ラブコメなんて実際に起こり得ないことの証明   作:寿太郎

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28.文化祭マジック

へなへなと座り込んだ僕に対して永野先輩が近づいてきて、

 

「そんなに気を張ってたのか〜、頑張ったね、よしよーし。」

 

と言って頭を撫でてくれる。ウホー、疲れが飛んでいくー。

永野先輩に、なでなでされていると、心が落ち着く。すぐに永野先輩が手を離してしまって少し残念な気持ちになる。

 

「田中ー、なんで最近連絡くれないのー」

 

先輩は髪を弄りながら聞く。

 

「スマホを捨てました。言いませんでしたか?」 

 

え、どうやって生きてたの?

ケロッとした顔で言う会長を驚愕の顔で見る。

会長は椅子に腰を下ろして先輩にも腰を下ろすように手ですすめる。

 

「冗談だと思ったよ。」

 

先輩はそう言いながら椅子に座る。

 

「勉強の妨げになるので、」

 

「そんなに東大行きたいんだ。」

 

何故かニヤニヤしている。何が嬉しいんだ?

 

「まあ、日本の最高学府ですからね。」

 

近くにいた他の二年生の先輩に話しかける。スマホを捨てたっていうのは異性から連絡来ないのの常套手段だからね。あと、寝てたー。ね。因みに僕は中学の友達からまる一年ぐらい返信来てないけど永眠したのかな?

 

「あの、会長はホントにスマホを捨てたんですか?」

 

「ああ、どうせ持ってても上坂先輩からのクソラインしか来ないらしくて。」

 

そりゃ捨てるわ。

 

「へー、じゃあスマホを捨ててから上坂先輩に付き合わなくて済んでるんですか?」

 

「そんなわけないだろ、今は学校で〇〇日〇〇時に来いって言われてるらしい。会長も断ればいいのに。」

 

ホントに、断ればいいのに。あんなのつけあがらせてもいいことないぞ。

 

頭を使って疲れたので、その後しばらくぼーっとしていたら永野先輩に頭を叩かれて、

 

「よし、青、行くぞ」

 

と言われて手を引っ張られる。

そういう風にされると目立つんだけど

実際に先輩の美貌と一人だけ私服なのと変なやつが手を引かれているので目立っている。

そもそもどこに行くんだ。

 

 

着いたのは体育館裏。告白スポットとして有名だ。

ちょうど隠れるようにして二人でそこに潜む。

 

「なんなんですか、これは。」

 

「今日は文化祭でしょ?つまり、リア充かたくさん生まれるの。だから、ここで腹が立つやつが告白してたらそれを邪魔しようと思って。」

 

なんてことを言うんだ。この人は。やめたれよ。

 

そのまましばらく潜んでいても誰も来ない。

 

「ねえ、青なんで誰も来ないの?」

 

「知らないですよ。」

 

流石に普通過ぎてこないのかもしれない。耳に届くのは草木がカサカサと揺れる音だけ。

 

 

一時間くらいたっただろうか。ザッザッと近づいてくる音が聞こえてくる。

 

「きちゃーーー」

 

と先輩は顔を輝かせている。バンバンと僕の背中を叩く、そんなに楽しみだったのか。でも叩くのは痛いからやめてほしい。

どうやら近づいてくるのは女性らしい。黒い長髪が風に揺れている。近づいてくるにつれて、姿がはっきりしてくる。

ん?あれ五月だろ。こんなところに何の用だ?もしかして……。

 

僕の予想は当たっていたようだ。

数分後に愛梨もやってくる。

 

「あれ、愛梨ちゃんだよ。え?女の子同士?そんなことある?えー、私、百合なんて初めて見る。楽しみ〜。」

 

そんな風に言って興奮している先輩を無視して、食い入るように見る。

 

「えーと、愛梨?」

 

五月が切り出す。恥ずかしそうに手を隠すようにして両手を握りしめている。顔が紅潮しており、愛梨を見つめている。

 

「うん、なーにー?」

 

愛梨もこんなところに呼ばれてある程度覚悟しているのか顔があかくなっている。

 

「私ね、愛梨のことが好き。あのね、その……友達とかそういう話じゃなくて、恋人的な意味で好き。あのね…だから、私は五月と付き合いたい。」

 

愛梨も少し動揺して、

 

「うん……いいよー……。」

 

と答えた。

 

「キャーーー、百合よ百合。」

 

永野先輩が騒ぎ始めた。ちょっと、バレるじゃん。あと叩くのやめて、痛い。

案の定バレた。

 

「青?なんでそんなとこいるの?」

 

顔が怖いよ。

 

「あ?貴方が五月ちゃん?いえーい、カップル成立おめでとう!!」

 

二人でハイタッチしている。五月は完全にのまれて毒気を抜かれている。

 

「何これ、この人誰?なんか上坂先輩みたい。」

 

「この人はー、永野先輩ー。この高校のーOG。」

 

この二人、ちゃっかり手を繋いでいる。お熱いねー。愛梨も永野先輩知ってるんだな。

 

文化祭の閉会式も終わり、閑散とした空気になっている。僕は次期会長に対して無事に一番に謎を解いたことを報告したあと、僕は春奈と二人で帰っている。

 

「いやー、青はすごいねー。一人で解いちゃうんだもん。」

 

春奈はこちらを見て、微笑む。

 

「まあ、一人になったときはかなり焦ったけどね。」

 

「ごめんね、上坂先輩が青を置いていかないと不満たらたらでさ。面白い話しろーって騒いじゃって。店員さんに迷惑をかけまくってたから仕方なく出てきたんだよね。」

 

あの人はどれだけ僕を一人にさせたかったんだ。あの人はそんなことして、クラスの人に嫌われないのか?自分のクラスだろ?

 

 

「まあ、あの人がいるから仕方ないよ。」

 

「ねえ、青。五月は?知ってる?どっか行ったんだよね。」

 

「愛梨と帰ってるんじゃない?今日から恋人になったわけだし。」

 

「えっ、そうなの?」

 

春奈は驚いたようにこっちを向く。どうやら知らなかったらしい。

 

「えー、知らなかったー、五月、教えてくれればよかったのにー。」

 

「恥ずかしかったんじゃない?」

 

「んー……」

 

 

 

 

家に帰って、自分の部屋に入って椅子に座る。頭に浮かぶのはあの告白のシーンだ。五月が告白して、愛梨が承諾する。正直わかっていた結果ではあるが、眼の前で見ると中々違うものである。

あれを見て、僕は触発されたというかなんというか、彼女達が付き合えたのを見て僕もいけるかもしれないと考えたのかもしれない。

取り敢えず、僕は春奈に告白することにしたのである。

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