ある日幻覚が見えるようになった   作:アカシヤ

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向こう側

 点から拡散する大事なモノを押し留めて、漂って、押し留めて、漂って、押し留めて、

漂って、漂って、奪って、押し留めて、押し留めて、漂って、押し留めて、漂って、漂って、押し留めて、漂って、押し留めて、漂って、漂って、奪って、押し留めて、押し留めて、漂って、漂って、かき集めて、押し留めて、漂って、押し留めて、漂って、漂って、奪って、押し留めて、押し留めて、漂って、漂って、漂って、漂って、漂って・・・・・・・・・

 

 

 

 

 どれ程そうしていたのか分からない、何と無くモヤモヤした意識で、つい先ほどまでの体験を傍観者の様に受け止めていた。例えるなら、寝ぼけている状態からの覚醒し始めという表現が近いだろうか。

 

 自分の皮と血と肉に覆われる奥深くまでもが冷えていく様な感覚に陥りながらも、俺は焦っていなかった。

 明晰夢は何度も見た事があるし、そのいずれも遅くて数十秒かければ勝手に覚めているからだ。だから、今まで自分が無意識にしていた行動を気にもしなかったし、じわじわと迫る危機感も無視することができた。

 

 心を落ち着かせ、ゆっくりと秒数を数えて待つ事にする。

 

 

 

 30秒経った、夢の中の体感時間なんてあまり当てになる物では無いが、いつもとは違うという事には気がつく。

 

 

 

40秒だ、寒さが増した。言いようのない悪い感覚が心を散らす。

 

 

 

 43秒、もう限界だ、異常な程に寒い。

 夢の中だろうが何だろうが、この寒さと不安感に堪えるのは苦痛だった。諦めて現実の体を動かそうとするのを止めてみれば、今の俺の体? は即座に忘れていた、しかし覚えの有る行動をし始める。

 

 

 押し留めて、かき集めて、押し留めて、押し留めて、押し留めて・・・光の濃淡だけで測る世界の中、その光を集める程に心地よい暖かさと充足感が満ちてゆく。

 

 本能の様な物に任せていたはずが、いつしか自分から積極的に集めて、纏めて、取り込んでいた。今度は傍観者では無く、ハッキリとした意識を保った上でだ。

 

 周りが暗闇に染まれば、光を求めて漂った。少し移動すればまた光は白く照らし、暖かさをくれた。

 

 夢ならば覚めないで欲しかった、此処には幻覚も、煩わしい問題も無い。有るのは光を集めるという欲求に基づく行為だけであった。

 

 そうして漂って、かき集めて、押し留めて、漂って、かき集めて、かき集めて、かき集めて・・・移動した先で大きな光を発見した。

 その光は固まって移動して、周囲から光を取り込んでいた。「まるで生きている様だ」なんて思いながらも、「あれを集めればきっともっと暖かくなれる」と心が躍る。

 

 だから、押し留めて、押し留めて、押し留めて、それまでの何倍もの速さで近づいた。            

 そこらの光は後で集めれば良い、この光に逃げられては困る。もう、ご馳走にしか見えていなかった。

 

 純粋な欲望と期待をもって急速に近づく自分を、しかしソレは他の光と同じ様に取り込んで来た。まさか自分がされるとは思わず、動きを止めてしまう。

 せっかく集めた光が奪われて、寒さが帰って来る。構成する根源のナニカが薄まってゆく。

 

 大きな光は更に光量を増し、自分に近づいた。ご馳走となり得るのはソレだけでは無かったのだろう。

 もはや、自分に余裕は無かった、少しずつ剥がされる光を掴み、集め、侵略仕返す。 

      

 思い通りに行かない現状に沸々と湧く怒りが、冷静な自分は幼稚で理不尽な物であると判断した。

 

 

 

ーーーーー待て、何故俺は、いや、なんだこの状況は

 

 

 そうだ、何故俺は無警戒に突っ込んだ? いつもの俺なら、こんな事はしないはずで、違う、そもそも何故、覚めようとしない?

 

 暖かさが無くなり意識が冷める、如何に快楽に流されていたかに気づき、ゾワゾワと悪寒が走る。

 

 奪われまいとしていた光を切り離し、全速力でその場を離れる。周りを見れば、白黒の世界が色を取り戻そうとしていた。そうだ、新緑も、遊具の赤も、どれも濃淡の世界には無い物だ。

 

 

ーーー元いた場所、器に戻らなければ

 

 

 そう何の根拠も無く思い、強く想えば  

 

ーーーーーーーーーー

 

瞼が開き天井の茶が視界を埋めた。

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