ラブコメなんて実際に起こり得ないことの証明   作:寿太郎

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43.クリスマスの夜景は社畜の仕事によってできている

クリスマス……それは非リアにとって地獄である。周りがイチャコラしているのを見せつけられ、己の不甲斐なさを否が応でも意識させられる。

例えば、その日に仕事があったらどうだろう。おめでとうございます。晴れてリア充が歓喜する夜景の仲間入りです。世の中とは搾取の塊なのである。強者が弱者から不当に利益を毟り取るのである。恋愛強者は恋愛弱者が作る夜景を見ながら相手に対して

 

「君のほうが綺麗だよ」

 

などとのたまうのである。馬鹿らしい。

などと恨み言をWordにカタカタと打ち込んでいる。今日はクリスマス。僕は一人で生徒会室でパソコンと格闘していた。先週末に四回目の狸との話し合いが終わり、なんの成果も得られなかったことから本格的に改正案は手詰まりになっていた。

 

そして、昨日某異世界に行って死に戻りしまくる有名なアニメを見ていたときにあることを思いついたのである。で、その叩き台をつくるために冬休みにも拘わらず、一人生徒会室でポチポチしていたのである。しかし、窓から見えるリア充割合があまりにも多くて発狂していた次第である。

 

自分の行動が馬鹿らしくなって、恨み言を書き連ねたWordのファイルを消去する。はぁ、と大きなため息を一つついた時だった。ガチャリと音を立てて生徒会室のドアが開く。誰か来たのか、上坂先輩かな?と思っていると、

 

「あ、青?」

 

と可憐な声が聞こえる。春奈だった。彼女はどちらかと言わなくても陽キャの類だから今日はどっかで遊んでいるものと思ったが、どうしてかは分からないが、生徒会室に来たらしい。

 

「ん、春奈?どしたの?クリスマスの日にここに来るなんて」

 

「ホントは遊ぼうと思ったんだけどね、なんか、私の公約が全然うまく行かなくてみんなが頑張ってるのになんか遊べないというか少しでも公約達成のためになにかしたいというか、」

 

と言いながら春奈は近くにあった席に座り、パソコンを起動させる。なんていい子なんだろう。

 

「といっても、何か考えがあるわけでもないのにね。…………でも、青がいるなら来てよかったな、青が私のために頑張ってるのに、私だけ遊んでるなんて、なんかやだもん。」

 

彼女は空元気からであろう笑顔を見せて、

 

「まあ、それも自己満足。結局私が一人いたところで何ができるわけでもないし、何か打開案が浮かんだわけでもない。」

 

そう言って、悲しそうに笑う春奈のその言葉に僕は返す言葉を持たなかった。月並みな、適当な言葉を返せばよかったのかもしれないし、春奈はそれを望んでいたのかもしれない。でもそれはひどく不誠実なことのように思われたのだった。

 

それから緩やかに時間は過ぎていった。春奈が来たはいいが、本人が言う通りやることも特にないらしく、暇そうだし、僕は考えついたことを形にするのに四苦八苦しており、なかなか仕事は捗らなかった。その結果、僕と春奈の会話がかなり交わされることになった。そして、昼も過ぎ、時間は午後3時頃。ようやく僕の考えが形になった。それなりに大変だった。昨日思いついたのはアイデアだけで、具体的なことは何一つとして考えつかなかったので、時間がかなりかかってしまった。

 

その後、一時間くらい春奈と会話を楽しんだ。すると、窓の外に白い結晶がチラチラと見え始めた。

 

「あれ?雪じゃない?」

 

春奈が外を見て言う。

 

「ホントだ、すごい綺麗。ホワイト・クリスマスだね。」

 

「実はお菓子持ってきたんだよね、食べようよ。クリスマスパーティーだよ」

 

という春奈の言葉で二人でお菓子をつまみながら会話を楽しんだ、二人きりのクリスマス会みたいで楽しかった。

 

 

 

 

外を見ると、降りしきる雪の中帰る学生が散見されるようになった。

 

「あれ?今日学校に来てたのかな?なんで?」

 

と春奈も不思議そうだ。

 

その瞬間、僕の頭の中でアラームが鳴り響いた。

………奴が来る、そう直感した。なぜかはわからない。しかし、そう直感したのだ。そして、

 

「よし、春奈、そろそろ帰らない?」

 

僕がそう春奈に提案した瞬間だった。鈴の音が部屋に鳴り響き始めた。リンリンリン、と規則正しく鈴の音が鼓膜を揺らす。春奈は

 

「えっ、えっ、何!?」

 

と驚きあたふたしている。可愛い。春奈の可愛さに僕が気を取られている間にも鈴は鳴り響き続ける。

しばらく鈴の音が続くと、ゆっくりとドアが開く。

 

「ふぉー、ふぉふぉふぉ、サンタさんじゃぞー」

 

と明らかに上坂先輩の声でひげモジャで赤と白のよく知られた服を身にまとったサンタが生徒会室に入ってきた。

 

「せっかくコスプレするならもっと可愛いサンタにすればよかったのになんで普通のサンタ服なんですか?」

 

と僕が言うと

 

「ホントだよ、静ちゃん、ミニスカサンタとかにすればよかったのに。」

 

「あれ、バレてる?私だってバレてる?」

 

「変声器があればまた変わったかもしれませんね」

 

「声でわかっちゃった?二人共私が声だけでわかるほど私のこと好きなの?もー、照れちゃうなー。」

 

なんだ、この女、腹立つ。

 

「いやいや、声で女子だってわかったからですよ、こんなことする女子先輩くらいしかいませんよ」

 

「え!?まるで私がコスプレ大好き女みたいに言うのやめてよ、普段のクールビューティーなイメージからのギャップ萌えを狙ってるんだから。」

 

「クールビューティーって頭がおかしいって意味じゃないですよ?大丈夫ですか?」

 

そう僕が言うと、上坂先輩は頬を膨らませてご立腹らしい。まあ、髭で表情はよく見えないのだけど。

 

「まあ、でも春奈ちゃんがいるのは意外だなー、てっきり遊びに行ったものかと」

 

「いやー、なんか改正案のこと考えると取り敢えずここに来たくなっちゃって。」

 

春奈が頬を掻きながら少し照れくさそうに話す。

 

「ふーん、まあ青がいるのは予想通りだけどね」

 

上坂先輩は笑顔でそう言う。うるさい。

 

そういえば、さっき作った改正案の草案と今後の方針案見てもらおうかな、まだみんなにも見せてないからホントに個人の願望でしかない代物なんだけど。そう思って、上坂先輩に先程作った案を見せる。上坂先輩はすごいスピードでそれを読み、

 

「ふーん、概ね私の想定通りだよ、多分これならうまくいくんじゃないかな?私もダメ押しでちょっと手伝うね」

 

と言った。

 

「何するんですか?」

 

「なーいしょ」

 

絶対にろくなことしないぞ、この人。

上坂先輩は、ふと疑問に感じたようで、

 

「青はなんでこれ思いついたの?急に?」

 

と上坂先輩が聞いてくる。

 

「某異世界に行って何回も死に戻りするアニメを見てたら思いつきました。」

 

「あーね、確かにそれなら思いつくかもね。」

 

春奈は完全についていけないようであわあわしている、

 

「えっ、何の話?それ私も見たい」

 

「春奈ちゃんは駄目だよ、まだ」

 

と上坂先輩が邪魔する。別にいいだろ。

上坂先輩に何故か戒厳令を敷かれたところで、チャイムがなる。最終下校時刻らしい。

 

「もうこんな時間かー」

 

上坂先輩がちらりと時計を見て言う。

 

「帰ろうか、二人共。」

 

「いいですけど、一緒に帰るならそのコスプレは脱いでくださいね。」

 

「えー、せっかくクリスマスなのにー」

 

 

しばらくして3人で校門から外に出る。雪が降っているので、地面はうっすらと白くなっている。雪を見ると、幼い頃を思い出す。例えば新雪をサクッサクッと音を立てながら歩くことに楽しみを覚えたり、ビショビショになるのを厭わずに雪合戦をしたり、今となっては雪は靴がグチョグチョになるし、公共交通機関は止まるしで嫌いでしかないのだが。

 

「そういえば、静ちゃんはコスプレするためだけに学校に来たのー?」

 

「そんなわけないじゃない、今日は模試だったの。クリ模試、気持ち悪いよねー、うちの高校。」

 

などと話している間にちょっとしたイルミネーションがある道に出た。

 

「うわー、すごい、綺麗だなー」

 

と春奈が言う。君のほうが綺麗だよ、とか言ったほうがいいのだろうか。

慥かにイルミネーションは雪の白と緑、さらに様々な色が綺麗にマッチしていて、ホワイトクリスマスならではの様子を見せている。ホワイトクリスマスはなかなかレアだからあまり見られない光景だろう。

 

いつもは見たらイライラしてしまうリア充達の間を縫って春奈と上坂先輩の3人で駅へと向かう。

 

こんなクリスマスも悪くない、そう思った。

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