ラブコメなんて実際に起こり得ないことの証明   作:寿太郎

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シリアス回です


9.梅雨に運動するのはベトベトになるから嫌だ

運動会……じゃなかった、体育祭の練習もしばらくすると慣れてきて、時間は流れ、梅雨と言っても差し支えない時期に入ってきた。この時期は髪の毛がうねって面倒くさい。今日も朝から大変だった。今日もこの時期らしく生憎の空模様だ。雨降ると、筋トレばかりになって嫌なんだよなー。

最近はかなりマシになってきた筋肉痛を我慢しながら学校へ向かう。まだ、春奈は来ていないらしい。五月と適当なことを話して時間を潰す。そういや、五月は好きな人とどうなんだろう。

 

「五月は好きな人とどんな感じ?」

 

「うーん、なかなか強敵でね、あんまり進展ないかな。」

 

ふーん、そうなんだ。結構可愛いし、いけそうなものだけどな。

結局朝のショートホームルームになっても春奈は来なかった。どうやら休みらしい。珍しい。と言ってもまだ、3ヶ月弱くらいしか一緒にいないから珍しいかもわからんな。

 

 

 

 

 

 

 

 

空模様は結局放課後まで回復せず、室内でアホみたいに筋トレをやらされる。休憩中、春奈がいないので最近は固定メンバーになっている愛梨と会話を交わす。愛梨が

 

「あー、今日はー春奈ちゃんがーいないんだー。」

 

というので

 

「そうなんだよ、残念なことにね。」

 

と返すと

 

「そっか、じゃあ今日は帰りに喫茶店よってお話して帰らない?」

 

と誘われた。じゃあってどういうことだ?春奈がいたらマズいのか?何の話をするつもりなんだ?そう聞こうとすると、

 

「じゃあ、休憩終わりー続きやるぞー」

 

と声がかかり、気になるけど聞けずに練習に戻った。練習中も彼女が話したいことが気になって集中できなかった。

 

 

 

 

 

 

練習が終わり、愛梨と二人で帰路につく。彼女の茶色がかった髪の毛と雨の様子と真剣な眼差しがやけに映えていた。彼女のこんなに真剣な眼差しは初めて見たかもしれない。いつものホワホワした雰囲気が全くなく、息を呑むような美しさで声も出なかった。色々聞きたいことがあるのに。何を話すつもりなんだろうか。

ふと、目が合った。彼女は顔をほころばせて

 

「そんなに緊張しないでよー。」

 

といつもの調子で言う。

 

「ごめんごめん、そういえばさ、なんで運動会じゃなくて体育祭なんだろうね?」

 

と話題をふる。

 

「なんかー、運動会ってー運動する会だからさー、勝つことが目標な感じするでしょー?でもー、体育祭はーお祭りだからー、勝つことじゃなくてー、楽しむことが目的なんだよー。そこにこだわってるらしいよー。」

 

そうなのか、そんなに深い意味があったのか。そんな感じで他愛の無い話をして、歩く。どうやら、彼女は本をよく読むらしい。意外だ。靴の中に水が少し入ってきて少し憂鬱になってきたあたりで喫茶店に着く。席について、注文をする。彼女はブレンドコーヒーを頼むらしい。なんか意外だ、カフェラテとか飲むイメージだった。思えば、本のこともそうだが、彼女のことをほとんど知らない。僕が知っていることといえば知り合いの先輩に同じ団の三年生がいることくらいか。

注文を終えるとさっきのような真剣な目をする。窓に面した席だったので、窓の外を見ているらしい。窓に映る彼女の美しい横顔が少し悩んでいるようにも見える。雨が振る音と周りの雑音だけが流れる。不思議と気まずさはなかった。しばらくすると、コーヒーがやってきた。僕は一口だけ口に含んで彼女に問いかける。

 

「どうして、愛梨がいたら駄目だったの?」

 

「すごく…すごく繊細な話だからー。青にだったらー知られても大丈夫だと思ったのー。別に愛梨が信頼できないとかじゃなくてー……」

 

いつものホワホワした話し方だが、声色が全然違う。いつもより、低い。こんな低い声をだせたのか。

 

「私ねー、五月とー幼馴染なのー。」

 

なるほど?どうして急に五月の話が?

 

「それでねー、…………………私ねー、五月のことー好きなんだー。」

 

その一言、そして雰囲気でわかった。彼女の「好き」は春奈がいつか僕に言った「好き」とは違う「好き」だ。恋愛対象としての、「好き」だ。僕にはわかる。この言い方、仕草、そして少し不安げな目。その全てがそれを示している。彼女は僕がそれを察したことに気づいたらしく、微笑んで

 

「やっぱりー、青ならーわかってくれると思ったよー。」

 

当たり前だ。なるほど、これなら春奈に内緒にしたいのもわかる。かなり繊細な話だからな。でもどうして僕に?

 

「いつから?」

 

と聞くと

 

「うーん、わからないー。いつの間にかー?」

 

そうなのか、

 

「どうして好きになったの?」

 

「わかんないー。何かー特別なことがーあったわけじゃないのー、何かー普段の会話とかー?同じ時間をー共有することでー好きになったのかなー?」

 

とのことだ。じゃあ僕のこの春奈への複雑な、モヤモヤした気持ちも恋なのかな?と考えていると

 

「それでねー、手伝ってほしいのー。私も手伝うからー。」

 

「えっ?」

 

「春奈ちゃんのことー好きなんでしょー?見てたらわかるー。」

 

マジか、

 

「でも、わからない。これが好きなのか……」

 

「いや、好きだよー。見てたらわかるよー。あんな熱い視線を向けちゃってー。ずっと春奈ちゃんのこと見てるよー。」

 

そんなに春奈の方を見てたのか。でも、そっか、僕は春奈のことが好きなのか。そう思ったら心にスポッと何かがハマった気がした。

僕に聞いてたのはこれがわかってたからか。

 

「というか、愛梨にバレてて大丈夫?春奈にもバレてるかも……」

 

「大丈夫だよー、多分。私しかわかってないよー。」

 

まあ、そうか。そんなにわかりやすいとは思わないし。

 

「手伝うって何するの?」

 

と聞く。

 

「うーん、取り敢えずデートのセッティングとかー?みんなでー出かけるフリしてー五月がトイレとかでいなくなったらー、私以外ー帰るとか?お腹痛くなったとか言ってー。」

 

 

ん?どこかで聞いたことある話だな。もしかして……髙橋?ふーん、(察し)すまんな、お前の気持ちには応えられない。髙橋。高橋の気持ちに気づいてしまった。

 

「そういえば、五月が好きな人いるって言ってたよ。」

 

「えっ、」

 

彼女の腕が止まる。聞いたことがなかったらしい。

 

「そう……なの?聞いたことなかった。」

 

少し不安気だ。

その後にどうするかを決めてその日はお開きになった。取り敢えずできるだけサポートする感じになりそうだ。具体的には、不明。

 

 

 

 

 

 

まさか百合がこんなに近くにいるとは……。




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