ラブコメなんて実際に起こり得ないことの証明   作:寿太郎

33 / 54
33.男の意地

ドアを開けると、春奈が言う通りゴリゴリのマッチョがいた。

 

「はぁ、また生徒会の人か、さっきも言うとおりなぁ、部活動というのは……」

 

とこちらに話しかけてくるので、

 

「はいはい、わかりましたから、でも、お金がなくても部活動はできますよね?別に部活動を潰そうとしているわけじゃないんですよ。ただ、仲良しごっこにそんなお金を渡すつもりはないよってことです。」

 

相手の言葉を遮って早口でまくしたてる。完全に煽った口調に相手はカチンときたのか分からないが

 

「ああ?誰が仲良しごっこだって?」

 

とかなりキレ気味だ。そこにどこから現れたか分からないが、上坂先輩がヌッ!と出てくる。

 

「全く、青もそんなに煽らないの、権藤君も落ち着いて、」

 

と制してくれる。権藤というのか。なんというかピッタリだな。おそらくは190cmはありそうな巨体に筋肉隆々な体を見てそう思った。

 

「先輩はそっち側なんですよね?」

 

「まー、そうだねー、やっぱりお金があったほうが何かとできるからね。」

 

「何かとできるって何をするんですか?新人戦も出てない、部員は一人。総体も出てない。こんな部活がお金をもらって、何をするんですか?」

 

そう少しキツめの口調で言う。

 

「インターハイにでる。それだけだ。」

 

言葉には決意というか重い感情が込められているように感じた。少し気圧されながらも

 

「一人で?」

 

と何とか返す。

 

「貴様らには、わからんだろう」

 

そう、重く、怒りの籠もった言葉を吐く。はっきりとした理解を拒む言葉。なんというか迫力がすごい。

彼がそう言った瞬間、校内放送が流れる

 

「下校時刻です。生徒のみなさんは帰ってください。」

 

その放送が終わると部室に気まずい沈黙が流れる。

 

「さあ、帰ってくれ。俺も帰る。」

 

そう言って、僕たち(上坂先輩も)を外に出してしまった。

 

もう下校時刻ということで仕方なく帰ることにする。荷物は生徒会室に置いてきているので、一度生徒会室に向かう。上坂先輩は荷物を持ってきていたようで

 

「あっ、じゃあ青だけでも二人ででもいいからいつものカフェに来てねー」

 

と言って何処かへ行ってしまった。

 

「どうする?春奈?あの先輩にわざわざ付き合うことないから全然僕だけで行ってもいいけど。」

 

「いや、元はと言えば私の仕事だもん。」

 

と言われたので二人で行くことにする。

 

 

カフェにつくと、先輩がこちらに向けて手を振っている。

 

「おーい、こっちこっちー」

 

いつも同じ席なんだからわかるよ、と思いながら先輩が待っている席に腰掛ける。

もう何回目かもわからないこのカフェでの先輩との対面。いつも通りにブラックコーヒーを頼んで、注文が来るまでしばらくスマホを弄りながら待つ。

 

「あっ、青。私以外は全部書類を回収し終わったらしいね。」

 

春奈がラインの画面を見てしょんぼりしている。しばらくして、元気が回復したようだが、少し心配だ。

 

しばらくして、注文した飲み物が来る。僕と春奈が一口口に含むと、先輩が話を始める。

 

「貴方たち、ラグビー部の昨年の総体の結果を知ってる?」

 

急だな。いや、僕が中三の頃とか知らん。まだ今年ならわかるが。

 

「2回戦敗退。」

 

やっぱり弱かったんだな。まあそれでも一回勝ったのか。よくそれでインハイとか言えるな。

 

「その大会の一回戦がチームの初勝利。まさに劇的勝利だったと聞いてるわ。ま、私は見てないから知らないんだけどね。」

 

先輩はコーヒーを一口飲んで続ける。

 

「で、彼はそれを見ていた唯一の後輩ってわけ。二年生は一人も入らなかったし。当に彼が唯一の下の代の希望だったってわけね。それで、その劇的勝利に感動して、練習に励んでると聞いてるわ。」

 

先輩は視線を外に移す。外はそろそろ11月ということもあり、木も寒々しい姿をしている。

 

「それでね、その当時の三年生の人たちの最後の言葉が何だったと思う?号泣しながら、全国大会へ行きたかった!!だって。笑っちゃうよね。2回戦敗退のチームがだよ?でも、そんな姿見せられたらさ、男の子としては黙っていられないでしょ?まあ、私達女の子なんだけどね」

 

と言って一人で爆笑している。何が面白いんだろうか。

 

「でね、部員の勧誘とか頑張ってたんだよ、まあ、誰も入らなかったんだけどね。それで、新人戦も、総体も出られなくてなかなか悩んでたんだよね。彼は。」

 

爆笑しながら彼女はそう続ける。

 

「はあ、それで先輩はそれに同情して助けてたんですか?」

 

そんなわけないと思いながら一応聞いてあげる。

 

「そんなわけないじゃーん。そっちのほうが面白そうだからあっちに味方したんだよ。まあでもこの情報があればもっと面白くなると思ってね。教えてあげるよ。」

 

そう言って、彼女は楽しそうに微笑んだ。

 

 

 

その日の夜。僕はパソコンを見ながら頭を抱えていた。なんであの人はあんな言い方をしたんだ!!あの人も二回戦敗退って情報しか知らなかったのか?そもそもこの県にラグビー部がある部活なんて4つしかなくて、二回戦が決勝戦なのに!!それに、一回戦も優勝候補と当たって勝ってるじゃないか。そりゃ熱くもなるでしょうよ。そんな先輩の姿見たら。それに決勝戦もなかなかの接戦だ。ギリギリで負けている。そうだよ、こんなど田舎にそんなラグビーの部活なんてあるわけないんだよ。

どうしようか、彼の熱意を買ってなんとかしてあげたい気持ちになってきた。

驚愕の番狂わせということもあってか、ネットに動画が上がっていた。

 

なんだこれ、クソ熱い。こりゃ応援するしかないだろ。どうする?どうすればいい?

 

 

そんなことを考えていると眠ってしまっていた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。