ラブコメなんて実際に起こり得ないことの証明   作:寿太郎

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次が最終回です。多分


53.卒業式の日に

僕は今日、卒業する。

 

あの夏休みから一年半が経った。あれ以来、上坂先輩と遊ぶ以外特に何もなかった。クソつまらない日常をすごし続けたのだ。特に三年生になってからは、僕が受験生ということもあり、上坂先輩と遊ぶ機会も減った。すごく残念ではあったが仕方ない。僕は上坂先輩と少しでも近いところを受けようと思って、都内の大学を志望した。都内の私立大学は家計的に厳しいとのことで国公立大学を狙うことになったのだが、都内の国公立大学は全てなかなかの難易度である。それで、三年生の時はかなり勉強を頑張った。まだ合格通知は来ていないが、多分受かっただろう。努力の成果として、大学入試にはそこそこ満足している。そして、上坂先輩は今日卒業式に来るらしい。暇なのかな?

 

 

僕は今日上坂先輩に告白しようと思う。卒業という一つの区切りだし、僕は恐らく大学は東京の大学に行くことになるだろうから、今が最適なタイミングだろう。

 

 

そう決めると、一瞬一瞬いちいちドキドキする。校長のクソ長いなんでもない話の間にもドキドキするし、卒業証書を貰っているのを見るのもドキドキする。頭にはもはや告白のことしかない。

 

 

卒業式が終わり、周りが喧騒に包まれる。卒業式ということでそれぞれが高校生活最後の時間を噛み締めているらしい。僕はといえば相変わらず一人だ。明らかに浮いた存在として教室の異物になっている。

 

周りとは一切会話もせずに教室から出ていく僕は注目されるかとも思ったが、みんなお喋りに夢中らしく、特に注目も浴びずに外に出ることができた。

 

どのクラスでも教室は同じような雰囲気らしく、外に出ている人は一人もいない。この学校はボッチはいないのか?校舎の外に出ると、保護者が帰っている。卒業式自体はかなり前に終わっているので、少し世間話でもしていんだろう。そんな人がまばらな場所に浮世離れした美女がいた。少し風が吹いて、髪が流れているのが非常に絵になる。僕はその美女に近づいて、

 

「上坂先輩、こんにちは」

 

と声をかける。上坂先輩は

 

「おー、青ー、卒業おめでとー」

 

上坂先輩と会話すると、その度に心臓がズキズキと痛い。

 

「じゃあ行こっか」

 

そんな僕の心中を知ってか知らずか僕の手を握って笑顔をこちらに向けて二人で校門を跨ぐ。というかこの学校いくらOGとはいえ、卒業式に外部の人入ってるのヤバすぎでは?この学校の防犯体制に疑問を覚えながら上坂先輩に連れられて歩いていた。しばらく歩くと、大きめの公園についた。

 

「ほらー、見てよ。すごく梅の花がきれいじゃない?」

 

そう言われて周りを見渡してみると、梅の花が当たり一面で咲いていた。情熱的な赤色で、すごく綺麗だ。

 

「ここでご飯食べようよー、コンビニで何か買ってさ。」

 

という上坂先輩の言葉でコンビニに昼ごはんを買いに行った。僕はオムライスを買った。レンチンしてもらったので、熱い。

 

 

それぞれに思い思いのご飯を買って、公園に戻ってきた。そして、公園の一番花が咲きほこっているところで

 

「あの…上坂先輩。」

 

僕は告白することにした。心臓の音が五月蝿い。

 

「僕、上坂先輩のこと好きです。付き合ってください。」

 

オーケーされるか、振られるかのどちらかだと思っていた。神妙な顔をして判断を下すもの。そう思っていた。だから、こんな反応は想定外だった。

 

「ハッハッハッハッハッハッ……」

 

上坂先輩は、大爆笑していた。

 

「あー、やっぱりかー、じゃあね。小鳥遊さん」

 

そう言って上坂先輩は足早に立ち去っていった。

僕はしばらくぼーっとしていた。お腹が空いたのでオムライスを食べた。冷たかった。なにがやっぱりなのか。なぜ呼び方が変わったのか。なぜ大爆笑したのか。僕には一つも分からなかった。

 

 

 

数日が経った。大学から合格通知が来た。合格したというのになにも嬉しくなかった。むしろ、虚しかった。

 

 

親に大学生になったときのために買い物をしてこいと言われた。ショッピングモールへと行って色々と買った。買い物をしたあと、ブラブラと歩いていると、いつの間にかゲーセンのホッケーのマシンのところにいた。懐かしいな。あの時は春奈と二人でホッケーをしたっけ。ホッケーのマシンを指でなぞって思い出に浸っていると、向かい側に人がいた。

 

「は…春奈?」

 

そう。長い黒髪を一つに束ねた春奈だった。

 

「やあ、青久しぶり。」

 

しばらく話していなかったので、春奈の挨拶はぎこちない。やあなんて二年前には絶対に使わなかったのに。

 

 

僕がしばらく押し黙っていると、春奈が

 

「青。ホッケーしようよ。随分前になったけど、またやろうって約束したじゃん。」

 

春奈が精一杯の笑顔を作ってホッケーに誘ってくる。確かにそんな約束した気がする。あれはいつだっただろうか。そんな昔のこともう忘れていた。

 

 

春奈と二人でホッケーをする。二年前に戻ったような感覚になるが、あの時より会話は少ないし、少し気まずい。改めて二年という時の長さを実感する。

 

「あー、また負けちゃったー。また今度やろうね。」

 

あの時はさして次の約束を気にも留めなかったが、今は次の約束が少し嬉しい。そんな小さな喜びを噛み締めながら、春奈と一緒にショッピングモールを回る。

 

 

話を聞くところによると、春奈は県内の国立大学に合格したらしい。バカキャラの春奈が国公立大学に合格したのは意外だ。僕が都内の国公立大学に入学する予定であることを伝えると

 

「あっ、やっぱり?青は頭いいから県外に行くと思ってたよ。」

 

あの時そんなに成績よかっただろうか。

 

「僕そんなに成績よくなかったと思うけど…」

 

「うーん、なんていうか地頭的な?」

 

なるほど、自分ではそう思わなかったけど。

 

 

いい時間になってきたのでそろそろ帰ろうかとなり、ショッピングモールを出て、駅に向かう。春奈とは駅までは一緒だが、駅からは別々だ。そろそろ僕は都内に引っ越すし、少なくともしばらくは会えないだろう。次もまた会えるだろうか。そんなことを考えながら駅までの道のりを歩く。

 

 

そろそろ駅に着こうかというところ。春奈が

 

「青!!」

 

と言って僕を呼び止める。僕が止まって春奈の方を見ると、彼女は持っていたバッグから一輪の花を取り出して、

 

「きっと、青はすぐに東京に行っちゃうよね?だから、また百年後じゃないけど、百日後にまた会いましょう。」

 

そう言って百合の花を僕に渡す。そういえばそんな話も春奈としたな…そう思いながら彼女から花を受け取る。また、今度。その言葉をこれほど嬉しく思ったのは初めてだろう。

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