ある日幻覚が見えるようになった   作:アカシヤ

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多様性って大事だから

 ある日突然「幻覚」(仮称)が見えるようになった学生、高橋新太は悩んでいた。

 

「なんでコイツらも信号待ちしてるんだよ・・・・!」

 

 そう、意気揚々と自宅を出たは良いものの、何故か律儀に信号を待っている幻覚の集団が怖くて通学路が使えないのである。

 

 いや、いくら異形の姿をしていると言えども数体ぐらいなら大丈夫なのだ。しかし、目の前の集団は少なくとも15体以上はいる。

 流石にまだ幻覚の中に入った事は無いし、できる事なら一生したく無い。それに、幻覚のせいで見えなかった自転車や人とぶつかりましたなんて事にもなりかねない。

 精神的でもだが、物理的にも怖いのだ。

 

 これだけ聞くと、この幻覚の群れが信号を渡り切るのを待てば良いだけだろと思うかもしれない。実際に俺は10分待った。それなのに俺が未だにこの信号を渡れていない理由が・・・あ、始まった。

 

 青信号になると同時に幻覚がゾロゾロと横断歩道を渡り始めた。

 ここまでは良い、しかしこれからが問題だ。

 そのまま先頭の幻覚は渡り切り・・・地面に沈んだかと思うとまたスタート地点からニュッと生えてきた。コレは幻覚の数に多少なりともバラつきはあるものの、他の横断歩道でも同じような現象が起きていた。

 

「コイツらは渡る事自体が目的であって、向こう側に行きたい訳じゃないのか・・・?目的と手段が逆転してるじゃないか」

 

 一昨日下校してた頃には見えなかったし何となく気付いてはいたが、どんどん見える幻覚の数と種類が増えているようだ。全くもって嬉しく無い。

 

 もういっそ全てをカメラ越しに見る様にしてしまおうかとも思った頃、俺を悩ませていた幻覚が全て地面の中に入っていった。それどころか、周囲の幻覚も続々と入っていく。

それはまるで逃げる様で・・・あれ、まずいのでは?

 

 俺も何処かに隠れようとしたその時、アイツは現れた。

 

「おーい、一緒に行こうぜ〜!」

 

 サッパリとした髪型に人懐っこい性格、そこにいたのはクラスのムードメーカーの卯月くん・・・ではなく、黒い人型のナニカだった。流動するしているのかすら分からない、まるでそこだけ夜になった様な姿をしていた。今まで見てきたどの幻覚とは違い、本能的な恐怖を感じる。

 

 

「うわあ!」

 

 思わず大声を上げる俺、

 

「うおぉ!?」

 

 そしてその声にビックリして大声を上げる卯月くん・・・卯月くん?

 

「・・・あれ、卯月くん?」

 

「おう、卯月くんだが何で疑問形?」

 

 なんて事だ、そこそこよく話していた友人は幻覚系人間だったらしい。クラスの数名ぐらいは覚悟していたが、まさかこいつがそうだとは。

 

「いやー、何で今日はこんな時間に?お前いつもはもう少し早く学校に来てるだろ?」

 

「あ、ああ今日は起きるのが遅れてな。朝食も食ってないんだ」

 

 何とか質問に答えたが頭の中はもうてんやわんやになっていた。まともに見るのもキツイのにこれからコイツとどうやって向き合っていけば良いのだろうか。

 

「あ、そういえばさ。俺バスから自転車に変えたんだよね。もう少し早くするから一緒に登校しね?」

 

 怖い、怖いのだが、色々見えるようになるまでの俺なら迷わず了承しただろうし、幻覚を退けられる能力は重要だ。いや・・・そもそもこいつが何か悪い事をしたわけでは無いのだ。見た目には我慢して今までの様に仲良くしよう。

 

 心の中ではともかく、出来るだけ平等に接するのが俺の信条だ。たかが見た目が変わった程度で態度を変えるべきでは無い。うん、多様性多様性。

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