「全部効果は無し・・・やっぱり、遮断するのは俺の体限定か? 物質的には他人でも良いはずなんだけどなぁ・・・家族もダメだし」
自転車通学の生徒に二度見されながらも一通り試してみたが、どれもこれもダメだった。距離の問題なのかもしれないが、流石に瞼ほど眼球に物を近づけるのは無理がある。
「いや、コンタクトレンズならいけるよな。怖いけど、選り好みなんてできる立場じゃないか・・・」
確か姉はちょくちょく付けているみたいだったし、試させてもらおう。効果があって欲しい7割、付け続ける理由ができて欲しくない3割といった気持ちだ。
まあ、全くもって発見が無かったというわけでは無い。サングラス越しに鮮やかな色が見えたらそれは幻覚、視界を塞がずに一瞬で幻覚を見分ける方法としては使えるだろう。
微妙な顔をしながら信号の行列を眺める事数分後、ちらほら場を離れていく幻覚達を見かけて卯月くんの接近を感じ取る。もちろん、逃げていく幻覚達と同じ方向を向いておく。
「よぉ、おはよーう」
「おはよう」
彼の真っ黒に塗りつぶされた様な姿を見ていると、軽く圧迫感を覚える。何処か懐かしいと思い考えてみれば、風邪の時にこんな夢を見たなぁと思い出した。
その後は卯月パワーで何事も無く学校へ到着。時たま視線を向けなくちゃならないのが大分辛かった。顔を向けずに会話する様気をつけておけば解決するだろうが、流石にな・・・
ーーーーー
数学教師によって黒板に描かれていく図形を写していく。
その教科の性質に引っ張られてか、いつもとは少し違った発想が出ていた。
今自分は光として幻覚を捉えているわけだが、光というのは波長だ。そして、人はその波長を受け取って変換し、それが色やらなんやらになっている。
そして、受け取れない波長というのがある。鳥と人が同じ物を見ても全く同じに見えない様に、種族によって受け取れる波長の幅が違うのである。
ならば、自分の波長範囲を狭める・・・つまり幻覚の発する何某かを受け取っても変換できない様にできれば良いのではないか?
急に見える様になったり、見える幻覚の種類が日々変わっているというのも、自分の波長範囲の様な物(以後、幻覚認知域とする)が変わり続けていると考えれば納得がいく。
これは良いことを思いついたかもしれない。大きく頷く自分に、現実主義の自分が釘を刺した。
「じゃあ、どうやって幻覚認知域を任意で変えるの?」
「・・・・・」
返す言葉は無かったが、一時的には以前の状態に戻れるかも知れないと分かっただけ大きな前進であった。