう同好会の名前からやばい奴らなのバレてるぞ。
「こんにちは!!学歴厨の学歴厨による学歴厨のための学歴同好会、通称MARCHは3ヶ月です!!」
あかん、終わっとる。
「私達は今日、10:00から早慶と同レベルの国公立大学は?というテーマで討論会を行います!!」
あかん。荒れるぞ。
「実験室で行うのでぜひ来てください!!」
行かん。絶対。
と、こんな感じでうちの高校のヤバさを見せつけられた瞬間であった。
「お次はお待ちかねの、謎解きの説明!!いくよーーー!!」
ワーと盛り上がる。そんなに人気なのか。
「もう、謎は校内に仕掛けられています!!謎を見つけて解いてください!!解答用紙は生徒会室の前にあります。一番に解答した人に景品!!以上。あと、ヒントは文化祭のパンフレットに隠されてるからねーー。」
なるほど、謎を探すとこから始めるのか。
なかなか楽しそうだ。景品を必ず獲得しないといけないというわけじゃなかったら楽しめそうなんだけど。ヒントをパンフレットに隠すなんてなかなか粋なことをする。パンフレットを確認するが、A5サイズの普通のパンフレットだ。まあ、紙一枚だからパンフレットといえるか怪しいけれど。表に文化祭の日程。裏は文化部一覧がある。裏の文化部一覧を見る。
うお、こんなに催し物があるのか。26こもあるぞ。各催し物に番号が振られている。
例えば 2.鳥研究会
みたいな感じだ。なんだけど……7と11,18がない。それになぜか5が三つある。
うーん、暗号になってるのかもしれないけど……分からないな。
開会式が終わり、四人で集まる。
「パンフレットの謎、解けた?」
と聞くが、誰も解けていないらしい。
「まあ、問題がわからないのにヒントだけもらってもね。それに、問題がわからないとヒントもわからないのかもしれない。」
確かに、五月、賢いな。
「ふえー、五月賢いね。」
と春奈が言う。
というわけで謎を探しに行くことにする。
教室を出てフラフラ歩いて探し回っていると、
「キャッ、」
と春奈が可愛らしい声を上げた。
あーこれは。上坂先輩が来たな。みんなに言っておけばよかったな。
「あれー、青。みんなに言ってなかったのーー?」
と言って声をかけられたので、渋々春奈の方を見る。春奈は上坂先輩に後ろから目を塞がれていた。急に視界を塞がれたら誰だってビックリするだろう。多分言っても変わらんかったぞ。
「その声は静ちゃん?離してよーー、前がみえないー。」
と騒いでいる。
「でー?最初はどこ行くの?」
と上坂先輩が聞いてくる。まず、春奈の目を塞ぐのをやめてあげてください。
「取り敢えず謎を探すためにウロウロしようかなと。」
「いいねーー、色んなクラス回ろう!!」
と上坂先輩は乗り気だ。
「謎を探しに行くのであんまり構えませんよ。」
「いいよー、構わざるを得ないようにするから。」
「変なことしたら他人のふりするので、私たちには時間がないんです。」
「えー、ケチー。」
「誰のせいだと……」
五月は呆れている。
「えーと、なんでみんな副会長と仲がそんなにいいの?」
と高橋はおいていかれてる感がすごい。
取り敢えず各クラスの出し物を回ろうということになった。
最初のクラスは劇をするらしい。
題は「豚肉研究会」
ちょっと何言ってるのかわからない。ちなみに中を捜索するには、これを見なければいけないらしい。嫌なんだけど。
舞台はクライマックス。今は鶏肉を愛する会の会長を豚肉派に説得しているところだ。上坂先輩は楽しそうに見ているけど何が面白いのかさっぱりわからない。
劇が終わり、中を捜索したが、問題は出てこなかった。なんでこんなつまらない劇を僕たちは見る羽目になったんだろう。
「そういえば、上坂先輩、面白そうに見てましたけど!どこが面白かったんですか?」
と聞いてみた。
「え?そりゃ、あんなクソ面白くない劇をこれが私の青春です、ほら、輝いているでしょ?みたいなドヤ顔で演じられたら面白くもなるよ。滑稽だったなーー。」
この人はこういう人だったわ。高橋もドン引きしてる。
次のクラスはおばけ屋敷だった。最大でも二人ずつでしか入れないというので、渋々班分けをする。
僕はなんとか春奈と一緒に入ることに成功した。やったぜ。
薄暗い通路を丹念に謎がないかを探しながら歩いていく。しばらく探すと、僕の首筋に何か冷たいものがヒタリと当たる。後ろを振り返っても何もない。怖いな。
春奈も同じ感覚がしたらしく、
「キャッ!」
と可愛い声をあげていた。
「ねえ、青、怖いから……手、繋いでいい?」
フォー!きました。
上目遣いで少し怯えた顔をして懇願する春奈に愛しさを覚えながら、手を繋ぐ。すべすべでひんやり冷たい。おっさんみたいな感想しか言えなくてごめん。
手を繋ぎながらおばけ屋敷を見て回ったが、特に何もなかった。ここには謎はないなー。
まあ僕は春奈と手を繋いでお化け屋敷をまわれたので満足。
ただ、違和感を覚える。
先輩とか、高橋、五月の叫び声が聞こえないのはまだわかる。そこまでこの三人が怖がっていないんだろう。実際に僕も春奈も叫んでいない。
でも、全く知らない人の叫び声が聞こえるのはなぜ?それに一人や二人じゃなくて、十何人もの違う人の悲鳴が聞こえるんだけど。
何が起きてるんだ
外に出ると、薄暗いところから明るいところに出たので、少し眩しい。
あれ?なんで上坂先輩がもう外にいるんだ?嫌な予感しかしない。
「おー、春奈、青ハロー。」
「ハローじゃないですよ、なんでもう外にいるんですか?」
「出禁になった。」
なるほどね。
「一応聞いておきましょう。何したんですか?」
「何もしてないよ!!ただ、脅かす人を逆に脅かしまくっただけ。」
えー、どうやって脅かしたんだよ。
「まずー、私の首筋にこんにゃくをくっつけようとする不届き者がいたから、そいつの鼻にわさびを大量に入れてやった。」
わさびなんてなんで持ってるんですか?
「あとーー……」
「もういいです。」
もう聞きたくない。
しばらくして、五月と高橋も出てきた。
「あれ、上坂先輩……なんでそんなに出てくるのが……」
「それはねー、かくかくしかじか」
「うん、まあそんなとこだろうとは思ってたよ。」
まったく、この人は困ったものである。