【因果一角】 ユニコーン   作:可能性の獣

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(更に続きを)書いちゃうんだなぁ これが!



エピローグ②

□〈フィックの整備店〉【整備士】バナージ・リンクス

 

ゴウンゴウンと魔石回転(ジェムドラム)式洗濯機が仕事を行っている。ジェムは液体を定められたパターンで動かすだけの魔法が込められた、比較的安価に市場で流れているものだ。

水に揉まれて輪舞(ロンド)を踊るバナージの服をガラスの扉越しに二人の男が見つめている。

小さな脚立に座った下着姿のバナージと、神妙な顔をしたフィックだった。

 

「……もっと、きれいな国だと思ってました」

「まだこっちに来たばかりだろう。そう考えるのも無理はない」

 

ジェーン・シュミット、誰でもなくなった少女。

笑顔の裏側に何が潜んでいたのか、何を負うことを強要されたのか、どうして自分すらも偽らなければいけなかったのか。

フィックは──今日まで彼女の手足となって働いた侍従は包み隠さず話した。

己の知りうる限り、姫君の今までを。

 

「皇王皇室、ドライフの上澄み連中が可燃性のヘドロってだけで、下に流れる水は飲めないわけじゃない。むしろ清潔だからこそお前はそう思ったんだ」

「……ドライフの人たちは、それでいいんですか?」

「よかぁねぇよ。だがな、わざわざ見えてる爆弾に触れて蒸発したい物好きはごくごく少数ってこった」

 

……その少数になっちまったのが俺たちだったんだがな。そう言ってフィックは目を伏せた。

今でもあの時の自分であれば侯爵に忠言を捧げられたのではないか、主も聞き届けてくれたのではないかと。姫君を目にする度、後悔が彼の頭を過ぎるのだ。

 

「……あれは大人しい子だった。引っ込み思案で、いつも心配事を口にして、何より泣き虫だった。何回慰めたか俺も分からん」

 

家族を失ったあの日から姫君は変わってしまった。陽気の仮面が縫い付けられ、毎日を満面の笑顔で過ごすようになった。

運動が好きで、機械いじりが趣味の、ちょっと抜けたところのある、ひょうきんな性格。

消えた家族の外面をツギハギした、内向的な人間が演じるには歪が過ぎるパッチワーク。姫君はそれを今日まで見事に貫いてきた。

 

そのままの彼女を知るフィックだけは、その様があまりに痛々しく見えた。

元の姫君を取り戻せない自分が情けなくて仕方ない。主に娘を託されておきながら、見守ることしかできないとは。

 

「姫さんは今日、初めて泣いたんだ。最初に家族が死んでから初めて、な」

 

彼が、バナージ・リンクスがここの門を叩いた時から姫君はゆっくりと変わり始めた。

長く抑圧していた感情がようやく顔を出し、やっと“彼女らしい”心の発露を見ることができたのだ。

 

「バナージ、頼みがある」

「…………聞きましょう」

 

泡沫のような存在で、いつ消えるともしれない“マスター”に託すべきではないのかもしれない。

もとより当主から自分が預かったことなのだから、命果てるまで共にあるべきなのかもしれない。

 

だが、彼女は、姫君は、やっとできたのだ。

彼のおかげで、()()()()()()()()()()()()()()()

 

「姫さんを、ドライフ(ここ)から連れ出してやって欲しい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

□旅の途中

 

舗装され、竜車や人などが行き交う道を一台のオートモビルが駆け抜ける。

それは一瞬奇異の視線に晒されるも「どうせまたマスター(ご同類)だろう」と見なされる。

より奇抜な〈エンブリオ〉やマスターが溢れる中では、単なる普通自動車程度に目線を引く力があるはずもなく。

 

『バナージ、メシクレ!バナージ、メシクレ!』

「わかったわかった。もう少しで人通りも少なくなるからな」

 

本来シフトレバーのある位置には緑色の球体が収まっており、早く燃料(MP)を補給させろとつぶらな目とアームを収納するハッチが自己主張を繰り返していた。

 

「こうなっても食いしん坊なのは変わらないのね、グゥ」

 

助手席に座る少女はたおやかな表情でグゥと呼んだそれを撫でる。

球体は嬉しそうに、またピコピコとハッチを動かした。

 

「ええと、王国に行くんだったっけ?」

「ああ。ドライフから安全に行けるところはグランバロアかアルターしかないけど、さすがにこれじゃ海は渡れないしな。他の国へ行くにしてもまず王国からになる」

 

人がまばらになってきたところでバナージと少女は降車し、グゥはポンと設置位置から抜けるとコロコロと転がりながら外に出た。

 

()()()さーん、ボクも助手席座りたいんですけどー』

 

ペンダント状態からメイデンに戻ったユニコーンがぶー、ボクは不機嫌だぞーとばかりに頬を膨らませている。

 

「ごめんなさいね。この車、二人乗りだから」

「……グゥさん、三人乗りにできない?」

『リソース、タリナイ。リソース、タリナイ』

「ですよね。いや、分かってることですけど」

 

再三確認して毎回ムリと解答されているが、ユニコーンは諦め切れずにエネルギー充填中のグゥの身体を揺すっている。

 

「マスター。埋め合わせ、期待してますからね」

「あー……お手柔らかに頼むよ」

「それは時と場合によりますので」

 

今回はもう無理だと悟ったか、それとも諦めがついたのか。

ユニコーンはペンダントへ戻り、再びバナージの首にぶら下がった。

 

「ところでノヴァ、不安はないか?」

 

心配げに自分の顔を窺ったバナージにクスリとしてしまう。

不安なのは貴方の方じゃないの?その言葉は彼の気遣いに免じて不問とするとして、バナージへの解答に少女はゆっくりと首肯した。

 

「貴方がいるから、私は大丈夫」

「……そうはならないようにするけど、いつかはいなくなるかもしれないぞ」

「そうね。じゃあ、その時はちゃんとお別れして。曖昧に笑って満足げに消えるなんて、そんなの許さないんだから」

 

華奢な手がきゅっと握られ、小指だけが差し出される。

バナージもそれに応え、ここに契りは交わされた。

 

「約束だよ」

「ああ、約束する。不安にさせるようなこと言って、ごめん」

「ううん。私を思って言ってくれたことなら、許します。──グゥ、貯まった?」

『ジュウデン、カンリョウ!ジュウデン、カンリョウ!』

「行こうか。王国は俺も初めてだし、ちょっと楽しみだな」

 

オートモビルは王国に針路を向け、その旅を続ける。

王国に、その先に、何が待ち受けているかは分からない。

 

だが、彼らの道行はきっと────光指すものになるだろう。

 




勝ったッ!第1部完!

章末とはいえスッキリ(当社比)終わらせられたのはなんだかんだとSS書いてましたが初めての経験かもしれません。
ここまでハイスピードかつエタらず頑張れたのは皆様の評価や感想、お気に入りのおかげなので感謝です。

だからデンドロ二次増えてくれませんかお願いですから。
自家発電だけじゃ得られない栄養があるんです。


とりあえず(まだ何も続きを考えてないので)彼らの物語は一区切り。

王国で熊さんに出会うのか。
黄河で中華料理を頂くのか。
カルディナのスロットで〈エンブリオ〉の名前を叫びながら『それでも!!!!』と足掻いてみるのか。
グランバロアで宝探しをするのか。
天地でユニコーンをRX-零丸カスタムにしようかと揺れるのか。
レジェンダリアで変態たちとしのぎを削るのか。

彼らに訪れる出来事はまだ誰にも分かりません(決まってないので)。
いずれその道が定まりし時(の前にここまでのキャラやUBMの詳細設定とかは投げると思いますが)、またお会いしましょう。

バナージの目的地(アルター王国は確実に向かうので除外)

  • 黄河帝国
  • カルディナ
  • グランバロア
  • 天地
  • レジェンダリア
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