【因果一角】 ユニコーン 作:可能性の獣
□皇都郊外〈フィックの整備店〉【整備士】バナージ・リンクス
「スジがいいねバナージさん!初心者の割にはだけど」
「褒めてるのか?それ」
「もっちろん!あ、そこボルトの締め甘いかも」
「……」
一通りの業務説明を受けたバナージはジェーンに教わりながら〈マジンギア〉【マーシャル】の整備を行っていた。
【マーシャル】は機械式甲冑──パワードスーツに分類される自身の身体の延長として扱うものであり、目標としている
とはいえそれらの設計理念や技術から学べるものは多く、バナージは退屈せず、むしろ意欲的に仕事に取り組めた。
とはいえ横合いからジェーンが逐一至らない部分に突っ込みを入れてくるため少々ゲンナリしてきているが。
「おいジェーン、口動かしてないで手を動かせ!人手が足りねぇからギルドにクエスト募集貼っつけてんだろうが!」
「了解です!ジェーンはただいま通常業務に戻らせていただきます!」
「手ェ!」
「はいすみません!手ぇ動かしまぁす!」
その度フィックの整備店のオーナー、フィック・シュミットの鼓膜に響く怒鳴りも飛んできてしまう。自分に向かってこないだけマシと考えるべきなのかとバナージは内心自問した。
もしかして来る場所を間違えてしまったか?と微妙な気分にもなるが、【
今は誰もがデンドロ初心者のため、これが適切な成長かどうかは検証が必要なところだが。
そうこうしているうちにバナージの終業時刻がやってきた。
今日の仕事は終了したが今回のクエストで要求されている勤務最低期間は一週間だ。
マスターが相手の場合は彼らが頻繁にこちらの世界から消えてしまうことを加味し、日程に全休を組み込むなどの融通は利くようになっている。その場合勤務先への報連相は必須となる。人として当たり前のことではあるが。
「さて、バナージさんに一つ提案したいことがあるのだけど」
「……なんです。変なことは聞かないって決めてますよ俺は」
そうだ宿はどうしよう、等と考えていたバナージにジェーンがムーンウォークのような動きでスススと擦り寄ってくる。
今日一日ジェーンに振り回された気がしているバナージは思わず身構えたが彼女は警戒させるつもりはないとばかりに両手を上げた。
「いや変じゃナイナイ。その様子だと今晩どうするか決めてないと思ってね」
「確かにそうですけど」
「ウチに泊まってきなよ。ご飯も出すよ?」
「いいんですか?」
「もっちろん!でもその分早め長めに働いてもらうことになるけど大丈夫かな?」
「あー……はい、少なくとも最低勤務期間中なら大丈夫です」
特にリアルでやることもない、むしろやれることはほとんど終わらせてきたバナージはそれを断る理由もなかった。
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□〈フィックの整備店〉【整備士】バナージ・リンクス
夕飯と風呂をいただいたバナージは寝室の座椅子に身体を預けていた。
彼の手元にはメモ帳とペン。整備店に向かう前に皇都の雑貨屋で購入したものだ。
「ハードル高いな、これ」
バナージの目的はRX-0──ユニコーンガンダムを作り、操縦することだ。
そこへ辿り着くまでに最たる壁となるのがミノフスキー粒子、ニュータイプ、サイコミュである。
“ミノフスキー粒子”は主に宇宙世紀が舞台となるシリーズで
動力、推進器、ビーム兵器、バリア、チャフ、ジャミングなどの多くの分野に跨って利用されている。もちろんユニコーンガンダムも同様だ。
当然リアルにもデンドロにもミノフスキー粒子という反則的な性質を保持した物質は存在しない。
それを幸運と思うべきか不幸と思うべきかは意見の別れるところか。
そしてミノフスキー粒子は宇宙進出の過程で進化を遂げた人間の脳波に対して特殊な反応を示した。
この進化を遂げた人類というのが“ニュータイプ”である。
概念には諸説あるが、ここでは彼らの能力について少しだけ触れていこう。
一言で形容すれば『把握力』だ。
それは空間に対する認識や他者の状況や心情、身に迫る危機等に対して発揮される。
ひとまず、超人的直感力が備わっているという認識をして欲しい。
ミノフスキー粒子がニュータイプの脳波──感応波に対して反応をすることは前述したが、それを受信・増幅させることで機体を制御する技術がある。
サイコ・コミュニケーター。略して“サイコミュ”だ。
パイロットの意志を直接機体に反映させる直感的なコントロールや、外部攻撃端末を用いた
つまるところ、実現できる可能性は限りなく低い、ということだ。
彼が掲げた目標は上に挙げた三つ全てを高い水準で必要とする。
まず独力で達成できるような事物ではなく、人を集めたとて完成できるかは不透明であり、未知数だ。
「……それでも」
遠い険しい道のりだろう。技術的に難しいかもしれない。
だが、彼が諦める理由にはなり得ない。
チェシャ猫はバナージが抱いた可能性を『不可能』と断じなかった。
君の奮闘に期待している、そう言った。
ならば挫けない、挫ける理由がない。
掴める見込みがあるのなら、それでもと足掻き続けよう。
無限の可能性を謳うこの世界の中であれば、己の可能性が結実すると信じて。
彼はメモ帳を枕元に置き目蓋を閉じる。
左手に輝く蒼き宝卵は主の決意に呼応し、静かに脈動した。
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■ある機械について
喰らう、喰らう、喰らう。
ただひたすらに喰らう。
土を、火を、肉を、魔を、力を、なにより鉄を。
それだけが与えられた命題であり、存在理念であり、己の証明そのものだった。
「グゥちゃん、ご飯だよー?」
今日もまた糧が提供される。
規定されたプロトコルに従い、それらを自身の中へと収める準備を開始した。
「いっつもマジンギアだと飽きちゃうと思って、今日は古いのを持ってきてみたよー!」
うんせうんせと台車が運んできたのは角張った岩石のような物質だった。
「そろそろ保管庫の断捨離しなきゃーって同業さんがいてね。それならウチで引き取りますよってことで送ってもらったんだ」
先祖代々受け継いできたが全く使い道が分からない、ただ倉庫を占領するだけの岩に人間は有用性を見出さない。
正しくそれを理解できたのはグゥと名付けられた群体だけであった。
【(<
【(履歴に類似個体なしと確認。<UBM>担当管理AIに通知)】
【(<UBM>担当管理AIより承諾通知)】
【(対象を<UBM>に認定)】
【(対象に能力増強・死後特典化機能を付与)】
【(対象を逸話級──【星蝕機蝗 ドゥームズグレイ】と命名します)】
名称:【星蝕機蝗 ドゥームズグレイ】
カテゴリー:ナノマシン
ランク:逸話級
紹介:
バナージが最初にかち合うことになる<UBM>。
フラグマン謹製土壌再生ナノマシン亜種。シュミット家や周辺の【
ジェーンがいつも〈マジンギア〉じゃ味気なかろうと気を利かせて与えた〈煌玉蟲〉の残骸が彼らにエヴォリューションを促し、結果として自我の発生と進化の余地を与えてしまった。
余談:
読みは【
主だったモチーフは自己複製ナノマシンによる終末論【グレイ・グー】、ヨハネの黙示録に登場する蝗害の神格【アバドン】。
後はほんのりメタルクラスタホッパーとG細胞風味。もちろんドゥームズグレイにそこまでの強さはない。
なお【マーシャルⅡ】が当該〈UBM〉発生時点でロールアウト済みの場合、脅威度が跳ね上がる。
不慣れながら色々書いてみましたが、こういう説明のがいいんじゃないのとかありましたら教えてくれると助かります。