【因果一角】 ユニコーン   作:可能性の獣

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見切り発車。
続きはそこそこ時間かかる予報。



第一章 ユニコーン(〈エンブリオ〉)の日
第一話 2043年からの旅立ち


□ドライフ皇国 皇都ヴァンデルヘイム

 

「ゲホッゲホッ……酷い目にあった」

 

少年は空を見上げる。

黒煙が天蓋となって青を隠すドライフ皇国特有の空には人一人分の穴が穿たれていた。

彼は煤だらけになってしまった身体を丹念に払いながら、ログインしてから感じてきた一切を追想する。

 

「すごいな……今まで色々やってきたけど、今回はアタリかもしれない」

 

ただ五感をハックされたと思えないリアリティ。

まるで現実味はないが、これは正しく現実だと世界は訴えてくる。

煤から始まるファーストコンタクトは最悪の一言に尽きるがそれ以外は花丸だ。

ようやく、本当にようやく己の目的が達成できそうな気さえして、彼は薄く笑った。

 

生まれてから今日まで疎外感に苛まれない日はなかった。

いるべき場所はここではない。似ているようで全く違う。世界から後ろ指を指されている。

そんな感覚がずっと身体に纏わりついて離れてくれなかった。

それが得体の知れないものだったことはない。自分が世界の枠組みから外れている理由を彼はよくよく知っていた。

それは自力でどうにかできる類ではないことが、彼の不幸と言えよう。

 

だから求めた。このズレを埋めてくれる何かを。

そして見つけた。デンドロ(このゲーム)を。

 

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その名を冠する存在はこの世界で一つ、彼の中で二つ。

前者は彼がマスターとして名乗るプレイヤー名である。

後者はプレイヤーとしての自分と、とある物語を駆け抜けた主人公の名である。

 

この世界に『機動戦士ガンダム』は存在しない。

その立場を代替する作品は存在しているが、バナージにとって『ガンダム』の代わりとなってくれるものではなかった。

もちろん素晴らしい作品だが、かけがえのない大切を上書きするほどの熱を灯せなかった。

所謂、思い出補正というやつである。

 

今更述べることでもないが、マスター『バナージ・リンクス』は転生者だ。

世界と自分に横たわるズレに苦悩し、その隙間を埋めるため──ここにない思い出に触れていられる世界を求めて、<Infinite Dendrogram>にログインした、数あるマスターの一人である。

 

 

 

 

 

 

 

 

□ドライフ皇国 皇都ヴァンデルヘイム バナージ・リンクス

 

バナージは皇国上空でスカイダイビングをする前に、管理AIを名乗る白いチェシャ猫にいくつか質問をしていた。

 

①宇宙の環境はどこまで設定されているか。

②この世界で『戦争』は起こりうるか。

③今考えていることはここで実現可能か。

④巨大人型ロボっている?

 

対する回答は以下の通りである。

 

①設定されてるよー。少なくとも太陽系くらいまでなら。そこにいけるまで結構時間はかかると思うけどー。

②もちろん起こるよー。君たちが来る前からずっと繰り返されてきたからねー。

③できるできないで言えば“Yes”だねー。君の奮闘に期待してるよー。

④なくはないけど極小数だねー。装備して動かすタイプなら今のドライフのトレンドかなー。でもあれはロボットよりパワードスーツ寄りだねー。

 

その他諸々の条件を加味し、バナージはドライフ皇国に降り立った。

現状彼の要求を満たせる可能性が高いのはここだけだからである。

 

「あの、すみません」

 

バナージは到着してすぐ、道行くNPC──ティアンに声をかけた。

ティアンの男性はバナージの左手に埋まった青い宝石に目を落としてから、笑顔で応対してくれた。

まさかこの世界では常識も常識のジョブクリスタルの在処を聞かれるとは思いもしなかったようだが。

 

まあマスターだしそんなこともあるかと少々困惑気味ながら場所を教えてもらったバナージ。

なんでそんな微妙な顔をしているのだろうと首を傾げるが、彼の中に思い当たることはなかった。

 

ともあれ最重要の情報をゲットした彼は一目散にジョブクリスタルへ向かい、転職を果たした。

バナージが最初に選んだのは【操縦士(ドライバー)】ではなく【整備士(メカニック)】だった。

 

この世界のメカ枠──〈マジンギア〉は型落ちやレンタルでも新米マスターが手渡された路銀程度で手を出せる価格帯の商品ではない。

加えてバナージが当面の目標として掲げたあることを達成するためには、パイロットとしてのスキルよりも、整備するなり作るなりするスキルの方がずっと役に立つ。

 

『バナージ』も工専に通っていたのだから、彼のロールをするものとしてもそれに倣うべきだろう。

 

無事就職を終えたバナージはそのまま整備士ギルドに加入した。

受付の人によれば皇国で【整備士】に着く人は多いが、彼らが働く現場ももちろん数多あるので【整備士】は何人いても困らないとのこと。

 

かくしてバナージは早速クエスト──もちろん初心者向けではあるが──に飛ばされることとなった。

彼が指定されたのは皇都の端に位置するこじんまりとした個人経営の整備屋だった。

 

「ごめんください」

「はーい、少々お待ちくださーい!」

 

呼び鈴もないためめいいっぱい声を張り上げると中から幼げのある女性の声が聞こえてくる。

来るまでの間にバナージは今一度今回のクエスト要項に目をやった。

 

 

難易度:一【支援依頼―フィックの整備店】

 

【報酬:2000リル】

 

『皇都郊外にあるフィックの整備店で〈マジンギア〉整備の補佐をしてください。この依頼は定期的に募集されますので、【整備士】初心者の方は奮ってご参加ください』

 

 

ギルド職員によればフィックの整備店は半ば引退気味の【高位整備士(ハイ・メカニック)】がこれからを担う初心者【整備士】育成のために誂えたクエストとのこと。

バナージにとっても断る理由もない。ここが初めての【整備士】体験だという者も少なくないとか。

 

「こんにちは!クエストを受けて下さった【整備士】さんですね!」

「はい、バナージ・リンクスです。よろしくお願いします」

「バナージさんね。私はジェーン・シュミット、こちらこそよろしくね!で、早速で悪いけどお仕事の説明に入ってもいい?」

「どこまでできるかはちょっと分からないけど」

「あはは、初心者さんなら誰でもそうだよ。それじゃ、ついてきて」

 

郊外のために土地は広く使えるようで、トタンのような材質の大きな屋根のある仕事場に案内された。

 

「まずはグゥの紹介だね」

「グゥ?」

 

ジェーンは仕事場の端──廃材などが雑多に放り出されたところに向かって「グゥちゃーん!」と呼びかける。

すると廃材の隙間を縫うように銀色の粘体がスルスルと這い出てきた。

 

「グゥはもう使えなくなった廃材を食べてくれるんだ。モンスターだ!って攻撃しちゃう人もいるから、初めに注意してるんだ。バナージさんも気をつけてね」

「わかった。……ほんとにモンスターじゃないのか?」

「うん、モンスターじゃないらしいよ。私が産まれる前からここにいるらしいから、多分ご先祖さま秘蔵の発明品とかそんなところじゃないかな。で、紹介も終わったし仕事の内容だけど──」

 

ジェーンの説明もそこそこに、バナージは存在を主張する銀のスライムに気を取られていた。

粘ついた身体を不定形に変えるそれに、そこはかとなく不安を覚えるバナージであった。

 




名前(アバター):バナージ・リンクス
名前(リアル):?
年齢:?
メインジョブ:【整備士】(整備士系統下級職)
<エンブリオ>:【】第0形態
キャラ紹介:
当SS主人公。最初期勢。
世界と自分の間に広がる溝を埋めるため、前の世界で触れた思い出をここで再び形にするため、デンドロへと身を投じた。

余談:RX-0の作成を目指している。
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