ラブコメなんて実際に起こり得ないことの証明   作:寿太郎

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この作品が初めての作品なので、様々なことを試してみようのお気持ち


41.とある休日

晴れているとはいえ、この時期はなかなか冷えるようで、駅前にはそれなりに厚着をした人たちが見られる。そんな中、一組の男女が駅前にいた。傍から見れば、カップルのようにも見える。共に顔が整っていて、美男美女カップルだ。女の方は何故かジャージだが。

 

「先輩、集合時間は何時でしたっけ?」

 

「うーん、9時」

 

「今何時ですか?」

 

「9時半。」

 

「なんで先輩から誘ってきて遅れるんですか?」

 

「まーまー、いいじゃない、そんな細かいこと気にする男だと青に嫌われるよ、高橋?」

 

どうやら女の方が集合時刻に遅れてきたらしい。また、様子を見るにカップルではないらしい。女の方はなぜかジャージだが、ズボラなんだろうか、それとも他の意図があるのか。明らかに一人だけ浮いている。

 

「あの、上坂先輩、なんでジャージなんですか?」

 

「そりゃ今から山に行くからね」

 

「山?俺、昨日の校長先生達との話し合いで精神的に摩耗しているんですが。」

 

と高橋が言うのも構わずに女は楽しそうにバス乗り場に行く。はぁ、と大きなため息をついて、高橋は上坂についていく。見計らったかのようなタイミングでバスが来る。

 

 

バスは段々と田舎道に入っていく。そもそも大して都会ということはない風景が段々と自然豊かな山の風景へと移り変わっていく。

 

「そもそも山に行って何をするんですか?」

 

高橋が心底面倒くさいと言わんばかりの様子で上坂に聞いている。

 

「山に行くんだからだいだらぼっちを探しに行くに決まってるでしょ!!」

 

いや、決まってはいないだろとツッコミたいと思ったがそれを飲み込んだようで高橋はただ胡乱げな視線を上坂に向けるだけに留めている。

 

バスは遂に終点についた。本当に寂れたバス停だ。周りを見渡しても家がぽつりぽつりとあるだけで、他に田んぼが広がっている。高橋が時刻表を覗き込んで

 

「あの……先輩、ここ、次のバス5時なんですけど……」

 

と驚愕した声を出している。因みに今は10時くらいだ。

 

「それまでには戻ってこないとね!」

 

高橋は明らかに絶望の表情を浮かべている。上坂は高橋の様子を知ってか知らずか楽しそうだ。上坂はるんるんとスキップしながら歩いて行くのに対して、高橋は足取りが重い。ここで、高橋はあることに気づいたらしい。

 

「あれ、先輩はなんで集合時間に遅れたのにこんなに本数が少ないはずのバスに乗れたんだ?」

 

「え?そりゃ私が高橋に嘘の時刻を伝えたからだけど?」

 

高橋が憤慨しているが、それを無視して上坂は近くにあった家の呼び鈴を鳴らす。

 

「えっ、ちょ、何してんすか?」

 

と高橋が焦った様子で上坂を咎める。

 

「え?だいだらぼっちの話をきくんだよー。」

 

高橋は完全に呆れ顔である。顔からそんなのいるわけ無いだろと考えているのがはっきりわかる。しばらく待つと、恐らく40代くらいの女性が出てきた。

 

「あら、珍しい、若者が来たわね、どうしたのかしら?」

 

突然の訪問だというのに優しげな声音だ。いい人オーラがにじみ出た人だ。高橋は申し訳無さそうな顔をしているが、上坂は涼しい顔である。

 

「私達、大学の卒論で、地域の伝承について調べてまして、このあたりにあるだいだらぼっちの伝承について、聞きたいのですが…」

 

髙橋はよくこう口からでまかせがポンポン出るものだと言わんばかりの呆れ顔をしている。

 

「あー、だいだらぼっちね、私その伝承に詳しくなくてねー、お父さんなら詳しいかも、家の中にいるから入りなさいな」

 

そう言って、家の中に二人を入れる。高橋は明らかに申し訳無さそうな顔をしている。

 

二人が中に入ると、和室に通される。そこには、一人で将棋盤を前にうんうんと唸っている70代くらいのおじいさんがいた。

 

「お父さん、お客さん」

 

という女性の声で二人に気づいたらしく、少し驚いたような顔をする。

 

「おや、若い客とは珍しいな。して、なんの用かな?」

 

「実はだいだらぼっちについて話を聞きに来たんです」

 

「ふむふむ、なかなか別嬪さんじゃのう」

 

とニヤニヤしながら、ジャージ姿に首を傾げて

 

「だいだらぼっちとな、だいだらぼっちはなー、この山を創ったと言われる巨人じゃのう。」

 

「この山を、ですか」

 

髙橋が復唱する。

 

「そうじゃ、この山をじゃ。昔は巨人と人間は一緒に暮らしておった。一緒に大っきな生物を殺して一緒に食べとったんじゃ。じゃがな、人間が農業を始めてから変わった。巨人は農業が不得意じゃったんだ。まあ巨人だから当然じゃな。それで、巨人は困って穴をほって、その土で山を作ってそこに住み着いたらしい、因みにその穴が今では湖になっとる。」

 

「確かにこの近くに湖がありますね、」

 

と上坂が返す。高橋はよく知っているものだと半ば呆れ気味の顔をしている。

 

「それと、この山の頂上には祠がある。まあ、山と言えるか怪しい、丘といった方がいいかもしれないがのぉ。」

 

と言いながら、顔をポリポリとかく。確かにこの山は山と言うには少しばかり迫力にかけるかもしれない。

 

「なるほど、ありがとうございます。早速行ってみますね」

 

そう言って、上坂が立ち上がる。高橋もそれに追従して、二人で外に出る。

 

「よし、じゃあ山登りするぞ!!」

 

と言って高橋を引き連れて山奥に入っていく、山と言っても大した大きさではない丘といったほうが正しいのかもしれない。全く舗装されていないが。獣道と普通の道の間のような道は流石に普通の服では動きづらかったらしく、高橋は頂上についたときには土まみれになっている。

 

「先輩、こんなことになるなら先に言ってくださいよ、泥まみれですよ。」

 

「ん、ごめーん」

 

と上坂は全く心のこもっていない謝罪を口にする。彼女は泥まみれの高橋を見て楽しんでいる節があるのでおそらく無駄だろう。高橋もそれを察して大きなため息をついて諦めたらしい。三十分も歩いたら頂上についた。

 

「まあ、やっぱりホントに小さな山だね。」

 

「そうですね、祠ってあれですかね?」

 

と髙橋が百葉箱のような木箱を指差す。

 

「あんなにちゃちなものなの?」

 

と言いながら二人で祠に近づく。近づくと二人共近くにある看板に気がついたようだ。

 

「なんですかね、これはえーと、お供えはこの中に、ですか。」

 

「ふーん、お供物ね~今日の昼ごはんしかないけど、まあいいか」

 

そう言って、上坂はカバンから弁当箱を出して中に入れる。

 

「え、ご飯ってどこかの店で食べるんじゃないんですか?」

 

「は?この辺にお店なんてあるわけ無いでしょ、飯抜きよ。」

 

高橋の顔色が明らかに悪くなる。

 

「え、飯抜き…こんなに運動したのに?」

 

上坂はそんな高橋を無視して祠の周りで何やら奇妙なダンスを踊りながらぶつぶつと何かを言っている。

 

「えー、何してるんですか?」

 

と髙橋が聞いても完全に無視である。

 

数分たつと、上坂がやっと止まる。

 

「結局なんだったんですか?先輩の頭のおかしい行動はいつものことですが…」

 

「お経を唱えてたんだよ、家は時宗だからね。踊り念仏だよ」

 

高橋が完全に呆れ返った顔をしながら

 

「はぁ、じゃあもう下りましょうか、飯を食うところも探したい。」

 

「しょうがないなー」

 

その後、取り敢えず山を下る方向に歩いていく。しかし、いつまでたっても景色が変わらない。

 

「あの、先輩、ここさっきも通った気が……」

 

「リングワンダリングか…」

 

「え?なんて言いました?」

 

「要は同じところをぐるぐると回ってるってことだよ」

 

「でもここ一本道ですよ?」

 

「そうだね、」

 

そう言って、ポケットの中を漁ったり鞄の中を漁る

 

「スマホがない。それだけじゃない。持ってきたものが全部なくなってる。」

 

高橋が慌ててポケットの中などを確認する。

 

「え、ホントだ。」

 

上坂は迷うことなくカバンを足元に落とす

 

「よし、歩くよ」

 

「え、カバン…」

 

そのまま2〜3分歩く

 

「あの、先輩、カバンおいてきて良かったんですか?」

 

「うん、だってあそこにあるからね」

 

そう言って、上坂が数メートル先を指差す。

 

そこには、先程置いていったはずのカバンが落ちていた。

 

「えっ……」

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