ラブコメなんて実際に起こり得ないことの証明   作:寿太郎

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実はもう終わりが近かったりします。


38.やっていいのはやられる覚悟があるやつだけだ

今日は休日である。休日であるのだが、五月に

 

「明日、朝9時。春奈の家に集合」

 

とラインで言われてしまったので、せっせと春奈の家に行っているところである。考えてみればこういう形での集合はかなり珍しい。どうしたんだろうか。そう思いながらチャリをとばす。春奈の家に着いて、インターホンを鳴らすと、五月が出てくる。

 

「よし、ほらほら入って。」

 

とまるで自分の家であるかのように僕を家の中に入れる。相変わらず馬鹿みたいに大きな家だな。と思いながら五月についていくといつかの勉強会で使った部屋に通される。部屋の中を見ると、既に高橋(こいつも呼ばれたのか)、春奈、愛梨が中にいた。僕が一番最後かな?そう思いながら、僕が中に入って、腰を下ろすと、五月が立ち上がって、手をパンパンと鳴らし、

 

「ハイ注目!!」

 

と言ってみんなの視線を集める。みんなどうして集まっているのかを聞かされていないらしく、大人しく五月の方を向く。

 

「今日集まってもらったのは他でもありません。」

 

ともったいぶって五月が話し始める。

 

「上坂先輩のイタズラに私達はいつも苦しめられています。そこで私は思ったのです。イタズラしていいのはイタズラされる覚悟があるやつだけだってね!!ここに上坂先輩を絶対に許さない会の創設を宣言します!!」

 

と五月がまるで政治家が主張を述べるときのように堂々として宣言した。

まあ、確かにそうだけれどもあの人にイタズラを仕掛けるなんて並大抵の難易度じゃないと思うんだけど。春奈は

 

「お、おう!!」

 

という感じで、高橋は

 

「確かに、あの人にはいつも迷惑をかけられているからな。」

 

と乗り気だ。愛梨は

 

「あー、なんか楽しそーー。」

 

とのことだ。愛梨軽いな。かくして、上坂先輩にイタズラすることが決まった。

 

「作戦はもう私が考えてきた!!」

 

と五月が言う。

 

「まず、上坂先輩を生徒会室の机にぐるぐる巻にして拘束する。そして、そのままおいていく!!単純。そして、生徒会室にカメラをしかけて鑑賞!!」

 

うむ、なかなか非人道的だ。まあ、あの人ならええやろということで作戦が決行されることになった。五月はどこからか取り出したカメラと縄をもって高笑いしている。こんなキャラだったっけ?ノリノリだな。

 

 

そして、運命の日を迎えた。上坂先輩にバレないように昼の間に五月がカメラを生徒会室に隠して、運命の放課後を迎える。僕が生徒会室に着いたときには既に上坂先輩はつまらなさそうにしていながら生徒会室で待っていた。僕が入って来た瞬間パッと顔を輝かせて、僕に抱きついてくる。

 

「青ーー」

 

僕の恋愛対象が女の子のこと忘れてる?この人顔はいいんだから忘れないでほしい。この人のこういう子供っぽいところは可愛らしいと思うことが最近はよくある。ただ子供っぽいからといってイタズラが許されるわけじゃないけどな!!この人にイタズラをしかけると思うと少し罪悪感を覚える。

 

彼女は僕の腰に回していた手を外すと再び椅子に腰掛ける。

 

「先輩は毎日毎日生徒会室に来て暇なんですか?」

 

僕も先輩の近くに腰を下ろして、そう問いかける。

先輩は少し複雑そうな顔をして、髪を弄りながら気まずそうに

 

「うーん、なんというか、教室にいると、気まずいっていうかねー、周りが勉強、勉強、みたいになってて、なんか嫌だなーって。勉強が嫌いなわけじゃないんだけど。受験の圧迫感じゃないけどそーいうのが嫌なんだよね。」

 

先輩の言葉に納得しながらも、じゃあ帰ればよくね?と思ったのでそう聞いてみる。

 

「じゃあ家に帰ればいいじゃないですか。」

 

「それがね、この学校、自称進学校だから、家に帰してくれないの!!ゴミだよね!!家から一番近いからって理由でここにすべきじゃなかった!!」

 

と興奮した様子でまくしたてる。相当溜まってたんだな。先輩が身を乗り出して喋るので椅子がガタガタと床と擦れる音が響く。

 

「まあ、あとは青たちと一緒にいるのが楽しいからかな。この高校に来て一番良かったのは、会長と、永野先輩とそれから青たちと会えたこと!!」

 

と僕に微笑みかけながら優しい声音で言う。だから貴方は面がいいんだから……

 

と思っていると、コンコンコンと三回ノックが生徒会室に響く。僕が

 

「どうぞ~」

 

と言うと、

 

「こんにちはぁああ?」

 

と春奈が入ってきた。が、どこか様子がおかしい。僕の方を見て、首をひねっている。かわいい。どうしたんだろう。

 

「ねえ、青。その背中についてる私は最強!!って書かれた紙は何?」

 

「え?」

 

春奈に言われて背中を触ってみると確かに紙のような感触がある。テープで貼られているらしく、簡単に剥がれた。紙を見ると、春奈が言った通り私は最強!!と書かれている。どうやら、抱きつかれた時に貼られたらしい。

 

「あー、なんで言っちゃうのー、春奈ーー。」

 

と先輩はニヤニヤしながら足と手をバタバタと振っている。駄々っ子か。

さっきまで可哀想とか思っていたのがバカらしくなってきた。縄に縛られて泣き叫ぶ姿を見るのが楽しみだぜーー。

 

しばらくして、五月と愛梨が突撃してきた。ノックもせずに中に突撃して、僕がそれに合わせて上坂先輩を拘束して、五月と愛梨が縄で縛る。呆気に取られたらしく、大した抵抗もせずに縛られていた。

 

「おーい、なんだよーー、これーー」

 

そう言ってジタバタする先輩をおいて、空き教室に移動する。

 

 

生徒会室のノートパソコンを持ってきて、それを使って様子を見る。先輩はしばらくギャーギャー騒いでいたが、すぐに静かになった。それからはたまーに騒ぐだけで静かなものだった。因みにちゃんと根回しはしてあるので、今日は生徒会室に誰も来ない。ギャーギャー騒いでいる姿はなかなか面白い。いい気味だ。

 

一時間くらいして、そろそろ開放してあげようという話になった。そして、全員で生徒会室に行く。先頭を歩く五月がドアを開けて、中に入る。薄暗い生徒会室には誰もいなかった。縄だけがポツリと残されている。

みんなそれに気がついて絶句していた。その瞬間、バタンと音を立てて、ドアが閉まる。ガチャリという鍵が閉まる音。鍵をかけられた。こうなると鍵を使わないとここから出られない。みんな動揺していた。

 

「ねえ、誰か鍵を持ってない?」

 

という五月の声が響く。残念なことに誰も持っていないらしい。

 

上坂先輩にハメられたらしい。外から上坂先輩の

 

「イタズラをしていいのはイタズラされる覚悟のあるやつだけだ!!」

 

という叫び声が聞こえる。

 

「やられたらやり返す、倍返しだ!!」

 

とも言っている。

 

「気持ちいいーーー!!」

 

なんなんだ、この人は。

 

「まだまだ私に勝とうなんて甘いのよ!!土下座して靴舐めたら開けてあげてもいいわよ!!」

 

などとふざけたことを言っている。春奈を見るともう泣きそうだし、愛梨はちょっと何を考えてるのか分からないがニコニコしてる。怖い。

 

 

 

結局三十分くらいしたら開けてくれた。

 

「私は私に逆らう人には容赦しないんだから」

 

そう言って、ニコニコとして開けてくれた。みんな戦々恐々として外に出る。愛梨は少し残念そうだ。この子以外と、ヤバい人なのかな?

 

「先輩はどうやってあの縄を抜けたんですか?」

 

とうんざりしたような目で五月が先輩に問いかける。

 

「あんなの縄をちょっとだけ持って捕まればその分だけ隙間ができるから簡単に縄抜けできるよ。」

 

なんで縄抜けの方法まで知ってるんだ。僕の頭の中を読んだかのように先輩が

 

「〇田一で読んだ。」

 

と言った。

〇田一か、それなら仕方ない。

捕まっていた動画については、どうやら生徒会室に入ったときにカメラに気づいてカメラは動画が十分おきにループするように設定しなおしていたらしい。

どうやら、僕たちは嵌めるつもりがマンマと嵌められたらしい。

 

帰るときに先輩が

 

「青たちに会えて良かったっていうのはイタズラに関係なく本心だからね。」

 

と微笑みかけながら言ってきた。顔が赤くなるのを感じる。それがバレないようにそそくさと家路についた。

 

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