【因果一角】 ユニコーン   作:可能性の獣

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ついにサブタイ命名規則のUC関連縛りから逸脱してしまった。

原作が連日更新をするなら此方も出さねば……無作法というもの……(諸説あり)



第二話 始まりの物語(ナラティブ)

□国境 カルチェラタン付近【操縦士】バナージ・リンクス

 

「待たせた。思ったよりwikiの中身が濃くってさ」

 

二日に数回の頻度でバナージは<Infinite Dendrogram>からログアウトしている。

今は現実の彼を束縛してしまう面倒事がこれといってないが、風呂とトイレと食事はリアルでしっかり済ませなければならない。これを欠けば健康で文化的な最低限度の生活を過ごすことができなくなってしまう。

 

今回は遅刻してしまったのはアルター王国へ訪れるにあたって事前に下調べをしていたからだ。

 

デンドロのサービスはまだ開始早々。なのでwikiとはいえその情報量についてさほど期待はしていなかったが、熱意ある編纂部の人間が多いのか、予想以上にデンドロの各地域について情報が集ってきていた。

良い情報も悪い情報も様々だが、これだけ熱心なマスターが多くいることに少々バナージは驚いていた。何だ、傾倒してるのは自分だけじゃなかったのか、などと。

 

「別にいいよ、特に何もなかったし。それで、ウィキって?」

「マスターが使うあっちの世界の大図書館みたいなものかな。そうだグゥ、動力に割くMPはなるべく省エネで頼む」

『オマカセ!オマカセ!』

 

全員が乗り込んだことを確認してバナージはグゥを定位置にセット。カルチェラタンへ向けて魔動モービルが走り出した。

 

「一雨降りそう」

「確かに」

 

窓の向こう──進行方向の空には鈍色の雨雲らしき暗雲が漂っている。

そういえばwikiのウェザーニュースで王国郊外は雨の予報だったか、などと思いながらバナージはカーブに合わせてハンドルを回す。

 

『ところでマスター。ボクはいつまで君の首にぶら下がっていればいいんだい?』

(カルチェラタン到着までは我慢してくれ。お前を装備してないと『人機一体』と『第六感』が使えないんだから)

 

ユニコーンはメイデンwith アームズの〈エンブリオ〉である。今のところ彼女は効果を付与する装飾品(ネックレス)になることでしかスキルを発揮することができない。

ここまでの旅でバナージは長めの停車の間しか彼女を自由にさせていないが、万が一が起こってからでは遅いのだ。

 

(ついでに言うと……運が悪ければ今日、その万が一がやってくるかもしれない)

 

フロントガラスに水が走り、ルーフはボツボツと音を立てる。そのまま数分過ぎると本格的に雨が降り出してきた。バナージはハンドルを握る手が汗ばむのを感じた。

 

(丈の高い草と遮蔽物になりそうな岩や木、それに視界を遮る天候。そしてここはカルチェラタン(補給のできる場所)に近い上に明確な所有権のない国境付近。それに──)

『……それに?』

 

この辺りで襲撃事件が多発してるってwikiに書いてあったから。

その声が空気を伝播するより速く、バナージの脳裏に稲光が閃いた。

『第六感』による直感が発動したのだ。

 

「噂をすればか──!」

「えっうわーーーーっ!!?」

 

スキル『操縦』とグゥの手助けを借り、頭に走った()()を避けるようにドリフトを行う。

シェイクされる車体のなすがままになっているノヴァを慮る余裕はない。窓の外にはモービルを掠めるように弾や矢が過ぎ去っている。明らかに自分たちを狙っていることは明白だった。

 

「ノヴァ、グゥを半分持っていてくれ。俺のグゥが拡散したら隠れること。いいな?」

「──う、うん」

 

ぬかるみを弾きながら停車した魔動モービルに人影が迫る。

続々と影は数を増し、獲物を取り囲むようにそれぞれが持ち場に着いた。

 

バナージはゆっくりと、敵意を刺激しないよう降車する。今のタイミングで一斉にかかられると自分はともかく姫君まで対応ができないからだ。

 

彼は片手にグゥを、もう片手にアイテムボックスを携え、野盗の一団と対峙した。

 

「〈ゴブリン・ストリート〉……」

 

バナージはwikiでカルチェラタン近辺で起こった出来事について目を通していた。

本当は調べた特産品や郷土料理などでノヴァやユニコーンに息抜きをさせてやりたいと思っていたのだが、最下部のコメント欄に見逃せない情報が記されていた。

 

『国境近くを盗賊クランが根城にしている。注意されたし』

 

アルター王国の盗賊クランは〈ゴブリン・ストリート〉しかいない。

ティアン殺害で早々に監獄行きになったマスターのタレコミによりNPCの殺害が割に合わないと感じたマスターが多いためである。

しかし自分たちは今のところ皇国の人間だ。王国を拠点にする彼らが皇国で指名手配されたところで何の痛みもないのである。

 

「ないんです──」

 

待ちきれず、言葉を遮って飛来した矢は目標へ吸い込まれるように宙を翔け、額が血の華を咲かす前にへし折られる。

灰色の触手、もといグゥの身体がギチギチと蠢き、飛来した矢の一切を己の糧へと変換した。

 

「ないんですよ!あなた達にあげられるものなんて──!」

 

敵対の宣告と共に【星喰機心ㅤドゥームズグレイ】が鈍色のカーテンを形作り、バナージと魔動モービルに注がれる視線を遮った。

 

時間稼ぎの鉄幕は数秒もせずに形を崩す。

そこに魔動モービルとマスターの姿はなく、機甲の鎧だけが雨に打たれながら鎮座していた。

 

解けるように地に落ちた数多の機蝗は幕の中心に立つ鎧へと集う。

無骨な【マーシャル】の装甲の上にナノマシンが這い回り、所有者たるバナージの思考に沿って定められた形を規定する。

 

装甲はより白く染め上げられ、バイザーは目元を隠す。

そして、頭部には異彩を放つ一本の角が聳立した。

 

『人機一体』は機体とマスターをエンブリオを通して接続及び操縦するスキルである。

その範疇には特典武具である【ドゥームズグレイ】も含まれ、バナージはこれをある程度自由に──このスキルの前提が人型兵器の操作なので縦横無尽とはいかないものの──動かすことができる。

 

バナージは【ドゥームズグレイ】を【マーシャル】の追加装甲として振る舞わせた。

モチーフとした形は白き一角獣にして彼の飽くなき願望、RX-0──ユニコーンガンダムのそれであった。

 

 

「──バナージ・リンクス、ユニコーンガンダム」

 

 

ビームサーベルもビーム・マグナムも、シールドファンネルだってない。

まだそれはただ形を真似ただけの紛い物に過ぎない。

 

それでも、その姿にだけは恥じぬようにと気合を込めて。

 

 

「──行きます!」

 

 

背部のバーニアが雨を焼く。

ここに、ユニコーンガンダムの初戦が幕を開けた。

 




ユニコーンガンダムユニコーンモード(ガワだけ)(人間サイズ)
動力蓄えるアーマーだけ見ればG-セルフみたいなことしてるかもしれない。

この形を維持するのと機体の剛性を高めるためだけに結構な演算力を浪費しているので、この姿から外れるような変形(触手伸ばし)とか捕食によるMP回復はできません。ただの硬い鎧です。
浪漫だからね、仕方ないね。
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